ここではmicro:bit v2.0を使い、傾きを利用して音を奏でる楽器作りに挑戦しましょう。micro:bit初心者でも安心して作れるように、筆者(田中正吾)が用意した無償のプログラムデータも公開中です。

チャレンジ&ナレッジ最終更新日: 20211227

micro:bit v2.0の新機能で傾きを利用した楽器を作る

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国内では2020年度からプログラミング教育が開始。初心者が扱いやすい小型コンピューター「micro:bit(マイクロビット)」への注目度も高まっています。2020年11月にリリースされた新バージョン「2.0」の新機能を利用して、ここでは傾きを利用して音を奏でる楽器作りに挑戦しましょう。micro:bit初心者でも安心して作れるように、筆者(田中正吾)が用意した無償のプログラムデータも公開中です。

1 micro:bitの傾きを利用した楽器を作る

micro:bit v2.0の変更点

「micro:bit(マイクロビット)」は小型のコンピューターで、イギリスのBBC(英国放送協会)が中心となって情報教育向けに開発されました。micro:bitの新バージョン「2.0」(以下、micro:bit v2.0)は、前バージョンとサイズは同じながら、新たにマイク(マイク入力を示すLEDも追加)とスピーカーが搭載。表面のロゴマークにタッチ検出機能が加わり、電源供給状態で電源のON/OFFを切り替えられる機能も追加されています。

以下は、上記以外にもさまざまなバージョンアップした要素をまとめた一覧表です。

完成イメージを確認する

今回は、micro:bit v2.0の「音」に関する新機能を組み込んで「楽器」を作る趣旨で解説していきます。まずは完成イメージをご覧ください。

micro:bitのメリットは、Microsoft提供の「MakeCodeエディター」を使って、ブロックを用いた初歩的なプログラミングが組めることです。プログラミングに詳しくないユーザーでも、MakeCodeエディターを使って難しい言語を使わず、音の演出などのプログラミングを組んでいけます。

必要な材料を用意する

まずは必要な材料を揃えておきます。

1 USBケーブル
2 モバイルバッテリー
3 micro:bit v2.0

これら3点と、作業用の任意のパソコンを用意してください。

1(USBケーブル)は、長さの短いものが使いやすいでしょう。

2(モバイルバッテリー)は、micro:bitがあまり電力を使わないため、モバイルバッテリーによっては「省電力OFF機能」が働くことがあります。そうなると、ずっと起動し続けられなくなります。ここでは、省電力OFF機能がなく、スイッチのON/OFFで電源が管理できるモバイルバッテリーを選びます。

※ もし「省電力OFF機能」が働くバッテリーを使うと、あまり電力を使わない状態を「まったく電力を使わない状態」と捉えて、電源が自動でOFFになる可能性があります。自動でOFFになるとmicro:bitの常時起動ができず、うまく動いてくれなくなるので、注意しましょう。

3(micro:bit)の入手先は、いろいろとあります。初めての人でも特に迷うことなく入手できるでしょう。

入手前に必ずバージョンを確認します。2021年8月末時点で最新バージョンは「2.0」です。音の演出は最新バージョンに搭載されているので、必ず「2.0」を入手してください。

micro:bit v2.0は、新たに加わった「マイク」をプログラミングで組むと、音に反応します。下が音に反応したマイク入力を示すLEDの状態です。赤く表示されています。

micro:bitをパソコンにつなぐ

パソコン(PC)作業は、Windows 10をベースに進めます。まず、microUSBケーブルでmicro:bitとPCのUSBポートをつなぎます。
※他のOSで進めたい場合は、以下を参考にしてつないでみてください。

“Set up | micro:bit”.micro:bit.
https://microbit.org/get-started/first-steps/set-up/

つないだmicro:bitは、コンピューター上では「MICROBIT」という名前のドライブとして表示されます。

micro:bitのプログラムを作る

micro:bitは、Webブラウザだけで簡単にプログラムを作れます。micro:bitのWebサイトには、ブラウザ上で操作できるエディター「MakeCodeエディター」が用意されています。

micro:bitのWebサイトにアクセスしてみましょう。

“Microsoft MakeCode for micro:bit”.micro:bit.
https://makecode.microbit.org/

プロジェクトページが表示されます。ここで新しいプロジェクトを作り、 micro:bitを動かすプログラムファイルを用意します。

プログラムファイルをシェアする

今回は、初めてmicro:bitを使う人でも進めやすいように、すでに筆者が作ったプログラムを用意してあります。初めての人や慣れていない人は、いきなりゼロからプログラム作りをせず、完成したプログラムを参照しながら、仕組み作りの考え方をつかみましょう。

今回用のサンプルページにアクセスします。筆者が作ったプログラムを取り込んで、動かしてみましょう。サンプルページへアクセスすると、筆者が実装したプログラムが表示されます。

“ver2 傾き楽器”.Microsoft MakeCode.2021.
https://makecode.microbit.org/08137-75085-83080-91066

表示されているブロックの数々は、編集画面(※右上の「Edit Code」ボタンを押すと、編集画面に遷移します)の「ツールボックス」に用意された、各種の動きを指定するブロックの中から選び、組み合わせています(下は「基本」カテゴリをクリックしたところ)。

筆者が用意したプログラムのうち、編集画面の左側に配置されたブロックをご覧ください。

ツールボックスの「基本」カテゴリから「最初だけ」ブロックを選びます。次に「アイコンを表示」ブロックを2つ選び、ダイヤの形を指定。これで、最初にアイコンがダイヤの形に表示された状態、がプログラムされました。

では、編集画面の右側に配置されたブロックもご覧ください。

ツールボックスの「基本」カテゴリから「ずっと」ブロックを選びます。次に「ずっと」ブロックの中で実行したい内容を指定して、「ずっと●●●している状態」をプログラムします。ここでは「論理」ブロックの「もし●なら、でなければ」ブロックを使って、細かく内容を設定。傾きを「入力」カテゴリの「加速度」と「計算」カテゴリの「●の絶対値」ブロックで調整しています。

加速度のX軸、Y軸とは?

ここからは、傾きに関わる「加速度」についてもっと理解を深めましょう。加速度のX軸とY軸について理解するには、micro:bitを床に置いた時を基準にするとわかりやすいです。

床に置いた状態から、床に対してmicro:bitを水平に持ち上げたとします。加速度の「Y軸」は、下の画像通り、micro:bitを前後に動かした時の値を指します。床と水平の時は、Y軸の加速度が「0」となり、前後で傾ければ傾けるほど値が大きくなります。

一方で加速度の「X軸」は、下の通り、左右に動かした時の値になります。床と水平の時は、X軸も加速度が「0」で、左右に傾けるほど値が大きくなります。

今回用意したプログラムでは、左右の傾き(加速度のX軸)で音の鳴る間隔を、前後の傾き(加速度のY軸)を検知して音の高さをそれぞれ設定しています。

MakeCodeエディターにプログラムを読み込む

プログラムをみなさんの環境に読み込みましょう。「ver2 傾き楽器」と書かれたタイトルの右にある、グレーの「Edit Code」ボタンを押してください。

自分のMakeCodeエディターにプログラム「ver2 傾き楽器」が読み込まれます。

今回は筆者が作成したプログラムを使いますが、micro:bitでは、他にも世界中のさまざまな人たちが作ったプログラムを手軽にシェアして使うことができます。

また、プログラムを読み込まない場合は、自分でブロックを使ってプログラムを作ることになります。一通り理解したユーザーは、ぜひ自力でのプログラム作りにも挑戦してほしいです。

プログラムファイルをダウンロードする

筆者が用意したプログラム「ver2 傾き楽器」をそのまま使う場合、この状態でダウンロードすればOKです。

MakeCodeエディターの左ペイン下にある紫の「ダウンロード」ボタンを押します。

ダウンロードできたファイルをMICROBITのドライブに保存したら、micro:bitにプログラムを反映させます。

動作確認をしよう

micro:bit v2.0をモバイルバッテリーにつないで、実際にダウンロードしたプログラムを試してみましょう。下の画像のようにつなぎ、起動します。

つないだら、電源を入れて起動します。起動後、音とともにダイヤアイコンが出てくるのを待ちます。

実際に傾けて、音が出るかを試しましょう。下は傾けてみた時の動画です。はじめはY軸(前後)方向に動かしてみて、音の高さの変わる感じをつかみましょう。

Y軸を確認した後、X軸(左右)にも傾けてみて音の鳴る間隔をつかんでいくと、設定内容の感覚がつかみやすいでしょう。以上で動作確認は完了です。自分なりに傾けながら、おもしろおかしくメロディを奏でましょう!

2 ブロックエディターを使ってプログラムを変えてみよう

元のプログラムをアレンジしてみましょう。Y軸(前後)を調整して、音の高さを任意に変化させます。「もし加速度Yの絶対値 > 600」ブロックから「加速度 Y の絶対値」のパーツだけ、マウスでつかんで外に逃がしておきましょう。

「加速度 Y の絶対値」のパーツ以外、残ったブロックすべてに対して「Delete」キーで削除します。

ツールボックスの「音楽」カテゴリから、「音を鳴らす 高さ(Hz)(真ん中のド)」ブロックをマウスでドラッグします。

先ほど削除して空きができた「ずっと」ブロックに、「音を鳴らす 高さ(Hz)(真ん中のド)」ブロックをはめ込みます。

「音を鳴らす 高さ(Hz)(真ん中のド)」ブロックの「真ん中のド」に、残しておいた「加速度 Y の絶対値」ブロックをはめ込みます。

下が、はめ込み終えた状態です。でき上がったので、手元のmicro:bitにダウンロードして、動かしましょう。

下の動画が、改めてダウンロード後に起動した様子です。

このように、前後の傾きによってスムーズに音が変化して、最初の仕組みと違ったメロディを奏でることができました。傾きと音の仕組みを少しずつ変化させながら、自分なりの楽器を作りましょう。

ライタープロフィール 田中正吾

屋号:ワンフットシーバス

2004年よりフリーランス。最近ではWebフロントエンドをベースに、情報とインターフェイスが合わさる視点で、IoTやVRといった技術も取り入れ活動中。

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