AMD Radeon RX 6000シリーズ・グラフィックス・カード(2020年10月発表)が採用する「AMD RDNA 2アーキテクチャー」について詳しくご紹介いたします。

技術解説資料最終更新日: 20201118

AMD Radeon RX 6000シリーズに採用されたRDNA 2アーキテクチャーとは

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AMD Radeon RX 6000シリーズ・グラフィックス・カードは、2020年10月に発表された「AMD RDNA 2アーキテクチャー」を採用するAMDの新しいグラフィックスカードです。最新のゲーミンググラフィックスプラットフォームであるDirectX 12 Ultimateに対応したRadeon RX 6000 シリーズは、ハイエンド向けゲーミンググラフィックスカードとなります。4Kゲーミングはもちろん、DirectX レイトレーシングも用いた流麗で美しい画面でのゲーミングプレイを存分に楽しむことが出来ます。

AMD RDNA 2アーキテクチャーとは

AMD RDNA 2アーキテクチャーの読み方

「AMD RDNA 2アーキテクチャー」は エーエムディー アールディーエヌエー ツー アーキテクチャーと呼ばれています。
「Radeon RX 6000シリーズ」は ラデオン アールエックス ろくせんシリーズと一般的に呼ばれています。

AMD RDNA 2アーキテクチャーの主な特徴

AMD RDNA 2アーキテクチャーは、AMD Radeon RX 6000シリーズに搭載されるグラフィックスチップが採用するアーキテクチャーとなり、Radeon RX 5000シリーズのAMD RDNAアーキテクチャーの後継アーキテクチャーとなります。ゲーミングパフォーマンスに重点を置いたゲーミングアーキテクチャーとAMDでは言われています。

AMD RDNA 2アーキテクチャーの主な特徴として、
・RDNA 2アーキテクチャーは、前世代のRDNAアーキテクチャーと同じ7nmプロセスを採用しながら、動作クロックを引き上げました。またPCI Express 4.0に引き続き対応しています。
・RDNA 2アーキテクチャーは、RDNAアーキテクチャーに比べ1.5倍以上の電力効率となり、同じ動作クロックなら半分の消費電力で、同じ消費電力ならば30%以上も動作クロックを引き上げられます。
・RDNA 2アーキテクチャーでは、ストリーミングプロセッサーが倍増しました。それに伴い、CU(Compute Unit)数やテクスチャユニット数、ROP数など、グラフィックス描画にかかわる全ての演算装置がRDNAアーキテクチャーに比べて倍増しています。
・新たなるキャッシュメモリである「AMD Infinity Cache」の搭載により、実効メモリバス帯域を最大で3.25倍も効率的に利用することが出来ます。サーバー向けCPUのEPYCで培った高密度なメモリや、高速な内部バスAMD Infinity Fabricなどの技術の組み合わせにより実現しました。
・RDNA 2アーキテクチャーでは、レイトレーシング専用の演算装置としてレイ・アクセラレーターが実装されました。ソフトウェアで実行するよりも10倍も高速な演算が可能となっています。
・Windows 10 バージョン2004(20H1)でサポートされたDirectX 12 Ultimateに対応しました。DirectX レイトレーシング、可変レートシェーディング(VRS)、メッシュシェーダー、サンプラーフィードバック等をサポートし、リアルな照明と影を実現します。
・AMD Ryzen 5000 シリーズ・プロセッサー と AMD 500シリーズチップセットと組み合わせることで、CPU上からRadeon RX 6000シリーズのグラフィックスカード上の全メモリ領域にフルアクセス可能な「Smart Access Memory」機能を搭載しました。Smart Access MemoryによりCPU、GPU間のアクセスのボトルネックを解消し、最大で11%のパフォーマンス向上が見込めます。
・SSDなどのストレージからCPUを介さず直接GPUへ圧縮されたデータを読み込みさせることができるようになる「Microsoft DirectStorage」に対応しました。「Microsoft DirectStorage」は今後Windows 10に実装予定の機能となります。
・映像出力端子も強化され、HDMI 2.1 DSC、VRR、FRL対応、Display Port 1.4 DSC対応となり最大8K 120Hzの表示に対応しています。
・マルチメディアエンジンもアップデートされ、8K AV1のデコード、8K HEVCエンコード、h.264 Bフレーム対応などが実装されました。

Radeon RX 6000シリーズとは

Radeon RX 6000シリーズのラインナップ

2020年10月時点では、Radeon RX 6900 XT、Radeon RX 6800 XT、Radeon RX 6800の3モデルが発表されています。スペックは以下の通りとなります。

  Radeon RX
6900 XT
Radeon RX
6800 XT
Radeon RX
6800
アーキテクチャー RDNA 2
製造プロセス 7nm
CU(Compute Unit)数 80基 72基 60基
ストリーミングプロセッサー 5120基 4608基 3840基
テクスチャユニット 320基 288基 240基
ROP 128基 128基 96基
Ray Accelerators 80基 72基 60基
ゲームクロック 2015MHz 1815MHz
ブーストクロック 2250MHz 2105MHz
メモリタイプ GDDR6
メモリ容量 16GB
メモリクロック 16Gbps
メモリバス幅 256bit
AMD Infinity Cache 128MB
PCI-Express 4.0
補助コネクタ 8Pin×2
TBP(Total Board Power) 300W 250W
推奨電源 850W 750W 650W

Radeon RX 6000シリーズのスペック表

Radeon RX 6000シリーズのモデルナンバーについて

Radeon RX 6000シリーズの製品型番(モデルナンバー)は次のようなルールで命名されています。

Radeon RX 6000シリーズの命名ルールRadeon RX 6000シリーズの命名ルール

Radeon RX 6000シリーズの位置づけ

Radeon RX 6000シリーズは、以下のような位置づけとされています。

Radeon RX 6000シリーズの位置づけRadeon RX 6000シリーズの位置づけ

Radeon RX 6000シリーズのここがスゴい!

DirectX レイトレーシング

Radeon RX 6000シリーズは、レイ・アクセラレーターと呼ばれるハイパフォーマンス・レイ・トレーシング・アクセラレーション・アーキテクチャーを実装しており、DirectX レイトレーシングが使用できるグラフィックスカードです。レイトレーシングとは、Ray(光源)を追跡し、物体の表面を照らす、反射する、透過する、屈折するなどをシュミレーションし、現実に近い表現を得るための3D CGレンダリング手法の一つです。1画素ずつ光源の経路を計算するため、極めて高い品質で描画することができる特徴を持つ一方、その計算量はとても膨大で時間のかかる処理でしたが、Radeon RX 6000シリーズでは、専用の演算装置であるレイ・アクセラレーターを実装する事でゲーム内で素早く動的に使用することができるようになっています。

AMD Infinity Cache

AMD Infinity Cacheは、低消費電力かつ低レイテンシーで高帯域幅のパフォーマンスを可能にする新しいキャッシュメモリです。AMD Infinity Cacheにより、Radeon RX 6000シリーズは最大で3.25倍(※1)もの実効帯域幅を実現するなど、非常に効率的なメモリアクセス性能を実現しました。同時にメモリコントローラーの消費電力を抑制することで、256bit GDDR6のみの場合よりも最大で2.4倍ものメモリ帯域に対する電力効率を実現しました。

※1. 256bit GDDR6 16Gbpsメモリにおける、AMD Infinity Cacheの有無による帯域幅の比較です

AMD Smart Access Memory

PCI Expressの仕様により、CPUからグラフィックスカード上のビデオメモリへのアクセスは256MBに限定されています。
Smart Access Memoryは、Radeon RX 6000シリーズ・グラフィックス・カードをRyzen 5000シリーズ・プロセッサーとAMD500シリーズチップセットと組み合わることで利用可能となる機能(※2)で、CPUからRadeon RX 6000シリーズのビデオメモリ全領域に対してフルアクセスが可能となります。Smart Access Memoryにより、DirectX 12対応のゲームであれば最大11%の性能改善が見込めます。

※2.マザーボードのBIOSとグラフィックスドライバーが対応している必要が有ります

DirectX 12 Ultimate対応

DirectX 12 Ultimateは、Windows 10 バージョン2004(20H1)以降でサポートされた最新のゲーミンググラフィックスプラットフォームで、DirectX レイトレーシングや可変レートシェーディング(VRS:Variable Rate Shading)に加えて、距離に応じたポリゴンの切り替えを効率良く行うメッシュシェーダー、ゲームのフィードバックマップを生成して実際には不要な計算を回避する事で描画の負荷を下げるサンプラーフィードバックなどに対応しました。
Radeon RX 6000シリーズは、この最新のゲーミンググラフィックスプラットフォームである DirectX 12 Ultimate に対応しています。

DirectStorage対応

Radeon RX 6000シリーズは、CPUを介することなく圧縮したままのデータをGPUに転送するためI/O性能が大幅に向上させる、DirectStorageに対応します。DirectStorageによりゲームのロード時間が大幅に短縮され、かつCPUでデータを展開する必要が無いためCPUの負荷を大幅に減らすことが可能となっています。

※「Microsoft DirectStorage」は今後Windows 10に実装予定の機能となります。

AV1 ビデオコーデック

Radeon RX 6000シリーズは、H.265より2割以上も動画圧縮率の高い「AV1(AOMedia Video 1)」コーデックにハードウェアで対応しました。専用の「AV1」ハードウェアデコーダーの搭載により、8K 30フレームの動画再生に対応可能となっています。

Radeon RX 6000シリーズ よくある質問と答え(FAQ)

Q1.Windows 10以外でも使えるの?

A1.
Windows 10 64bit の他、Ubuntu x86 64ビットや CentOS などがサポートされています。

Q2.PCI Express 3.0 のマザーボードでも使用できるの?

A2.
PCI Express 3.0 のマザーボードでも使用可能です。
PCI Express 4.0 のマザーボードであれば、 Radeon RX 6000シリーズの性能を最大限まで引き出すことが出来ます。

Q3.補助電源コネクタは?

A3.
Radeon RX 6000では、8Pin×2 が必要となります。
6Pin用の電源ケーブルでは動作致しませんので、ご使用の環境によっては電源ユニットの交換が必要になる可能性があります。
※AMDリファレンスデザインに基づく場合。オリジナルクーラーモデルやOCモデルの場合、必要な補助電源コネクタが変わる場合が有ります

Q4. CrossFireを構築する事は出来るの?

A4.
Radeon RX 6000シリーズはCrossFireに対応していませんので、CrossFire環境を構築する事は出来ません。

Q5. Smart Access Memoryが有効にならない

A5.
Smart Access Memoryは、Radeon RX 6000シリーズに加えてRyzen 5000シリーズプロセッサーとAMD 500シリーズチップセットマザーボードの3点が揃っていて、かつ有効となるドライバーバージョンやBIOSバージョンが有ります。全てのハードウェアとソフトウェアがそろった環境で有効となります。

ハードウェア ソフトウェア
・AMD Ryzen 5000シリーズ・プロセッサー
・AMD Radeon RX 6000シリーズ・グラフィックス・カード
・AMD 500シリーズチップセット搭載マザーボード
・64bit OS
・AGESA 1.1.0.0以上に対応するBIOS
・AMD Radeon Softwareドライバー20.11.2以上
・UEFIレガシーフリー起動(BIOS互換モードは無効化、UEFI起動のみ)、「Above 4G Decoding」オプションが有効、「Re-Size BAR Support」が有効 ※マザーボードメーカーにより呼称が異なる場合があります。

AMD Smart Access Memory要求環境(発売前の情報となります)

Q6. NVIDIAのGeForceから乗り換える事は出来る?

A6.
GeForceシリーズから乗り換える事は出来ます。
なお、GeForceカードを取り外す前に、GeForce用ドライバーや関連プログラムをアンインストールして下さい。

ライタープロフィール 職人5号

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。

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