AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーは、AMDから2020年11月に発売された「Zen 3」マイクロアーキテクチャーをはじめて採用するCPUシリーズです。強力な処理能力を持ち、最上位のRyzen 9 シリーズはコンシューマー向けデスクトップ用CPUでは最大のコア数/スレッド数となっています。ここではAMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーの特徴やスペックを詳しくご紹介します。

技術解説資料最終更新日: 20201105

AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサー(Zen3)とは

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AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーとして、AMDから2020年11月に以下モデルが発売されました。
Ryzen 9 5950Xプロセッサー
Ryzen 9 5900Xプロセッサー
Ryzen 7 5800Xプロセッサー
Ryzen 5 5600Xプロセッサー
Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーは「Zen 3」マイクロアーキテクチャーをはじめて採用するCPUシリーズです。「Zen 3」マイクロアーキテクチャーでは、前世代の「Zen 2」マイクロアーキテクチャーを改良し、さらに強力な処理能力を持つCPUへと進化しています。ここではAMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーや「Zen 3」マイクロアーキテクチャーの特徴・スペックを詳しくご紹介します。

AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサー(Zen3)とは

AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーは、Zen 3マイクロアーキテクチャーを採用する初めてのCPUです。Zen 3マイクロアーキテクチャーは、前世代のZen 2マイクロアーキテクチャーを改良したことにより、さらに強力な処理能力を獲得しました。CPUコアの改良や内部構造の変更により、1クロック当たりの処理性能(IPC)の向上、キャッシュメモリへのレイテンシの低減など、実際にPCを使用する状況下でのパフォーマンスが向上しています。

AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサー(Zen3)の主な特徴

CPUについて

・AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサー(Zen 3)は、AMD Ryzen 3000 シリーズ プロセッサー(Zen 2)と同様に7nm製造プロセスで製造されています。

プロセッサーの製造プロセスプロセッサーの製造プロセス

・Zen3アーキテクチャーでは、キャッシュの改善、実行エンジンの拡張、予測分岐の強化、帯域の強化などのコアの改良により、IPC(Instruction Per Cycle:クロックあたりの処理性能)が最大19%向上しました。
・これまでは4つのCPUコアを1つのクラスタ単位(CCX:Core Complex)としていたのに対し、Zen 3アーキテクチャーでは8つのCPUコアを1つのクラスタ(CCX)へと変更しました。このCCXの変更によりコア間のアクセスや、各コアから直接アクセス可能なL3キャッシュメモリ容量が実質的に倍増し、メモリへのレイテンシが改善しました。

クラスタ単位(CCX:Core Complex)の変更クラスタ単位(CCX:Core Complex)の変更

・Zen 2アーキテクチャーと同じIOチップ(cIOD)を使用し、CCDとcIODの組み合わせはZen 3でも引き続き採用されます。CCD間のアクセスは従来通りcIODを経由します。このチップレット構成により、最大16コアまでサポートすることができます。

CCDとcIODの組み合わせCCDとcIODの組み合わせ

・cIODでは引き続き、DDR4-3200メモリやUSB 3.1、PCI-Express Gen 4.0などに対応し、高速な足回りを実現します。
・「Precision Boost2」により必要に応じて標準で設定された最大値を超えて自動的にCPUの動作クロックが引き上げられます。
・CCD、cIOD間の動作クロック「fclk」、メモリコントローラとメモリ間の動作クロック「uclk」、メモリの動作クロック「mclk」は1:1:1で同期しているため、DDR4-3200など高速なメモリを取り付けることでこの間の動作クロックが向上し、処理性能が向上します。
・すべてのモデルで倍率ロックフリーとなり、X570チップセットやB550チップセットのマザーボードと組み合わせることでオーバークロックに対応します。
・AMD Ryzen Master Utilityにより、オーバークロックや電圧などの制御がOS上から可能です。

GPUについて

AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーのうち今回発売されるRyzen 9 5950X、Ryzen 9 5900X、Ryzen 7 5800X、Ryzen 5 5600Xはグラフィックス機能を内蔵していないCPUですので、別途グラフィックスカードが必要になります。
・GeForceやRadeonなどのグラフィックスカードに対応し、SLIやCrossFireXを組むこともできます。※マザーボードの仕様によります。
※型番の末尾に「G」が付くRadeonグラフィックス内蔵 Ryzen プロセッサー(Ryzen 7 Pro 4750GやRyzen 5 3400Gなど)と共通のSocket AM4マザーボードとなるため、グラフィック出力端子が付くマザーボードもありますが、上記プロセッサー搭載時には映像出力はされませんのでご注意ください。

チップセット・その他

・Socket AM4を継続して採用していますが、AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーに対応したチップセットは、AMD 500 シリーズチップセット(X570・B550)と一部のAMD 400 シリーズチップセット(X470・B450)となっています。
※AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーに対応したBIOSが必要ですので、事前に各マザーボードメーカーのCPUの対応状況を確認下さい。なお、AMD 400 シリーズチップセット用のAMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサー対応BIOSは、2021年1月以降に提供される予定となっています。

Ryzenのモデルナンバーについて

Ryzenの製品型番(モデルナンバー)は次のようなルールで命名されています。

Ryzenのモデルナンバー 命名ルールRyzenのモデルナンバー 命名ルール

AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサースペック一覧

最上位の16コア「AMD Ryzen 9 5950X」はAMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーの中で最大ブースト・クロックが最も高く、最高のシングルスレッド性能を持ちます。また、メインストリームのCPUソケットに搭載されたデスクトップ向けプロセッサーの中で最も高いマルチコア性能を発揮します。

  Ryzen 9 5950X Ryzen 9 5900X Ryzen 7 5800X Ryzen 5 5600X
アーキテクチャ- Zen3
製造プロセス 7nm
コア/スレッド 16/32 12/24 8/16 6/12
動作クロック 3.4GHz 3.7GHz 3.8GHz 3.7GHz
最大ブースト・クロック 4.9GHz 4.8GHz 4.7GHz 4.6GHz
キャッシュメモリ L2 8MB 6MB 4MB 3MB
L3 64MB 32MB
PCI-Express Gen 4.0※1
レーン数 16
メモリ 対応メモリ DDR4-3200
最大容量 128GB
TDP 105W 65W
対応ソケット Socket AM4
対応チップセット AMD X570・B550・X470※2・B450※2

AMD Ryzen 5000 シリーズ スペック比較表

※1:PCI-Express Gen 4.0動作には、AMD 500シリーズチップセットとの組み合わせが必要です
※2:BIOSの対応が必要です

歴代Ryzen CPUのスペック比較

歴代のRyzen CPUの代表としてRyzen 7 シリーズを比較したものです。
スペックシートから見るRyzen 7 5800Xは、Ryzen 7シリーズを通して動作クロックは少しずつ上げられているものの、大きく変化しておりません。一方で、最大ブースト・クロックは引き上げられています。TDPは105Wとなったままパフォーマンスは引き上げられており、消費電力あたりの処理性能が向上しています。

モデルナンバー Ryzen 7
5800X
Ryzen 7
3800XT
Ryzen 7
2700X
Ryzen 7
1800X
アーキテクチャー Zen 3 Zen 2 Zen + Zen
製造プロセス 7nm 12nm 14nm
コア/スレッド 8/16
動作クロック 3.8GHz 3.9GHz 3.7GHz 3.6GHz
最大ブースト・クロック 4.7GHz 4.7GHz 4.3GHz 4.0GHz
キャッシュメモリ L2 4MB
L3 32MB 16MB
PCI-Express Gen 4.0 3.0
レーン数 16
メモリ 対応メモリ DDR4-3200 DDR4-2933 DDR4-2667
最大容量 128GB
SIMD命令 SSE SSE4.1/4.2
AVX AVX2(256bit) AVX(128bit)
TDP 105W 95W
対応ソケット Socket AM4
対応チップセット AMD 500 ・400
シリーズ
AMD 500・400
・300 シリーズ
AMD 500・400
・300 シリーズ
AMD 400・300
シリーズ
※B550除く

AMD Ryzen 7シリーズ スペック比較表

AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサー対応チップセット

AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサー対応チップセットについて

・継続してSocket AM4を採用しており、AMD 500 シリーズ チップセット(X570・B550)だけでなく、従来のAMD 400 シリーズ チップセット(X470・B450)でも搭載可能となっています。
※BIOSの対応が必須となりますので、各マザーボードメーカーのCPUの対応状況を確認下さい。

チップセット AMD 500 シリーズ AMD 400 シリーズ
X570 B550 X470 B450
ソケット AM4
PCI Express レーンの最大数 16 6 8 6
PCI-Express 4.0 3.0 2.0
USB3.1ポートの最大数 8 2
USB3.0ポートの最大数 0 2 6 2
USB2.0の最大数 4 6
SATA Expressポートの最大数 0 2
SATA 6.0 Gb/s ポートの最大数 12 6 6 4
RAID構成 0/1/10
SLI対応 ×
CrossFireX対応
オーバークロック対応

AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサー対応チップセット スペック比較表

※ AMD 400 シリーズチップセット用のAMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサー対応BIOSは、2021年1月以降に提供される予定となっています。

AMD X570チップセットブロック図

・PCI-Express Gen4 に対応し、Ryzen 5000シリーズプロセッサーと合わせて特徴的なインターフェースとなっています。
・X570チップセットでは、チップセット接続のPCI-ExpressもGen4対応となりました。
・USB 3.1ポートや、SATA3.0ポートなどCPU、チップセット共にサポートしています。
・NVMe接続ポートもPCI-Express Gen4へ対応し、高速なSSDを搭載することができます。

AMD X570チップセットブロック図AMD X570チップセットブロック図

各世代 Ryzenと 各チップセットの対応表

  X570 B550 X470 B450 X370 B350 A320
Ryzen 5000 シリーズ × × ×
Ryzen Pro 4000G シリーズ
(Ryzen 7 Pro 4750Gなど)
× × × × ×
Ryzen 3000 シリーズ
(Ryzen 9 3950Xなど)
Ryzen 2000 シリーズ
(Ryzen 7 2700Xなど)
×
Ryzen 3000G シリーズ
(Ryzen 5 3400Gなど)
×
Ryzen 2000G シリーズ
(Ryzen 5 2400Gなど)
× ×
Ryzen 1000 シリーズ
(Ryzen 7 1800Xなど)
× ×

各世代 Ryzenと 各チップセットの対応表

※:各マザーボードごとに特定の対応BIOSが必要です

AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサー よくある質問と答え(FAQ)

Q1.AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーで自作したけど、画面が出ません。

A1.
AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーのうち今回発売されるRyzen 9 5950X、Ryzen 9 5900X、Ryzen 7 5800X、Ryzen 5 5600Xはグラフィックス機能を内蔵していませんので、別途グラフィックスカードが必要となります。X570チップセットなどSocket AM4マザーボードは、Radeonグラフィックス内蔵 Ryzen プロセッサー(Ryzen 5 3400Gなど)と共通のマザーボードとなります。
マザーボードによってはHDMIやDisplayPortなどのグラフィックス出力端子が付きますが、「AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサー」を搭載した際には映像出力はされませんのでご注意ください。

Q2.今まで使っていたRyzen をAMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーに載せ換えたい!

A2.
AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーはAMD 500 シリーズ チップセットだけでなく、従来のAMD 400チップセット(X470・B450)でも搭載可能となっています。ただし、AMD 400チップセットについてはAMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーが登場したのち、しばらくしてから対応の予定となっていますので、いち早くAMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーを使用したい場合は、AMD 500 シリーズ チップセットをご使用ください。
また、BIOSがAMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーに対応している必要がありますので、各マザーボードメーカーのCPUの対応状況を確認下さい。

Q3.AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーにCPUクーラーが付属していない!

A3.
AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーではRyzen 9 5950X、Ryzen 9 5900X、Ryzen 7 5800XにはCPUクーラーが付属していませんので、別途CPUクーラーが必要となります。TDP105W以上の冷却性能を持つSocket AM4対応のCPUクーラーをご用意ください。

Q4.AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーで組み立てたけど起動しない!

A4.
AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーはグラフィックス機能を内蔵していませんので、別途グラフィックスカードが必要となります。また、モニターとの接続がグラフィックスカードとなっているか確認して下さい。
メモリの搭載位置に注意して下さい。メモリの搭載位置についてはマザーボードの取扱説明書をご確認下さい。

Q5.PCI-Express Gen3のグラフィックスカードをPCI-Express Gen4のスロットに取り付けはできますか?

A5.
PCI Express Gen4のスロットの形状に変更はなく、下位互換性が確保されていますので、問題なく取り付けることができます。ただし、PCI Express Gen4の端子に取り付けても動作はPCI-Express Gen3となります。

ライタープロフィール 職人5号

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。

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