テレワーク導入を行った中小企業の実状について、今回はNEXMAG編集部に隣接するデザイン制作会社に話を聞き、実際の導入の流れや実施したことで見えてきた課題とその解決法などをご紹介します。

チャレンジ&ナレッジ最終更新日: 20201208

中小企業のテレワーク事情:デザイン制作会社編

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中小企業のテレワーク導入は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、急速に広がりました。そのため、しっかりとした準備ができないまま試行的にスタートした企業も多いと思います。そこで、実際にテレワーク導入を行った中小企業の実状をレポート!
今回はNEXMAG編集部に隣接するデザイン制作会社に話を聞き、実際の導入の流れや実施したことで見えてきた課題とその解決法などをご紹介します。

デザイン制作会社が行ったテレワーク

中小企業がテレワークの導入を進めたきっかけといえば、やはり新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、2020年4月16日に出された緊急事態宣言。
感染拡大を防ぐため、不要不急の外出を控えるのと同時に、時差出勤や在宅勤務などの実施を呼びかけられたことで、全国の企業はこれまでの出勤スタイルを大きく変えなければならないことを痛感させられました。

今回紹介するデザイン制作会社も、同様にテレワークの必要性を実感し、導入に踏み切った中小企業の1つ。
多くの中小企業と同じく手探りの状態でテレワークをスタートさせ、出てくる課題にその都度対処しながら、現在もテレワークを継続的に実施しています。
今回は、同じようにテレワークを始めたものの課題に直面している中小企業や、緊急事態宣言の間は時差出勤などでき得る限りの対応をしたものの、いまだテレワーク導入には至っていない中小企業にとって、少しでもテレワークに関する課題解決や新たな導入につながるヒントになるよう、テレワーク導入のプロセスや運営事情を紹介していきます。

テレワーク実施前の状況

このデザイン制作会社は、東京を中心に大阪と岐阜に拠点を構えています。
東京と岐阜の事務所では、基本的に従業員は週4日勤務。
その他、さらに少ない勤務日で働く従業員もおり、大阪で働くエンジニアは自宅勤務で作業を行うなど、比較的自由度のある多様な働き方を採用。
そのため、日頃から拠点間でのやりとりもあり、遠隔でのコミュニケーションや作業共有などにも、抵抗がないように見えました。
しかしそれでも、実際に本格的なテレワークを導入する際には、さまざまなトラブルや新たな壁に遭遇したといいます。

導入した方法

まずこの会社で導入したのは、インターネットを介して遠方にいる相手とテキストや映像、音声でコミュニケーションをとるためのツールとして「Microsoft Teams」でした。
もともと社内のコミュニケーションでは「Skype」を使用していましたが、顧客とのリモート会議をする機会が一気に増える中で、Microsoft Teamsでの開催を希望される場合が多かったこともあり、早々に導入を進めたとのこと。

緊急事態宣言後には、通勤や拠点間の移動が制限される中、「Microsoft Teams」や「Skype」など、テレワークに活用できるさまざまなコミュニケーションツールが登場し、多くの中小企業でもウェブ会議が導入されたのではないでしょうか。

またウェブ会議と同様に、インターネットを通じてリアルタイムにメッセージのやりとりを行うテキストチャットも、ウェブ会議と並行して活用。
これまでのように会社に出勤して顔を合わせることのないテレワークでは、こうしたツールを用いたコミュニケーションが大きなカギを握ると感じ、まずはこの2つを併用したテレワーク導入をスタートさせました。

さらに、各自が自宅で作業をする際に必要となるのが、それまで個々のPCで保管していた作業データの共有です。
この会社では、業務端末間でファイルを共有できるNAS(ネットワークハードディスク)を導入しました。

今回取材した会社で導入されていたNAS今回取材した会社で導入されていたNAS

以上が、テレワークを始める際に活用した主な設備やツールです。
ここからは、大きくコミュニケ―ションツールとデータ共有ツールに分けて、それぞれ導入のプロセスや出てきた課題の解決法を詳しく見ていきましょう。

テレワーク時のコミュニケーション

テレワークを導入する際に、よく課題として挙げられるのが、従業員同士のコミュニケーションです。
各自が自宅で働くことで、今までと同じように、会話がしたい時に直接顔を見ながら意思疎通が図れなくなることから、従業員のストレスが増したり、業務効率が低下するなどの弊害が出るのではないかと、不安を抱える中小企業も多いと思います。
このデザイン制作会社でも同様に、テレワークを始めたことでコミュニケーションに関する悩みを感じたそう。
そのトラブルや解決方法を見ていきます。

ウェブ会議の課題と解決法①音声トラブル

テレワークの第一歩として、多くの中小企業でも取り入れられているのがウェブ会議ではないでしょうか。
インターネット環境さえあれば、各拠点はもちろん、自宅からでも遠隔で他の従業員とコミュニケーションがとれるウェブ会議は、新型コロナウイルス感染症対策として広く普及。
その利便性から、コロナ対策だけでなく今後もビジネスにおけるコミュニケーション法の1つとして、当たり前に活用されていくと思います。

しかし、とても便利なウェブ会議も、慣れるまでには細かな不具合に悩むことも。
今回、ウェブ会議を始めたこのデザイン制作会社でも、導入の初期段階で1つの課題に直面しました。

今回のテレワークでは、従業員はそれぞれ在宅での作業を行う際に自分の所有するパソコンを使用していました。
そのため、ある人はノートパソコンを用い、ある人はデスクトップと、使用する機器にバラつきが生じました。
すると、ある従業員の声だけが聞き取りづらいなどのトラブルが発生。
特にデスクトップのパソコンを使用している従業員は、マイクの感度が低かったことが原因だったようです。

そこで、急遽外付けのウェブカメラを購入し、デスクトップを使用する従業員に支給。
その際、ノイズリダクションマイクが内蔵されたウェブカメラをチョイスしたため、設置後は声がクリアに聞こえるようになり、ウェブ会議がスムーズに運営できるようになりました。
一見、とても初歩的なトラブルに思えますが、こうした小さなトラブルが不慣れなテレワーク時には、大きなストレスにつながり、業務が滞ることがあるので、注意が必要です。

ウェブ会議の課題と解決法②雑談不足

ウェブ会議をしている際、「なかなか発言しにくい」「話そうと思ったら、人の発言を遮ってしまった!」など、難しさを感じる声もよく聞かれます。
特にウェブ会議では、相手の細かな表情や状況が捉えにくかったり、目が合うことがないため、誰に話しているか分かりづらいなど、慣れるまでには違和感を感じることも多いでしょう。
そこで多くの場合、ウェブ会議では主に進行役となる人が次に話す人を指名するなど、出席者が1人ずつ意見を出す機会を設けていくスタイルをとるのが一般的です。

しかし、この方法は現状を報告し合うなど、決められた議題に対して話していく際には有効ですが、例えば新しい事業を行う際にざっくばらんにアイディアを出していきたい時などには、難しさを感じるものです。
今までにない仕組みにたどり着こうとする時には、まったく関係のないような一言やトピックスから、ハッとするような発想やアイディアが生まれることもあります。
それはつまり、これまで当たり前に行っていた“雑談”が、実はとても大切だということ。
この点は、今回テレワークを導入したデザイン制作会社も、痛感したことの1つでした。

そこで、雑談をする機会を設けるため、話すテーマを設定せず全社員が集うウェブ会議を開催。
フリータイムで雑多な話をし合う、社内のオンライン飲み会のような時間を持つことにしたのです。
また、ふだんは業務に関連することをやりとりしているツール内に、業務に直接関係のないことも含めた話題を気ままに書き込むだけのグループチャット(Microsoft Teamsでは「チャネル」)を設置して書き込めるようにしました。
こうした時間やツール内の発言場所を持つことで、アイディアを出すだけでなく、お互いが置かれている状況も共有でき、従業員の間のコミュニケーション不足も解消しました。
この会社ではテレワークが定着した現在も、こうした機会を週1回、定期的に持つようにしています。
出勤する手間や時間が軽減される一方で、テレワークではこうしたコミュニケーションの工夫が必要なんですね。

グループチャットの課題と解決法

ウェブ会議と同じく、社内のコミュニケーションツールとして採用していたのが、テキストチャット。
テキストチャットは、参加者が時間を合わせて開催するウェブ会議と違い、情報を共有したい時にリアルタイムで業務連絡などができ、SNSやメールのような気軽さで円滑なコミュニケーションができるが魅力です。

しかし、テキストチャットを使う上でも、先ほど述べたウェブ会議と同様の課題が浮き彫りになりました。
このデザイン制作会社では、以前からテキストチャットを利用。
それまでは、仕事のプロジェクトやチーム、従業員の役割ごとにグループを設定し、各従業員が必要な時に活用していました。
しかしプロジェクトやチーム、役割をグループに設定すると、おのずと送るメッセージはその仕事に関する内容に限られます。
そのため、ウェブ会議と同じく雑談をする機会がなくなってしまったのです。

そこでウェブ会議と同様、テキストチャットにも「つぶやき」というグループを設け、雑談が生まれる場をつくることにしました。
このグループでは、仕事に関係ないことでも書き込んでOK。
日々の中で気づいた発見を共有するなど、思い思いのメッセージを送ることができ、返事の有無も問いません。
そうした自由な発言ができるいい意味での‟無駄“も、コミュニケ―ションには必要なようです。

テレワーク実施で感じたメリット

このように、コミュニケーションという点では課題も感じたテレワークですが、作業面では以前に比べて改善した点や、メリットを感じた点も多かったといいます。
例えば、テキストチャットを多用したことで、それまで口頭で済ましていたやりとりを文字情報として残すことができるように。
やりとりのプロセスや結果を伝えるために、書類を作成するという手間や堅苦しさもなく、テキストとして作業の過程や指示を残せるため、後でやりとりを思い返したりする際にも活用でき、作業を担当していない従業員にも情報をオープンにしやすいというメリットも実感したそう。

また最近のコミュニケーションツールは、ファイルの送受信もしやすくなっているため、制作しているデータのやりとりもスムーズにできるようなりました。
その結果、作業のスピードもアップし、個々が持っているデータや知識の共有が進むなど、これまでにはなかった効果も感じているといいます。
テレワークをうまく活用すれば、通勤時間の短縮だけでなく、さまざまな面でも業務改善を図ることができそうです。

テレワーク時のデータ共有

テレワークの導入において、離れた場所で作業をする従業員がどのようにデータを共有するかというのは、避けては通れない問題の1つです。
これまで社内ではデータ共有をしてきたものの、テレワークとなれば会社の外部にいる従業員がデータにアクセスする必要があります。
その環境整備やセキュリティ対策に二の足を踏み、なかなかテレワークを始められないという中小企業も多いのではないでしょうか。
ここでは、テレワーク時のデータ共有に向けて、デザイン制作会社が導入した設備やセキュリティ対策について、紹介したいと思います。

NASの導入とそのメリット

従業員と作業データを共有するために、今回新たに導入したのが、NASという設備。
NASとは、「Network Attached Storage」の頭文字をとった略称で、その名のとおりネットワークに接続して使用するストレージを指します。

通常、作業したデータは個々のパソコン内や外付けのハードディスクなどに保存してあることが多いと思います。
外付けタイプのハードディスクだと、USBケーブルを用いてパソコンと1対1で直接接続すれば、データの共有ができますが、NASはネットワークで接続されているため、同時に複数のパソコンでアクセスすることが可能。
もちろん、ネットワーク経由で社内だけでなく、自宅にあるパソコンやタブレット、スマートフォンなど、外部にある端末からもデータを共有できます。

NASのより詳しい説明を知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
“NASの基礎知識”
https://www.pc-koubou.jp/magazine/12866

実際の導入法と活用法

今回、この会社で新たに導入したのは、QNAP Systems,Inc.の「TS-251B」という製品です。
このNASには、4TBの3.5インチHDDを2台取り付けてあり、2台のハードディスクに同じデータを書き込むよう、RAID1という設定を行っています。
こうすることで、どちらか一方のハードディスクが壊れた際も、バックアップがとれている状態になります。

TS-251Bの詳しいスペックや、RAID設定の方法は、下記の記事を参照してください。
‟QNAP NAS TS-251Bをレビュー”
https://www.pc-koubou.jp/magazine/15661

NASを設定後、アクセスするとファイルのアップロード・ダウンロードが可能になります。
これまで社内では、個々のパソコンで作業していたデータを定期的に外付けハードディスクへ保存してバックアップしていました。
そのため従業員の入れ替わりがあると、その従業員が使用していたデータを使いたい人が、バックアップをとっていたハードディスクにパソコンをつなぎ、データを持ってこなければいませんでした。
その点でNASは、接続しておくと作業の合間にNASが全従業員の作業データのバックアップをとってくれて、誰でもそのデータにアクセスができるため、その手間を省くことができます。

最も理想的なのは、常に最新のデータがバックアップされて共有できることですが、NASへ転送する速度は、ネットワーク回線の通信速度に依存するため、ネットワーク回線が太くないと、データの書き込みには相当な時間がかかることになります。
今回NASを導入したデザイン制作会社でも、その点にやりづらさを感じたそうです。

そこで、作業中のデータを渡したい時には、NAS内に個々のフォルダをつくり、渡したい相手にその都度知らせる方法を採用。
NASの中にバックアップするのは、印刷物の入稿データや、ホームページのHTMLソースコード、画像パーツなど、納品に至った最終の成果物データのみを格納して、必要なデータを共有するというルールを設けました。
その結果、以前に行ったプロジェクトに似た仕様の案件があった際には、そのデータを参考にしたり、制作事例を紹介する際に格納してあるデータを使って図版を書き出すなど、さまざまなケースに対応できるようになり、作業効率もアップしています。
特に、離れた場所で作業を行うテレワークでは、家庭での故障など思いがけず個々のパソコントラブルが起こることも多いため、データ共有はデータの破損・消失などのリスク回避にも役立ちます。

NAS活用におけるセキュリティ対策

オフィスの外からもアクセスができるのがNASの大きなメリット。
しかしその反面、第三者からの不正アクセスや情報漏洩などのリスクがあるのではないかと、不安に思う方もいるかもしれません。

外部からNASへのアクセスは、DDNS(Dynamic Domain Name System、ダイナミックDNS)という仕組みを利用して実現していますが、不正アクセスなどに備えてNASのメーカーが推奨するセキュリティ対策(ネットワークアクセス保護およびシステム接続ログの有効化、異常検知メールの設定、暗号化通信による接続など)を実施しています。

その上で、利用にあたっては事前に各従業員がユーザー名とパスワードを登録。
使用時に入力することでアクセスすることができるため、基本的に登録していない人はアクセスすることができません。
また、NASの内部につくったフォルダも、読み取り専用やアクセス拒否などの「権限の編集」を行って、それぞれにセキュリティを設定できます。
データの重要度や使用する人に応じて使い分けるなど、正しい使い方をすれば、安全に運用が可能です。

また、パソコンやスマートフォンなど、端末からのアクセス方法の詳細については、下記の記事を参考にしてください。

“ファイル共有&クラウド連携機能付きNASを使ってみる”
https://www.pc-koubou.jp/magazine/15978

DDNSを介して、オフィスや自宅からデータ共有用のNASへアクセスDDNSを介して、オフィスや自宅からデータ共有用のNASへアクセス

個々のパソコンに対するセキュリティ対策

たとえNASのセキュリティを万全にしても、それぞれの従業員が持つパソコンのセキュリティ対策がされていなければ、ウイルスの侵入を許してパソコンが乗っ取られたり、パスワードやデータが漏洩するなどの危険があります。
NASにアクセスするパソコンは、必ずすべてにセキュリティソフトを入れておきましょう。

今回、NASを導入したデザイン制作会社ではもともとWeb制作等でお客様や自社のサーバーにアクセスする必要があるマシンだけにセキュリティ対策ソフトを導入していましたが、NASの導入時にすべてのパソコンにインストールしたとのことです。

また、セキュリティソフトの導入だけでなく、パソコン自体に設定するパスワードを含めた社内でのデータ管理方法についても、社内で方法を共有し、全員が同じレベルでの対策を取るようにしているそうです。

先行事例を参考にテレワークの導入・定着を

テレワークは、新型コロナウイルスの感染防止策として広まりましたが、新たに導入した企業では「テレワークを続けたい」と希望する従業員の声も多く聞かれ、コロナ禍の応急処置にとどまらず、ニューノーマル時代の新しい働き方の1つとして、さらに普及していくと予想されます。

テレワークを導入する際は、もちろん最初から万全の体制を整えられるのが理想ですが、今回の事例を見ても分かるように、始めからスムーズに運用するのは、どの企業もなかなか難しいのが現実です。
まずはとにかくチャレンジしてみて、出てきた課題を1つずつクリアするトライ&エラーで、より職場のワークスタイルに適した方法を探していくのがおすすめです。
その際には、今回紹介したような他企業の成功事例や取り入れた工夫などを、ぜひ参考にしてみてください。

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG [ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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