

新しい「Zen2」アーキテクチャの採用で一新された第3世代AMD Ryzenプロセッサーも、第1弾のRyzen 9 3900X・Ryzen 7 3800X・Ryzen 5 3600Xなどがリリースされたのち、最上位のRyzen 9 3950Xが追加され、今年に入ってからは廉価モデルとしてRyzen 5 3500やRyzen 3 3100などが追加されました。
そして今度はRyzen 9 3900X・Ryzen 7 3800X・Ryzen 5 3600Xが強化されて「AMD Ryzen 3000XTプロセッサー」として登場しました。今回はこの強化された「XT」型番を持つ第3世代AMD Ryzenプロセッサー「Ryzen 9 3900XT・Ryzen 7 3800XT・Ryzen 5 3600XT」を各種ベンチマークで試してみました。
強化された第3世代AMD Ryzen 3000XTプロセッサー
第3世代AMD Ryzen プロセッサーの特徴についてはこちらの記事を参照頂くとして、今回発表されたRyzen 9 3900XT・Ryzen 7 3800XT・Ryzen 5 3600XTは、簡単に言えば元となったRyzen 9 3900X・Ryzen 7 3800X・Ryzen 5 3600Xの最大動作クロックを向上させたモデルです。
Zen2アーキテクチャの最適化が進み、細かな部分ではCPUのブーストアルゴリズムが最適化されており、クロックアップ時のパフォーマンスがさらに向上するように調整されています。
なお、今回発表されたRyzen 3000XTプロセッサー は、第3世代AMD Ryzenシリーズ対応のマザーボードであれば、新たにマザーボードの変更などは必要なく、そのまま使用することが可能となっています。
スペックで比較する第3世代AMD Ryzen XT、第3世代AMD Ryzen X CPU
Ryzen 9 3900XT | Ryzen 9 3900X | Ryzen 7 3800XT | Ryzen 7 3800X | Ryzen 5 3600XT | Ryzen 5 3600X | ||
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製造プロセス | 7nm | ||||||
コア/スレッド | 12/24 | 12/24 | 8/16 | 8/16 | 6/12 | 6/12 | |
動作クロック | 3.8GHz | 3.8GHz | 3.9GHz | 3.9GHz | 3.8GHz | 3.8GHz | |
最大ブースト・クロック | 4.7GHz | 4.6GHz | 4.7GHz | 4.5GHz | 4.5GHz | 4.4GHz | |
キャッシュ(L3) | 64MB | 64MB | 32MB | 32MB | 32MB | 32MB | |
PCI-Express | Gen | 4.0 | |||||
レーン数 | 16 | ||||||
メモリ | 対応メモリ | DDR4-3200 / 2933 / 2667 / 2400 / 2133 | |||||
最大容量 | 128GB※1 | ||||||
TDP | 105W | 95W | |||||
GPU | 搭載なし | ||||||
64bitコード | AMD 64 | ||||||
SIMD命令 | SSE | SSE4.1/4.2 | |||||
AVX | AVX2 | ||||||
仮想化 | AMD-V | ○ | |||||
セキュリティ機能 | NX ビット | ○ | |||||
AES | ○ | ||||||
対応ソケット | AM4 | ||||||
対応チップセット | AMD X570・B550・X470・B450・X370・B350 |
第3世代AMD Ryzen XT、第3世代AMD Ryzen X CPUスペック比較表 ※1.X570・B550チップセット搭載時の最大容量です
それでは、第3世代AMD Ryzenプロセッサーでベンチマークテストを実行していきましょう。ベンチマークで使用したのは、Ryzen 9 3900XT、Ryzen 7 3800XT、Ryzen 5 3600XTの3種類です。
比較対象としては、Ryzen 9 3900X、Ryzen 7 3800X、Ryzen 5 3600Xと、それぞれのライバルとなるCore i9-10900K(10コア/20スレッド)、Core i7-10700K(8コア/16スレッド)、Core i5-10600K(6コア/12スレッド)を用意しました。
ベンチマークテスト
Passmark PerformanceTest
まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassmarkの『CPU Benchmarks』を用いて、CPUの総合的な演算性能を見てみましょう。
第3世代AMD Ryzen 3000XT プロセッサーをPassmark PerformanceTest ~CPU Mark~でベンチ比較
第3世代AMD Ryzenプロセッサーが圧倒しています。Ryzen 9 3900XT・Ryzen 7 3800XT・Ryzen 5 3600XTプロセッサーはクロックが上昇した分スコアが上昇しており、順当に性能を伸ばしていると言えそうです。Ryzen 7 3800XTがCore i9-10900Kを、Ryzen 5 3600XTがCore i7-10700Kをも上回っており、第3世代Ryzenシリーズの演算能力の高さに一段と磨きがかかっています 。
さて、Ryzen 3000XTプロセッサーの売りである「CPUのブーストアルゴリズムが最適化されており、クロックアップ時のパフォーマンスがさらに向上する」という点を確認するもっとも簡単な方法は、シングルスレッド時のパフォーマンスを見る事ですので、CPU Mark内のテスト項目の一つであるシングルスレッドの結果を見てみましょう。
第3世代AMD Ryzen 3000XT プロセッサーをPassmark PerformanceTest ~シングルスレッド~ でベンチ比較
一目瞭然に、Ryzen 3000XTプロセッサーのシングルスレッド性能が大きく向上していることが確認できます。「X」型番との比較で、Ryzen 7 3800XTとRyzen 5 3600XTでおおよそ5%、Ryzen 9 3900XTでは9%も向上しています。
各モデルともクロック上昇分以上にスコアが向上しており、「クロックアップ時のパフォーマンスがさらに向上する」という売り文句に間違いはなさそうです。
3D Mark CPU test
次いで、3D Mark「Fire Strike / Physics Score」と「Time Spy / CPU Score」を用いて、CPUの演算性能を見ていきます。「Fire Strike / Physics Score」「Time Spy / CPU Score」共に、CPUに物理演算をさせてその処理速度を数値化したもので、CGレンダリングや動画のエンコードと同じくCPUのコア・スレッド数の多さが有利に働くテストです。
テストに用いたのは、ともに4K解像度(3840x2160)のFire Strike UltraとTime Spy Extremeです。
第3世代AMD Ryzen 3000XT プロセッサーを3D Mark CPU testでベンチ比較
Fire Strikeにおいても、Ryzen 9 3900XT・Ryzen 7 3800XT・Ryzen 5 3600XTプロセッサーはクロックが上昇した分だけスコアが増加しています。
また、Ryzen 9 3900XTはCore i9-10900Kと、Ryzen 7 3800XTはCore i7-10700Kと、Ryzen 5 3600XTはCore i5-10600Kと拮抗したスコアとなっており、大幅にコア数/スレッド数を大きく増加してきたライバルと互角の戦いを繰り広げています。
続いて「3D Mark Time Spy」のCPU Scoreを見てみましょう。
第3世代AMD Ryzen 3000XT プロセッサーを3D Mark Time Spyでベンチ比較
Time Spyにおいても、Ryzen 9 3900XT・Ryzen 7 3800XT・Ryzen 5 3600XTプロセッサーはクロックが上昇した分だけスコアが増加していますが、「Fire Strike / Physics Score」とはやや趣の異なる結果となりました。Ryzen 9 3900XTこそCore i9-10900Kをやや上回るものの、Ryzen 7 3800XTやRyzen 5 3600XTはライバルに引き離された格好となっています。
「Time Spy / CPU Score」はDirectX 12ベースのベンチマークテストのためCPU内蔵GPUも演算処理に機能するので、GPUを内蔵するライバルのCoreシリーズには分が良かったのではないかと思われます。
TMPGEnc Mastering Works 6
最後に、動画編集ソフトのTMPGEnc Mastering Works 6を用いて、QuickTimeファイル(3840x2160/2分50秒)をh.265に変換するのに要した時間(単位:秒)を測定しました。グラフの短い方がより高速に処理を行っている事になります。
第3世代AMD Ryzen 3000XT プロセッサーをTMPGEncでベンチ比較
従来はライバルのCoreシリーズに一歩も二歩も譲っていたベンチマークですが、Ryzen 9 3900XTがCore i9-10900Kと肩を並べており、Ryzen 7 3800XTとRyzen 5 3600XTもスレッド数を倍増させたCore i7-10700KとCore i5-10600Kに食らいついています。
第3世代RyzenでAVX処理が256bit化された事が見事に反映された結果と言えるでしょう。録画した配信動画を編集する際などでは第3世代Ryzenのコストパフォーマンスの良さが光るでしょう。
順当に性能向上した第3世代AMD Ryzenプロセッサー
第3世代AMD Ryzenプロセッサーは、強かった部分に更なる磨きをかけ、弱点とされていた部分を見事に穴埋めしたことで、どこをとってもパフォーマンスの高いCPUとなっていました。
今回登場したRyzen 9 3900XT、Ryzen 7 3800XT、Ryzen 5 3600XTは、最大クロックを引き上げただけのモデルと言えなくもないですが、もとよりパフォーマンスの高かったCPUが、さらなるパフォーマンス向上を果たしていることは素直に喜ばしいことと言えるでしょう。
特にRyzen 3000XTプロセッサーの売りで有る「クロックアップ時のパフォーマンスがさらに向上する」という点で、シングルスレッド性能が大幅に向上している点には注目すべきでしょう。
マルチスレッド対応が進んでいるとはいえ、未だにシングルスレッド性能が重要なゲームタイトルやアプリケーションが数多く存在しており、これらのゲームタイトルやアプリケーションにおいては大きな恩恵を受けることができるでしょう。
もちろん、これからどんどんと登場して来るであろうPCI Express Gen4.0対応のグラフィックスカードやNVMe SSDを搭載する、そんな将来を見越しての基盤としても良し。もちろん、CPU自体のパフォーマンスを見込んで、CPUだけを換装するのも良いでしょう。
この機会に最適化が進んだZen2アーキテクチャを使用した第3世代AMD Ryzenプロセッサーを是非お試しいただければと思います。
CPU | Ryzen 9 3900XT Ryzen 7 3800XT Ryzen 5 3600XT |
Ryzen 9 3900X Ryzen 7 3800X Ryzen 5 3600X |
Core i9-10900K Core i7-10700K Core i5-10600K |
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マザーボード | ASUS PRIME X570-PRO |
ASUS PRIME Z490-A |
|
メインメモリ | DDR4-2666 16GB (8GB x2) | ||
グラフィックス | ZOTAC GeForce RTX 2080 SUPER (ビデオメモリ 8GB) | ||
ストレージ | WesternDigital WDS500G2X0C (WD Black NVMe 500GB) | ||
電源 | Seasonic SSR-850FX (80PLUS Gold、850W) | ||
OS | Windows 10 Home 64bit (バージョン:1909) | ||
ビデオドライバ | GeForce Game Ready Driver 446.14 |
テスト構成

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。