デスクトップ用の第10世代インテルCoreプロセッサーが2020年5月20日に発売されました。モバイル用では先んじて登場済みだった第10世代インテルCoreプロセッサーですが、満を持してデスクトップ用の登場となります。
最上位の第10世代インテルCore i9シリーズ・プロセッサーでは、インテルのメインストリーム向けCPUとしては初めて10コア/20スレッドを搭載し、さらにCore i9、Core i7、Core i5、Core i3はすべてHyper Threadingに対応するなど、コア数やスレッド数が全体的に増加し、ネーミングに対してスペックがわかりやすいラインナップとなっています。
今回はコア数やスレッド数が大幅に強化された第10世代インテルCoreプロセッサーからオーバークロックに対応する「K」つきシリーズとなるCore i9-10900K、Core i7-10700K、Core i5-10600Kについて各種ベンチマークで試してみました。
※レビュワーズ用キットを使用してのレビューとなります。パッケージ画像はキットのものとなり、製品版と異なります。また、CPUの刻印等も製品版と異なる部分がある可能性がありますため予めご了承ください。
14nmプロセスの集大成ともいえる第10世代インテル Coreプロセッサー
第10世代インテル Coreプロセッサーの主な特徴
第10世代インテル Coreプロセッサーはライバル製品のようにプロセスルールが縮小されることはなく、世代的には第5世代から14nmプロセスが続いています。とはいえプロセス技術の習熟と蓄積により、第5世代ではハイエンドでも4コア/8スレッドだったものが第10世代では10コア/20スレッドに、最大動作クロックも第5世代の3.7GHzから5.3GHzへと、大きく進化していることが確認できます。
第10世代インテル Coreプロセッサーの主な特徴としては、
・インテル製コンシューマー向けCPUとしては初の10コア/20スレッドに対応
・Core i9シリーズからCore i3シリーズまでHyperThreadingに対応
・Core i7シリーズ以上では、Core Xシリーズにのみ提供されていたIntel Turbo Boost Max 3.0に対応
・Core i9シリーズでは、モバイル用プロセッサーに搭載されていたThermal Velocity Boostにも対応し、さらなる動作クロックの向上が可能
・メインメモリとしてDDR4-2933メモリに対応(Core i7シリーズ以上)
・新たなCPUソケットとして、LGA1200を採用
・対応チップセットとして最新のインテル400シリーズが登場
などが挙げられます。
以上のように、第10世代インテル Coreプロセッサーは14nmプロセスの集大成ともいうべきCPUとなっています。
写真で比較する第10世代CPUと第9世代CPU
写真を見るとわかる通り、CPU全体の大きさは従来と同じままとなっていますが切り欠きの位置が従来とは異なっており、CPUソケットがLGA1200に変更となったCore i9-10900KはLGA1151のCore i9-9900Kよりも接点ポイントが増加しています。
新しい第10世代インテルCoreプロセッサーを、LGA1151ソケットに入れようとすると破損する可能性がありますため、対応するマザーボードやソケットには十分ご確認の上、装着してください。
なお、コア数の増加にともない、Z490チップセットマザーボードでは、CPU電源供給コネクタが従来の8Pinのみの構成から、8Pin + 4Pinへと増加していますので、電源のケーブル本数にご注意ください。
レビュワーズキットは以下のような箱に収められていました。「GAMING HAPPENS WITH INTEL」と記載されており、ゲームプレイの快適さへの自信がうかがえます。
スペックで比較する第10世代CPUと第9世代CPU
モデル | Core i9-10900K | Core i7-10700K | Core i5-10600K | Core i9-9900K | Core i7-9700K | Core i5-9600K | Core i9-10920X | Core i9-10900X | |
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コードネーム | Comet Lake | Coffee Lake-R | Cascade Lake-X | ||||||
製造プロセス | 14nm | ||||||||
コア/スレッド | 10/20 | 8/16 | 6/12 | 8/16 | 8/8 | 6/6 | 12/24 | 10/20 | |
動作クロック | 3.7GHz | 3.8GHz | 4.1GHz | 3.6GHz | 3.6GHz | 3.7GHz | 3.5GHz | 3.7GHz | |
TurboBoost | 5.1GHz | 5.0GHz | 4.8GHz | 5.0GHz | 4.9GHz | 4.6GHz | 4.6GHz | 4.5GHz | |
TurboBoostMax3.0 | 5.2GHz | 5.1GHz | – | – | – | – | 4.8GHz | 4.7GHz | |
Themal Velocity Boost | 5.3GHz | – | – | – | – | – | – | – | |
キャッシュ | 20MB | 16MB | 12MB | 16MB | 12MB | 9MB | 19.25MB | 19.25MB | |
PCI-Express | Gen | 3.0 | |||||||
レーン数 | 16 | 48 | |||||||
メモリ | 対応メモリ | DDR4-2933 | DDR4-2666 | DDR4-2933 | |||||
最大容量 | 128GB | 256GB | |||||||
TDP | 125W | 95W | 165W | ||||||
GPU | Intel UHD Graphics630 | × | |||||||
64bitコード | intel64 | ||||||||
SIMD命令 | SSE | SSE4.1/4.2 | |||||||
AVX | AVX2.0 | AVX-512/AVX2.0 | |||||||
仮想化 | VT-x | 〇 | |||||||
VT-d | 〇 | ||||||||
セキュリティ機能 | XD ビット | 〇 | |||||||
TXT | 〇 | × | |||||||
AES | 〇 | ||||||||
vPro | 〇 | × | |||||||
対応ソケット | LGA1200 | LGA1151 | LGA2066 | ||||||
対応チップセット | インテル 400 シリーズ | インテル 300 シリーズ | インテル X299 |
スペック表を見る通り、コア数、スレッド数の向上と動作クロックの向上が入っている点がまず見逃せません。さらに、Core i9やCore i7などで追加されたThermal Velocity BoostやTurbo Boost Max3.0などの機能がどの程度ベンチマークに影響するのかが興味深いところです。
それでは、第10世代インテル Coreプロセッサーでベンチマークテストを実行していきましょう。ベンチマークで使用したのは、Core i9-10900K、Core i7-10700K、Core i5-10600Kの3種類です。比較対象としては、第9世代インテルCoreプロセッサーのCore i9-9900K、Core i7-9700K、Core i5-9600Kを用意しました。Core Xからは10コア/20スレッドとなるCore i9-10900Xと12コア/24スレッドとなるCore i9-10920Xも用意しました。
なお、ベンチマークを行うにあたり、CPUの純粋な性能比較のため、メモリは全てDDR4-2666で統一して測定を行っております。対応しているCPUについてはDDR4-2933などより高速なメモリを搭載することで、ベンチマーク結果のさらなる向上が見込めます。
また、検証時の構成については記事最後尾に記載しております。
第10世代インテル Coreプロセッサーベンチマークテスト
Passmark PerformanceTest
まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassmarkの『CPU Benchmarks』を用いて、CPUの総合的な演算性能を見てみましょう。
ものの見事にCPUのグレード順、コア数順に並びました。Core i9-10900KとCore i9-10900Xを比べるとCore i9-10900Xが多少なりとも上回っていますが、メモリ帯域幅が広いCore i9-10900X(4チャンネル動作)がCore i9-10900K(2チャンネル動作)よりも優位な環境だったのかもしれません。Core i7-10700KとCore i9-9900KではCore i7-10700Kがわずかに上回っており、Core i7-10700Kの新機能であるTurbo Boost Max3.0による動作クロックの向上が機能したのではないかと思われます。
3D Mark CPU test
次いで、3D Mark「Fire Strike / Physics Score」と「Time Spy / CPU Score」を用いて、CPUの演算性能を見ていきます。「Fire Strike / Physics Score」「Time Spy / CPU Score」共に、CPUに物理演算をさせてその処理速度を数値化したもので、CGレンダリングや動画のエンコードと同じくCPUのコア・スレッド数の多さが有利に働くテストです。
Core i9-10900Kがコア数/スレッド数で上回るCore i9-10920Xを抑えてトップに立っています。また、Core i7-10700KがCore i9-10900Xに並びかけるなど、すべてのコアに負荷がかかる場合の動作クロックの高さの差が影響しているようです。クロック数がほぼ同じなCore i5-10600KとCore i7-9700Kでは、スレッド数の多いCore i5-10600Kが優勢となっています。
Time Spyにおいても、Fire Strike と同様の傾向が表れています。Core i9-10900KがCore i9-10920Xを上回り、Core i7-10700KがCore i9-10900Xに並びかけています。Core i5-10600KとCore i7-9700Kでは、Time Spyでは実コア数の多さが優位に働くようで、Time Spyとは異なりCore i7-9700KがCore i5-10600Kを上回りました。
TMPGEnc Mastering Works 6
続いて、動画編集ソフトのTMPGEnc Mastering Works 6を用いて、QuickTimeファイル(3840x2160/2分50秒)をh.265に変換するのに要した時間(単位:秒)を測定しました。グラフの短い方がより高速に処理を行っている事になります。
全体的な順位感としては、3D Mark のTime Spyに近い形となっていて、Core i9-10900KがCore i9-10920Xを上回り、Core i7-10700KとCore i9-10900Xが並んでいます。Core i7-10700KとCore i9-9900Kでは、Core i7-10700KがCore i9-9900Kをやや突き放しており、Passmark同様にCore i7-10700KのTurbo Boost Max3.0が有効に機能したものと思われます。
PCMark 10
最後に、PCのパフォーマンスを総合的に判断できるPCMark 10を見ていきましょう。
一般的なPCの日常的作業の性能を表した「PCMark 10」は、プロシューマー向けであるCore Xシリーズには負荷が軽すぎるテストが多く、不向きなベンチマーク内容です。Core Xを除けばPassmark同様にほぼコア数や動作クロック数順となっています。Core i9-10900KとCore i5-10600Kの差も10%以内と今までで一番小さくなっており、一般的なPCの日常的作業であればCore i5-10600Kでも十分な性能を有していると言えそうです。
第10世代インテル Coreプロセッサーは1ランク上の性能をもつプロセッサー
ベンチマーク結果から第10世代インテルCoreプロセッサーは、Core i9からCore i3までHyperThreadingに対応したことで、Core i5-10600Kは、Core i7-9700Kに追いつき、Core i7-10700KはCore i9-9900Kに追いついていることが確認できました。1ランク下のクラスのCPUで、前世代までの1ランク上のクラスの性能を手に出来てしまうという事なのです。
さらに、PassmarkでのCPU演算性能ではコア数/スレッド数やメモリ帯域で優位に立つCore Xプロセッサーに譲るものの、それ以外のベンチマーク結果ではCore i9-10900KがCore i9-10920Xを上回っています。動作クロックの向上はもちろんのこと、これらが全コアに負荷がかかっているような状況でも可能な限りクロックを向上させる動きを取るため、扱いやすさが向上しています。また、このような挙動をするため、十分な冷却力を持たせることや、電力供給もしっかり行うなど、パーツ選びの結果がしっかりと性能に反映されるようになります。
細かな技術の積み重ねという点でも、インテルが14nmプロセスで積み上げてきた技術の集大成ともいうべき第10世代Coreプロセッサーの登場を歓迎したいと思います。
第10世代Core | 第9世代Core | Core X | |
---|---|---|---|
CPU | Core i9-10900K Core i7-10700K Core i5-10600K |
Core i9-9900K Core i7-9700K Core i5-9600K |
Core i9-10920X Core i9-10900X |
マザーボード | MSI Z490-S01 |
ASUS PRIME Z390-A |
ASUS PRIME X299A-II |
メインメモリ | DDR4-2666 16GB (8GBx2) | DDR4-2666 32GB(8GB x4) |
|
ビデオカード | ZOTAC GeForce RTX 2080 SUPER (ビデオメモリ 8GB) | ||
ストレージ | WesternDigital WDS500G2X0C (WD Black NVMe 500GB) | ||
電源 | Seasonic SSR-850FX (80PLUS Gold、850W) | ||
OS | Windows 10 Home 64bit (バージョン:1909) | ||
ビデオドライバ | GeForce Game Ready Driver 442.74 |
※ベンチマークの値はお使いのハードウェア、ソフトウェアの環境により変動し、同様の構成下でも当ページ掲載の数値と大きく異なる場合があります。予めご了承ください。
Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。