AMD 第3世代Ryzen「Ryzen 9 3950X」を搭載したBTOパソコンや単品パーツの発売が開始されました。 新しい「Zen2」コアの採用で一新された第3世代Ryzenにおいて、2019年6月に発表されてから、ようやく登場した最上位となる第3世代Ryzen「Ryzen 9 3950X」について各種ベンチマークで試してみましたので、ぜひご覧ください!
Ryzen 9 3950Xとは
AMDの第3世代Ryzenの中でも最高スペックを誇るRyzen 9 3950X。
既に登場している第3世代Ryzenシリーズは市場でも非常に好評な製品で、Ryzen 9 3900Xは売り切れ続出で入手困難になる程の人気でした。
今回さらに上位モデルとなるRyzen 9 3950Xの登場は、市場でも大いに注目される事が想定されるCPUです。
第3世代Ryzen最上位モデルの「Ryzen 9 3950X」スペック比較
第3世代Ryzenの大トリとして登場したRyzen 9 3950Xは、第3世代Ryzenの最上位モデルです。同じRyzen 9 シリーズのRyzen 9 3900Xからコア数/スレッド数を増加させ16コア32スレッドとなったトップクラスの第3世代Ryzenとなります。
従来はThreadripperシリーズに属していたスーパーハイエンドモデルが、7nmプロセスルールの採用によってダイサイズの縮小と省電力化がなされたことで、デスクトップ向けハイエンドモデルとして登場してきたと言って良いCPUです。もちろんZen2アーキテクチャの利点はそのまま受け継いでいるので、高いマルチスレッド性能には自ずと期待値が高まります。きっとゲーミングやクリエイティブな作業において大きな力を発揮してくれる事でしょう。
今回のRyzen 9 3950Xですが、CPUクーラーが標準では付属しない点に注意が必要です。それならば、Ryzen 9 3950X の高性能を活かすためにも、冷却性能に優れたCPUクーラーを選択したいところです。Ryzen 9 3950X は、TDPが105Wとなるため、空冷・水冷によらず大型ヒートシンクを採用したSocket AM4対応の高性能クーラーを選択する事をお勧めします。
第3世代Ryzen登場時に、Ryzen 9 3950Xのスペックについても公開されましたが、再度第3世代Ryzenとのスペックを比較してみましょう。
Ryzen 9 3950X | Ryzen 9 3900X | Ryzen 7 3800X | Ryzen 7 3700X | Ryzen 5 3600X | Ryzen 5 3600 | ||
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製造プロセス | 7nm | ||||||
コア/スレッド | 16/32 | 12/24 | 8/16 | 8/16 | 6/12 | 6/12 | |
動作クロック | 3.5GHz | 3.8GHz | 3.9GHz | 3.6GHz | 3.8GHz | 3.6GHz | |
TurboCore | 4.7GHz | 4.6GHz | 4.5GHz | 4.4GHz | 4.4GHz | 4.2GHz | |
キャッシュ(L3) | 64MB | 64MB | 32MB | 32MB | 32MB | 32MB | |
PCI-Express | Gen | 4.0 | |||||
レーン数 | 24 | ||||||
メモリ | 対応メモリ | DDR4-3200 / 2933 / 2667 / 2400 / 2133 | |||||
最大容量 | 128GB※1 | ||||||
TDP | 105W | 65W | 95W | 65W | |||
GPU | 搭載なし | ||||||
64bitコード | AMD 64 | ||||||
SIMD命令 | SSE | SSE4.1/4.2 | |||||
AVX | AVX2 | ||||||
仮想化 | AMD-V | 〇 | |||||
セキュリティ機能 | NX ビット | 〇 | |||||
AES | 〇 | ||||||
対応ソケット | AM4 | ||||||
対応チップセット | AMD X570・X470・B450・X370・B350 |
第3世代AMD Ryzenプロセッサーのスペック比較
※1. X570チップセット搭載時の最大容量です。
スペック表を見ての通り、Ryzen 9 3950Xはスペック的に言えばRyzen 7を2つ束ねて1パッケージ化した仕様となっています。それだけコア数が増えるとなると消費電力も上がり、コア数が増加するに伴い動作クロックは下がるのが従来からのパターンですが、Ryzen 9 3950XはRyzen 7 3800Xと同じTDPを維持しているだけでなく、TurboCoreでは Ryzen 7 3800Xをも上回っている事に恐れ入ります。
それでは、第3世代Ryzenでベンチマークテストを実行していきましょう。比較対象としては、同じコア数/スレッド数(16コア/32スレッド)となるCore i9-9960X、Ryzen Threadripper 2950Xと、各々の最上位モデルとなるCore i9-9980XE(18コア/36スレッド)、Core i9-9900KS(8コア/16スレッド)を用意しました。
ベンチマークテスト
Passmark PerformanceTest
まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassmarkの『CPU Benchmarks』を用いて、CPUの総合的な演算性能を見てみましょう。
Ryzen 9 3950Xが同じ16コア/32スレッドのCore i9-9960X、Ryzen Threadripper 2950Xだけでなく、コア数/スレッド数で上回るCore i9-9980XEをも超える結果となりました。好スコアを記録していた第3世代Ryzenシリーズの最上位モデルに相応しい結果と言えそうです。
3D Mark
次に、3D Mark「Fire Strike / Physics Score」と「Time Spy / CPU Score」を用いて、CPUの演算性能を見ていきます。「Fire Strike / Physics Score」「Time Spy / CPU Score」共に、CPUに物理演算をさせてその処理速度を数値化したもので、CGレンダリングや動画のエンコードと同じくCPUのコア・スレッド数の多さが有利に働くテストです。
「Fire Strike / Physics Score」と「Time Spy / CPU Score」ともにRyzen 9 3950Xがトップとなっています。注目したいのは、「Fire Strike / Physics Score」と「Time Spy / CPU Score」ではCPUの順位が異なっていて、Ryzen 9 3900X とCore i9-9900KSがTime SpyではCore Xシリーズを上回ってきますが、Ryzen 9 3950XはFire StrikeでもCore Xシリーズを上回っている点です。Ryzen 9 3950Xはゲーミング用途で文句なしに大きな戦力となってくれるでしょう。
PCMark 10
続いて、PCのパフォーマンスを総合的に判断できるPCMark 10を見ていきましょう
CPU以外の動作条件が同じためCPU単独のベンチマークほど極端な差は有りませんが、Ryzen 9 3950XがRyzen 9 3900XとCore i9-9900KSの猛追をかわして僅差ながらもトップになっています。Ryzen 9 3950XとX570チップセットの組み合わせは、PCの総合的なパフォーマンスにおいても優れていると言ってよさそうです。
TMPGEnc Mastering Works 6
最後に、動画編集ソフトのTMPGEnc Mastering Works 6を用いて、QuickTimeファイル(3840x2160/2分50秒)をh.265に変換するのに要した時間(単位:秒)を測定しました。グラフの短い方がより高速に処理を行っている事になります。
Ryzen 9 3950XがCore Xシリーズにおおよそ50秒、割合にして12%もの差をつけてトップになりました。TMPGEnc Mastering Works 6でh.265のエンコード処理はAVX/SIMD処理に優れていたIntel製CPUが強かったのですが、既出の第3世代Ryzenシリーズでその差が縮まり、ついにRyzen 9 3950XでIntel製CPUを追い抜いきました。Ryzen 9 3950Xはクリエイティブ用途にも優れたCPUと言えそうです。
Ryzen 9 3950Xは現時点でトップクラスのコンシューマー向けCPU
Ryzen 9 3950Xは、第3世代Ryzenシリーズの利点を更に強化したCPUと言えるでしょう。今回は環境を揃えるためPCI Express Gen4.0対応のグラフィックスカードやNVMe SSD、DDR4-3200メモリなどは使用しませんでしたが、それでもインテルの最上位クラスのCPU Core i9-9980XEや、Core i9-9900KSをも上回る結果を示しました。もし、DDR4-3200メモリやPCI-Express Gen4.0対応のハイパフォーマンスデバイスを搭載すれば、更なる性能の飛躍は容易に想像されます。
ベンチマークの結果から、Ryzen 9 3950Xが、ゲーミング用途にもクリエイティブ用途にも優れたパフォーマンスを示している通り、Ryzen 9 3950X が非常に優秀なCPUである事に疑う余地は無く、X570チップセットやPCI-Express Gen4.0という足回りの環境も含めて、現時点でトップクラスのコンシューマー向けCPUと言えるでしょう。
CPU | Ryzen 9 3950X Ryzen 9 3900X |
Core i9-9980XE Core i9-9960X |
Ryzen Threadripper 2950X | Core i9-9900KS |
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マザーボード | ASUS PRIME X570-PRO |
ASUS PRIME X299-A |
MSI X399 GAMING PRO CARBON AC |
ASUS PRIME Z390-A |
メインメモリ | DDR4-2666 32GB (8GBx4) | |||
グラフィックス | GeForce GTX 1080 Founders Edition (ビデオメモリ 8GB) | |||
ストレージ | Intel 760p SSDPEKKW512G8XT(512GB M.2 NVMe) | |||
電源 | Seasonic SSR-850FX (80PLUS Gold、850W) | |||
OS | Windows 10 Home 64bit (バージョン:1903) | |||
ビデオドライバ | GeForce Game Ready Driver Ver441.08 |
Ryzen 9 3950Xのテストに使用した環境
※掲載のベンチマークは当社検証時のものです。OS、ドライバーのバージョン、その他の要因により同じ構成であってもベンチマーク値は変動いたします。あらかじめご了承ください。
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Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。