【11/5更新】ベンチマーク記事を追加いたしました。
AMD Ryzen 5000 シリーズプロセッサーは、前世代のRyzen 3000 シリーズと同じ7nmプロセスを採用しながら、CPUコアの改良や内部構造の変更によって更なるパフォーマンス向上を果たしています。今回はこのAMD Ryzen 5000 シリーズプロセッサーを、各種のベンチマークテストで試してみました。
Ryzen 9 5950X プロセッサー 11月6日より発売
11月6日(金)19時より、Ryzen 9 5950X、Ryzen 9 5900X、Ryzen 7 5800X、Ryzen 5 5600Xの単品パーツ・BTOパソコンの発売を開始いたしました。
「Zen 3」アーキテクチャーを採用したAMD Ryzen 5000 シリーズプロセッサー
AMD Ryzen 5000 シリーズプロセッサーの特徴についてはこちらの記事を参照頂くとして、今回発売されたRyzen 5000 シリーズプロセッサーは、Zen3アーキテクチャーとなり、CPUコアの改良によるIPCの向上、CPU内部構造の変更によるL3キャッシュメモリへの直接アクセス容量の倍増およびレイテンシーの低減など、これらの改良によってゲーミング性能やクリエイティブ性能などが向上しています。
なお、Ryzen 5000 シリーズプロセッサーに未対応なBIOSバージョンのASUS製TUF GAMING X570-PLUS (BIOSバージョン:0804) にRyzen 9 5950X を搭載したところ起動しませんでした。もちろん、対応BIOSバージョン(2607)に更新してからRyzen 9 5950Xを搭載すれば起動します。このように、マザーボードによっては事前にRyzen 5000 シリーズ対応BIOSへの更新が必要となる可能性がありますので、ご注意ください。
Ryzen 9 5950Xとは
AMD Ryzen 5000シリーズ デスクトップ・プロセッサーで最上位の16コアを搭載し、同シリーズで最高のシングルスレッド性能を持ちます。
Ryzen 9 5950Xは、Zen 3 アーキテクチャーを採用したCPUです。Zen2 世代と比較してIPCを19%向上することで、ゲームやコンテンツ制作のパフォーマンスを引き上げています。
高速化されたコアとキャッシュ通信でレイテンシーを低減し、直接アクセス可能なコアごとのL3キャッシュを2倍に拡大しました。また、ワットあたりのパフォーマンスが向上しました。
Ryzen 9 5950X スペック比較
AMD Ryzen 9 5950X プロセッサーをはじめとした、AMD Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーのスペック比較表を以下まとめました。
Ryzen 9 5950X | Ryzen 9 5900X | Ryzen 7 5800X | Ryzen 5 5600X | ||
---|---|---|---|---|---|
製造プロセス | 7nm | ||||
コア/スレッド | 16/32 | 12/24 | 8/16 | 6/12 | |
動作クロック | 3.4GHz | 3.7GHz | 3.8GHz | 3.7GHz | |
最大ブースト・クロック | 4.9GHz | 4.8GHz | 4.7GHz | 4.6GHz | |
キャッシュメモリ | L2 | 8MB | 6MB | 4MB | 3MB |
L3 | 64MB | 32MB | |||
PCI-Express | Gen | 4.0 | |||
レーン数 | 16 | ||||
メモリ | 対応メモリ | DDR4-3200 | |||
最大容量 | 128GB ※X570・B550チップセット搭載時の最大容量です | ||||
TDP | 105W | 65W | |||
GPU | 搭載なし | ||||
64bitコード | AMD 64 | ||||
SIMD命令 | SSE | SSE4.1/4.2 | |||
AVX | AVX2 | ||||
仮想化 | AMD-V | 〇 | |||
セキュリティ機能 | NX ビット | 〇 | |||
AES | 〇 | ||||
対応ソケット | AM4 | ||||
対応チップセット | AMD X570・B550・X470・B450 |
Ryzen 9 5950X プロセッサー ベンチマーク情報
それではAMD Ryzen 5000シリーズプロセッサーでベンチマークテストを実行していきましょう。今回はCPUのみの性能を見るCPU編と、向上したとされるゲーミング性能を見る3Dベンチマーク編に分けて行っていきます。
なおベンチマークスコアは、発売前に取得したテスト環境での自社測定による参考値です。カスタマイズ内容、使用するデバイスや環境、その他の要因によって測定結果は変動します。
ベンチマークテスト:CPU編
ベンチマークに使用したのは、Ryzen 9 5950X、Ryzen 9 5900X、Ryzen 7 5800X、Ryzen 5 5600Xの4種類です。
比較対象として、Ryzen 3000 シリーズより同じコア数/スレッド数となるRyzen 9 3950X、 Ryzen 9 3900XT、Ryzen 7 3800XT、Ryzen 5 3600XTを用意しました。
なお、今回はすべてメモリにDDR4-3200を搭載してベンチマークデータを取得しております。
過去に公開しておりますベンチマークレビュー記事とのデータ比較される際には、上記点ご承知おきください。
Passmark PerformanceTest
まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassmarkの『PerformanceTest』を用いて、CPUの総合的な演算性能を見てみましょう。
Ryzen 5000 シリーズプロセッサーがRyzen 3000 シリーズプロセッサーを圧倒しました。同じコア数/スレッド数同士で比べると、Ryzen 5000 シリーズプロセッサーの全モデルにおいて、Ryzen 3000 シリーズプロセッサーから10%以上もスコアが向上しています。その結果、Ryzen 5 5600XがRyzen 7 3800XTに肉薄、Ryzen 9 5900Xに至ってはRyzen 9 3950Xをも上回るという逆転現象を起こしています。 Ryzen 5000 シリーズプロセッサーの素性の良さが端的に表れていると見てよさそうです。
さてRyzen 5000 シリーズプロセッサーの売りである「IPCが最大19%向上」という点を確認するもっとも簡単な方法は、シングルスレッド時のパフォーマンスを見る事ですので、CPU Mark内のテスト項目の一つであるシングルスレッドの結果を見てみましょう。
一目瞭然にRyzen 5000 シリーズプロセッサーのシングルスレッド性能がRyzen 3000 シリーズプロセッサーから大きく向上していることが確認できます。Ryzen 5000 シリーズプロセッサーの全モデルにおいてRyzen 3000 シリーズプロセッサーからおおよそ10%前後向上していることが確認できました。
3D Mark のCPU test
次いで、3D Mark「Fire Strike / Physics Score」と「Time Spy / CPU Score」を用いて、CPUの演算性能を見ていきます。「Fire Strike / Physics Score」「Time Spy / CPU Score」共に、CPUに物理演算をさせてその処理速度を数値化したもので、CGレンダリングや動画のエンコードと同じくCPUのコア・スレッド数の多さが有利に働くテストです。テストに用いたのは、ともに4K解像度(3840×2160)のFire Strike UltraとTime Spy Extremeです。
Fire Strikeにおいても、Ryzen 5000 シリーズプロセッサーがRyzen 3000 シリーズプロセッサーを圧倒しました。Ryzen 5000 シリーズプロセッサーの全モデルにおいて、Ryzen 3000 シリーズプロセッサーから20%近くスコアが向上しており、上位グレードのCPUをも上回る上位モデルキラーと化しています。
続いて「3D Mark Time Spy」のCPU Scoreを見てみましょう。
Time Spyにおいても、Ryzen 5000 シリーズプロセッサーの全モデルにおいてRyzen 3000 シリーズプロセッサーからおおよそ10%近く向上しています。Time Spy ではCPUのコア数/スレッド数の多さがより優位に表れるのか、「Fire Strike / Physics Score」とは異なる結果となり、コア数/スレッド数順で見事に階段状に並びました。
TMPGEnc Mastering Works 6
最後に、動画編集ソフトのTMPGEnc Mastering Works 6を用いて、QuickTimeファイル(3840×2160/2分50秒)をh.265に変換するのに要した時間(単位:秒)を測定しました。グラフの短い方がより高速に処理を行っている事になります。
TMPGEnc Mastering Works 6 においても、Ryzen 5000 シリーズプロセッサーの全モデルにおいてRyzen 3000 シリーズプロセッサーから15%以上パフォーマンスが向上しており、多少の凸凹はあるものの3D Mark Time Spyと似た結果となっています。エンコード性能の高さからは、録画した動画を編集する際などには、Ryzen 5000 シリーズプロセッサーのパフォーマンスの良さが実感できそうです。
ベンチマークテスト:3Dベンチマーク編
AMD Ryzen 5000 シリーズプロセッサーでは、ゲーミングパフォーマンスの改善にも強く言及しています。Ryzen 3000 シリーズプロセッサーでは、ゲーミング以外の用途ではインテル製品に勝るものの、ゲーミング性能についてはインテル製品に後れを取る事もありました。そこで、今度は、ゲーミングパフォーマンスが向上したRyzen 5000 シリーズプロセッサーが、ライバルのインテル製品に対してどこまで追いつき、あるいは追い越したのかを確認していきたいと思います。
測定方法としては、グラフィックスカードをGeForce RTX 3090に固定し、Ryzen 9 5950X・Ryzen 9 5900XとCore i9-10900Kの3Dベンチマークでのパフォーマンスを比較していきたいと思います。テスト解像度はフルHD(1920×1080)、WQHD(2560×1440)、4K(3840×2160)のいずれかで行っています。
3D Mark 「Fire Strike」
まずは、DirectX 11 の代表的ベンチマークとして、3D Mark 「Fire Strike」 を見てみましょう。
ベンチマークの解像度が低いほど、スコア差が大きく表れています。4K解像度ではほぼ横並びであるのに対し、フルHD解像度では、Ryzen 9 5950Xがおおよそ25%、Ryzen 9 5900Xがおおよそ15%ほど、Core i9-10900Kを上回っています。
3D Mark 「Time Spy」
次に、DirectX 12の代表的ベンチマークとして、3D Mark 「Time Spy」を見てみましょう。
Fire Strikeとは異なり、ベンチマークの解像度が高い場合に、スコア差が大きく表れています。4K解像度では、Ryzen 9 5950Xがおおよそ8%、Ryzen 9 5900Xがおおよそ6%ほど、Core i9-10900Kを上回っています。3D Markの結果からは、Ryzen 5000 シリーズプロセッサーのゲーミング性能の高さがうかがわれます。
3D Mark 「Port Royal」
続いて、リアルタイムレイトレーシング性能を見るベンチマークテストの3D Mark「Port Royal」を用いて、レイトレーシング性能を見ていきましょう。Port Royalでは、いくつかあるレイトレーシングアルゴリズムのうち、レイトレーシングリフレクションを使用したものとなります。
ベンチマークスコアであるGraphics Scoreと一緒にフレームレートも計測することが出来ます。なお、解像度は標準設定のWQHDとなります。また、DLSSについては無効となっています。
さすがにグラフィックスカードのみの性能を見ているため、結果は見事に横並びとなりました。Ryzen 5000シリーズプロセッサーと X570チップセットの組み合わせと、Core i9-10900KとZ490チップセットの組み合わせによるプラットホーム間での差は無いようです。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
続いて、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークです。テスト環境設定は高品質・フルスクリーンにて行っています。なお過去のデータと比較のためSDRかつ、DLSSは無効としています。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークにおいてもRyzen 5000 シリーズプロセッサーの優位性は崩れていませんが、3D Markの結果とは異なり、すべての解像度でRyzen 9 5900Xのスコアが一番高く、僅差でRyzen 9 5950Xが続くという格好になっています。
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ
最後に、ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークです。テスト環境設定は最高品質・DirectX 11・フルスクリーンとなります。ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズについては、ベンチマークテストの詳細で平均fps(フレームレート)も確認できるので、合わせて掲示します。
ファイナルファンタジーXIVにおいても、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONベンチマークと同じ傾向の結果となり、すべての解像度でRyzen 9 5900Xのスコアが一番高く、僅差でRyzen 9 5950Xが続くという格好になっています。ベンチマークスコアの差が、そのままフレームレートの差に反映されていることから、FPSゲームなど一瞬の差が大きな違いとなるゲームタイトルでは、Ryzen 5000 シリーズプロセッサーは大きな力となってくれそうです。
ゲーミング性能が大きく向上したAMD Ryzen 5000 シリーズプロセッサー
AMD Ryzen 5000 シリーズプロセッサーは、AMD Ryzen 3000プロセッサーから更なる磨きをかけ、弱点とされていた部分を見事に穴埋めしたことで、どこをとってもパフォーマンスの高いCPUとなっていました。特に3Dベンチマークでのパフォーマンス向上は見事の一言で、ゲーミング用途においてもAMD Ryzen 5000 シリーズプロセッサーは素晴らしい結果を示してくれました。しかも、今回ベンチマークテストに使用したBIOSバージョンは、Ryzen 5000 シリーズプロセッサーに最適化される前のバージョン(2606)でありながら、これだけの好成績を示しています。今後Ryzen 5000 シリーズプロセッサーに最適化されたBIOSになれば、更なるパフォーマンスの向上が期待されます。
AMD Ryzen 5000 シリーズプロセッサーは、パフォーマンスに定評のあったAMD Ryzen 3000プロセッサーをあっさりと上回って見せました。3Dベンチマークでも高い性能を示したAMD Ryzen 5000 シリーズプロセッサーは、高リフレッシュレートなゲーミングモニターの性能を活かしたい、1フレームでも早く表示させたい、というゲーマーの要望に応えてくれる最適なCPUと言えそうです。
~テスト構成1:CPU編~
CPU | Ryzen 9 5950X Ryzen 9 5900X Ryzen 7 5800X Ryzen 5 5600X |
Ryzen 9 3950X Ryzen 9 3900XT Ryzen 7 3800XT Ryzen 5 3600X |
|
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マザーボード | ASUS PRIME X570-PRO(BIOS:2606) |
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メインメモリ | DDR4-3200 16GB(8GB x2) | ||
グラフィックス | ZOTAC GeForce RTX 2080 SUPER(ビデオメモリ 8GB) | ||
ストレージ | WesternDigital WDS500G2X0C(WD Black NVMe 500GB) | ||
電源 | Seasonic SSR-850FX(80PLUS Gold 850W) | ||
OS | Windows 10 Home 64bit(バージョン:2004) | ||
ビデオドライバ | GeForce Game Ready Driver 456.55 |
~テスト構成2:3Dベンチマーク編~
CPU | Ryzen 9 5950X Ryzen 9 5900X |
Core i9-10900K | |
---|---|---|---|
マザーボード | ASUS PRIME X570-PRO(BIOS:2606) |
ASUS PRIME Z490-A |
|
メインメモリ | DDR4-3200 16GB(8GB x2) | ||
グラフィックス | MSI GeForce RTX 3090 SUPER(ビデオメモリ 24GB)※OCモデル | ||
ストレージ | WesternDigital WDS500G2X0C(WD Black NVMe 500GB) | ||
電源 | Seasonic SSR-850FX(80PLUS Gold 850W) | ||
OS | Windows 10 Home 64bit(バージョン:2004) | ||
ビデオドライバ | GeForce Game Ready Driver 456.55 |
Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。