Optane Memory H10と660pを徹底比較しベンチマークレビューしてみました。それぞれのスペックの紹介やSSDのメリット・デメリットなどを説明します。

気になる製品最終更新日: 20190917

Optane Memory H10 ベンチマークレビュー

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Optane Memory H10 with Solid State Storageをシステムドライブに採用したパソコンを用意し、どのような特徴が有るのかを確認してみました。
登場以来高速化の一途をたどってきたSSDも、ここにきて高速化も一段落したのか最高速を競う事が少なくなってきました。そんな中、Intelはベンチマーク上の最高速度よりも日常的な使用感を向上させるという新たなSSD、Optane Memory H10 with Solid State Storageを発売しました。

Optane Memory H10 with Solid State Storage とは

Optane Memoryとは、IntelとMicronが共同で開発した高速メモリー技術「3D XPoint」を採用したSSDの事です。3D XPoint は従来のSSDで採用されてきたNANDフラッシュよりもランダムアクセス性能に優れており、かつ耐久性も向上いるため、キャッシュメモリーとして使用するにはNAND型SSDよりも適しています。

そのため、Optane MemoryはSATA接続のHDDやSSDを高速化するキャッシュメモリーという位置付けとなっています。Optane Memory H10 with Solid State Storage(以下Optane H10)は、Intel SSD 660p相当のQLC NAND SSDとOptane Memoryを一つの基板上にまとめ、Optane Memoryをキャッシュとして使用するM.2型NVMe SSDです。

QLC NAND SSDは、TLC NAND SSDよりも安価で大容量化できる反面、TLC NAND SSDよりも読み込み速度や書き込み速度が劣る傾向にありました。Optane H10では、アクセス性能に優れたOptane Memoryをキャッシュとして使用する事で、高いファイルアクセス性能を実現しています。

そのため、Optane H10はQLC NAND SSDの安価で大容量という特徴と、Optane Memoryの優れたアクセス性能という特徴をあわせ持ったSSDとなっています。

なお、Optane H10を使用するためには、
第8世代Core 以降
Intel RSTドライバーバージョン 17.2 以降
という条件が有り、さらに起動ドライブとして使用するには
インテル 300 シリーズ(※ただしBIOSでの対応が必要)
という条件が追加されます。

インテル 300 シリーズであってもBIOSがOptane H10に対応できていない場合には、SSD部分のみが認識される(Optane Memory部分が認識されない)、起動しない(Optane H10を外すと起動する)、などの症状が発生します。

現状では、使用できる条件が非常に限られるため単体パーツとしての販売は行われておらず、動作検証されたパソコン本体としてのみ入手することができます。

Optane H10の表面。各種チップ類やコンデンサ類がところ狭しと配置されています。貼付シールからモデル型番や容量が確認できます。Optane H10の表面。各種チップ類やコンデンサ類がところ狭しと配置されています。貼付シールからモデル型番や容量が確認できます。

Optane H10の基板を見ると、写真の左側がQLD NAND SSDエリア、右側がOptane Memoryエリアと別れており、それぞれのメモリーとコントローラーチップが搭載されています。また、PCI-Express3.0 x4での接続となりますが、構造上、QLD NAND SSD部分でx2、Optane Memory部分でx2と、帯域を分けた形でそれぞれパソコンと接続されています。

Optane H10の裏面。表面とは違って何も配置されておらず、スッキリとしています。Optane H10の裏面。表面とは違って何も配置されておらず、スッキリとしています。

モデル型番 HBRPEKNX0101A01 HBRPEKNX0202A01 HBRPEKNX0203A01
QLC NAND容量 256GB 512GB 1TB
Optane Memory容量 16GB 32GB
シーケンシャルリード 1450MB/s 2300MB/s 2400MB/s
シーケンシャルライト 650MB/s 1300MB/s 1800MB/s
ランダムリード
(8GBスパン)
230000 IOPS 320000 IOPS 330000 IOPS
ランダムライト
(8GBスパン)
150000 IOPS 250000 IOPS 250000 IOPS
総書き込み容量 75TBW 150TBW 300TBW
平均故障間隔 160万時間
フォームファクター M.2 2280
インターフェース PCIe NVMe 3.0x4
製品保証期間 5年

Optane Memory H10 with Solid State Storageのスペック一覧

今回はOptane H10 (512GB)を搭載したSTYLE-15FH059-i7-UHSGを使って、Optane H10の性能を確認しました。比較対象として、STYLE-15FH059-i7-UHSG のシステムドライブをOptane H10から、同じインテル製QLC NAND SSDであるIntel SSD 660p 512GB(以下、660p)に変更した物を用意し、システムドライブのみが異なる2台にて比較を行っています。

それでは、Optane H10の実力を見て行きましょう。

ベンチマーク

CrystalDiskMark

初めに、定番のCrystalDiskMarkを使ってOptane H10の性能を見てみましょう。

Optane H10 / 660p CrystalDiskMark結果Optane H10 / 660p CrystalDiskMark結果

シーケンシャルでは読み込み/書き込み性能ともにOptane H10が660pを30%程度上回りました。ランダムでは読み込み性能でOptane H10が660pを圧倒しており、かつ、Optane H10では読み込み性能の方が書き込み性能よりも高いのに対し、660pのランダムでは書き込み性能の方が読み込み性能より高くなっています。Optane H10がランダムアクセス性能に強いOptane Memoryをキャッシュメモリーとして使用しているメリットが顕著に表れていると言えそうです。

先ほど、SSD側とOptane Memory側が共に 「x2」でPCI-Express接続されていると説明していましたが、ベンチマークの結果は x2の理論値を越えた速度が出ています。これは、Optane H10の SSD側とOptane Memory側との両方で同時にアクセスすることで速度を稼いでいる事の現れで、Optane Memoryは単なるキャッシュでは無く、かなり複雑な動きをしているようです。

Optane H10と660pの性格に違いを確認するため、キュー(Queue)数/スレッド数を変更する事が出来るCrystalDiskMarkの機能を用いて、キュー数/スレッド数を変えながら測定してみたいと思います。なお、キュー数が増えると一度に受け取れるコマンド数が増えて性能が向上します。

また、スレッド数が増えると並行して進められる処理数が増えるので性能が向上します。ベンチマークやメーカーの公称値はキュー数32(QD32)時点の数値をうたっており、SSDとして「最高に速度が乗った状態」の結果であり、実用シーンにおいての速度とは剥離しているようです。実際の利用状況では80~90%はキュー数:1~2、スレッド:1で動作するとされており、アプリの起動やゲームのロードなどストレージに負荷がかかると想定されるシーンはほぼこの辺りでの動作となるようです。

まずは、スレッド数を「1」に固定しキュー数を変えて行くと、Optane H10と660pで明確な性格の違いが確認できました。Optane H10がキュー数:8でシーケンシャル・ランダムとも性能がほぼ高止まりするようになりました。一方、660pではシーケンシャルがOptane H10と同じキュー数:8で頭打ちになるのに対し、ランダムではキュー数:64まで上がり続けています。ランダムアクセスにおける立ち上がりの早さこそ、Optane H10の優位性と見て良さそうです。

Optane H10 / シーケンシャルアクセス結果Optane H10 / シーケンシャルアクセス結果

Optane H10 / ランダムアクセス結果Optane H10 / ランダムアクセス結果

660p/シーケンシャルアクセス結果
660p/シーケンシャルアクセス結果

660p / ランダムアクセス結果660p/ランダムアクセス結果

Optane H10 / ランダムアクセス結果Optane H10 / ランダムアクセス結果

660p / ランダムアクセス結果660p / ランダムアクセス結果

複数ファイルの同時実行

次に、複数ファイルを同時に起動する時間を測定してみました。測定方法は、10MB程度のWordファイル2つ、100MB程度のExcelファイル2つ、30MB程度のPowerPointファイル2つ、3MB程度のPDFファイル2つを 、Office 2019とAdobe Readerで同時起動するバッチファイルを作成し、ストップウォッチで手動計測しました。手動計測によるブレを考慮して、複数回計測して平均をとっています。

Optane H10 / 660p 複数ファイルの同時実行結果Optane H10 / 660p 複数ファイルの同時実行結果

結果的には、Optane H10が660pよりも早く起動を完了していますが、その差は時間にしてわずかに2秒弱、割合にして1%程度という僅差に留まっています。サイズの小さなファイルでは明確な差は表れない様です。

巨大Excelファイルの実行

それではと、今度は1GBを超える巨大なExcelファイルを用意し、起動時間を測定してみました。これも手動計測となりますので、複数回計測して平均をとっています。今回用意したファイルには計算式は入れておりませんので純粋に読み込みの速度での差異となります。

Optane H10 / 660p 巨大Excelファイルの実行結果Optane H10 / 660p 巨大Excelファイルの実行結果

1GB超の巨大Excelファイルの起動では、Optane H10は660pを時間にして20秒、割合で7%ほど早く起動しました。多数のデータを含む、容量の大きいExcelなどのファイルや、GBクラスの容量になる巨大な画像データを頻繁に開き、使用する場合にはOptane H10は大きな効果が期待できそうです。

巨大ファイルを含めた複数ファイルの同時実行

上で用いた1GB超のExcelファイルと、複数ファイル同時実行で用いたWordファイル2つ、Excelファイル2つ、PowerPointファイル2つ、PDFファイル2つを同時起動するバッチファイルを作成し、手動計測しました。

Optane H10 / 660p 巨大ファイルを含めた複数ファイルの同時実行結果Optane H10 / 660p 巨大ファイルを含めた複数ファイルの同時実行結果

結果は、1GB超のExcelファイルの起動時間と、複数ファイル同時実行で用いたWordファイル2つ、Excelファイル2つ、PowerPointファイル2つ、PDFファイル2つの起動時間を足しただけに等しい結果となりました。小さなサイズのファイルを複数個実行するという処理は、現行のSSDでも十分な性能を有していると言えるのかも知れません。

ピン留め効果の確認

Optane H10では、Optane Memory上に優先的にキャッシュを割り当てる事が出来る、ピン留め(Pinning)という機能が有ります。Optane Memoryでも同様の機能が有りましたが、ピン留めの設定は自動的に行われていたのに対し、Optane H10では任意のファイルやフォルダ、アプリケーションをピン留め設定する事が可能となっています。

Optaneメモリーの設定画面から、ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク をピン留めしたところOptaneメモリーの設定画面から、ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク をピン留めしたところ

今回はファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークを用いて、ベンチマークプログラムをピン留めした場合としなかった場合で、ベンチマークテストのロード時間を比較しました。

Optane H10 FF14 ベンチマークテストのロード時間比較結果Optane H10 FF14 ベンチマークテストのロード時間比較結果

ピン留め有りの場合、1回目から3回目までの起動時間にほとんど変化が無いのに対し、ピン留めが無い場合は回数を重ねるごとに起動時間が短縮されていくことが確認できました。起動を重ねるごとにキャッシュされていくため3回目ではピン留め有り/無しで差が無くなりましたが、1回目の起動から速いというのがピン留めの効果と言えます。

あくまで優先的にキャッシュを割り当てる機能のため、何度も繰り返していると自動的にキャッシュされてしまうため効果が薄れますが、確実に優先して起動したいプログラムが有る場合には、それなりの効果が期待できるのではないでしょうか。

QLC NAND SSDの弱点をOptane Memoryで上手に補うOptane Memory H10 with Solid State Storage

Optane H10の特徴を一言で言えば、読み込み性能の高さと言えるでしょう。CrystalDiskMarkの結果では端的に表れていますが、1GBを超えるExcelファイルの起動時間の速さからもOptane H10の底力をうかがう事が出来ます。

ファイルを開くまでの十数秒の差とは言え、積み重なれば大きな差となっていきますので、日常の業務で同時にタスクをこなしていくような使用方法であれば違いは確実に感じられるでしょう。また、優先的にキャッシュさせたいプログラムやファイルを手動で設定できるピン留め機能は、使い方によっては大きな効果が期待できるのではないでしょうか。

このように、QLC NAND SSDの弱点をOptane Memoryで補いつつ、日常的な使い勝手を向上させているOptane H10は、安価でも高性能なSSDが欲しいユーザーには、魅力的な選択肢の一つとなるのではないでしょうか。

Optane H10は現状では入手手段が限られていますので、面倒な設定もなく限られた予算で少しでも快適にしたいといった方にとてもおすすめできる製品です。

CPU Core i7-8565U (1.8-4.6GHz/4コア・8スレッド/キャッシュ8MB/TDP15W)
メインメモリ DDR4-2666 8GB (8GB x1)
グラフィックス Intel UHD Graphics 630
ストレージ Optane Memory H10 512GB
(HBRPEKNX0202A01)
Intel SSD 660p 512GB
(SSDPEKNW512G8XT)
IRSTドライバ Ver 17.5.2.1024
液晶画面 15.6型 フルHD(1920x1080) パネル
OS Windows 10 Home 64bit(バージョン:1903)

ベンチマークテストで使用したPC構成表

ライタープロフィール 職人5号

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。

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