中小企業がIoTを活用しようとした場合にどんな使い方をすればよいか、セミナーなどでの実例を交えながらご紹介したいと思います。

ソリューション最終更新日: 20191104

実例から考える中小企業でのIoT活用

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最近話題のIoT(Internet of Things、モノのインターネット化)は一般家庭だけでなく、企業でも様々な場面で役立てられつつあります。 今回は中小企業がIoTを活用しようとした場合にどんな使い方をすればよいか、セミナーなどでの実例を交えながらご紹介したいと思います。

IoT導入の実例を見てみよう!

前回は、まずIoTとはどんなものかという基礎知識から、新しい挑戦にお金や人材を割くことが難しい中小企業こそIoTが活きる場があるということ、そしてIoT導入の入口は現場の課題解決にあり、まずは小さな規模で手軽にできるものからチャレンジしていくことが大切ということをお伝えしました。

“中小企業のIoT導入のポイント”
https://www.pc-koubou.jp/magazine/21704

では、実際にIoT導入に取り組む場合、どんな課題解決からスタートすればいいのでしょうか。そのヒントを掴んでいただくために、今回の実践編では実際にIoTを活用した実例をいくつか紹介したいと思います。身近な生活の中で見つけた商品化につながる工夫や、業務の効率化を目指したものなど、幅広いアイディアがあるので、ぜひ参考にしてみてください。

遠隔でポストに郵便物があるかを把握

まず1つ目は、各家庭にあるポストに関するアイディアです。毎日、玄関の外にあるポストに郵便物が入っているかどうかを見に行くのは、手間でもあり、暑さ寒さの厳しい季節には億劫になってしまいますよね。これは、そんな時にポストの中に郵便物が入ったかどうかを部屋の中から確認できるものです。

ポストの口にはアルミホイルが貼り付けてあり、接点(スイッチ)が設けられているため、ポストの口が開閉すると、ポスト内に設置されたmicro:bitが認識します。屋内には、無線情報でポストが開閉した情報を確認できるよう、もう1台のmicro:bitが備えつけられ、郵便物が入っているかを確認したい時にボタンを押すと、郵便物が入っている時にはLEDライトで「〒」マークが光り、音楽が流れる仕組みになっています。

考案者は、子どもがお手伝いとしてポストの郵便物チェックをしていた際に、飽きずに続けさせることを目的に作製したそうです。玄関のインターフォン近くにこうした受信機があれば、とても便利ですよね。これは、“遠隔で離れた場所の状況が分かる”というIoTならではの機能を活かした実例だと思います。

また、今回使用されているmicro:bitは、イギリスで作られた教育用のマイコンボードで、プログラミングで操ることができる小型のコンピュータです。まずプロトタイプでアイディアを形にする際には、手軽に使用できるmicro:bitなどを用いて、まずは実現が可能なのかを確認し、うまくいったら次のステップとして、専用の機能が入っている部品を用いて安定稼働を図るのもオススメです。micro:bitについて詳しく知りたい方は、NEXMAG内にもいくつか記事がありますのでご参照ください。

“micro:bitで始めるプログラム入門[基本操作〜カップラーメン専用タイマー制作]”
https://www.pc-koubou.jp/magazine/10208

“micro:bitで始めるプログラミング入門[Bluetoothでコントローラー編]”
https://www.pc-koubou.jp/magazine/12416

“micro:bitで始めるプログラム入門[接続端子で拡がる用途]”
https://www.pc-koubou.jp/magazine/10843

2つのmicro:bitを無線通信でつないで、郵便受けの開閉を把握(考案者/成瀬 稚奈、出口 瑞渉)2つのmicro:bitを無線通信でつないで、郵便受けの開閉を把握(考案者/成瀬 稚奈、出口 瑞渉)

トイレットペーパーの有無をサーバーに送信

もう1つ、生活に密着した実例を紹介しましょう。トイレットペーパーフォルダにトイレットペーパーがなくなった際に、その状況を離れた場所から確認できるという事例です。

トイレットペーパーフォルダには、センサ内部から光を照射し、測定したい対象物に当たって反射した光を受光して、距離を換算する赤外線距離センサが付けられていて、センサでトイレットペーパーの有無を感知し、情報をサーバーに送信します。その情報は、スマートフォンから遠隔で確認することができるため、離れた場所から誰でも状況の把握が可能です。

例えば飲食店などで人手が足りなかったり、別の作業で忙しい場合でも、これなら何度もトイレまで行くことなく、定期的にトイレのチェックをすることができます。よりトイレの数が多い大型施設やサービスエリアなどは、さらに活用度が増してくると思います。

トイレットペーパーの有無をどこからでもスマートフォンで確認できる(考案者/吉田 倖亮)トイレットペーパーの有無をどこからでもスマートフォンで確認できる(考案者/吉田 倖亮)

計測結果を送信できるはかりで体調管理

次は、介護施設での活用を想定した事例です。介護施設では、1人の介護士さんが複数人の入居者を担当することが多いと思います。毎日、入居者の体調を管理するために、介護士さんは入居者の皆さんが毎食のちゃんと食事を摂れているのか、1人1人の食事量を目視で確認し、記録をしています。

そこでこのシステムでは、既存のはかりを改造し、食事がのったトレーをはかりの上に置くと、その重さを計測して自動的にネットに送り、データベースとして記録できるようになっています。トレーには、それがどの入居者のものなのかを判別できる“RFIDタグ”が付けられているため、介護士さんはただトレーを置くだけで計測をすることができ、チェックする時間や手間を省くことができます。

また、データを自動的に蓄積できるので、そのデータを活かせば、入居者の好みや食事スタイル、今後の介護計画など、さまざまなことを考える際のツールとしても活用できそうです。介護施設はもちろんのこと、医療現場や保育園・幼稚園などの教育施設でも活躍しそうです。

はかりの上にRFIDタグをつけたトレーを置くとネット上に計測結果が蓄積されるはかりの上にRFIDタグをつけたトレーを置くとネット上に計測結果が蓄積される

加速度センサと防犯ブザーの遠隔操作で盗難防止

では次に、安価にレンタサイクルを運営することを目的に作られたプロトタイプを紹介します。ここで取り上げたレンタサイクルの課題は、常時置いてある自転車の盗難防止です。レンタルをして料金を払った人以外が自転車を使うことがないよう、使用者だけがロックを解除できる防犯ブザーが考えられました。

このプロトタイプでは、レンタサイクル用の自転車に加速度センサと防犯ブザーが取り付けられています。レンタルした人は、スマホからBluetoothを使用して防犯システムのロックを解除してから、自転車を使用します。もしシステムをオフにせずに動かそうとすると、加速度センサが反応して防犯ブザーが鳴ってしまいます。

加速度センサは、文字通り加速度の測定を目的とした慣性センサです。大きく分けて「重力」「振動・動き」「衝撃」と、3つの現象を測定できるので、傾きや動きにも反応する点をうまく盗難防止という用途に活用しています。もちろん自転車だけでなく、さまざまなものに応用できそうです。

装置自体も小型で運転時に邪魔になることもない(考案者/石原 辰基)装置自体も小型で運転時に邪魔になることもない(考案者/石原 辰基)

工場ラインの温度を監視して不備を検知

最後に、工場や作業現場で稼働する設備の状態をIoT技術で監視して、工場内の安全確保や品質維持につながる実例です。多くの機器や設備が複雑に連携しながら動いている工場では、設備の不具合や故障が品質の低下や事故を招いてしまいます。そこで、製造業の工場ライン内で使われている設備の故障をいち早く知るために、対象物から出ている赤外線放射エネルギーを検出・可視化する赤外線サーモカメラを用いて、部品の温度をセンシング。温度の異常を感知することで、設備の不備を検知するIoTプロトタイプです。

定期的な点検やメンテナンスをするのはもちろん大切ですが、常に稼働している製造ラインを整備や検査で止めるのは手間と労力がかかります。常に状態をセンシングして異常を早期に掴み、トラブルが起こる前段階で予兆することで、時間や製品ロスを最小限に抑えることができますね。

サーモカメラと温湿度センサで設備の状態を可視化するので、見た目にも異常が分かりやすい(写真はイメージ)サーモカメラと温湿度センサで設備の状態を可視化するので、見た目にも異常が分かりやすい(写真はイメージ)

無限に広がる中小企業のIoT活用

暮らしの中にある不便さから生まれた新しいアイディアや、事業の中で課題となっていた点のソリューションなど、ここまでさまざまなIoT活用の実例を紹介してきました。すべてに共通するポイントは、多くのコストや時間、人材を割いてつくる大掛かりな開発ではなく、肩ひじを張らずに手軽にトライできるものという点にあると思います。こうした実例を参考に、取り組みやすい課題からIoT活用を考えてみてはいかがでしょうか。

(協力:日本総合ビジネス専門学校)

ライタープロフィール 合同会社 4D Pocket
石郷祐介

大学卒業後、公設研究機関勤務を経て、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]に入学。インタラクティブ作品を作る傍ら、多数のメディアアート作品の実装を手がける。
近年は、開発イベント企画、勉強会講師、コミュニティ形成等も行っている。
合同会社4D Pocket 代表、日本総合ビジネス専門学校 講師。

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