カメラの露出の設定についてレンズとF値、そして被写体との距離を使い分け、写真を上手に撮影する方法を教えていただきました!

クリエイター最終更新日: 20190410

今さら聞けないレンズとF値の関係

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カメラのレンズや「絞り値(F値)」の使い分け方について、今さら人に聞きにくいけれど、実はイマイチ理解できていない…という方もいるのでは?
今回はプロカメラマンの安藤さんに、レンズとF値の関係と露出の設定方法、さらに被写体との距離に応じたレンズの使い分けについて教えていただきました! 

「露出」を決めるのは「シャッタースピード」と「絞り値(F値)」

安藤さんいわく、「露出」と「レンズの種類」については、一般の人でも覚えておくべき撮影のポイントだそう。まずは「露出」について教えてもらいましょう。

「露出」とは、フイルムや印画紙に光を当てること。この「露出」の明るさは、主にシャッタースピードと絞り値によって決まるのだそうです。

安藤さん「シャッタースピードというのは、カメラの中にあるシャッターの幕が開いている時間のこと。1秒、1/2秒、1/4秒、1/8 秒、1/30秒…とシャッタースピードが速まるほど、幕が開いている時間が短くなり、とりこめる光が少なくなるんだ」

シャッタースピード

1秒が1/2秒に、1/2秒が1/4秒に、と暗くなる方向へと目盛りが一つ動くことを、「1段下がる」というのだそう。

シャッタースピード

安藤さん「一方絞り値(F値)というのは、『絞り』という穴を通してとりこむ光の明るさのこと。F4、F5.6、F8、F 11、F 16…と絞り値を大きくするほど穴が小さくなって、取り込める光が少なくなるんだよ。」

絞りについて

絞りについても同様に、F4がF5.6に、F5.6がF8に、と暗くなる方向へと目盛りが一つ動くことを、「1段下がる」といいます。ここまでは理解できていた、という人も多いのではないでしょうか。

絞り値

「適正露出」は「シャッタースピード」と「絞り値」の組み合わせで保つことができる

「適正露出」とは、明るすぎず暗すぎず、ちょうどいい明るさの写真のこと。その人の感性や撮りたい写真のイメージによっても異なるから、「これが正解」というのはないのだそう。

安藤さん「この『適正露出』は、シャッタースピードと絞り値の組み合わせによって、それぞれの数字が変わっても保つことができるんだ。たとえば絞り値がF8、シャッタースピード1/60秒が適正露出だった場合、これと同じ露出になる組み合わせは以下のようになるよ」

シャッタースピードと絞り値の関係

安藤さん「適正露出を保ちたい場合、どちからを1段上げたら、もう片方を1段下げないといけないんだ。デジタルカメラの場合、オートモードだと、絞り値に合わせて自動でシャッタースピードを調整してくれるので便利だよ」

しかし、絞り値やシャッタースピードが異なることで、当然「明るさ」以外の点では違いが出てくる。

安藤さん「シャッタースピードを変えると、動いている被写体のブレ具合が変わる。たとえば噴水の水を撮る場合、シャッタースピードが速いと一粒ひと粒の水滴が写るけれど、シャッタースピード遅いと、水の軌道が写って躍動感が出るんだ」

ちなみに手持ちで撮る場合、シャッタースピードが1/60より遅くなると、手ブレが起こるといわれている。

安藤さん「一方絞り値を変えると、『被写界深度』が変わるんだ。『被写界深度』というのは、ピントを合わせた位置の前後の、ピントが合っているように見える範囲のことだったよね」

今回は、絞り値による違いを検証するために、3体のキャラクターを50cmおきで配置。50mmの標準レンズを使って、同じ距離から絞り値を変えながら撮影してみます。

絞り値がF4の場合

絞り値がF4の場合

絞り値がF8の場合

絞り値がF8の場合

絞り値がF16の場合

絞り値がF16の場合

安藤さん「3枚の写真を比較してみると、絞り値が小さくなるほど被写界深度が浅くなり、背景がボケていくことがわかる。50mmの標準レンスの場合、3体すべてのキャラクターをはっきり写すには、F16まで絞りを狭くする必要があるね」

F4、F8、F16の違い

つまり「絞り値」と「シャッタースピード」は、適正露出と撮りたいイメージに合わせて、両方を調整していく必要があるということ。シャッタースピードが1/60以下になる場合は、三脚などに固定して撮影すると、写真がブレずに済むようです。

レンズの種類ごとに特徴を検証!被写界深度や画面に収まる範囲、歪みの大きさに注目

続いて、レンズの種類による写り方の違いについて教えてもらいました。

今回はレンズによる違いを検証するために、絞り値をF8、シャッタースピードを1/125に固定したまま、レンズだけを変えて写り方を比較してみることに。3体のキャラクターは50cm間隔で配置し、ピントはすべて一番手前のキャラクターに合わせます。

①はカメラから一番手前の被写体までの距離を120cmに固定した写真。

①はカメラから一番手前の被写体までの距離を120cmに固定した写真。

②は、「手前のキャラクターの全身を写す」という条件を固定した写真です。

②は、「手前のキャラクターの全身を写す」という条件を固定した写真です。

安藤さん「レンズというのは、大きく3種類に分けられる。今回は、焦点距離が50mmの『標準(ノーマル)レンズ』、焦点距離が35mmの『広角(ワイド)レンズ』、焦点距離が85mmの『望遠(テレ)レンズ』を使って、写り方を比較してみよう」

50mmの標準(ノーマル)レンズで撮影した写真①

50mmの標準(ノーマル)レンズで撮影した写真①

50mmの標準(ノーマル)レンズで撮影した写真②

50mmの標準(ノーマル)レンズで撮影した写真②
カメラと手前のキャラクターの距離は120cm。

安藤さん「この写り方を基準に、他の2つのレンズの特徴を捉えよう。被写界深度(=ピントが合っているように見える範囲)と、画面に収まる範囲、歪みの大きさに注目してみよう!」

35mmの広角(ワイド)レンズで撮影した写真①

35mmの広角(ワイド)レンズで撮影した写真①

35mmの広角(ワイド)レンズで撮影した写真②

35mmの広角(ワイド)レンズで撮影した写真②
カメラと手前のキャラクターの距離は70cmと近め。

安藤さん「被写界深度が深く、ピントを合わせた位置より後ろ側もはっきりと写るのが特徴だね。手前が大きく後ろが小さく写ることで、距離感が誇張されるから、手前にお母さんがいて後ろから子供が走ってくる、なんて構図を撮るのにも最適だよ。
また、②のとおり被写体との距離が近くても幅広な写真が撮れるから、集合写真にも向いているんだ。近くのものを撮ると歪みが大きいから、それを利用して魚眼レンズで撮ったような面白い写真を撮ることもできるね」

85mmの望遠(テレ)レンズで撮影した写真①

85mmの望遠(テレ)レンズで撮影した写真①

85mmの望遠(テレ)レンズで撮影した写真②

85mmの望遠(テレ)レンズで撮影した写真②
カメラと手前のキャラクターの距離は190cmと遠め。

安藤さん「被写界深度が浅いから、1人の人物を撮るのに向いているね。ぼかしを上手く使って、雰囲気を出したり被写体を際立たせたりすると、よりレンズの特徴が生きるよ。また②のように全身を撮った場合は、歪みが少なくスタイル良く写るんだ。ファッションなどの全身ポートレートに向きだよね」

85mmの望遠(テレ)レンズと35mmの広角(ワイド)レンズの歪みの違い

とはいえ、ポートレートを撮るときは絶対に「望遠レンズ」、と決まっているわけではないのだそう。

安藤さん「たとえば子供が被写体のときは、近くで話しかけながら撮影したほうが、いい表情を捉えることができる。つまり、近くに寄っても広い範囲が撮れる広角レンズのほうが向いているんだ。歪みはできるけれど、全身が入ることを意識せずにいい表情を狙っているのでスタイルはあまり気にしなくていいよね」

子供の写真を撮影するときのテクニックについては下記の記事も参考にしてください。

“プロカメラマン直伝!ここがポイント!初心者でも子供の写真を上手に撮影するテクニック[屋内編]”
https://www.pc-koubou.jp/magazine/12391

“プロカメラマン直伝!ここがポイント!初心者でも子供の写真を上手に撮影するテクニック[屋外編]”
https://www.pc-koubou.jp/magazine/12496

被写体や、被写体との距離感によってレンズを使い分けると、上手な写真を撮ることができるとわかりました。ぼかしや歪みといったレンズの特徴を生かすと、より雰囲気や面白みのある写真にもなりますよ!

よい写真を撮るために絞り値とシャッタスピードを臨機応変に変えよう

適正露出は、絞り値とシャッタースピードの組み合わせによって一定に保つことができるけれど、それぞれの値が変われば、動きのある被写体の写り方や、被写界深度も変わります。また、レンズは種類によって、被写界深度や画面に収まる範囲、歪みの大きさに違いがあるのが特徴。
「何をどんな構図で撮りたいか」によって最適な絞り値やレンズが異なるため、使い分け方をしっかり把握しておくことで、臨機応変により良い写真を撮ることができるでしょう!

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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