

AMD 400 シリーズ チップセットの紹介記事でも紹介しましたストレージの高速化技術「AMD StoreMI」ですが、もし有意な効果が有るのであれば、せっかく無償という事も有るので使用しない手は無い、という事で今回は、このAMD StoreMIで大容量HDDをどの程度まで高速化出来るのか、実際に試してみました。
AMD StoreMIとは
AMD StoreMIテクノロジー(以下、AMD StoreMI)は、AMD 300 シリーズチップセット向けに有償で提供されている「Enemotus FuzeDrive for AMD Ryzen」の派生版で、低速ストレージを高速化する無償のソフトウェアです。AMD StoreMIでは、高速なドライブを「Fast Tier」、低速なドライブを「Slow Tier」と呼び、「Fast Tier」と「Slow Tier」を掛け合わせて低速なドライブを高速化します。さらに、メインメモリから最大2GBまでをキャッシュメモリとして組み込む事もできます。
AMD SoreMI | FuzeDrive for AMD Ryzen | FuzeDrive for Desktop PCs | |||
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Basic | Plus | Standerd | Plus | ||
対応チップセット | AMD 400 シリーズ (X470/B450) |
AMD 300 / AMD 400 シリーズ (X470/B450/X399/X370/B350/A320) |
AMD 300 / AMD 400 シリーズ Intel 100 / 200 / 300 シリーズ |
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対応OS | Windows 10 64bit | ||||
Fast Tier(SSD)最大容量 | 256GB | 128GB | 1TB | 256GB | 1TB |
Slow Tier(HDD)最大容量 | 10TB | 16TB | |||
DRAMキャッシュ容量 | 2GB | 2GB | 4GB | 2GB | 4GB |
価格 | 無料 | 19.99ドル | 59.99ドル | 39.99ドル | 59.99ドル |
仕様比較一覧
AMD StoreMIを使用する上で1つ注意する点として、BIOSでSecure Bootの設定を無効化(Disabled)する必要が有ります。 テストで用いたAsus X470-PROでは、BIOSメニューの「BOOT」タブで「Secure Boot」内の「OS Type」を【Other OS】にすると、Secure Bootが無効状態となります。
BIOSメニュー内で、Secure Bootを【無効】にします。 ASUS製マザーボードの場合は、Secure BootのOS Type を「Other OS」に設定。
AMD StoreMIのインストール
AMD StoreMIのインストール方法は、
1.JAVAをインストール
2.AMD StoreMIをインストール
の2段階で行います。AMD StoreMIは下記アドレスからダウンロードできます。なお、JAVAのインストールについては、既にインストールされている場合は不要となります。
AMD StoreMIテクノロジー
“AMD StoreMIダウンロード”.AMD.2018.11.5※リリース情報は随時更新されています
https://www.amd.com/ja/technologies/store-mi
AMD StoreMIのインストールは、以下の様に行えます。基本的に「NEXT」をクリックしているだけで完了します。インストール完了時に再起動を求められますので、指示に従って再起動します。再起動をするとデスクトップ上に「AMD StoreMI」のアイコンが配置されています。
AMD StoreMIのインストール開始
インストール開始後、しばらく待ちます。
そのままインストールを続けます。
インストールが完了したので、再起動します。
AMD StoreMIの設定
AMD StoreMIを起動して設定を行います。基本的にメニューに従って進めていくので、特に迷うことなく行えると思います。
AMD StoreMIのメイン画面
システムドライブを高速化するなら「Create Bootable StoreMI」を、データドライブの内容を保持したまま高速化するなら「Create Non-Bootable StoreMI」を、データドライブを新規に作成するなら「New Non-Bootable StoreMI」を選択します。今回は、元の内容を削除してしまっても構わないので「New Non-Bootable StoreMI」を選択します。
高速化したいドライブをSlow、高速化用のSSDをFastとしてチェック。Create Optionsを選択するとDRAMキャッシュを設定できます。
DRAM cache の項目で「2G Cache」を選択して、DRAMキャッシュを組み込みます。
DRAMキャッシュの設定は、Tierドライブ設定後でもメイン画面から変更可能となっています。
これで設定完了です。
AMD StoreMI設定完了後、ディスクの管理でドライブの状態を確認すると、Slow Tierに設定したディスク1(ST4000DM004)とFast Tierのディスク2(SSDC2KW256G8)の容量認識が無くなり、ディスク3として新たなドライブ(Tier Drive)が作成されています。
ディスク1とディスク2が合算された形で、新たにディスク3が作成されています。
Tier Drive作成後、DRAMキャッシュの設定を変更するには、AMD StoreMIのメイン画面から「Change Settings」を選択します。変更するドライブ(今回は「Drive 3 AMDT00StoreMI」)にチェックが入っている事を確認し、「Modify」を選択してDRAMキャッシュの組み込み・取り外しを変更します。
AMD StoreMIのメイン画面から、「Change settings」を選択。
作成したTier Driveがチェックされている事を確認して、「Modify」を選択。
Delete 2G Cache で「YES」を選択して、Modify Tierを実行すればDRAMキャッシュが取り外されます。
DRAM cache の項目で「2G Cache」を選択すれば、DRAMキャッシが組み込まれます。
AMD StoreMIの効果
今回は、システムドライブをintelのNVMe SSD 760p(SSDPEKKW256G8XT)、データドライブをSeagateのHDD ST4000DM004として、データドライブのST4000DM004を高速化します。高速化用のドライブ(Fast Tier)として、以下の3つを用意し、速度の違いを確認しました。また、DRAMキャッシュの有無での違いについても確認しました。
①2.5インチSSD / intel 545s 256GB (SSDC2KW256G8X1)
②M.2 NVMe SSD / intel 760p 256GB (SSDPEKKW256G8XT)
③Optaneメモリー / Optaneメモリー 16GB(MEMPEK1W016A)
Crystal DiskMark
まずは、ディスク速度の代表的ベンチマークテストであるCrystal DiskMarkで、AMD StoreMIの効果を見てみましょう。数字が大きいほど(グラフが長いほど)高速になります。
intel 545sとST4000DM004のAMD StoreMIベンチマーク結果
intel 760p と ST4000DM004のAMD StoreMIベンチマーク結果
Optaneメモリー と ST4000DM004のAMD StoreMIベンチマーク結果
AMD StoreMIを構築したドライブ(Tier Drive)では、Fast Tierとして組み合わせたドライブの性能がそのまま反映されています。これだけでも十分に高速化の効果が有りますが、DRAMキャッシュを組み込んだRead性能は圧巻の一言です。
シーケンシャル(Seq Q32T1)では5000MB/sオーバーという前代未聞の速度をたたき出しています。シーケンシャルだけでなくランダム(4KiB Q8T8)においても大きな効果が見られましたす。一方で、Write性能ではDRAMキャッシュを組み込んだ場合の方が落ち込んでいる項目も有り、用途によってはDRAMキャッシュを外しておいた方が良い場合も有りそうです。
FINAL FANTASY XIV:紅蓮のリベレーター
続いてFINAL FANTASY XIV:紅蓮のリべレーターベンチマークを用いて、ロード時間を測定しました。ロードの秒数を測定しており、数字が小さいほど(グラフが短いほど)高速になります。
FINAL FANTASY XIV:紅蓮のリベレーターベンチマーク結果
DRAMキャッシュ無しでのAMD StoreMI構築では、Crystal DiskMarkと同様にFast Tierとして組み合わせたドライブの性能が見事に反映されています。元のHDD単体と比べると、どの構成でもロード時間が半分以下となっており、効果てき面な結果となっています。一方、DRAMキャッシュを組み込んだ場合では、intel 760pでは30%強の効果が有ったのに対し、intel 545sとOptaneメモリーでは10%強にとどまるなど、DRAMキャッシュの効果の表れ方にバラツキがありました。とはいえ、少しでも早くするためにDRAMキャッシュを有効にする意味はあることが分かりました。
Store MIでもOptaneメモリーがコスパ良好!
AMD StoreMIを使用することで、HDDの転送速度を組み合わせるSSDと同等にまで引き上げる事が出来る事が確認できました。OS上からメニューを選択して設定するだけなので、今回の様に大容量データドライブを高速化する方法としては、導入のハードルとしてはそれほど難しくは無いのではないでしょうか。
もし以前使用していたSSDが余っていたのなら、余剰SSDの有効活用にもなります。新規に用意する場合にも、インテルのOptaneメモリーは5,000円(税込5,500円)台(2018年10月時点)で読込速度が900 MB/s~とコストパフォーマンスもよく、有効な選択のひとつとなるでしょう。
最近のゲームは容量も大きく、それに合わせて1TBや2TBといった大容量SSDを用意するとなると非常に高価になってしまいますが、AMD StoreMIを使用すれば、安価なHDDと小容量のSSDを組み合わせて大容量の高速ストレージを作成する事が出来、ゲームデータのロード時間短縮などに効果が期待できます。
DRAMキャッシュについては、Read性能やロード時間の短縮には効果が有るのに対して、Write性能では性能が落ちる場合も有るなど、必ずしも効果が有る訳では無いことも分りました。とはいえ、仮に効果が無かった場合でもAMD StoreMI上から簡単に外す事ができるので、メモリの容量に余裕が有るのであれば、まずは組み込んでみると良いと思います。
AMD StoreMIは、AMD 400 シリーズ チップセットならもれなく無料で使用できる高速化技術として、非常に面白い存在だと言えそうです。とりあえずでも試してみてはいかがでしょうか?

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。