AMD Polaris編。パソコン技術資料室では AMD Polarisアーキテクチャを採用したAMD Radeon RXシリーズのグラフィックカード「Radeon RX 480」を詳しく解説いたします。

技術解説資料最終更新日: 20160630

Radeon RX 480 | AMD Polaris とは

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

AMDより2016年6月に発表された、最新のAMD Polarisアーキテクチャを採用した「Radeon RX 480」について詳しく解説していきます。

Radeon RX 480 | AMD Polaris とは

「Radeon RX 480」とは、AMDより2016年6月に発表された、最新のAMD Polarisアーキテクチャを採用したRadeon RXシリーズのグラフィックカードです。
Polaris(ポラリス)はHawaii(ハワイ)やFiji(フィジー)などと同様、AMDの開発コードネームおよびアーキテクチャの名称です。
DirectX 12やValkunなどのAPIへの最適化をはじめとし、性能向上、VRへの対応などから、Windows 10と組み合わせることで最大パフォーマンスを発揮できるグラフィックカードです。

Radeon RX 480 (Polaris)の主な特徴

■製造プロセスが14nmとなり、前世代のRadeon R9 380(28nm)から比べて微細化しました。
■ミニGPUあたりの演算ユニット数が増加し、全体としてCompute Unitコアの数が増加し、性能が向上しました。
■製造プロセスの微細化により、動作クロックが上昇し性能が向上するだけでなく、電力効率も向上しました。
■グラフィックメモリは従来と同じ「GDDR5」となりますが、7Gbpsから8Gbpsへと高速化されました。
■高いフレームレートが必要なVRや、DirectX12、Valkunに対し最適化されました。
■従来はCPU処理を行っていたハードウェアスケジューラを内蔵し、3D描画と演算タスクをより動的に柔軟に実行できるようになりました。

モデルナンバーについて

Radeon RX 480を含むPolarisの製品型番(モデルナンバー)は次のようなルールで命名されています。

Polarisモデルナンバー命名ルールPolarisモデルナンバー命名ルール

詳細スペックについて

RADEON™ RX 480
GPUコア(コードネーム) Polaris 10
製造プロセス 14nm FinFET
Direct X 世代 12
ストリーミングプロセッサ数 2,304基
定格クロック 1,120MHz
ブーストクロック 1,266MHz
メモリタイプ GDDR5
メモリバス帯域幅 224GB/s以上
メモリバス幅 256bit
メモリ転送レート 7Gbps以上
メモリ容量 4/8GB
接続インターフェイス PCI Express 3.0×16
CrossFireX 4Way
AMD FREESYNC™
TDP 150W
補助電源コネクタ 6pin

Polaris の詳細スペック

Radeon RX 480のここがスゴい!まとめ

Radeon RX 480 (Polaris) の主なアーキテクチャの特徴まとめ

■Polarisアーキテクチャでは、製造プロセスルールが微細化し、「14nm」となりました。
■Polarisアーキテクチャは第4世代GCN(Graphics Core Next)へと進化しました。
■不要な極小ポリゴン要素を早期に排除する「Primitive Discard Accelerator」の搭載によりジオメトリエンジンを強化、最大で3.5倍の性能を実現しました。
■HWS(Hardware Scheduler)の実装によりVRに必要なリアルタイムかつ非同期の割り込み処理に瞬時に対応できるようになり、スムーズなVR体験が可能となりました。

Radeon RX 480 (Polaris) の主なパワーアップのポイントまとめ

■動作クロックが大幅に向上し、Radeon RX 480では最大ブーストクロックが1.266GHzとなりました。
■CU(Compute Unit)当たりの性能を最大で15%向上させました。
■電力の消費効率が向上し、ワットパフォーマンスが向上しました。実利用面でRadeon RX 480はGeForce GTX 970よりも消費電力を低く抑えることができます。
■Radeon RX 480においては、使用するパーツの小型化や基盤設計の見直しにより静音性が高まり、消費電力が抑えられました。

Radeon RX 480 (Polaris) の主なグラフィックメモリ関連の改善まとめ

■メモリコントローラーの強化により、GDDR5のままで有りながら最大8Gbpsの転送速度を実現しました。
■テクスチャの圧縮効率を強化し、より有効にビデオメモリやメモリ帯域を活用できるようになりました。

Radeon RX 480 (Polaris) のその他の主な機能まとめ

■16bit浮動小数点/整数演算命令(FP16/Int16)にネイティブに対応し、グラフィックスやデータラーニングの分野で威力が発揮されます。
■DisplayPort1.3/1.4に対応し、4Kでの FreeSyncを実現しました。
■HDMI2.0に対応し、HDMI経由でのFreeSyncも可能になりました。
■音のレートレーシングを可能にする「TrueAudio Next」を実装、CUの一部をオーディオ用に確保できるなど、よりリアルな音響を楽しむことができます。
■新たなオーバークロックユーティリティ「WattMan」が提供されます。

PDA (Primitive Discard Accelerator) とは

PDA(Primitive Discard Accelerator)とは、ジオメトリデータ(≒ポリゴンデータ)をレンダリングパイプラインの下流に送る前に、上流側で描画対象にならない物を排除する機能の事です。

従来でも視界外のポリゴンなどを排除する早期カリング(Early Culling)として実装されていた機能ですが、PDAは早期カリングをすり抜けていたポリゴンを対象としています。
具体的には実質的なレンダリング解像度の1ピクセルサイズに満たない極小のポリゴンを排除します。

PDAはオープンワールドなど、遠方に多くのオブジェクトを配置する様なゲームでの効果が期待されます。

CU(Compute Unit)の強化

Polarisでは CU(Compute Unit)自体および周辺に細かな改良を行い、CUの実行効率を高めています。

まず、CPUでは当たり前になっている命令先読み機能(Prefech)に対応しました。CPUとは異なりGPUでは条件分岐による分岐が有っても双方のスレッドで歩調を合わせる動作となっているため、分岐の有無に依らず高い効果が得られます。

他にも、命令バッファサイズの増加によるスレッドの実行効率の向上、L2キャッシュの増加やデータのやり取りの最適化など、CU当たり最大15%の性能向上となっています。

ハードウェアスケジューラ(Hardware Scheduler)

従来はドライバソフト(すなわちCPU)で管理するソフトウェアスケジューラでしたが、この方法では制御自体は問題なく行えるますが、GPU内部のリソース状態を瞬時に把握する事が困難でした。

GPU内部にハードウェアスケジューラー(HWS)を置くことで、GPU内部のリソース状態をリアルタイムに把握する事が出来るようになり、瞬時に、かつ臨機応変にスケジューリングを行う事でシェーダプロセッサを有効活用する事ができます。

VRでは非同期の演算処理をグラフィックスレンダリング実行中に非同期に割り込ませる必要が有り、HWSをGPU内部に実装する事でVRの高い要求に応える事が可能となりました。

音のレイトレーシング「TrueAudio Next」

新たに実装された「TrueAudio Next」とは、CU(≒シェーダプロセッサ)の一部を用いてオーディオのレイトレーシングを可能とするオーディオ機能です。

CUによる非同期の演算機能を使用する事で、たくさんのオーディオソースのレイトレーシングを少ない遅延で行う事が出来ます。

より複雑な反射音効果や遮蔽効果を実現する事が可能となり、VRでのよりリアルな音響体験を実現します。

AMD Polaris よくある質問と答え(FAQ)

Q1.Windows 10以外でも使えるの?

A1.
Windows 10の他、Windows 8.1・8・7用のドライバが提供されています。
その他、Linux(Ubuntu) などがサポートされています。

Q2.補助電源コネクターは?

A2.
Radeon RX 480は6Pinコネクタが一つとなります。
推奨電源容量も500W以上となっており、Radeon R7 270やGeForce GTX 750Tiといったミドルクラスのビデオカードからの交換が容易に行えるようになっています。

※AMDリファレンスデザインに基づく場合。オリジナルクーラーモデルやOCモデルの場合、必要な補助電源コネクタが変わる場合が有ります

Q3.3-Way ・4-Way CrossFire を構築する事は出来るの?

A3.
Radeon RX 480 では、仕様上4-WayまでのCrossFire構成が可能となっています。

Q4.NVIDIAのGeForceシリーズから載せ換える事は出来る?

A4.
GeForceシリーズから載せ換える事は出来ます。なお、GeForceカードを取り外す前に、GeForce用ドライバーや関連プログラムをアンインストールして下さい。

ライタープロフィール 職人5号

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。

記事を
シェア