

The Circle 第2回目のモーションデザイナー 松岡 勇気(_heki)さんから、いま最も注目するクリエイターとして紹介して頂きました。The Circle 第3回目は映像クリエイターの山崎 浩太朗(yama_ko)さんです。
インターネット上の所謂Flashアニメーションに感化され、2005年頃より制作活動を開始。2010年よりフリーランスとして独立し、現在ではMV/PVを中心に数多くのコンテンツを手掛けられています。
偏差値70超!映像業界稀有の理系クリエイター登場!
まずは簡単に自己紹介を
山崎浩太朗【”yama_ko”】と申します。10年以上フリーランス(以降フリー)として音楽作品などエンターテイメント系の映像を作ってきました。
肩書は何になるんですか?ディレクター?
ディレクターっていうほど人に指示はしてないので「映像クリエイター」ですかね?
インタビューに答える山崎さん
ビッグプロジェクトよりも自主制作へのこだわり
前回の松岡勇気(_heki)さんはフリーではなく会社、組織ワークが自身には合っていると言っていましたが、山崎さんは組織に入る選択肢はなかった?
企業からお誘い受けたりとか出向いたりとか、やったこともあるんですけど、根本的に個人でものを作るのが好きというか、そっちの可能性を信じているというか、大きな組織でリッチ(ビッグプロジェクト)なものを作ることに対して、個人的にはそんなに興味がないですね。裁量が欲しいというのもありますし、自分の中では個人ワークの方が向いているなと思っています。
あとは自主制作で年間1本は自分の作品を制作していて、会社に入っちゃうと自分のワークが出来ないっていうのが中々(ストレス)。裁量が欲しくてフリーランスでやっているところが大きいです。
自主制作の作品はこれまでどれくらい?年間1本と言われましたけど
たぶんすごい数かもしれませんけど。昔は、それこそ遊びの延長なんで(笑)仕事とかじゃなくて、全てが自主制作なので…そこまで数えていいなら多分30とか40本(作品)とか。
一同)(笑)すごっ!
自主制作へのこだわりについて語る山崎さん
欲求を分析して映像を科学することで後世に作品を残す
自主制作をやり続けることで何が満たされているのでしょうか?
なんなんでしょうね?中毒ですかね?(笑)僕よくインセンティブっていうか、なんで作りたくなるかっていうモチベーションを自己分析するのが好きなんです。昔から結構変わっていて(笑)いわゆる趣味で作っていた頃は、競争心というか、他のクリエイターに見せつけてやろうみたいな気持ちが多かったですけど、今もそういう気持ちがないわけではないんですけど、最近はなんかその研究者というか、これとこれ混ぜたらどうなるんだろうみたいな?探索のようなモチベーションで自主制作しています。
自主制作を通じて山崎さん自身を科学している感じ?
そうですね。本当一言でいうと、新雪を踏むのと一緒で…ちょっと大げさかもしれないですけど後世に自分の作品を残しておきたいっていう。基礎研究している研究者って何の役に立つのか分かんないものを論文に残すじゃないですか。そんな感覚だと思います。
映像制作について考える山崎さん
お絵描きソフトで開眼~フラッシュアニメ界隈へ
そんな研究者目線で映像を制作する山崎さんが、数ある職業の中でこの映像クリエイター職を選ばれたきっかけは?
僕は1985年生まれなんですけど、小学生の頃にパソコンをいじる機会がありまして、お絵描きソフトに出会って面白いと感じたのが最初。直接的に面白さを感じ始めたのが高校時代だと思うんですけど、ちょうどインターネットが爆発的に普及し始めた頃ですね。それまでは個人が作った映像って基本的に見る機会がなかった。映像っていうのはテレビから流れてくるものであって、インターネットの普及で個人の作った色々な源流に出会って触発されたところが多かったです。具体的に言うと、昔あったフラッシュ(アニメ)文化が起点で、すごく感化されたところがあって、先に自己紹介しましたけど、それっぽく言うと、僕は「フラッシュ職人の末裔」だと思ってください(笑)
具体的に影響をうけたフラッシュの作品は?
そうですね、有名どころだと今も活躍されている細金卓矢さんの作品とか、あとはそれこそ最近『クラユカバ』という映画を制作された塚原重義さん。ニコニコ(動画)のMADとか、東方プロジェクトの「ウサテイ」「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」等で知られるカギさんの作品とか、それらの作品の影響は受けましたね。それで大学生ごろに自分でもインターネットに動画を上げ始めて…
細金卓矢 – Takuya Hosogane MotionReel 2011
塚原重義 – ウシガエル
IOSYS – ウサテイ
IOSYS – 魔理沙は大変なものを盗んでいきました
一番最初に上げた動画とか残っています?
なかば意地になって残していますね。
いわゆる山崎さんの元始ですね。
Fleeting Dance
これが初めての公式作品?
まあそうです。フラッシュとしては初めて作ったやつですね。
当時20歳くらいだったんで。あ~ヤバイな~そろそろ止めていいですか(笑)
上記添付の動画は大学時代の作品という事ですが、(早稲田)大学での専攻は?
大学は理系で情報工学の分野を専攻していました。
先ほどからお話聞いていて実にロジカルな語り口だなと思っていたんですけど、なるほど。山崎さんは「The Circle」初の理系クリエイターです(笑)
ずっとフリーだと伺いましたが、大学卒業後は就職されなかったってこと?
そうですね。こればっかりはあんまり人に勧められる道でもないんですけど…
親御さんは許してくれたんですか?
許してもらいました。いやー僕がずっと部屋に籠ってフラッシュ作っていたからじゃないですかね(笑)
理解のある両親に感謝してます。
早大卒~就活せず~カツカツ生活を同人界隈が救う!
早稲田の理工学部ですよね?大手企業が放っておかないキャリアですが…
大学在学中から映像(フラッシュ)に触れてるってだけで結構お仕事も頂きました。
バイトもしながら映像の外注をうけるみたいな生活で…4年になって卒論書いている時に某テレビ番組のタイトルバック制作という魅力的なお話を頂いたんですけど、卒論が忙しいからっていう理由で断らざるを得なかったんです。でも卒業するって何のためかっていうと、やっぱり最終的にはやりたい仕事をやるためじゃないですか?でもやりたい仕事(映像)を断ってしまって、わけわかんなくなって、かといって大学中退する勇気もなく…一時期結構悩みましたね。そして大学は一応卒業して大学院で中退しちゃいましたけど(笑)
それからはフリーランスとして映像クリエイターを約15年やっています。
フリーの仕事で最初のころ食べられました?
最初は正直カツカツでしたよ(笑)クライアントワークもやりましたし、あとその当時、同人界隈でちょっとした小遣い稼ぎみたいな依頼とかもあって、時代的には2007~2008年あたりで、ちょうどニコニコ動画の黎明期で、ボーカロイド界隈とかにもどっぷり首突込んでたんで(笑)そういった動画なんかも制作していました。そんな同人界隈の動画ムーブメントに助けてもらったところはあったと思います。
好きな仕事、好きなことをやっていくってスゴイことだと思うんですけど、カツカツの生活から脱したのはいつ頃?
大学院を中退してから友人とルームシェアをしていて、4年ほど経った2014年くらいですね。フリーランスになってからこのまま続けられるかどうか…勝負の期間だったんですけど、昼夜ない環境で映像を作っていました。ルームシェアしていた友人とも、たまにしか顔を合わせないような生活で(笑)そこを何とか頑張れて…その後僕は引っ越すんですけど、その頃には収入的にも、まぁしばらくは(生活)大丈夫かなといった感じでした。
映像クリエイターになった経緯について語る山崎さん
ビートマニア・グラブルからの独学で自主制作アニメ!
当時は具体的にはどのような映像制作を?
音楽系のゲームとか、それこそ「ビートマニア」の仕事を定期的に受けるようになって、それだけで生計が成立ったわけじゃないんですけど、ある程度周知されている作品をレギュラーとしてやれるようになって、その後の信頼にもなっていったんだと思います。
映像で生計が成立つようになって、その後「あれ?自分ひょっとして売れた?」って作品があれば
2017年のごろに『グランブルーファンタジー』のMV(Music Video)制作のときに経済的なことじゃなく流れがキテル!って実感しました。あとこの年に自主制作した「ここにあること」のMVですかね。
【グラブル】 Never Ending Fantasy ~GRANBLUE FANTASY~ MUSIC VIDEO
【グラブル】 三羽烏漢唄 ~GRANBLUE FANTASY~ MUSIC VIDEO
ここにあること MV
「ここにあること MV」この作品、制作にどれくらい時間かかりましたか?
相当かかりました(笑)たぶん3カ月か4カ月くらい。フラットモーショングラフィックスの技術を突き詰めていくうちに自ずとジャパニメーションの手法に近づいていたという感じで、それなら一人でアニメっぽいものを作れるかもしれないと思ってやってみました。
これは自主制作だから作れたんであってクライアントワークじゃ流石にできないですからね(笑)
このクオリティの作品が自主制作って本当すごいです!なんていうのか、山崎さんの制作意識というか、バイタリティがハンパないですね!
僕の場合は自分の満足するものを作るためにやっているんですよ。まあ、それを忘れそうになる時もあるんですけど(笑)逆言うと、映像制作を職人としてずっとやっているクリエイターさんの方が僕個人的にはバイタリティがスゴイなと思ってしまう。
政博系インスパイアクリエイター山崎浩太朗
影響を受けたクリエイターっていますか?
基本的にはあまり具体的なモチーフとかなくて、見ていて気持ちいいっていうのが原点にあるんですよ。見ていて気持ちいいな、優しいな、快感だなって。怖そうなものだったり、危機迫るようなものってなんか今まで見てきたものに紐付けて怖いと感じる?ような?なるべく人のリテラシーを必要としないものの方に興味があるというか。シンプルにその怖いものとかグロイものとか、人の印象に残すのはある意味、僕個人的には簡単に作れると感じていて、簡単ではない方向にある種の縛りを加えて、難易度の高いことをやりたいみたいな…そういう欲求があります。
そういった意味でゲームデザイナーの桜井政博さん(『星のカービィ』などで有名)にかなり影響を受けていると思います。初心者向けのゲーム設計や、親しみやすいビジュアルデザインなど、考え方や構造に共感している部分が多い。僕自身の作品にもその影響が色濃く出ていると思います。僕自身の作風もエッジが効いているというよりも、柔らかくて可愛らしい、ポップな印象を大事にしているから、エンターテイナー気質が強く、驚きや楽しさを届けることが好きで、それは昔から変わってないと思います。
作りたいものは自主制作という手段で年間1作品、必ずキープしながらクライアントワークもされていて万能なクリエイターにも見えてしまうのですが、逆に苦手なものってあるの?やってみたはいいが、これは向いてないなっていうもの?
苦手なものか~(笑)ジャンルというか、一言でいうなら「実写制作」かな。いまだにこなせる気がしないですね。触れないパラメータが多いというか。撮影中の天気や編集での変更があったり…スタッフを介して思い通りにならないところがあったり、実際に意志のある人間(俳優)を動かすわけで、物撮りにしても「もっと照明を強くしろ!」とか?カメラの映り込み(画角に余計なものが映ってしまうこと)にしてもそう。実写は苦手ですね(笑)
これ毎回The Circleのゲストクリエイターにお聞きしている下世話な質問なんですが…これまでで一番多く貰ったギャラってお幾らくらいだったり??
ギャラの単価だけですか。ギャラ単価で3桁万円とか?(笑)テレビCMですね。
裁量のある自主制作こそ本命本丸!!!
最後の質問になりますが、これから挑戦したいこと、プランや夢などあったら…
そうですね、去年、それこそ自分の楽曲(作曲)と映像でMV(Music Video)をパッケージ化したんですけど、そのMVがネットでもある程度反響を得たので、また楽曲含めて作品を作る挑戦は続けて、もっと世に広まる作品を制作したいと思っています。
KORORIN
自主制作で?
もちろんです(笑)
今後の目標も教えていただきました
山崎 浩太朗 サウンドロゴ制作の裏側
The Circleでは、クリエイターに独自の発想でiiyama SENSE∞のサウンドロゴをディレクションしてもらいます。
山崎さんの作るSENSE∞のサウンドロゴはどのようなものに仕上がったのでしょうか。
完成したサウンドロゴとともに、作業時間、こだわりのポイントなど制作の裏側もお伺いしました。
Next CREATOR
今回は映像クリエイターの山崎 浩太朗さんに今のお仕事に就かれた経緯から自主制作へのこだわり、今後の目標など内容盛りだくさんでお話しいただきました。
『The Circle』ではクリエイターに次のクリエイターを紹介していただきます。
次回もクリエイターが独自の発想でiiyama SENSE∞のサウンドロゴをディレクションする過程を取材しながら、自身の魅力やパーソナルについても追究していきます。
次のクリエイターは・・・
絶賛徹底取材中!近日公開!
取材・構成/佐藤徹也(SO創)
サウンドクリエイター/入江誠志郎(SO創)

[ネクスマグ] 編集部
パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。