2022年4月15日より発売開始、ラインナップ追加となったRyzen 5000シリーズについて、ベンチマークテストを試してみました。

気になる製品最終更新日: 20220530

AMD Ryzen 7 5700X発売情報・ベンチマークレビュー

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2020年11月6日より発売開始されたRyzen 5000シリーズ プロセッサーの登場から約1年半が経過した2022年4月15日、Ryzen 5000 シリーズ プロセッサーにラインナップの中間を埋めるモデルが発売されました。加えて現時点では未発売ですが、Ryzen 5 4500とRyzen 3 4100という下位モデルも追加される予定となっており、ようやく上位モデルのRyzen 9から下位モデルのRyzen 3までフルラインナップが揃う様になりました。
本記事では、新たに発売されたRyzen 7 5700X、Ryzen 5 5600、Ryzen 5 5500に加えて、Ryzen 5 4500、Ryzen 3 4100プロセッサーがどれほどの性能を持つのか、ベンチマークテストを試していきます。

Ryzen 7 5700Xと追加モデルのベンチマーク情報

それでは、2022年4月15日、販売開始されたRyzen 5000シリーズ追加モデルのCPUベンチマークを実行していきましょう。比較対象としては、Ryzen 5000 シリーズ デスクトップ・プロセッサーからRyzen 7 5800XとRyzen 5 5600Xを用意しました。

Ryzen 7 5800X Ryzen 7 5700X Ryzen 5 5600X Ryzen 5 5600 Ryzen 5 5500 Ryzen 5 4500 Ryzen 3 4100
コードネーム Vermeer Cezanne Renoir
製造プロセス 7nm
コア/スレッド 8/16 6/12 4/8
動作クロック 3.8GHz 3.4GHz 3.7GHz 3.5GHz 3.6GHz 3.6GHz 3.8GHz
最大ブースト・クロック 4.7GHz 4.6GHz 4.6GHz 4.4GHz 4.2GHz 4.1GHz 4.0GHz
キャッシュ L2 4MB 3MB 2MB
L3 32MB 16MB 8MB 4MB
メモリ 対応メモリ DDR4-3200
最大容量 128GB
TDP 105W 65W
対応ソケット Socket AM4
対応チップセット AMD 500・400 シリーズ

~CPUスペック比較一覧~

Ryzen 7 5700XはRyzen 7 5800Xと同じ8コア16スレッドを維持しながら、TDPを65Wに抑えた意欲作と言えるでしょう。またRyzen 5 5500 はRyzen 5 5600XやRyzen 5 5600からL3キャッシュの容量が半減しています。
モデル型番にRyzen 4000番台が付けられたRyzen 5 4500とRyzen 3 4100は、簡単に言えばRyzen 4000G シリーズと同じコアを使用し内蔵グラフィックスを無効化したモデルとなっており、Ryzen 5000シリーズのZen 3アーキテクチャーより1世代前のZen 2 アーキテクチャーとなっています。
このキャッシュ容量の違いやアーキテクチャーの違いがどのように影響するのかは、ベンチマークを通して見ていきたいと思います。

※なお、Ryzen 5 4500、Ryzen 3 4100プロセッサーはメーカーサンプルを使用しています。
※検証時の構成については記事最後尾に記載しております。

Passmark PerformanceTest

まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassmarkの『CPU Benchmarks』を用いて、CPUの総合的な演算性能を見てみましょう。

~Passmark CPU Mark~~Passmark CPU Mark~

Ryzen 7 5700XがRyzen 7 5800XとRyzen 5 5600Xの隙間を見事に穴埋めした格好となり、きれいに階段状に並びました。動作クロック以外違いのないRyzen 5 5600とRyzen 5 5600Xにはほとんど差が無く、Ryzen 5 5600のコストパフォーマンスの良さがより際立っています。上位のモデルと比べるとL3キャッシュ容量が少ないRyzen 5 5500やRyzen 5 4500はRyzen 5 5600から一段下がるスコアとなっています。Ryzen 3 4100はRyzen 5 4500と比べると、コア数/スレッド数通りのスコアと言えます。

3D Mark CPU test

次いで、3D Mark「Fire Strike / Physics Score」と「Time Spy / CPU Score」を用いて、CPUの演算性能を見ていきます。「Fire Strike / Physics Score」「Time Spy / CPU Score」共に、CPUに物理演算をさせてその処理速度を数値化したもので、CGレンダリングや動画のエンコードと同じくCPUのコア数やスレッド数の多さが有利に働くテストです。なおベンチマークテストには共にWQHD解像度(2560×1440)のFire Strike ExtremeとTime Spyを使用しています。

~3D Mark Fire Strike~~3D Mark Fire Strike~

~3D Mark Time Spy~~3D Mark Time Spy~

PassmarkのCPUMarkと似た傾向にあり、Ryzen 7 5800X ・ Ryzen 7 5700X ・ Ryzen 5 の順で階段状に並びます。Ryzen 5 同士での比較では、Fire StrikeとTime Spyで見比べるとTime Spyでの段差が縮まっており、特にRyzen 5 4500 はRyzen 5 5600X比でFire Strikeのおおよそ80%弱からTime Spyのおおよそ90%弱まで接近するなど、健闘を見せています。

3D Markの最後に、純粋にCPU性能のみを評価する「CPU Profile」を用いて、CPUの全ポテンシャルを示す「最大スレッド(Max Threads)」のスコアで比較してみましょう。

~3D Mark CPU Profile~~3D Mark CPU Profile~

全体のスコア順としてはTime Spyに近い格好となりました。個別に見てみるとRyzen 7 5700XとRyzen 7 5800Xの性能差がFire StrikeやTime Spyよりも広がっており、TDPの上限にゆとりのあるRyzen 7 5800Xの方がマルチコア時の動作クロックが伸び、スコアが伸び易いのかもしれません。逆にRyzen 5 5600とRyzen 5 5600Xでは僅か0.5%の差に留まっており、TDPが同じため両者のスコアの伸び方が似たものとなったのかも知れません。

TMPGEnc Mastering Works 6

続いて、動画編集ソフトのTMPGEnc Mastering Works 6を用いて、QuickTimeファイル1920 x 1080/2分40秒)をh.265に変換するのに要した時間(単位:秒)を測定しました。グラフの短い方がより高速に処理を行っている事になります。

~TMPGEnc~~TMPGEnc~

TMPGEnc Mastering Works 6においては、全体の傾向として3D MarkのCPU Profileと似たものとなっています。CPU Profile と同様、CPUの演算性能が端的に表れるような処理内容では、Ryzen 7 5700XよりTDPの上限にゆとりのあるRyzen 7 5800Xの方が有利なのでしょう。
また、Ryzen 5 4500とRyzen 3 4100はZen 2アーキテクチャーであることから、Zen 3アーキテクチャーのRyzen 5000 シリーズに差を付けられた格好となっています。

PCMark 10

最後に、PCのパフォーマンスを総合的に判断できるPCMark 10を見ていきましょう。

~PCMark 10~~PCMark 10~

PCMark 10では、これまでとは異なる結果となり、階段状の並び方がややばらけた格好となりました。Ryzen 7 5700XとRyzen 7 5800Xの差は動作クロック通りとなっており、総合的なパフォーマンスにおいてはTDPの違いはあまり影響しないのかもしれません。また、動作クロックが同じRyzen 7 5700XとRyzen 5 5600Xのスコアが接近している事から、PCMark 10においてはコア数やスレッド数による影響が小さいのかもしれません。
また、Ryzen 5 4500とRyzen 3 4100は、TMPGEnc Mastering Works 6と同様にRyzen 5000 シリーズに差を付けられた格好となっていますが、Ryzen 5 5500もRyzen 5 5600に差を付けられていることを考えると、L3キャッシュ容量の少なさが影響しているように思われます。
個別にベンチマークスコアを見ていくと、クリエイティブアプリの性能を示すDigital Contents Creationで差が付けられており、クリエイティブな作業を除けば一般的なPCの日常的作業においてはRyzen 5 4500やRyzen 3 4100でも十分な性能を有していると言えそうです。

選択の幅を広げたRyzen 5000シリーズの追加モデル

今回新たに追加されたRyzen 5000シリーズで、一番の注目はRyzen 7 5800Xと同じ8コア/16スレッドの仕様を維持しながら動作クロックを抑えることでTDPを65Wに抑えたRyzen 5700Xなのは間違いないでしょう。ベンチマークを見てもRyzen 5 5600XとRyzen 7 5800Xの間に見事に収まっており、扱いやすいRyzen 7として十分に期待に応えてくれそうです。
Ryzen 5 5600とRyzen 5 5600Xは動作クロック以外の違いは無く、ベンチマーク上の性能差も小さく、それでいて数千円ほど安価なRyzen 5 5600はお買い得感の高いCPUではないかと思われます。
Ryzen 5 5500はL3キャッシュメモリが少ない事もあってRyzen 5 5600との間に性能差が見られますが、2万円ちょっとで入手できる一番安価なRyzen 5000 シリーズとして、Ryzen 5000シリーズの選択肢を広げてくれています。
Ryzen 5 4500とRyzen 3 4100は発売時期が遅れていて現時点ではまだ販売されていませんが、今のRyzenシリーズではすっぽりと抜け落ちていた価格帯である1万円台で入手できる安価なCPUとなるでしょう。絶対的な性能ではRyzen 5000 シリーズには一歩譲るものの、用途を割り切って使用するには十分な性能を有していると言えるでしょう。
今回追加された新モデルにより、TDPを抑えて扱いやすくなったり、安価に入手しやすくなったりと、Ryzenシリーズの選択の幅が広がったことは、歓迎したいと思います。

Ryzen 5000 シリーズ Ryzen 4000 シリーズ
CPU Ryzen 7 5800X
Ryzen 7 5700X
Ryzen 5 5600X
Ryzen 5 5600
Ryzen 5 5500
Ryzen 5 4500
Ryzen 3 4100
マザーボード ASUS PRIME X570-PRO
メインメモリ DDR4-3200 32GB (16GB x2)
グラフィックス MSI製 GeForce RTX 3070 Ti (ビデオメモリ 8GB)
ストレージ Samsung 980 PRO 1TB (MZ-V8P1T0B) PCIe Gen 4.0 M.2 NVMe SSD
電源 Seasonic SSR-1000GD (80PLUS Gold、1000W)
OS Windows 11Home 64bit (バージョン:21H2)
ビデオドライバ GeForce Game Ready Driver Ver511.79

~テスト環境~

ライタープロフィール 職人5号

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。

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