2023年1月13日に発売されたTDP 65WのRyzen 7000シリーズについて、ベンチマークテストを試してみました。

気になる製品最終更新日: 20230120

AMD Ryzen 7000シリーズ65Wモデル ベンチマークレビュー

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2022年8月30日のAMD Ryzen 7000 シリーズ・プロセッサーの発表から4か月の時を経て、2023年1月10日にTDPが65Wに抑えられ、空冷のCPUクーラーでも扱えるようになったモデルとなるRyzen 9 7900、Ryzen 7 7700、Ryzen 5 7600の3製品が発表されました。
今回はこの65W版Ryzen 7000シリーズについてベンチマークを行っていきます。

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65W版Ryzen 7000 シリーズ がラインナップに追加!

TDPが65Wに抑えられたRyzen 9 7900、Ryzen 7 7700、Ryzen 5 7600の3製品が発売されました。先に発売されていたCPU型番に「X」のある4製品にラインナップが追加される形となります。CPU型番に「X」が無いことが見分けるポイントとなっています。
消費電力を抑えつつも最大ブースト・クロックが5GHzを上回っているのは、Ryzen 7000 シリーズの大きな特徴と言えるでしょう。65W版Ryzen 7000 シリーズの一番のメリットは、CPUクーラーにコンパクトな120mm水冷クーラーや空冷クーラーを使用することが可能となったことでしょう。CPUクーラーの選択肢が広がったことで、ミニタワーケースやキューブケースなどより小型なケースを使用したり、より消費電力の少ない構成にしたりと、組合せの自由度が増しています。
また、AMD製の純正クーラーも同梱されているので、CPU自体のコストパフォーマンスもより高まっています。

Ryzen 9 7950X Ryzen 9 7900X Ryzen 9 7900 Ryzen 7 7700X Ryzen 7 7700 Ryzen 5 7600X Ryzen 5 7600
コア/スレッド数 16/32 12/24 8/16 6/12
動作クロック 基本クロック 4.5GHz 4.7GHz 3.7GHz 4.5GHz 3.8GHz 4.7GHz 3.8GHz
最大ブースト・クロック 5.7GHz 5.6GHz 5.4GHz 5.3GHz 5.1GHz
キャッシュメモリ L2 16MB 12MB 8MB 6MB
L3 64MB 32MB
メモリ 対応メモリ DDR5-5200
最大容量 128GB
消費電力 TDP 170W 65W 105W 65W 105W 65W
PPT 230W 88W 142W 88W 142W 88W
内蔵GPU Radeon Graphics
64bitコード AMD 64
SIMD命令 SSE SSE4.1 / 4.2
AVX AVX512

~Ryzen 7000スペック表~

なお、Ryzen 7000シリーズ・デスクトップ・プロセッサーは従来モデルよりも厚みが増しており、SocketAM4用リテンションのままではCPUクーラーが取り付けられない可能性が有りますので、対応状況には十分に注意してご利用下さい。

65W版Ryzen 7000 シリーズ ベンチマーク情報

それでは、追加された65W版Ryzenデスクトップ・プロセッサーのCPUベンチマークを実行していきましょう。今回ベンチマークテストを行うのは、Ryzen 9 7900、Ryzen 7 7700、Ryzen 5 7600の3つです。比較対象としては、Ryzen 7000 シリーズからはRyzen 9 7900X、Ryzen 7 7700X、Ryzen 5 7600Xを、Ryzen 5000 シリーズからは同じTDP65WのRyzen 7 5700XとRyzen 5 5600Xを用意しました。
ベンチマークを行うにあたり、Ryzen 7000シリーズのメモリはDDR5-4800、Ryzen 5000シリーズのメモリはDDR4-3200となっています。また、Ryzen 7000シリーズは最適化が着々と施されていますので、今後のBIOSやドライバーなどのアップデートによりさらに性能向上する可能性があります。
※検証時の構成については記事最後尾に記載しております。

Ryzen 9 7900X Ryzen 9 7900 Ryzen 7 7700X Ryzen 7 7700 Ryzen 5 7600X Ryzen 5 7600 Ryzen 7 5700X Ryzen 5 5600X
コア/スレッド数 12/24 8/16 6/12 8/16 6/12
動作クロック 基本クロック 4.7GHz 3.7GHz 4.5GHz 3.8GHz 4.7GHz 3.8GHz 3.4GHz 3.7GHz
最大ブースト・クロック 5.6GHz 5.4GHz 5.3GHz 5.1GHz 4.6GHz
キャッシュメモリ L2 12MB 8MB 6MB 4MB 3MB
L3 64MB 32MB
メモリ 対応メモリ DDR5-5200 DDR4-3200
最大容量 128GB
消費電力 TDP 170W 65W 105W 65W 105W 65W
PPT 230W 88W 142W 88W 142W 88W
内蔵GPU Radeon Graphics 搭載なし
64bitコード AMD 64
SIMD命令 SSE SSE4.1 / 4.2
AVX AVX512 AVX2

~CPUスペック比較一覧~

PassMark PerformanceTest

まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassMarkの『CPU Benchmarks』を用いて、CPUの総合的な演算性能を見てみましょう。なおテストに使用したソフトウェアはPassMark 9となります。

~PassMark CPU Mark~~PassMark CPU Mark~

Ryzen 9 7900が半分以下のTDPでありながらスコアの差はおおよそ6.5%に留まるなど、65W版 Ryzen 7000は「X」型番Ryzen 7000に遜色ない優れた性能を見せてくれました。これだけの性能が水冷CPUクーラーを使用する事なく手に出来るならば十分でしょう。また、Ryzen 5 7600がRyzen 7 5700Xを上回っており、Ryzen 5000シリーズからの着実な進化が見て取れます。
Ryzen 7000シリーズの謳い文句でもある13%向上したというIPCが最も端的に表れるシングルスレッド性能について見てみると、一番動作クロックの低いRyzen 5 7600でもRyzen 7 5700Xを15%以上上回っており、AMDの謳い文句通りの性能となっています。

~PassMark シングルスレッド~~PassMark シングルスレッド~

また、Ryzen 7000シリーズはAVX512に対応するなどSIMD性能を向上させています。SIMD性能が端的に表れるExtended Instructionsについて見てみると、Ryzen 5 7600がRyzen 7 5700Xをおおよそ25%も上回っており、Ryzen 7000シリーズの優位性が明確に表れています。

~PassMark シングルスレッド~~PassMark Extended Instructions~

3DMark CPU test

次いで、3DMark「Fire Strike / Physics Score」と「Time Spy / CPU Score」を用いて、CPUの演算性能を見ていきます。「Fire Strike / Physics Score」「Time Spy / CPU Score」共に、CPUに物理演算をさせてその処理速度を数値化したもので、CGレンダリングや動画のエンコードと同じくCPUのコア数やスレッド数の多さが有利に働くテストです。なおベンチマークテストには共に4K解像度(3840×2160)のFire Strike UltraとTime Spy Extremeを使用しています。

~3DMark Fire Strike~~3DMark Fire Strike~

~3DMark Time Spy~~3DMark Time Spy~

Fire StrikeやTime Spyでも Ryzen 7000シリーズが高い性能を示しています。また、Time SpyはFire Strikeよりも全体的にばらけた感じになっており、上位のモデルほど上に引き上げられている様に見えます。Ryzen 9 7900とRyzen 5 7600で見てみると、Fire StrikeではRyzen 9 7900はRyzen 5 7600のおおよそ1.35倍なのに対し、Time Spyではおおよそ1.75倍と差が広がっています。
 
それでは、3DMarkの最後に純粋にCPU性能のみを評価する「CPU Profile」を用いて、CPUの全ポテンシャルを示す「最大スレッド(Max Threads)」のスコアで比較してみましょう。

~3DMark CPU Profile~~3DMark CPU Profile~

Time Spyと似た形になっています。基本的にスレッド数の多いCPUの方が優位になるベンチマークですが、12スレッドのRyzen 5 7600が16スレッドのRyzen 7 5700Xに迫るスコアを示しており、65W版Ryzen 7000シリーズは3Dアプリの演算処理においても高いポテンシャルを持っていると言えそうです。

TMPGEnc Mastering Works 6

続いて、動画編集ソフトのTMPGEnc Mastering Works 6を用いて、QuickTimeファイル(3840x2160/2分50秒)をh.265に変換するのに要した時間(単位:秒)を測定しました。グラフの短い方がより高速に処理を行っている事になります。

~TMPGEnc~~TMPGEnc~

TMPGEnc Mastering Works 6でも、全体的にはPassMarkのCPU Markに似たものとなっています。Ryzen 5 7600がRyzen 7 5700Xをおおよそ15%上回るなどRyzen 7000シリーズの優位は揺るぎませんが、AVX512対応のアプリケーションであればRyzen 5000シリーズとの差はさらに広がると思われます。

低い消費電力でも高いポテンシャルを秘めた65W版Ryzen 7000シリーズ

Ryzen 7000シリーズの低電力モデルとなる65W版Ryzen 7000シリーズは、全てのベンチマークテストで「X」型番のRyzen 7000シリーズに準ずる性能を示しており、消費電力が少ないだけでなく優れた性能も持ち合わせている事が確認できました。
Ryzen 9 7950XやRyzen 9 7900XなどはCPUの発熱が大きい事から、CPUクーラーの冷却性能などに注意を払う必要が有り、性能が高いことは分かっていても手軽さには欠けていました。今回発売された65W版Ryzen 7000シリーズならば、Ryzen 7000シリーズの優れた性能をより手軽に扱えるようになり、CPUクーラーやケースなどの自由度が広がります。コンパクトな構成でRyzen 7000シリーズを試してみたいな、というユーザーにも良いCPUではないでしょうか。
惜しむらくは、パートナーとなるマザーボードが高価なこと。CPUは安価で高性能なコストパフォーマンスに優れた製品ですので、B650チップセットなどで安価なマザーボードが早く登場する事を期待したいところです。

「X」型番
Ryzen 7000シリーズ
65W版
Ryzen 7000シリーズ
Ryzen
5000 シリーズ
CPU Ryzen 9 7900X
Ryzen 7 7700X
Ryzen 5 7600X
Ryzen 9 7900
Ryzen 7 7700
Ryzen 5 7600
Ryzen 7 5700X
Ryzen 5 5600X
マザーボード ASUS Prime X670E-PRO WIFI ASUS Prime X570-PRO
メインメモリ DDR5-4800 32GB(16GBx2) DDR4-3200 32GB(16GBx2)
グラフィックスカード GeForce RTX 3070 Ti (ビデオメモリ 8GB)
ストレージ Samsung 980 PRO 1TB (MZ-V8P1T0B) PCIe Gen 4.0 M.2 NVMe SSD
電源 Seasonic SSR-1000PD (80PLUS Platinum、1000W)
OS Windows 11 Home 64bit (バージョン:22H2)
ビデオドライバ GeForce Game Ready Driver Ver 512.16

~検証に使用した構成~

ライタープロフィール 職人5号

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。

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