デジタル施策(Webサイト、スマートフォンアプリ、各種Web・バナー広告など)に携わる数多くの担当者に必要不可欠なデジタルマーケティングについて、業務の円滑化につながる話を展開します。

ITトレンド最終更新日: 20210816

デジタルマーケティング・解析に最適なパソコンとは?

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デジタル施策(Webサイト、スマートフォンアプリ、各種Web・バナー広告など)に携わる数多くの担当者にとって、デジタルマーケティングは必要不可欠な業務です。業務遂行の上で、Google AnalyticsやGoogle Data Studioに接する機会も多いでしょう。ここでは新任のデジタルマーケティング担当のみなさんに向けて、「日々の業務を効率化するパソコン」や、先のツールを通じて「できること」の2軸を使って、業務の円滑化につながる話を展開します。

「マーケティング」について

ここからは、国内外のスタートアップ企業などでマーケティングを担当してきた筆者の立場からまとめていきます。デジタルマーケティング担当者にとって、頻度高く接するツールの代表がGoogle AnalyticsやGoogle Data Studioと言っていいでしょう。これらのツールが円滑に動作する環境(パソコンのマシンスペック)作りは、通常業務の質を上げるためにも大切なことです。

まずは、それらの意味をより深く理解するためにも、前提となる「マーケティング」について触れておきます。「マーケティング」をWikipediaで調べると、以下の通りに記されています。

企業などの組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする」ための概念

言い換えるなら、潜在的なニーズを持つ相手に自社のサービスや商品を知ってもらい、理解してもらうこと、となるでしょうか。現代では商品・サービスの認知や理解において、重要な役割を果たすのがWebサイトやモバイルアプリといったデジタル領域(インターネット)での活動です。毎年電通が発表する「日本の広告費」によると、2019年にデジタル関連広告費が2兆円を超え、初めてテレビ広告費を上回りました。

調査結果からも、年々デジタル領域でのマーケティング活動の重要性が増していることがわかります。

なぜデジタルマーケティングが重要なのか?

デジタル領域でのマーケティング活動(デジタル・マーケティング)は、従来のマーケティングよりも計測がしやすく、その効果が数値化できる特徴があります。

例えば、ビルの屋上に掲げられた宅配ピザの看板に対して、この看板を見たAさんが宅配ピザを注文したとします。ここで考えられる注文の理由は、

1 看板ピザを見たから
2 たまたまピザを食べたいと思っていたから
3 以前、自宅の郵便ボックスに入っていたチラシを思い出したから
etc.

直接の要因について、はっきりした判断がしづらいです。「看板」が「購入」というAさんの行動にどれほど影響したのか? 従来のマーケティングだと考えづらい投資対効果を象徴した例です。

一方、デジタル領域でのマーケティングは(誤解を恐れずに言うと)消費者の行動をトラッキング(追跡)し、計測できます。その結果、投資対効果が算出しやすいわけです。

例えば、BさんがあるWebサイトで宅配ピザのバナー広告を見た後、その広告をクリックしてピザを注文したとします。この場合、広告をクリックしたBさんの行動とその後の注文がトラッキングされます。デジタル上では、バナー広告の効果として注文が行われた(成果があった=コンバージョンがあった)という紐づけが簡単にできるので、このバナー広告の出稿による投資対効果が明確に数値化できます。こうしたデータが、マーケティング予算をどこにどれほど投下すべきかについて、有力な判断材料となります。

適切なスペックを搭載するパソコンを利用しよう

デジタルマーケティングでは、購入に至ったユーザーの情報はもちろん、購入に至らなかった匿名ユーザーも含めて、ユーザーの属性や、どこから自社サイトに流入しどのような動きをサイト内で行い、購入に至ったかという情報をトラッキングし、分析することが非常に重要な意味を持ちます。こうした行動のトラッキングや分析に大きな力を発揮するのが、Googleが提供するトラッキングおよび分析ツール「Google Analytics」です。無償から使い始められることも含めて、多くのデジタル業務担当者が接する機会が多いツールです。

Google Analyticsは、自社Webサイトに来たユーザーがどのWebサイトから来たのか、Webサイト内でどのように行動し、どれほど滞在していたのかなどについて、非常に詳細な情報をトラッキング・分析が可能です。下は画面サンプルです。

Google Analyticsは、Webサイトにコードを埋め込むことで、該当サイトを訪れたユーザーをトラッキングできるだけでなく、SDK(Software Development Kit:ソフト開発キット)を利用し、自社アプリに組み込めばアプリでの行動もトラッキングできます。こうして自社サイトやアプリを利用するユーザーを分析することが、データを資産として扱い、デジタルマーケティングを実行するための肝です。

Google Analyticsを使いこなせることは、デジタルマーケターのキャリアで必ず問われることだと言ってもいいでしょう。企業、組織側も、特に新任マーケターを迎える際には適切なパソコンを提供し、以後のパフォーマンスで支障が出ない体制作りも大切です。

簡単な業務は、標準的なPCで支障なし

十分なツール活用には、実行環境としてのパソコン(PC)への留意が不可欠です。広くさまざまな企業、組織に浸透しているGoogle Analytics(以下GA)を中心に考えると、Webブラウザで動作するGAを単体で利用するだけなら、標準的なノートパソコンで十分に対応可能です。

例えば、以下で挙げているマシンをはじめ、特別に機能強化をしていなくても一般的なパソコンスペックを搭載していれば、(極端に低スペックなマシンでなければ)問題ありません。

ただし、扱うデータ量が増大したり、GAのデータをGoogle Data Studioで視覚化したり、Microsoft Excelで分析したい場合、メモリ容量が重要になります。GAの分析レポートは優れていますが、さらに視覚的でわかりやすく、外部のデータとも組み合わせたレポートを作るなら、Google Data Studioを活用したいところです。このツールは、さまざまなデータソース(GAはもちろん、ExcelやCSV、外部サービスなど)と連携して視覚的にわかりやすく、任意に強調したい箇所を設けるなどカスタマイズしたレポートが作成可能です。下はGoogle Data Studioの画面サンプルです。

本格的な業務には、メモリは最低16GB以上

Google Data Studioは、GA以上にメモリ消費を伴う作業です。

あまりメモリ容量のないマシンの使用だと、効率的な作業ができず、ストレスを感じる時間が増えるかもしれません。処理は、基本的にクラウド側で行われ、Webブラウザは描画のみが行われますが、読み込むデータの行数が増加したり、複雑なグラフ描画の組み合わせを行う場合、Webブラウザ側で描画を行うJavaScriptの実行で、一定のメモリが消費されます。メモリが少ないほど、描画に時間がかかり、Webブラウザ以外の他アプリケーションの動作も緩慢になります。

Excelを使う場合も、メモリの容量がネックになる可能性があります。

分析過程では、VLOOKUPやSUMIFなど指定した範囲から検索条件にあった数値を抽出・集計するような関数の使用はよくあることです。このような関数は、シートの行数が多かったり、対象範囲が広い場合、メモリに集計途中のデータをロードしながら計算します。作業するPCにメモリが十分に積まれていないと、データ分析中にマシンの稼働が緩慢になったり、最悪フリーズする要因にもなります。
メモリは後から増設が可能ですが、当初から一定量の作業を想定する場合、購入段階から最低でも16GB、扱うデータ量の増大が見通せるなら32GBは用意しておきましょう。また、ディスクの書き込み・読み込み速度も問題となる可能性があります。その場合、HDD(ハードディスクドライブ)より読み書き速度が長けているSSDを搭載したPCにすることで、大きなボトルネックになることはないでしょう。

適切なマシンを揃えた上でやるべきこと

使いこなす環境について押さえてきたので、最後にGAの使い方の基本も押さえましょう。ポイントは大きく2つで、1つが計測を振り返る頻度で、もう1つが必要な指標への着目、です。
まず、1つ目の計測を振り返る頻度についてです。
例えば、自社サイトが毎日新商品の情報が更新されるような場合、毎日GAにログインし、前日と比べての変化を必ずチェックしましょう。毎日更新されることがないWebサイトなら、外部要因(マスメディアで取り上げられたり、ソーシャルメディアで話題になったり)を別にすれば、日々の変化は大きくないため1週間や1カ月に1度、など頻度を決めて定期的に数値をチェックしましょう。
次に、2つ目の指標についてです。
代表的な指標として、以下の4つが挙げられます。

1 PV(ページビュー)
2 新規ユーザー
3 参照元
4 コンバージョン

1 PV(ページビュー)

デフォルトでは、直近7日間のPVが表示されます。Webサイト全体はもちろんのこと、どのページがより読まれているのかは重要な指標です。PVだけではどの程度ユーザーが真剣にWebサイトを見たかがわからないため、滞在時間や直帰率(Webサイトを訪問したユーザーが1ページしか見ないで、Webサイトを去ってしまった率)も同時にチェックしましょう。

2 新規ユーザー

GAでは、過去2年間にWebサイトを訪れたことがないユーザーを「新規ユーザー」とします。自社サイトに固定ユーザーしか来ていないのか、ユーザーが定着したか否かなどの分析に必要な指標です。下はサンプルで、左ペインのメニュー「ユーザー」をクリックすると、新規ユーザー(New Visitor)とリピーター(Returning Visitor)の構成やセッション(ユニークユーザー)を確認できます。

3 参照元

参照元は、どのようにして自社サイトにユーザーが訪問したか、ということです。検索エンジン経由なのか、検索キーワードは何か、どこかのWebサイトからリンクされているのか、ブックマークから訪問したのかなどを確認できます。2(新規ユーザー)と合わせて、ユーザー獲得のための分析材料に用います。下はサンプルで、さらにGoogle Search Consoleを利用すれば、検索エンジンでどのようなキーワードで検索し、訪問したかの確認も可能です。

4 コンバージョン

商品やサービスの購入など、自社が目標とする状態になったユーザーを計測する指標です。究極的には、デジタルマーケティングはいかに効率的にコンバージョンを最大化することが目標となります。
新たにデジタルマーケティングの業務を始めるみなさんは、環境整備とともに、最初は1〜4の指標を意識してみてください。

ライタープロフィール 野澤智朝

広告クリエイティブや技術、ガジェットなどを取り上げるメディア「ニテンイチリュウ」の運営者であり、現役マーケター。デジタルクリエイティブやデジタルマーケティングに関するメディアで連載を担当してきたほか、各種記事の寄稿が多数。

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