どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアートディレクターの横山 剛さんです。

クリエイター最終更新日: 20201204

アートディレクター:オーダーを白紙に戻し情報を再構築する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアートディレクターの横山 剛さんです。
様々な企業サイトを手がけている横山さんは、今までにないコンテンツで人々を驚かせています。そのアイデアはどこから湧いてくるのか、探っていきたいと思います!

横山さんが携わった作品

2020年度リクルートキャリアの採用サイト。これまでの「職務マッチング」型のサイトから、会社の魅力をPRする「採用ブランディング」型にリニューアル。ほぼ全ページにタグ付けし、情報を検索しやすいように設計。これまでのトーンを踏襲しつつ、モバイルファーストのデザインに仕上げました。

産業廃棄物の中間処理や再生品を製造する石坂産業株式会社のコーポレイトサイト。事業のポリシーを企業メッセージとしてトップページから発信。地球環境や資源について考えてもらえるようなデザインにリニューアル。この作品は2018日本BtoB広告賞金賞を受賞しました。

友達の8mmビデオカメラがクリエイティブの原点

横山さんはどんな少年時代を過ごしましたか?

外遊びが好きで、放課後は友達と裏山に行って遊びまわっている子供でした。でもすぐ飽きちゃうんですよね。だから、新しい遊び方を考えたり、もともとある遊びをアップデートしていました。小学4年生の頃だったと思うのですが、友達の家に8mmビデオカメラがあったんですよ。それを使ってCMを作るのにハマりました。題材は漫画雑誌とか、本当その辺にある身近なもの。“編集”できる技術もなかったので、自分たちで「ここでページを開いて!」とか編集点を考えながら撮影していました(笑)。中学生になると、ビデオカメラとラジカセを繋げると音の編集ができることに気づいて、そこからまた格段と技術が上がりましたね。

クライアントからのオーダーは一度白紙に!?

横山さんの代表作を教えてください

蜷川実花監修のカメラアプリ「cameran」。スマホで撮った写真を蜷川実花さんの作品ように加工できるアプリです。企画からプロジェクトに加わりました。このアプリはリリース直後から話題になり、日本だけでなく台湾や香港の人たちにも注目されました。

横山さんにとってターニングポイントになったお仕事はなんですか?

先ほどの「cameran」のプロジェクトでしょうか。当初はスマホで加工できるフォトショップ機能のアプリを開発しようとしていたんですよ。でも、それってフォトショップを使い慣れている人たちの思考で、普通の人はスマホでフォトショップを使いたいと思わないですよね。なので簡単におしゃれな写真に加工できるフィルターを開発しよう、と考えたのがこのアプリ開発の始まりです。

そこから学んだことはありますか?

学びというか、クリエイティブな仕事の原点に戻った感じがしました。「こんなことをアプリで実現したい」という思いがあるのですが、その技術はない。開発を担当するエンジニアの人たちは「無理!」と言うのですが、僕はどうしてもやりたい(笑)。なので、めちゃくちゃ細かく何度も説明をしてどうにか開発してもらいました。こだわり抜いたアプリで、蜷川さんにも褒めてもらえました! 技術はないけど工夫をして実現するって、小学生の頃8mmカメラでCMを作っていた頃と同じだなと思いました。

クリエーターならではのエピソードですね。いろんな経験を積んでいる横山さんですが、仕事で失敗したことはありますか?

フリーランスになって3ヶ月くらいのとき、不眠不休で仕事をしていました。ある日仮眠して起きたら部屋の中がFAXの紙でいっぱいになっていたんです! 頭が真っ白になって、家を飛び出しちゃいました。なんども電話がかかってきて、家に戻ると編集の人が玄関に…。怒られることはなく「大丈夫ですか?」と心配してくれたのですが、そこから仕事の仕方を変えるようになりました。その後は事務所も立ち上げて、アシスタントにも入ってもらいチームで動いています。

仕事をしていて、一番興奮した瞬間はどんな時ですか?

日産自動車とJAXAによる「宇宙短冊」というプロジェクトです。WEBサイトで募集した子供達からの願いを国際宇宙センターに滞在中の古川聡さんに届け、読み上げてもらうというものでした。古川さんが短冊を読み上げる様子をWEBで公開したのですが、それをディレクションするということはすごく難しかったです。でも地上から宇宙空間へ指示を出すって、めちゃくちゃすごいことしてるし、宇宙に自分のデザインが飛んでいるって想像するだけで感動しました。

それは貴重な経験ですね! 仕事をするうえで、もっとも大切にしていることは何ですか?

クラアントからの要望は一度白紙に戻すようにしています。それはターゲットや目的を自分で考え直したいから。アイデアに偏りがないようにしたいし、プロセスも知りたい。そうすることで幅広いデザインができるんです。フリーランスになって売り込みしていたとき、まだ実績がなかったのでポートレート代わりに、すでに発売されている雑誌の特集を自分なりに再構築してリデザインしたものを持って行きました。そこで「この情報はこう表現した方がいいと考えたので、このようにデザインしました」とプレゼンしたんです。そうすると編集の人も、「おもしろい!」と言ってくれるんですね。そのおかげで、翌月から仕事を発注してくれるようになったんだと思います。

ツールを駆使して、仕事を効率化

現在、どんなPCや周辺機器を使用していますか?

携帯性をとって、PCは13インチノートブック(2.7 GHz クアッドコアIntel Core i7/16GB 2133MHz LPDDR3)、オフィスでの作業用に27インチの4K(3840 × 2160)ディスプレイを使用しています。

PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。

デザイン作業が主ですが、打ち合わせも多いので携帯性を重視しつつ、CPUやメモリなどなるべくスペックの高いものにカスタマイズしています。

オススメのツールがあれば教えてください。

 Thunderbolt 3対応のディスプレイが便利です。使用している13インチノートブックPCと給電、ディスプレイ、周辺機器など一つのケーブルで接続できるので、デスクトップ周りがスッキリします。ディスプレイ接続時、ノートブックPCのディスプレイはサブディスプレイとして活用。指示書や参考資料などをサブにおいて、メインディスプレイでデザインしています。

楽しんで取り組んで、世間を楽しませよう

横山さんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?

今までの仕事を振り返ると、その時一番楽しいことをしている気がします。おもしろいことをやって、それでみんなが喜んでくれる。世の中で話題になっていることの裏に自分がいる、その状況は自分にとっても喜びです。今まで広告賞もいただいていますが、それを目指すことは、正直あまり好きじゃないんですね。自分がとことんこだわって、楽しんで作品を作り上げる。その後に結果がついてくると思っています。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

僕の事務所にも就職を希望する人がやってくるのですが、ポートレートを見てもあまりグッとくるものがありません。学校で学んだことだけで作品を作っているようで、その人自身が考えていることや熱意が伝わってこないんです。先ほど「要望は一度白紙に」というお話をしましたが、課題を自分で解決する思考を持つこと、自分の考えをはっきりと伝える作品を作ることが大切だと思います!

横山さん、ありがとうございました!

自分で考えれば、クライアントからも信頼される!

ひょんなことから、20年前にフリーランスとなり、ご自身で道を切り開いてきた横山さん。相手の意見を尊重しつつ、自らの思考で情報を読み解き再構築する。そのクリエイティブ哲学を持っているからこそ、クラアントからの信頼も厚いんですね。自分自身で考え抜く力を身につけましょう!

クリエイタープロフィール

横山 剛さん
アートディレクター・(株)グレイビートレイン代表
1974年生まれ。エスモードジャポン卒業。(株)リクルート、デザイン会社勤務を経て1994年にグレイビートレインを設立。企業の採用サイトやコーポレイトサイトを数多く手がける。ロッテのキャンディ『カフカ』のPR動画「ふかふかかふかのうた」で、カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル サイバー部門 ブロンズ賞を受賞。そのほかにも多数の広告賞を受賞している。
http://www.gravytrain.co.jp/

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

記事を
シェア