大学在学中にフリーランスになり、大学院在学中に「株式会社メンヘラテクノロジー」を起業、という少し珍しい経歴を辿ってきた高桑蘭佳さんに、現在の活動や今後の進路についてインタビューしました。

ITトレンド最終更新日: 20200108

大学在学中にフリーランスになり、大学院在学中に起業。学生社長・高桑蘭佳の「理想の働き方」

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大学在学中にフリーランスのライターとして活動を始め、NEXMAGでも「ranran」名義で『ニューラルネットワークを使ってLINEの相手が「おじさん」か「女の子」か見破ってみた』などの記事をしてくださっている、高桑蘭佳さん。
昨年には「株式会社メンヘラテクノロジー」を起業し、その社名のユニークさや事業アイデア、高桑さん自身のキャラクターが、ネットやテレビでたびたび話題になりました。
今回は、大学在学中にフリーランスになり、大学院在学中に起業、という少し珍しい経歴を辿ってきた彼女に、現在の活動や今後の進路についてインタビュー。今までの経験から見えてきた「理想の働き方」についてもお話を伺ってきました。

「学生・フリーランス・社長」三つの立場で活躍する現在

高桑さんは現在大学院生ということですが、学校ではどんなことを勉強しているのでしょう?

私は現在、東京工業大学の社会理工学院修士課程1年に在籍しています。東工大というと理系のイメージがあるかもしれませんが、所属しているのは文理融合のコースで、自然言語処理を使った社会学に取り組みたいと思っています。

研究テーマとしては、具体的にどういったことを扱っているのですか?

「メンヘラの特徴」や「メンヘラを自認している人・自認していない人の違い」など、私が興味のあるテーマを片っ端からを研究させてもらっています。

ゆくゆくは、株式会社メンヘラテクノロジー名義でも研究論文を出したいですね。論文を発表すれば、会社の社会的な信用度も高まるのではないでしょうか。

高桑さんは、フリーのライターとしてもお仕事をされています。ライターとしてのキャリアは、どのような経緯でスタートしたのでしょう?

大学1年生のとき、あるWEB制作会社のブログで活躍されていたライターさんのファンになったのがきっかけです。大学2年生になり、ライターのインターンを募集していた会社で働き始めました。フリーランスとして仕事をいただくようになったのは、その少し後、ちょうど2社目でインターンをしていた時期です。

フリーランスとしての仕事は、どのように見つけてくるのですか?

はじめのうちは、知り合いの紹介など、何らかの繋がりがある方からお仕事をいただくことが多かったです。自分の名前で記事を書いているうちに、だんだんとTwitter経由で執筆依頼をいただくことも増えてきました。

ちなみにフリーランスのライターとして一番たくさん働いたのは、大学4年生のときですね。学業と並行して、1年間で50〜60本くらいの記事を書いていました。

株式会社メンヘラテクノロジーの社長としては、どのようなことを行っているのでしょう?

一緒に働いてくれるメンバーの採用やサービスの設計、ブランディングの考案、資金調達のための投資家へのプレゼンなど、創業したばかりということもあって、幅広い業務に携わっています。会社としては、メイン事業である自社サービス「メンヘラせんぱい」の開発を行っている段階です。

その「メンヘラせんぱい」というのは、どういったサービスなのでしょうか?

メンヘラが病んだときに、すぐに相談できる相手と安心感を提供する、オンラインチャットサービスです。「自分が欲しいサービス」をベースに、プロトタイプの運用やユーザーヒアリングを重ね、改良を続けています。

起業の動機は「彼氏の会社の社外取締役になりたいから」

株式会社メンヘラテクノロジーを創業したのは、フリーランスのライターとして働き始めたあとのことですか?

そうですね。2018年の8月に創業し、現在2期目になります。当時私は就職活動をしていて、ビジネスコンテストのような形式のサマーインターンに参加しました。そこで私の考えた事業アイデアが選ばれ、出資を受けて起業する権利を獲得したんです。

ただ、選ばれた当初は実際に法人化するつもりはありませんでした。自分が会社を経営するなんて、想像もできなかったので。

高桑さんの会社「株式会社メンヘラテクノロジー」Webサイト

ではなぜ、株式会社メンヘラテクノロジーを起業することになったのでしょう?

当時私は、彼氏が経営している会社の社外取締役になりたいと思っていたからです。彼氏が仕事や飲み会に行ってしまって、私に構ってくれないのがすごく嫌で…。社外取締役になれば、私の裁量でそういった機会を減らせるのではないかと考えていました。

でも、いざ彼氏に「社外取締役にしてくれ」と頼んだら、「なんの実績もない彼女を社外取締役にしたら、社員の人たちがよく思わないでしょ」と断られてしまったんですよ。「それなら起業して実績をつけて、正式に社外取締役になってやる!」と宣言したのが、最終的な起業の動機です。

起業することに対して、不安や迷いはなかったのですか?

フリーランスとしてライターを始めたときと同様、「機会があるならやってみようかな」くらいの軽い気持ちでした。彼氏は冗談で言っていると思ったみたいで、特に止められることもありませんでしたね。宣言どおり本当に起業したとわかったときは、びっくりしていました。

誰かと一緒に働くほうが向いている。「社長」という仕事の苦労と楽しさ

実際に会社を経営してみて、大変なことはありましたか?

そうですね。まだまだ会社全体のことを自分でやらなくてはいけないので、やっぱり大変といえば大変です。できれば私は開発とサービスの設計に専念したいのですが、お金も人も足りていない現段階では、そうはいきません。今後は少しずつメンバーを増やしていって、うまく仕事を分担できるようにしていきたいですね。

逆に、会社を経営してよかったと感じることはありますか?

私の場合、誰かと一緒に仕事をしていたほうが寂しくないので、比較的安定したパフォーマンスを出せているような気がします。ただ誰かと一緒に働くといっても、アルバイトをしていた頃の感覚だと、上司がいるのは苦手ですね。そういった意味では、 経営者という働き方は自分に合っているのかもしれません。

会社のメンバーとは、頻繁に会っているのですか?

毎回同じメンバーに会うわけではありませんが、週に3〜4回ほどミーティングなどで顔を合わせています。現在10人ほどのメンバーで事業を作っており、それぞれがタスクに応じて定期的に集まったり、リモートで業務に取り組んだりして働いているんです。

株式会社メンヘラテクノロジー に入社するには「メンヘラ」でないといけませんか?

よく聞かれるんですが、もちろんそんなことはなくて、メンヘラに理解があれば、メンヘラでもそうでなくても大丈夫です。私個人に興味があるというより、会社としての活動に共感してくれる方と一緒に働けたらいいなと思っています。

就職よりも会社の成長を選んだ。これからの進路と働き方

修士課程の修了後は、どのような進路を予定していますか?

引き続き大学院に残って博士課程に進めたらいいなと考えています。修士課程在学中にもう1年休学して、会社の仕事に注力する期間を設けようと思っているので、2年以上先の予定ではあるんですけどね。

就職という選択肢は、起業した時点ですでに考えていなかったのでしょうか?

いいえ。創業当初は、修士課程を終えるまでに会社を売却し、自分は企業に就職するつもりでした。実際に創業後もインターンの選考を受けるなど、就職活動は続けていたんです。

しかし、会社として資金調達をするとなれば、やはり状況が変わってきます。大きなお金を出資してもらう以上、社長である私は責任を持って事業に関わらなくてはいけません。それで自身の就職と会社の経営、どちらを取るか考えた結果、結局進路を変更することにしました。

なぜそこで、自身の就職よりも資金調達を選んだのでしょう?

考えていた事業のプロトタイプをユーザーに使ってもらったところ、思っていた以上に需要があることがわかり「この事業は大きくなる見込みがありそうだ」「売却せずにもっと大きくしていこう」と思ったからです。実際に資金調達に向けて投資家を回ってみた際も反応がよく、進路の変更を決断するに至りました。

「たくさんお金を儲けたい」という気持ちがあるのでしょうか?

いえ、特別贅沢な暮らしをしたいという願望はありません。ただ、彼氏を「ヒモ」にしたいとは思っていますね。仕事をせずに、もっと私に構ってほしいんです。

高桑さんはご自身で、経営者とフリーランス、どちらの働き方が自分に向いていると思いますか?

フリーランスとして働いてみて「自分は誰かにマネジメントされないとダメなタイプだな」というのを実感していたので、会社という組織の中で、誰かにその役割を担ってもらえる経営者という立場のほうが、自分には合っているように感じます。

また、私は金額や条件の交渉なども苦手なので、フリーランスとしてその辺りもすべて自分でやらないといけないのは大変でした。会社としてメンバーそれぞれが得意な業務に取り組んだほうが、大きな利益を出せるのではないかと思います。

高桑さんのように起業をしたいと考えている学生に対して、何かアドバイスをお願いします!

「最近の若い人は『やりたいこと』がない」なんて言われていますが、それは「立派な夢しか語ってはいけない」と思い込んでいることが原因かもしれません。インターンなどを通して学生のうちから社会と接点を持っている人ほど、企業が社会的な意義を問われているのを目の当たりにして、そういった考えになっているのではないでしょうか。

「もっとパーソナルな趣向や悩みから事業を作ってもいい」という考え方が浸透すれば、「やりたいことを」を言語化し、起業に結びつけられる人が増えると思います。

とはいえ、いい事業アイデアを思いついても、それを実現するのは簡単ではなさそうです。

「確かに、私の場合はたまたま出資してもらって起業できる環境に恵まれたので、「自分で一からお金を用意して起業」となると、もっと難しいのかもしれません。ただ、願望を口に出して言うことは、重要な気がします。

私はもともと、明確に事業としてやりたいことを持っているタイプではありませんでしたが、「こういうことを思っている」「こんなものがあったらいいな」という小さな願望は、日常的に口に出していました。

願望を口に出して言っていると、それを聞いた周囲の人たちが、実現できる機会を提供してくれたり、手助けをしてくれたりするものです。その事業が社会に貢献するか、ビジネスとして成り立つか、といった要素は、チャンスを掴んでから考えてもいいのかもしれません。

高桑さん、ありがとうございました!

「彼氏の会社を買収したい」と冗談半分の願望を口に出し続けていた高桑さんは、現在自分の会社を持つところまでたどり着いています。彼氏の会社を本当に買収してしまう日も、そう遠くないのかもしれません…。

「やりたいことがない」と悩んでいる方はぜひ、学生、フリーランス、社長、三つの立場で活躍するパワフルな高桑さんの働き方や考え方も、参考にしてみてはいかがでしょうか。

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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