第2世代Ryzen APUのRyzen 5 3400G・Ryzen 3 3200Gを各種ベンチマークで試してみました。

ITトレンド最終更新日: 20190925

Ryzen 5 3400G・Ryzen 3 3200G ベンチマークレビュー

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第2世代Ryzen APUの「Ryzen 5 3400G」「Ryzen 3 3200G」は、CPUコアの世代としては第2世代 Ryzen プロセッサーと同じ「Zen+」アーキテクチャとなっており、同じ3000番台の型番を持つ第3世代AMD Ryzenプロセッサーの様に「Zen2」アーキテクチャ採用で一新されるといった派手さは有りませんが、その代わり、CPUや内蔵グラフィックスの動作クロックを引き上げるなど、着実なる進化を遂げています。今回は第2世代AMD Ryzen APU「Ryzen 5 3400G」と「Ryzen 3 3200G」を各種ベンチマークで試してみました。

第2世代AMD Ryzen APUの特徴

第1世代Ryzen APUは優れたグラフィックスを内蔵した高性能なCPUとして高い人気を誇っています。自作マーケットでは、Ryzen APUをメインターゲットとしたAsrock社の小型ベアボーンキットDeskMini A300が発売以来度々品切れを起こすほどの人気を誇っている事からも、第1世代Ryzen APUへの注目度の高さをうかがう事が出来ます。第2世代AMD Ryzen APUは、第1世代Ryzen APUに小さな改良を積み重ねて進化したCPUとなっています。
第2世代AMD Ryzen APU の主な特徴としては、
・CPUコアに「Zen+」アーキテクチャを採用
・12nmプロセスルール
・Ryzen 5 3400Gでは、コアとヒートスプレッダ間にメタルグリース(ソルダリングTIM)を採用し放熱性を向上
・Ryzen 5 3400Gでは、上位モデル用の静音CPUクーラー「Wraith Spire」を採用し、冷却性能を向上
・Ryzen 5 3400Gでは、自動オーバークロック機能「Precision Boost Overdrive」に対応
・従来のAMD 400/300シリーズの他、最新のAMD X570チップセットでも使用可能(※BIOSの対応が必要です)
などが挙げられます。一目の通り、第2世代AMD Ryzen APUの中でも、Ryzen 5 3400Gに対しての強化がより大きい事が分ります。

Ryzen 5 3400Gのパッケージ。Wraith Spireが同梱されているので大型のパッケージとなっています。パッケージ正面上部の銀色帯に「RADEON GRAPHICS」の文字が大きめにプリントされています。

Ryzen 5 3400GのパッケージRyzen 5 3400Gのパッケージ

Ryzen 3 3200Gのパッケージ。同梱のクーラーが小型のWraith Stealthのため、パッケージも小型になっています。Ryzen 5 3400Gと同様に上部の銀色帯に「RADEON GRAPHICS」の文字が大きめにプリントされています。

Ryzen 3 3200GのパッケージRyzen 3 3200Gのパッケージ

Ryzen 5 3400G同梱のWraith Spire(左)とRyzen 3 3200G同梱のWraith Silent(右)の比較。Wraith Spire(左)のヒートシンクの方がWraith Silent(右)よりも約2倍厚く・大きくなっています。

Ryzen 5 3400G同梱のWraith Spire(左)とRyzen 3 3200G同梱のWraith Silent(右)Ryzen 5 3400G同梱のWraith Spire(左)とRyzen 3 3200G同梱のWraith Silent(右)

モデルナンバー RYZEN 7
3700X
RYZEN 5
3600X
RYZEN 5
3600
RYZEN 5
3400G
RYZEN 3
3200G
RYZEN 5
2400G
RYZEN 3
2200G
アーキテクチャ Zen2 Zen+ Zen
製造プロセス 7nm 12nm 14nm
コア/スレッド 8/16 6/12 6/12 4/8 4/4 4/8 4/4
動作クロック 3.6GHz 3.8GHz 3.6GHz 3.7GHz 3.6GHz 3.6GHz 3.5GHz
Boostクロック 4.4GHz 4.4GHz 4.2GHz 4.2GHz 4.0GHz 3.9GHz 3.7GHz
キャッシュ L2 4MB 3MB 3MB 2MB 2MB 2MB 2MB
L3 32MB 32MB 32MB 4MB 4MB 4MB 4MB
GPU GPU名 × Radeon RX Vega 11 Graphics Radeon RX Vega 8 Graphics Radeon RX Vega 11 Graphics Radeon RX Vega 8 Graphics
コア数 × 11 8 11 8
動作クロック × 1400MHz 1250MHz 1250MHz 1100MHz
メモリ 対応メモリ DDR4-3200 DDR4-2933
TDP 65W 95W 65W 65W
64bitコード AMD64
対応ソケット Socket AM4
対応チップセット AMD 500・400シリーズ AMD 500・400・300シリーズ

AMD RYZEN APUスペック比較一覧

それでは、第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテストを実行していきましょう。ベンチマークで使用したのは、第2世代AMD Ryzen APU の「Ryzen 5 3400G」「Ryzen 3 3200G」と、第1世代Ryzen APUの「Ryzen 5 2400G」「Ryzen 3 2200G」です。

ベンチマークテスト

Passmark PerformanceTest

まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassmarkの『CPU Benchmarks』を用いて、CPUの総合的な演算性能を見てみましょう。

Ryzen 5 3400GのスコアがRyzen 5 2400Gから5%ほど向上していて、項目ごとに確認しても概ね5%前後スコアが向上しており、着実なる進化が確認できました。一方、Ryzen 3 3200GとRyzen 3 2200Gのスコアは僅差に留まっていて、項目ごとに確認したところPhysics(物理演算)の項目が90%程度に留まっている事が確認できました。Physics(物理演算)を除く項目では概ね4%程度スコアが向上しており、Physics(物理演算)の結果が足をひっぱってしまっていた様です。この現象は何度測定しても結果が変わりませんでした。

第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:Passmark PerformanceTest~CPU Mark~第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:Passmark PerformanceTest~CPU Mark~

第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:Passmark PerformanceTest~整数演算~第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:Passmark PerformanceTest~整数演算~

第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:Passmark PerformanceTest~シングルスレッド~第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:Passmark PerformanceTest~シングルスレッド~

第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:Passmark PerformanceTest~物理演算~第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:Passmark PerformanceTest~物理演算~

3D Mark Fire Strike / Physics

次いで、3D Mark Fire Strike の Physics を用いて、CPUの演算性能を見ていきます。Fire Strike / PhysicsはCPUに物理演算をさせてその処理速度を数値化したもので、CGレンダリングや動画のエンコードと同じくCPUのコア・スレッド数の多さが有利に働くテストです。

Passmark PerformanceTestとは大きく異なる結果となりました。Ryzen 5 3400GのスコアがRyzen 5 2400Gから25%も大幅に向上していて、Ryzen 3 3200GのスコアもRyzen 3 2200Gから8%ほど向上しています。Ryzen 5 3400Gの大幅な向上はフルHD(1920 x 1080)のFire Strikeだけでなく、WQHD(2560 x 1440)のFire Strike Extremeや4K(3840 x 2160)のFire Strike Ultraでも同様の結果となっていて、自動オーバークロック機能「Precision Boost Overdrive」が効果的に機能したのかも知れません。

第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:3D Mark Fire Strike / Physics第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:3D Mark Fire Strike / Physics

PC Mark 10

続いて、PCのパフォーマンスを総合的に判断できるPC Mark 10を見ていきましょう。

Ryzen 5 3400GのスコアがRyzen 5 2400Gから4%ほど上回っているのに対し、Ryzen 3 3200GとRyzen 3 2200Gのスコアは僅かに1%程度の差となっています。Boostクロックの違いを考慮すればRyzen 3 3200G とRyzen 3 2200G の間にも4~5%程度の差が有っても良さそうですが、PassmarkのCPUMarkと同様の結果となりました。

第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:PC Mark 10第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:PC Mark 10

3D Mark Fire Strike / Graphics

今度は3D Mark Fire StrikeのGraphicsで内蔵グラフィックスの3D性能を見てみましょう。

3Dグラフィックス性能は、グラフィックスコア数の多い順、動作クロックの高い順に綺麗に並んでおり、順当な結果となりました。Ryzen 5 シリーズに搭載されているRadeon RX VEGA 11とRyzen 3 シリーズに搭載されているRadeon RX VEGA 8の間にも明確な段差が有る事が確認できます。

第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:3D Mark Fire Strike / Graphics第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:3D Mark Fire Strike / Graphics

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ

最後に、ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークを用いて、第2世代Ryzen APUのゲーミング性能を確認してみましょう。ちょっとした息抜きや手軽なゲームプレイといったライトゲーミングを想定していますので、テスト環境設定は標準品質(デスクトップPC)・DirectX11・フルスクリーン、解像度はフルHD(1920 x 1080)です。合わせて、ベンチマークテストの詳細で確認できる平均fps(フレームレート)も掲示します。

Ryzen 5 3400G・Ryzen 3 3200G共に、快適な動作の指標とされる3500を上回っており、かつ平均fpsでも30フレームを確保できています。内蔵グラフィックスだけでもライトゲーミングプレイには十分な性能を有していると言ってよさそうです。

第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク

第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(fps)第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテスト:ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(fps)

着実なる進化を遂げた第2世代AMD Ryzen APU

第2世代AMD Ryzen APUは、第3世代AMD Ryzenプロセッサーのような派手さは無いけれど、着実・堅実なる進化を遂げている事が確認できました。特にRyzen 5 3400Gでは、ソルダリングTIMやWraith Spireクーラーとの組み合わせで冷却性能が強化されており、自動オーバークロック機能の「Precision Boost Overdrive」と相まって、3DMark Fire Strike / Physicsの様に大幅にパフォーマンスが向上する可能性を秘めています。
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークで確認できた通り、ライトゲーミングにも最適な第2世代AMD Ryzen APUは、第1世代Ryzen APUと同様に内蔵グラフィックスの優れたコストパフォーマンスの高いCPUとして、小型ベアボーンの組み立てなどを検討しているユーザーを中心に人気を集めて行くものと思われます。

CPU Ryzen 5 3400G Ryzen 5 2400G Ryzen 3 3200G Ryzen 3 2200G
マザーボード ASUS PRIME X570-PRO
メインメモリ DDR4-2666 16GB (8GBx2)
グラフィックス Radeon Vega 11 Graphics Radeon Vega 8 Graphics
ストレージ Kingstone SSDNow UV400 (240GB SATA3)
電源 FSP AURUM PT-650M (80PLUS Platinum、650W)
OS Windows 10 Home 64bit (バージョン:1903) 

検証に使用した構成

※ベンチマークの数値は同一の構成であってもハードウェア・ソフトウェア等の環境により変動いたします。

ライタープロフィール 職人5号

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。

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