第2世代Ryzen APUの「Ryzen 5 3400G」「Ryzen 3 3200G」は、CPUコアの世代としては第2世代 Ryzen プロセッサーと同じ「Zen+」アーキテクチャとなっており、同じ3000番台の型番を持つ第3世代AMD Ryzenプロセッサーの様に「Zen2」アーキテクチャ採用で一新されるといった派手さは有りませんが、その代わり、CPUや内蔵グラフィックスの動作クロックを引き上げるなど、着実なる進化を遂げています。今回は第2世代AMD Ryzen APU「Ryzen 5 3400G」と「Ryzen 3 3200G」を各種ベンチマークで試してみました。
第2世代AMD Ryzen APUの特徴
第1世代Ryzen APUは優れたグラフィックスを内蔵した高性能なCPUとして高い人気を誇っています。自作マーケットでは、Ryzen APUをメインターゲットとしたAsrock社の小型ベアボーンキットDeskMini A300が発売以来度々品切れを起こすほどの人気を誇っている事からも、第1世代Ryzen APUへの注目度の高さをうかがう事が出来ます。第2世代AMD Ryzen APUは、第1世代Ryzen APUに小さな改良を積み重ねて進化したCPUとなっています。
第2世代AMD Ryzen APU の主な特徴としては、
・CPUコアに「Zen+」アーキテクチャを採用
・12nmプロセスルール
・Ryzen 5 3400Gでは、コアとヒートスプレッダ間にメタルグリース(ソルダリングTIM)を採用し放熱性を向上
・Ryzen 5 3400Gでは、上位モデル用の静音CPUクーラー「Wraith Spire」を採用し、冷却性能を向上
・Ryzen 5 3400Gでは、自動オーバークロック機能「Precision Boost Overdrive」に対応
・従来のAMD 400/300シリーズの他、最新のAMD X570チップセットでも使用可能(※BIOSの対応が必要です)
などが挙げられます。一目の通り、第2世代AMD Ryzen APUの中でも、Ryzen 5 3400Gに対しての強化がより大きい事が分ります。
Ryzen 5 3400Gのパッケージ。Wraith Spireが同梱されているので大型のパッケージとなっています。パッケージ正面上部の銀色帯に「RADEON GRAPHICS」の文字が大きめにプリントされています。
Ryzen 3 3200Gのパッケージ。同梱のクーラーが小型のWraith Stealthのため、パッケージも小型になっています。Ryzen 5 3400Gと同様に上部の銀色帯に「RADEON GRAPHICS」の文字が大きめにプリントされています。
Ryzen 5 3400G同梱のWraith Spire(左)とRyzen 3 3200G同梱のWraith Silent(右)の比較。Wraith Spire(左)のヒートシンクの方がWraith Silent(右)よりも約2倍厚く・大きくなっています。
モデルナンバー | RYZEN 7 3700X |
RYZEN 5 3600X |
RYZEN 5 3600 |
RYZEN 5 3400G |
RYZEN 3 3200G |
RYZEN 5 2400G |
RYZEN 3 2200G |
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アーキテクチャ | Zen2 | Zen+ | Zen | |||||
製造プロセス | 7nm | 12nm | 14nm | |||||
コア/スレッド | 8/16 | 6/12 | 6/12 | 4/8 | 4/4 | 4/8 | 4/4 | |
動作クロック | 3.6GHz | 3.8GHz | 3.6GHz | 3.7GHz | 3.6GHz | 3.6GHz | 3.5GHz | |
Boostクロック | 4.4GHz | 4.4GHz | 4.2GHz | 4.2GHz | 4.0GHz | 3.9GHz | 3.7GHz | |
キャッシュ | L2 | 4MB | 3MB | 3MB | 2MB | 2MB | 2MB | 2MB |
L3 | 32MB | 32MB | 32MB | 4MB | 4MB | 4MB | 4MB | |
GPU | GPU名 | × | Radeon RX Vega 11 Graphics | Radeon RX Vega 8 Graphics | Radeon RX Vega 11 Graphics | Radeon RX Vega 8 Graphics | ||
コア数 | × | 11 | 8 | 11 | 8 | |||
動作クロック | × | 1400MHz | 1250MHz | 1250MHz | 1100MHz | |||
メモリ | 対応メモリ | DDR4-3200 | DDR4-2933 | |||||
TDP | 65W | 95W | 65W | 65W | ||||
64bitコード | AMD64 | |||||||
対応ソケット | Socket AM4 | |||||||
対応チップセット | AMD 500・400シリーズ | AMD 500・400・300シリーズ |
それでは、第2世代AMD Ryzen APUのベンチマークテストを実行していきましょう。ベンチマークで使用したのは、第2世代AMD Ryzen APU の「Ryzen 5 3400G」「Ryzen 3 3200G」と、第1世代Ryzen APUの「Ryzen 5 2400G」「Ryzen 3 2200G」です。
ベンチマークテスト
Passmark PerformanceTest
まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassmarkの『CPU Benchmarks』を用いて、CPUの総合的な演算性能を見てみましょう。
Ryzen 5 3400GのスコアがRyzen 5 2400Gから5%ほど向上していて、項目ごとに確認しても概ね5%前後スコアが向上しており、着実なる進化が確認できました。一方、Ryzen 3 3200GとRyzen 3 2200Gのスコアは僅差に留まっていて、項目ごとに確認したところPhysics(物理演算)の項目が90%程度に留まっている事が確認できました。Physics(物理演算)を除く項目では概ね4%程度スコアが向上しており、Physics(物理演算)の結果が足をひっぱってしまっていた様です。この現象は何度測定しても結果が変わりませんでした。
3D Mark Fire Strike / Physics
次いで、3D Mark Fire Strike の Physics を用いて、CPUの演算性能を見ていきます。Fire Strike / PhysicsはCPUに物理演算をさせてその処理速度を数値化したもので、CGレンダリングや動画のエンコードと同じくCPUのコア・スレッド数の多さが有利に働くテストです。
Passmark PerformanceTestとは大きく異なる結果となりました。Ryzen 5 3400GのスコアがRyzen 5 2400Gから25%も大幅に向上していて、Ryzen 3 3200GのスコアもRyzen 3 2200Gから8%ほど向上しています。Ryzen 5 3400Gの大幅な向上はフルHD(1920 x 1080)のFire Strikeだけでなく、WQHD(2560 x 1440)のFire Strike Extremeや4K(3840 x 2160)のFire Strike Ultraでも同様の結果となっていて、自動オーバークロック機能「Precision Boost Overdrive」が効果的に機能したのかも知れません。
PC Mark 10
続いて、PCのパフォーマンスを総合的に判断できるPC Mark 10を見ていきましょう。
Ryzen 5 3400GのスコアがRyzen 5 2400Gから4%ほど上回っているのに対し、Ryzen 3 3200GとRyzen 3 2200Gのスコアは僅かに1%程度の差となっています。Boostクロックの違いを考慮すればRyzen 3 3200G とRyzen 3 2200G の間にも4~5%程度の差が有っても良さそうですが、PassmarkのCPUMarkと同様の結果となりました。
3D Mark Fire Strike / Graphics
今度は3D Mark Fire StrikeのGraphicsで内蔵グラフィックスの3D性能を見てみましょう。
3Dグラフィックス性能は、グラフィックスコア数の多い順、動作クロックの高い順に綺麗に並んでおり、順当な結果となりました。Ryzen 5 シリーズに搭載されているRadeon RX VEGA 11とRyzen 3 シリーズに搭載されているRadeon RX VEGA 8の間にも明確な段差が有る事が確認できます。
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ
最後に、ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークを用いて、第2世代Ryzen APUのゲーミング性能を確認してみましょう。ちょっとした息抜きや手軽なゲームプレイといったライトゲーミングを想定していますので、テスト環境設定は標準品質(デスクトップPC)・DirectX11・フルスクリーン、解像度はフルHD(1920 x 1080)です。合わせて、ベンチマークテストの詳細で確認できる平均fps(フレームレート)も掲示します。
Ryzen 5 3400G・Ryzen 3 3200G共に、快適な動作の指標とされる3500を上回っており、かつ平均fpsでも30フレームを確保できています。内蔵グラフィックスだけでもライトゲーミングプレイには十分な性能を有していると言ってよさそうです。
着実なる進化を遂げた第2世代AMD Ryzen APU
第2世代AMD Ryzen APUは、第3世代AMD Ryzenプロセッサーのような派手さは無いけれど、着実・堅実なる進化を遂げている事が確認できました。特にRyzen 5 3400Gでは、ソルダリングTIMやWraith Spireクーラーとの組み合わせで冷却性能が強化されており、自動オーバークロック機能の「Precision Boost Overdrive」と相まって、3DMark Fire Strike / Physicsの様に大幅にパフォーマンスが向上する可能性を秘めています。
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークで確認できた通り、ライトゲーミングにも最適な第2世代AMD Ryzen APUは、第1世代Ryzen APUと同様に内蔵グラフィックスの優れたコストパフォーマンスの高いCPUとして、小型ベアボーンの組み立てなどを検討しているユーザーを中心に人気を集めて行くものと思われます。
CPU | Ryzen 5 3400G | Ryzen 5 2400G | Ryzen 3 3200G | Ryzen 3 2200G |
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マザーボード | ASUS PRIME X570-PRO | |||
メインメモリ | DDR4-2666 16GB (8GBx2) | |||
グラフィックス | Radeon Vega 11 Graphics | Radeon Vega 8 Graphics | ||
ストレージ | Kingstone SSDNow UV400 (240GB SATA3) | |||
電源 | FSP AURUM PT-650M (80PLUS Platinum、650W) | |||
OS | Windows 10 Home 64bit (バージョン:1903) |
※ベンチマークの数値は同一の構成であってもハードウェア・ソフトウェア等の環境により変動いたします。
Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。