

Core i9-9900KF・Core i7-9700KF・Core i5-9600KFと末尾に『F』がつくモデルが登場しました。末尾に『F』のつくモデルと、つかないモデルにはどのような違いが有るのか、性能的なハンデはないのか、など気になる点を、説明を交えつつベンチマークテストなどを通して見て行きたいと思います。今回は、Core i7-9700KFとCore i7-9700Kとの比較を中心に行ってきます。
内蔵グラフィックスが無い『F』型番のCore プロセッサー
Core i7-9700KFやCore i5-9400Fの様に、末尾に『F』のつくモデル型番のCPUは、Core Xシリーズなどと同じく内蔵グラフィックスが無いプロセッサーです。もっとも簡単に言えば、Core i7-9700KFとは、Intel UHD グラフィックス630が無いCore i7-9700K となります。Core i7-9700KFとCore i7-9700Kを例として、機能の違いは以下のようになります。
Core i7-9700KF | Core i7-9700K | ||
---|---|---|---|
SIMD命令 | SSE | 〇 | 〇 |
AVX | 〇 | 〇 | |
仮想化 | VT-x | 〇 | 〇 |
VT-d | 〇 | 〇 | |
セキュリティ機能 | XDビット | 〇 | 〇 |
TXT | × | 〇 | |
SIPP | × | 〇 | |
AES | 〇 | 〇 | |
Secure Key | 〇 | 〇 | |
SGX | 〇 | 〇 | |
vPRO | × | 〇 | |
グラフィック機能 | Intel HD Graphics | × | 〇 |
3D Architecture Improvements | × | 〇 | |
DirectX 12 | × | 12 | |
OpenGL | × | 4.5 | |
Vulkan | × | 〇 | |
各種ハードウェアコーデック | ACV, MJPEG, MPEG-2, MVC(Long, GUID), VC-1 | × | 〇 |
High Dynamic Range (Rec.2020) | × | 〇 | |
JPEG Decode, JPEG Encode | × | 〇 | |
HEVC Decode, HEVC Encode | × | ○(10bit) | |
VP8 Decode, VP8 Encode (GPU) | × | 〇 | |
VP9 Decode, VP9 Encode (GPU) | × | ○(10bit) | |
メディア対応 | Intel Quick Sync Video | × | 〇 |
Intel Built-In Visuals | × | 〇 | |
Scalar & Format Conversion (SFC) Pipeline | × | 〇 | |
著作権保護機能 | HDCP 1.4 | × | 〇 |
PAVP | × | 〇 |
「F」型番機能比較表
内蔵グラフィックスが無いのでグラフィックスカードが必要となりますが、ゲーミングPCの様に元々高性能なグラフィックスカードを搭載するのであれば、ほとんど影響は無いと言えます。
反面、Intel UHD グラフィックス630に由来する機能を使用する物、例えば動画支援機能のQuick Sync Video(QSV)、4K動画などで使用するCodec HEVCやVP9の10bit/HDR出力といった動画編集やエンコードソフトを使用する場合には、機能支援が得られないために注意が必要となります。
その他、『F』型番モデルの特徴としては、「Intel vPRO Platform Eligibility (vPRO)」・「Intel Stable Image Platform Program (SIPP) 」・「Intel Trusted Execution Technology (TXT) 」など、企業ユースに関わる一部の機能が無効化されています。また、TXT機能がサポートされていない為、Ultra HD Blu-Ray(UHDBD)の再生は行えません。
左:Core i7-9700KF、右:Core i7-9700K CPU表面は同じ形状です。
左:Core i7-9700KF、右:Core i7-9700K CPU裏面のキャパシタ配置も同じです。
CPU | Core i7-9700KF | Core i9-9900K | Core i7-9700K | Core i5-9600K | Core i5-9400F | |
---|---|---|---|---|---|---|
コードネーム | CoffeeLake-R | |||||
製造プロセス | 14nm | |||||
コア/スレッド | 8/8 | 8/16 | 8/8 | 6/6 | 6/6 | |
動作クロック | 3.6GHz | 3.6GHz | 3.6GHz | 3.7GHz | 2.9GHz | |
TurboBoost | 4.9GHz | 5.0GHz | 4.9GHz | 4.6GHz | 4.1GHz | |
キャッシュ | 12MB | 16MB | 12MB | 9MB | 9MB | |
PCI-Express | Gen | 3.0 | ||||
レーン数 | 16 | |||||
メモリ | 対応メモリ | DDR4-2666 | ||||
最大容量 | 128GB | |||||
TDP | 95W | |||||
GPU | × | Intel UHD Graphics630 | × | |||
64bitコード | intel64 | |||||
SIMD命令 | SSE | SSE4.1/4.2 | ||||
AVX | AVX2.0 | |||||
仮想化 | VT-x | 〇 | ||||
VT-d | 〇 | |||||
セキュリティ機能 | XD ビット | 〇 | ||||
TXT | × | 〇 | × | |||
AES | 〇 | |||||
vPRO | × | 〇 | × | |||
対応ソケット | LGA1151 | |||||
対応チップセット | Intel 300 Series |
Core i7-9700KF スペック比較一覧
ご覧の通り、Core i7-9700KFとCore i7-9700Kは、基本的な仕様としては同じCPUと見なす事が出来ます。グラフィックスカードを搭載していれば、その違いはおそらく分らないでしょう。
それでは、Core i7-9700KFの実力をベンチマークテストを通して見て行きましょう。
Core i7-9700KFをベンチマークテスト
Passmark PerformanceTest
まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassmarkの『CPU Benchmarks』を用いて、CPUの総合的な演算性能を見てみましょう。
Passmark PerformanceTest
当然といえば当然ですが、Core i7-9700KFとCore i7-9700Kはほぼ同一となっています。内蔵グラフィックスの有無はCPUの基本的な演算能力には影響が無いと見て良さそうです。
3D Mark
続いて、3D Mark のTime Spyを用いて、CPUの演算性能(CPU Score)を見て行きます。CPU Scoreは、CPUに物理演算をさせてその処理速度を数値化したもので、CGレンダリングや動画のエンコードと同じくCPUのコア・スレッド数の多さが有利に働くテストです。
3D Mark/Time Spy
3D Mark/Time Spy Extreme
Core i7-9700KFとCore i7-9700Kで、多少の差が有りました。この差は、TurboBoostの効き易さといった個体差などに因るものではないかと思われます。ゲーミング性能については Core i7-9700KFとCore i7-9700Kは同一の性能と見て良さそうです。
PC Mark 10
次に、PCのパフォーマンスを総合的に判断できるPC Mark 10を見ていきましょう。
PC Mark 10
PC Mark 10 Extended
PC Mark 10 においては、Core i7-9700KFとCore i7-9700Kは同一となっています。グラフィックスカードを搭載した環境でのPCの総合的なパフォーマンスは同一と見て良さそうです。
TMPGEnc Mastering Works 6
動画編集ソフトのTMPGEnc Mastering Works 6を用いて、QuickTimeファイル(3840x2160/2分50秒)をh.265に変換するのに要した時間(単位:秒)を測定しました。グラフの短い方がより高速に処理を行っている事になります。
TMPGEnc Mastering Works 6
Core i7-9700KFとCore i7-9700Kでは、Core i7-9700K の方が少し早くエンコードを終えています。今回のテスト環境では、内蔵グラフィックスを使用しない設定となっているため、これもTurboBoostの効き易さといった個体差に因るものではないかと思われます。
内蔵グラフィックスを使用しないのであれば、TMPGEnc Mastering Works 6については、Core i7-9700KFとCore i7-9700K は同一の性能と見て良さそうです。
グラフィックスカード搭載なら『F』型番で十分
今回、内蔵グラフィックスの無いCore i7-9700KFと、内蔵グラフィックス有りのCore i7-9700Kの比較をベンチマークテストで行ってみましたが、一般的な使い方による性能差は無いと見て良さそうです。ゲーミングPCの様に高性能なグラフィックスカードを搭載しているのであれば、内蔵グラフィックスの無い『F』型番のCPUで十分と言えそうです。
一方、高いCPU性能は必要だがグラフィックス性能はあまり必要ない、あるいはvPROやSIPP・TXTといったセキュリティ関係の機能が必要、などの理由が有れば、Core i7-9700Kの様にグラフィックス機能搭載のCPUを選択できます。
このように、用途や目的に合わせてCPUを選ぶ選択肢が広がった事を素直に歓迎したいと思います。選択肢が広がった事で、第9世代Coreプロセッサーがより身近な存在となるのではないでしょうか。
CPU | Core i7-9700KF Core i9-9900K Core i7-9700K Core i5-9600K Core i5-9400F |
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マザーボード | ASUS PRIME Z390-A | |||
メインメモリ | DDR4-2666 16GB (8GB x2) | |||
ビデオカード | GeForce GTX 1080 FoundersEdition (ビデオメモリ 8GB) | |||
ストレージ | intel 760p 256GB(SSDPEKKW256G8XT) M.2 NVMe | |||
電源 | FSP AURUM PT-650M (80PLUS Platinum、650W) | |||
OS | Windows 10 Home 64bit (Build:1809) | |||
ビデオドライバ | GeForce Game Ready Driver Ver419.35 |
検証構成

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。