SeagateのNAS向けハードディスク「IronWolf」シリーズの特徴やマッチする用途をご紹介します。

Seagate IronWolf シリーズ レビュー
Seagate IronWolf シリーズ レビュー
気になる製品最終更新日: 20180209

Seagate IronWolf シリーズ レビュー 最大12TB

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

昨今、高解像度画像や動画コンテンツを作成すると、すぐに数百MB、数GB単位のファイルサイズになってしまいます。 作成/編集に使用するPCだけでなく、これらのデータを安全に保管するためのファイルサーバーやNASも大容量化を検討しなければなりません。 そんな折にSeagateから発売となっている「Ironwolf」シリーズはNAS向けに最適化された設計で、振動や高負荷環境に強く、連続稼働に対応、さらに最大12TBまでのモデルがラインナップされるなど、この大容量データの時代にピッタリのハードディスクです。 本記事では12TBモデル「ST12000VN0007」を中心にSeagateのNAS向けソリューション「Ironwolf」シリーズの特徴をご紹介いたします。

Ironwolfシリーズとは

Seagate社の製品ラインナップ

Seagate社のハードディスクは使用目的に合わせて4つのラインナップが用意されています。

シリーズ名 BarraCuda FireCuda IronWolf SkyHawk
モデル名 BarraCuda
BarraCuda Pro
FireCuda IronWolf
IronWolf Pro
SkyHawk
主な用途 PC・ゲーミング PC・ゲーミング 常時稼働
NAS/ファイルサーバー
常時稼働
防犯カメラソリューション
最大容量 12TB 2TB 12TB 10TB

Seagate社の製品ラインナップ

BarraCudaシリーズはデスクトップPCのストレージとして、FireCudaシリーズはキャッシュ用のNANDを追加搭載し、ゲーム/アプリケーションのロード時間の短縮を図っています。

IronWolf/SkyHawkシリーズはどちらも高耐久で常時稼働を想定した設計が特徴ですが、SkyHawkシリーズは防犯カメラ等のビデオ録画用途に、IronWolfシリーズはNASでの使用により特化した設計/機能を搭載しています。

Ironwolfシリーズの特徴

IronwolfシリーズはNASとの組み合わせで最適なパフォーマンスを発揮できるように様々な機能が搭載されており、その総称には「AgileArray(アジャイル・アレイ)」と命名されています。

AgileArrayに含まれる機能としては下記があります。

①IronWolf Health Management(IHM)
4TB以上のIronWolf/IronWolf Proに搭載されているIHMは対応するNASとの組み合わせでハードディスクの状態を診断し、温度や振動などの異常に対して警告が発せられます。また、警告を発するだけでなくデータのバックアップやレスキュー/リカバリーなど保存されているデータの保護に向けて積極的に動きます。

②RVセンサー
NASでは複数のドライブが筐体に収められるため、他のハードディスクのモーター振動の影響を受けてヘッドの読取り位置がズレたりすることでデータ読み出し性能が低下する場合があります。
IronWolfシリーズに搭載されたRVセンサーはハードディスクに加わった振動等を2つのセンサーで検知し、ヘッドのズレを予測して最適化し、読み出し性能の低下を防ぎます。

③デュアル・プレーン・バランス
ハードディスクは磁気プラッタをモーターで回転させるため、小さな振動が発生します。
デスクトップパソコン等で単体で使用されている際にはその影響はほとんどありませんが、複数台のドライブが密集して設置されるNASの場合にはその影響が増大し、データの読み書き等の性能に影響が出る可能性があります。
デュアル・プレーン・バランスはモーター振動のバランスを取ることで振動を最小限に抑え、読み書き性能への影響を低減させます。

12TBモデル「ST12000VN0007」の紹介

「ST12000VN0007」スペック

12TBハードディスク「ST12000VN0007」のスペックは以下となっています。
比較用にSeagate社の他シリーズのモデルのスペックも並べました。

シリーズ名 IronWolf BarraCuda BarraCuda Pro FireCuda SkyHawk
モデル名 ST12000VN0007 ST8000DM004 ST12000DM0007 ST2000LX001 ST10000VX0004
容量 12TB 8TB 12TB 2TB 10TB
インターフェイス SATA 6Gb/s
キャッシュ 256MB 64MB+8GB
NAND Flash
256MB
対応ドライブ・ベイ数 1~8ベイ 8ベイ~
最大連続データ転送速度(外周) 210MB/s 190MB/s 250MB/s 140MB/s 210MB/s
RVセンサー 搭載 非搭載
デュアル・プレーン・バランス 搭載 非搭載
エラー・リカバリーコントロール 搭載 非搭載 搭載
ロード/アンロードサイクル 600,000回 300,000回 600,000回 300,000回
回復不能エラー発生率(最大) 10E15あたり
1ビット
10E14あたり
1ビット
10E15あたり
1ビット
10E14あたり
1ビット
10E15あたり
1ビット
ワークロード制限 180TB/年 55TB/年 300TB/年 55TB/年 180TB/年
年間通電時間(24時間×7日) 8,760時間 2,400時間 8,760時間 8,760時間
平均故障間隔(MTBF) 1,000,000時間 1,000,000時間

Seagate各モデルのスペック比較

スペック面だけ見ますと他のシリーズが優れているところもありますが、NAS向けという製品の性質上耐久性を示す機能については非常に高い数値となっています。

耐久性を示す主だった指標に関して少し掘り下げて見てみましょう。

①ロード/アンロード・サイクル
ハードディクスは回転している磁気ディスクに磁気ヘッドが接触することでデータを読み書きしますが、回転が停止している時に接触していますと振動等の影響を受けてディスクが傷つく恐れがあります。
それを回避するためにディスクが回転していない時にはディスクの外周側に用意した退避場所へ磁気ヘッドを退避させます。この動作を「ロード/アンロード」といいます。
この回数が多いほど、長期間正確なロード/アンロード動作が保証されていると言えます。
IronWolfシリーズでは60万回と非常に高い数値に達しており、NAS向けとして突発的なデータ読み書きリクエストに応じても長期に渡りその性能を維持できることとなります。

②ワークロード制限
ハードディスクでいうワークロードとは読み書きされるデータの量となります。
この数値が高いほどより多くの読み書き作業に耐えられる、ということになります。
IronWolfシリーズでは180TB/年と非常に大きな容量まで耐えられるよう設計されています。1日あたりにすると493GB、標準的な画質での地デジ放送の録画で約62時間分(1日以上!)に相当します。

③平均故障間隔
若干乱暴な言い方になるかもしれませんが、ざっくりわかりやすく伝えようとすると「どれくらいの期間で1回故障するの?」となりますでしょうか。
1回故障した後、次の故障が発生するまでの間隔(期間)のことを指します。
この時間が大きいほど故障が発生する頻度が低いと言え、信頼性が高いと言えます。
IronWolfシリーズは100万時間とされており、故障が発生する頻度は約114.2年に1回(!)となるように高い信頼性を確保した設計がされています。

スペック比較

IronWolfの信頼性指標をカタログスペックで同社他シリーズと比較してみました。
※(BarraCuda:ST8000DM004、IronWolf:ST12000VN0007、SkyHark:ST10000VX0004で比較)

・連続データ転送速度:IronWolf/SkyHarkが一歩抜きん出ています。複数ユーザーからのアクセスや高解像度で録画される大容量映像の保存を想定し、データ転送パフォーマンスも高い数値となっています。

Seagate IronWolfと同社他製品の最大連続データ転送速度比較Seagate IronWolfと同社他製品の最大連続データ転送速度比較

・回復不能エラー発生率:信頼性が製品の肝となるIronWolf/SkyHarkがBarraCudaより一桁低い発生確率となっています。

Seagate IronWolfと同社他製品の回復不能エラー発生率比較Seagate IronWolfと同社他製品の回復不能エラー発生率比較

・ロード/アンロードサイクル:IronWolfが他モデルの倍となっておりました。複数ユーザーから頻繁にアクセスされるNAS用途を想定し、ヘッダ動作の耐性が高くなっています。

Seagate IronWolfと同社他製品のロード/アンロードサイクル比較Seagate IronWolfと同社他製品のロード/アンロードサイクル比較

・ワークロード制限:常時稼働を想定した設計がされているIronWolf/SkyHarkがより多くの容量の読み書きに耐えられる設計となっています。

Seagate IronWolfと同社他製品のワークロード制限比較Seagate IronWolfと同社他製品のワークロード制限比較

・平均故障間隔:信頼性が製品の肝となるIronWolf/SkyHarkでは100万時間(単純計算で114.2年に1回の故障発生間隔!)と非常に長い間隔となっています(BarraCudaについては非公表)。

Seagate IronWolfと同社他製品の平均故障間隔(MTBF)比較Seagate IronWolfと同社他製品の平均故障間隔(MTBF)比較

信頼性が求められる用途を想定したIronWolf/SkyHarkが信頼性の指標については高い数値となっておりますが、NAS向けということでIronWolfでは頻繁にデータの読み書き要求に耐えられるよう、ロード/アンロードサイクルがSkyHarkよりも高い数値となるよう設計されていることがわかります。

まとめ

Seagate IronWolfシリーズはカタログスペックから見える性能として、NAS製品との組み合わせで求められるワークに対して高い信頼性で応えた製品と言えます。
今回は詳しくご紹介出来ませんでしたが、一部メーカーのNAS製品との組み合わせでは更にデータ保護の点で高い信頼性を確保することが出来ます。

そして、この高い信頼性とともに、「ST12000VN0007」では12TBという大容量も実現しています。複数台で構築するNAS環境にて、非常に大きく、かつセキュアなストレージを構築することができ、昨今のデータ大容量化の時代においても、容量不足の心配をすることなく、安全なバックアップストレージとして運用することができます。

ライタープロフィール 職人2号

パソコン工房ECサイトの自作パーツ等のマーケティング担当。 最近はタブレットとSIMフリースマホとマイコン関連を勉強していてそれを記事にする事が多い。

記事を
シェア