米国にて2022年10月12日より販売が開始されたインテル Arc A770とArc A750について、ベンチマークテストを試してみます。

気になる製品最終更新日: 20221220

インテル Arc A770、Arc A750ベンチマークレビュー

インテルが24年ぶりとなるデスクトップ向けグラフィックスカード、インテル Arc A770とArc A750の発売を開始しました。幸運にもインテル純正モデル「Arc A770 Limited Edition」、「Arc A750 Limited Edition」を入手出来ましたので、今回はインテルが久々に放ったグラフィックスカードについて、ベンチマークテストを行っていこうと思います。

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インテル Arc A シリーズについて

インテル Arc Aシリーズは、1998年4月にインテル i740が発売されて以来、実に24年ぶりに登場するインテル製デスクトップ向けグラフィックスカードとなります。インテル i740が登場したころは、ちょうど3Dグラフィックスを使用したゲームが大いに注目を浴びていた時期で、NVIDIAやAMD(当時はATI)だけでなく、多数のグラフィックスチップメーカーが群雄割拠していました。
その後インテルからグラフィックスカードが発売されることは無かったのですが、近年はインテルもモバイル向けとしてXe Graphicsの名を冠してゲーミング性能をうたうなどグラフィックスの開発にも力を入れていました。そして、遂にArc Aシリーズとして再びデスクトップ向けグラフィックスカードが発表され、2022年10月12日に米国などでArc A770とArc A750の発売が開始されました。

その他、インテル Arc A シリーズの詳しい内容については、特集ページを参照下さい。

パソコン工房で インテル Arc A770 を見る

パソコン工房で インテル Arc A750 を見る

それでは早速Arc A770、Arc A750のベンチマークを開始していきましょう。

インテル Arc A770、Arc A750ベンチマーク情報

それでは、Arc A770、Arc A750 のベンチマークを実行していきましょう。Arc A770、Arc A750はGeForce RTX 3060よりもコストパフォーマンスに優れているとされている事から、比較対象としてGeForce RTX 30シリーズのミドルレンジモデルであるGeForce RTX 3070、GeForce RTX 3060 Ti、GeForce RTX 3060を用意しました。テスト解像度はフルHD(1920 x 1080) 、WQHD(2560 x 1440)にて行っています。また、3DMarkでは、CPU性能の依存度が少ないGraphics Scoreでの比較となります。

Arc A770 Arc A750 GeForce RTX3070 GeForce RTX3060 Ti GeForce RTX3060
アーキテクチャー Xe HPG Ampere
GPUコア ACM-G10 GA104 GA106
Xe-core 32基 28基
Xe
ベクトルエンジン
512基 448基
Xe Matrix Extensions 512基 448基
CUDAコア 5888基 4864基 3584基
レイ・
トレーシング・
ユニット(RTコア)
32基 28基 第2世代46基 第2世代38基 第2世代28基
Tensorコア 第3世代184基 第3世代152基 第3世代112基
グラフィックス・
クロック
2100MHz 2050MHz
定格クロック 1.50GHz 1.41GHz 1.32GHz
ブーストクロック 1.73GHz 1.67GHz 1.78GHz
メモリタイプ GDDR6
メモリ容量 16GB / 8GB 8GB 12GB
メモリ転送レート 17.5Gbps / 16Gbps 16Gbps 14Gbps 15Gbps
メモリバス幅 256bit 192bit
メモリバス帯域幅 560GB/s / 512GB/s 512GB/s 448GB/s 360GB/s
TBP(TDP) 225W 220W 200W 170W

~スペック比較一覧~

※メーカーによる事前情報です。実際の製品では変更になる場合があります。

Arc A770には8GBモデルと16GBモデルがあり、両者の違いはメモリ容量やメモリ転送速度など、メモリ周りのみの違いとなっています。また、Arc A770とArc A750の違いは、おおまかに言えばArc A770を8分の7倍したものがArc A750となります。
今回使用するArc A770 Limited Editionは16GBモデルとなります。またグラフィックス・クロックはArc A770 Limited Edition、Arc A750 Limited Edition共に2400MHzとなっています。

なお、通常は過去のデータと比較のためResizable BARについては無効としてベンチマークテストを行っておりますが、インテルはArc AシリーズでResizable BARを有効にする事を推奨していますので、Arc A770・Arc A750についてはResizable BARを有効にした場合でも測定しています。
※ベンチマークテストで用いた構成は末尾に記載しています。

3DMark 「Fire Strike」

まずは、DirectX 11 の代表的ベンチマークとして、3DMark 「Fire Strike」 のGraphics Score を見てみましょう。テスト解像度は、フルHDのFire StrikeとWQHD のFire Strike Extremeとなります。なお、末尾に『(RB)』とついている物がResizable BAR有効でのスコアとなります(以降同様)。

~3DMark Fire Strike~

Fire StrikeにおいてはResizable BARの効果が有るようです。フルHD解像度ではおおよそ10%、WQHD解像度でもおおよそ5%ほどスコアが向上し、フルHD解像度ではResizable BARを有効にしたArc A750(以下Arc A750(RB)と表記、Arc A770も同様)がResizable BAR 無効のArc A770を逆転しています。
GeForce RTX 30シリーズとの比較では、Resizable BAR有効のArc A750(RB)がGeForce RTX 3060 Tiを比肩する健闘を見せています。

3DMark 「Time Spy」

次いで、DirectX 12の代表的ベンチマークとして、3DMark 「Time Spy」 のGraphics Scoreを見てみましょう。テスト解像度は、WQHDのTime Spyとなります。

~3DMark Time Spy~

Time SpyにおいてもResizable BARの効果が有り、WQHD解像度でおおよそ10%スコアが向上し、Arc A750 (RB)がArc A770を逆転しています。
GeForce RTX 30シリーズとの比較では、Resizable BAR有効のArc A770 (RB)がGeForce RTX 3070に肉薄し、Resizable BAR無効のArc A750がGeForce RTX 3060 Ti とほぼ同等のスコアとなるなど、Fire Strike以上の大健闘となっています。

3DMark 「Port Royal」

続いて、リアルタイムレイトレーシング性能を見るベンチマークテストの3DMark「Port Royal」を用いて、レイトレーシング性能を見ていきましょう。Port Royalでは、いくつかあるレイトレーシングアルゴリズムのうち、レイトレーシングリフレクションを使用したものとなります。
ベンチマークスコアであるGraphics Scoreと一緒にフレームレートも計測することが出来ます。なお、解像度は標準設定のWQHDとなります。また、DLSSについては無効となっており、RTコアの性能の比較として見ていきます。

~3DMark Port Royal~

~3DMark Port Royal fps~

Port RoyalではResizable BARの効果がやや薄まり、Arc A770 ・Arc A750 共に3%程度のスコア向上となっています。
GeForce RTX 30シリーズとの比較では、Resizable BAR有効のArc A750 (RB)がGeForce RTX 3060 Ti に接近し、Resizable BAR無効のArc A770がGeForce RTX 3060 Ti を上回るなど、Arc Aシリーズのレイトレーシング性能は高そうです。

3DMark 「DirectX Raytracing feature test」

レイトレーシングつながりで、「Port Royal」に続いて「DirectX Raytracing feature test」を見てみましょう。本テストはすべての画面をレイトレーシングでレンダリングすることで、より負荷の高いグラフィックスカードのレイトレーシング性能を計測できます。結果はフレームレートで表示されます。なお、Sample count 数は標準設定の12に加えて6についてもテストを行いました。

~3DMark DirectX Raytracing feature test~

DirectX Raytracing feature testではResizable BARの効果は無いようで、Resizable BARの有無によるスコア差は有りませんでした。
GeForce RTX 30シリーズとの比較では、Arc A770がGeForce RTX 3070 に肉薄し、Arc A750がGeForce RTX 3060 Ti を上回っており、やはりArc Aシリーズのレイトレーシング性能は高いと見てよさそうです。

3DMark 「Speed Way」

最後に、3DMarkに追加されたDirectX 12 Ultimateに対応したベンチマークテスト「Speed Way」について見てみましょう。Speed WayはDirectX レイトレーシングやメッシュシェーダーを使用して、リアルタイムにグローバルイルミネーションやレイトレーシングによる反射の描画を行い、その性能をテストする内容となっています。
Speed Wayにおいても、Port Royalと同じくベンチマークスコアであるGraphics Scoreと一緒にフレームレートも計測することが出来、標準設定の解像度はWQHDとなります。また、DLSSについては無効となっており、RTコアの性能の比較として見ていきます。

~3DMark Speed Way~

~3DMark Speed Way fps~

Speed Wayでは今までのベンチマークとは異なる結果となり、Arc Aシリーズの健闘ぶりが鳴りを潜めました。Arc A770とArc A750のスコア差も小さく、GeForce RTX 3060と同等程度のスコアに留まっています。レイトレーシング性能が優れているのはPort RoyalやDirectX Raytracing feature testで確認出来ているため、メッシュシェーダーなどレイトレーシング以外の性能が弱いのか、ドライバーの最適化が進んでいないのか、あるいはその両方などの理由が有ると思われます。

3DMark 「Mesh Shader feature test」

というわけで、Speed Wayのスコアがふるわなかった原因を探るべく、「Mesh Shader feature test」を用いてArc Aシリーズのメッシュシェーダー性能を見てみましょう。Mesh Shader feature testは、名前の通りメッシュシェーダーのパフォーマンスを計測し、結果はフレームレートで表示されます。Mesh Shader feature testでは、1回目は従来通り(Mesh ShaderはOFF)にレンダリングを行い、2回目はメッシュシェーダーを利用(Mesh ShaderはON)してレンダリングを行い、フレームレートの差を比較することが出来ます。今回はメッシュシェーダーのパフォーマンスを確認するのが目的のため、2回目(Mesh ShaderはON)の結果にて比較します。なお、解像度はWQHDとなります。

~3DMark Mesh Shader feature test~

Mesh Shader feature testの結果を見ると、Arc AシリーズはGeForce RTX 3060 Tiを上回っておりメッシュシェーダー性能はちゃんと出ているようです。レイトレーシングとメッシュシェーダー共に個別ではちゃんと機能しているため、Speed Wayのスコアがふるわなかったのは、テストしたドライバーバージョンではグローバルイルミネーションやレイトレーシングによる反射の描画にうまく対応できていなかったのかもしれません。

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク

3DMarkに続いて、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークです。テスト環境設定は高品質・フルスクリーンで、テスト解像度はフルHDとWQHDになります。なお過去のデータと比較のためSDRかつ、DLSSは無効としています。

~FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークスコア~

FINAL FANTASY XVではResizable BARの効果が非常に大きく、おおよそ60%もスコアが向上しています。
しかしながら、FINAL FANTASY XV がNVIDIA GameWorks対応という事を除いても、Arc Aシリーズのベンチマークスコアは全くふるいませんでした。動作の指標では、Resizable BAR有効ではフルHD解像度ならArc A770(RB)、Arc A750(RB)共に「やや快適」の指標(4500~5999)となり、WQHD解像度でもArc A770(RB)が「やや快適」の指標となっており、「標準」の指標を超えているため、ゲームプレイ自体には問題ないと思われます。とはいえ、3DMarkでも見せたようなGeForce RTX 3070に迫る性能は持っていますので、今後の実際のゲームタイトルにおける最適化に期待したいところです。

ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

今度はファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークです。テスト環境設定は最高品質・DirectX 11・フルスクリーン、テスト解像度はフルHDとWQHD となります。ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレについては、ベンチマークテストの詳細で平均fps(フレームレート)も確認できるので、合わせて掲示します。

~ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク スコア~

~ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク フレームレート~

ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ では、Arc AシリーズはフルHD解像度ではGeForce RTX 30シリーズに今一歩及びませんでしたが、WQHD解像度ではGeForce RTX 3060と同等以上のスコアとなっており、FINAL FANTASY XVと比べるとかなり善戦しています。Resizable BAR有効では動作の指標においてWQHD解像度でも「非常に快適」な動作の指標(15000~)を上回っており、フレームレートもフルHD解像度で140fps以上、WQHD解像度で100fps以上と、ゲーミングプレイには十分な性能を示しています。

3DMark 「Intel XeSS feature test」

最後に、3DMarkに追加された「Intel XeSS feature test」でArc Aシリーズのアップスケーリング性能を確認してみましょう。今回はテスト解像度にフルHDとWQHDを、XeSSモードはPerformanceとBalanced、Qualityを選択しています。なお、XeSSが有効ではない場合の結果はOFF として計測されます。
Intel XeSSはNVIDIA DLSSやAMD FidelityFX Super Resolution(以下FRS)と同じように、低解像度でレンダリングしたゲーム画面の画素を補完して高解像度に見せる技術で、AIアクセラレーションを活用してGPUの負荷を低減して性能向上を図っています。多くのゲームスタジオとコラボレーションが進められていて、現在ではAAAタイトルを含めて多くのゲームタイトルで使用できるようになっており、今後も対応タイトルが増加していくことが期待されます。

~Intel XeSS feature test フルHD~

~Intel XeSS feature test WQHD~

一目瞭然にXeSSの効果が大きい事が分かります。XeSSの効果はフルHD解像度よりもQWHD解像度で大きくなっており、アップスケーリング技術らしさがうかがえます。WQHD解像度ではQuarity設定で1.7倍以上、Balanced設定で2倍以上、Performance設定なら60fps以上と、十分すぎるメリットが得られています。XeSSに対応したゲームタイトルであれば、ゲーム体験を一気に向上させてくれそうです。

十分な素質を備えたArc A770、Arc A750

インテルから久々に発売されたArc A770、Arc A750は、Fire StrikeやTime Spyだけでなく、レイトレーシングやメッシュシェーダーの性能でもGeForce RTX 3060 Tiと互角以上に戦える能力を備えている事が確認出来ました。ベンチマークテストの結果を見る分ではミドルレンジモデルとしては十分な素質は備えていると言えるでしょう。またファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレで「非常に快適」な指標をクリアするなど、実際のゲーミングプレイにおいても十分に戦力と成り得る実力は見せてくれています。

もちろんFINAL FANTASY XVで見えたように、ドライバーやゲームタイトルの最適化がまだまだな所も有りますが、そもそもグラフィックスカードが無ければゲームタイトルが最適化を施してくれることは無いわけで、今後の対応に期待といったところです。Arc A770、Arc A750の素質は十分にあるため、ドライバーやゲームタイトルの最適化が追い付いて来れば大化けする事だって有るかもしれません。

価格については、Arc A770が約70000円でGeForce RTX 3060 Ti とGeForce RTX 3070の間に、Arc A750が約55000円でGeForce RTX 3060 とGeForce RTX 3060 Tiの間に収まっており、3DMarkの性能で見ればコストパフォーマンスの良いグラフィックスカードとなっています。

Arc A770、Arc A750は、3DMarkで見せてくれたような優れたパフォーマンスが多くのゲームで発揮できるようになったなら、魅力的な存在になりそうです。特にIntel XeSS feature testで見せてくれたパフォーマンスアップは見事なもので、XeSSに対応したゲームタイトルが順調に増えていくことを期待したいと思います。ちょっと変わった面白いグラフィックスカードを探しているなら、今後の期待も込めて是非とも試してもらいたいグラフィックスカードです。

グラフィックスカード Arc A770
Limited Edition
(※ブースト:2400MHz)
Arc A750
Limited Edition
(※ブースト:2400MHz)
MSI製
GeForce RTX 3070
(※ブースト:1755MHz)
ASUS製
GeForce
RTX 3060 Ti
ASUS製
GeForce
RTX 3060
CPU Core i9-13900K (P-core:8コア、E-core:16コア / 32スレッド)
CPUクーラー Inwin製360mm水冷クーラー (IW-LC-BR36)
マザーボード ASUS Prime Z690-P
メインメモリ DDR5-4800 32GB (16GB x2)
ストレージ Samsung 980 PRO 1TB (MZ-V8P1T0B) PCIe4.0x4 M.2 NVMe SSD
電源 Seasonic SSR-1000PD (80PLUS Platinum、1000W)
OS Windows 11Home 64bit (バージョン:22H2)
グラフィックス
ドライバ
Intel Graphics Driver
Ver 31.0.101.3490
GeForce Game Ready Driver Ver 522.25

~検証に使用した構成~

ライタープロフィール 職人5号

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。

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