

プロフェッショナルが使う本格的な動画編集ソフトウェア「Adobe Premiere Pro」に対して、一般ユーザー向けに用意されている「Adobe Premiere Elements」が2021年秋にメジャーバージョンアップ。ここでは注目の新機能を含めて、Adobe Premiere Elements 2022の操作方法について解説します。
Adobe Premiere Elements 2022の編集モード
Adobe Premiere Elements 2022を起動するとホーム画面が表われ、目的に合わせた動画の作成ガイドが27種類表示されます。ここにはPhotoshop Elementsの機能も含まれていて、自分の環境にPhotoshop Elementsインストールされていれば一緒に起動されます。
まず「ビデオの編集」をクリックしましょう。
その後、表示された画面上部に用意された「クイック」「ガイド」「エキスパート」タブは、Premiere Elementsが用意した3つのモードになります。
ここでの作業は、これらのモードから1つを選択してから行います。簡単な編集操作に絞って対応するなら「クイック」を、手順に従いながら操作したいなら「ガイド」を、細かくて踏み込んだ編集作業をするなら「エキスパート」を選びましょう。
「クイック」モードについて
まず「クイック」モードを中心に、Premiere Elementsの各機能や操作方法を見ていきましょう。「クイック」タブを選んだら、「写真とビデオを統合して、1つのムービーを作成」をクリックします。
表示されたダイアログからビデオを選択して、読み込みます。ファイル名順にタイムラインに並びます。順番を変えたい場合は、タイムラインでクリップをドラッグ&ドロップすれば入れ替え可能です。
クリップの右下のアイコンをクリックして「Smart Trim」を選択します。
「Smart Trim」の画面になり、クリップのトリミングができるようになります。クリップの両脇にある青いハンドルをドラッグして長さを調整します。編集に戻る場合、ウィンドウ右下の「編集の続行」を押します。
クリップの中で複数シーンを選択したい場合、選択クリップの右下にあるカメラのアイコンをクリックすると、シーンを追加できます。
トランジションを追加するには、クリップとクリップの間にある四角のアイコンをクリックするか、画面右のツールバーより「トランジション」を選択すると、「トランジション」パネルが出てきます。ここからタイムラインの四角アイコンにドラッグ&ドロップすると、小さな「トランジションの調整」パネルが表示。「デュレーション」(持続時間)を調整したり、「すべてに適用」でクリップの切り替え部分すべてに同じトランジションを適用したりできます。トランジションが適用されると、クリップ間のアイコンがオレンジ色になります。
続いて音楽を追加します。画面下部のタイムライン下に「音楽を追加」ボタンがあります。クリックすると、音楽を選択するペインが右に表示されます(UI右側のツールバーにある音符アイコンを選択しても同様に表示)。カテゴリー分けされた音楽(52個)が表示されるので、アイコンをクリックすると試聴でき、アイコンをタイムラインにドラッグ&ドロップすれば音源が追加されます。
音楽がムービーより短い場合などに音楽の長さを調整可能です。タイムラインの音楽名(ここではHeaven)の右にある下向き三角をクリックして「ムービーに合わせる」を選択すると、自動でムービーの長さに変更されます。この時「フェードイン」「フェードアウト」と「音量」も調整できます。
次にタイトルを入れてみましょう。クリップを選択すると、上に「T」アイコンのバーが表示されます。クリックすると、プレビューウィンドウ上で文字入力が可能になります。右の「調整」ペインでフォント、サイズなどが変更できます。タイムラインのテキストバー左にあるストップウォッチアイコンをクリックして、「デュレーション」と「開始点」の設定も可能です。
テキストの「調整」ペインには4つの機能(タブ)が用意されています。1つ目が「テキスト」で、基本的なテキスト編集が可能です。
2つ目が「スタイル」で、テキストを選択してスタイルのアイコンをクリックするだけで複雑なスタイルが適用されます。
3つ目が「アニメーション」。動きを伴ったフェードインやフェードアウトなど、さまざまなテキストアニメーションが適用できます。
4つ目が「図形」。四角、楕円、角丸、ラインの図形を描画できます。「カラー」を選択すると色の選択、グラデーションの設定、ドロップシャドウの設定が可能です。
以上のように、クイックモードでも十分に編集できる点が、Photoshop Elementsの魅力と言えます。
細かな編集に対応できる「エキスパート」モード
編集工程の流れを優先して、「ガイド」より先に「エキスパート」を説明します。クイックモードでの編集後に画面上部「エキスパート」モードに切り替えれば、もっと細かな編集が可能になります。例えば、おおよその編集をクイックで進めておいて、細部調整だけエキスパートで詰めていくような使い分けた操作ができます。
ただしモードの切り替えに際して、エキスパートモードで編集後に改めてクイックモードに戻ろうとすると、クイックモードでは編集できない箇所が出てくるので、注意しましょう。
エキスパートモードの「補正」には、ビデオとオーディオのさまざまな調整ツールが用意されています。
UI右端のツールバーの「クリップにグラフィックを追加」ボタンを押すと、多数用意されているグラフィックパーツが確認できます。
「ガイド」モードについて
「ガイド」モードでは、4つのカテゴリータブがあります。「基本」タブでは、クリップのトリミングやトランジション、タイトルなど基本的な機能が登録されています。
「ビデオ調整」タブには、グラフィックのアニメート、ピクチャーインピクチャー、アクションカメラのデータ補正などがあります。
「オーディオ調整」では、ナレーションと音楽の追加が可能です。
「楽しい編集」タブには、印象的な効果を追加できる機能のガイドが登録されています。クリップの再生速度に関する調整やマスキングを利用した効果などがあります。
注目の新機能1:シャドウとハイライト
筆者が考える、新バージョン「2022」の注目の新機能の1つが「ガイド」モードの「シャドウとハイライト」です。まず「エキスパート」モードをクリックした上で「ガイド」をクリックしましょう。最初に選んだモードによって「ガイド」の内容が少し変わります。
「ガイド」の「基本」タブにある「シャドウとハイライトを調整」を選択します。
画面の左上にガイドダイアログが表示されます。右三角矢印(「次へ」ボタン)をクリックして進めます。
メディアを追加します。操作は若草色の囲みと矢印が自動的に表示されるので、迷わず操作を進められるでしょう。
「メディアを追加」の「ファイルとフォルダー」を選択。開かれたダイアログからビデオを選びます。
選択したビデオが「プロジェクトのアセット」に追加されるので、タイムラインの「ビデオ1」へドラッグ&ドロップします。
エフェクトを適用するために、画面右のツールバーからハイライトされているエフェクトアイコンをクリックします。
「エフェクト」パネルに「シャドウ・ハイライト」が表示されていない場合、プルダウンメニューから「高度な調整」を選択します。
「シャドウ・ハイライト」のアイコンをタイムラインのクリップにドラッグ&ドロップします。
最初の設定は自動補正になっているので、「量を自動補正」チェックボックスをオフにして、エフェクト量を調整します。自動補正で問題なければ、そのまま進めます。
スライダーを動かし、「シャドウ・ハイライト」の量を調整します。結果はリアルタイムに表示されます。
目のアイコンをクリックするたびに調整前、調整後が切り替わるので、効果の具合を確認しましょう。
最後に完了のダイアログが表示されます。
注目の新機能2:アニメーションオーバーレイ
注目したい新機能のもう1つが「アニメーションオーバーレイ」です。ビデオの上にアニメーションを重ねて、印象的な効果を引き出すための機能になります。「ガイド」の「ビデオ調整」タブ、「アニメーションオーバーレイ」をクリックします。
開始ダイアログ後、先ほどと同様、メディアの選択を行い「プロジェクトのアセット」からタイムラインにビデオをドラッグ&ドロップします。UI右側のツールバーより「グラフィック」アイコンをクリックします。
「グラフィック」パネルに「アニメーションオーバーレイ」が表示されるので、適用したいオーバーレイをタイムラインの「ビデオ2」にドラッグ&ドロップします。
元のクリップに重ねたため、現状はオーバーレイの素材だけが表示されています。ツールバーから「適用されたエフェクト」を選択します。
「不透明度」エフェクトの「描画モード」から「オプション」を選択します。ほとんどの場合「スクリーン」か「比較(明)」にすれば、望む効果になるでしょう。ここでは「描画モード」を「スクリーン」にしました。これで元素材に希望の効果(オーバーレイ)が加わりました。
オーバーレイした素材の長さが元のクリップと合わないのでトリミングします。「ビデオ2」クリップの最後の部分をドラッグして、元のクリップと長さを合わせます。
最後に書き出し機能を確認しましょう。画面右上の「書き出しと共有」をクリックします。
ダイアログが表示されます(下の画面)。「クイック書き出し」では、多くの機種や環境で再生可能な一般的な形式で保存できます。ファイルサイズを縮小するスライダーも用意されています。
他に「デバイス」「ディスク」「ソーシャルメディア」「オーディオ」「画像」タブがあり、それぞれに最適化された状態で書き出すことが可能です。「ソーシャルメディア」では「YouTube」「Vimeo」「Facebook」「Instagram」の各環境にあった解像度で書き出せます。ここからYouTubeとVimeoに直接アップロードできます。
他にも新機能として、Adobe Premiere Rushにも搭載されている被写体をフレーム内に自動で収める「オートリフレーム」や新しいスライドショースタイルが追加されるなど、メジャーバージョンアップにふさわしいアップグレードになっています。
Premiere Proに慣れているユーザーも、実際に利用してみるとPremiere Elementsの高機能ぶりに驚くことでしょう。各種SNSへのアップロード対応や、手軽な編集作業が中心のユーザー層にとっては、使い勝手のいい強力なツールと言えます。

某Webデザイン誌、某Mac誌でのライターを経て映像制作を中心に各種デザイン、3D設計などで活動中。楽しみはゲームとドローン写真からの3次元点群データ作成。