AI(人工知能)やディープラーニング(深層学習)について、クリエイティブやビジネスの現場で最低限備えておきたい知識を紹介します。

ITトレンド最終更新日: 20210820

AI・ディープラーニング 初心者向け解説

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AI(Artificial Intelligence:人工知能)やディープラーニング(Deep Learning:深層学習)について、耳にする機会が増えています。ここでは、デジタルに関わるクリエイターや企業のデジタル担当者の中で、「まだまだ駆け出し」「新任です」というみなさんが、クリエイティブやビジネスの現場で最低限備えておきたいAI全般の知識についてまとめました。

AIに存在する2つの考え方について

年々AIは、身近な存在としてトピックとなっています。スマートフォンなど、日々使うものにもどんどん取り入れられています。

AIを具体的に想像するとなると、身近なところではiPhoneの対話型AI「Siri」やAmazonの「Alexa」、映画好きの方は『2001年宇宙の旅』に登場する「HAL-9000」、SF好きなら人間のように振る舞うコンピューターやロボットを思い浮かべるかもしれません。

一般社団法人「人工知能学会」では「AIには2つの考え方が存在する」とします。2つとは、「特化型AI」と「汎用型AI」のことです。

上の表を参照しつつ、以下にまとめなおすことができます。

1 人間が「知能を使ってすること」を機械にさせようとするもの
2 人間の「知能そのもの」を持つ機械を作ろうとするもの

1が「特化型AI」を指します。現在世の中に存在するAIは、特化型AIになります。限定された、特化された領域の課題に対して、自動的に学習・処理を行います。例えば、先述のSiriやAlexaのような音声認識や、カメラで撮った写真の画像を自動的に改善したり、人間の顔を自動的に識別する画像認識などの技術を指します。

2が「汎用型AI」やAGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)と呼ばれるものです。

1とは異なり、特定の課題に限らず、人間と同じくさまざまな課題を処理できるものです。映画の中ではしばしば見られるのは汎用型AIで、映画『2001年宇宙の旅』の「HAL-9000」や映画『アベンジャーズ』に出てくる「ウルトロン」、映画『チャッピー』の主人公「チャッピー」などもこのタイプです。現実にはまだ存在しません。

汎用型AIやAGIは、夢の技術として研究開発が進められていますが、現在は特化型AIが社会のさまざまな課題に適用された状態です。

ブームを繰り返したAIの歴史

今日のブームを迎える以前から、AIは何度かのブームと冬の時代を繰り返しています。

出典:総務省『ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究』(2016年3月)P15の「図2-1-1-5 人工知能(AI)の歴史」より
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/h28_03_houkoku.pdf

1956年、アメリカ・ダートマス大学の教授、ジョン・マッカーシー氏がダートマス会議の際に「Artificial Intelligence(人工知能)」という言葉を初めて用いています。当時、ルールが定まったパズルなどの解法に効果的な技術が数々生み出されました。一方で現実の複雑な問題を解くことが難しいため、1960年代にはブームが終焉してしまいます。

1980年代に入り、「エキスパートシステム」と呼ばれる研究でAIブームが再来します。これは人工知能に知識をルールとして覚えさせ、問題解決しようというものです。このアプローチにより、実際の社会での適用も図られましたが、人間が持つ知識に対応するにはインプットデータが膨大になること、ルールが矛盾した場合の対応などが課題となり、1990年代にブームは終焉しました。

3回目のブームは、2000年代から始まり、今も続いています。2006年、現在のAIの根幹となる「ディープラーニング(Deep Learning)」技術が発表され、2010年代にはビッグデータブームから膨大なデータ処理が可能になって、2012年に大きなブームが到来します。

ニューラルネットワークとディープラーニング

ディープラーニング(深層学習)を語る前に、先に「機械学習」についての説明も必要です。機械学習とは、人工知能の中核をなす技術で、大量のデータをもとに、分類や予測などを遂行するアルゴリズムを自動的に構築するものです。

例えば、人間がネコを認識するとき、無意識にネコの特徴を捉えて「ネコ」と判断しています。では、コンピューターには、ネコがネコたる特徴をどう学習させればいいでしょうか? ディープラーニング以前の機械学習では、特徴を人間がコンピューターにインプットしていたため、人間の顔認識など複雑な認識・識別は非常に難しい状況でした。

そこで登場したのが、「ニューラルネットワーク」と「ディープラーニング」です。

「ニューラルネットワーク」とは、人間の脳にみられるニューロン(神経細胞)のつながりを模したものです。ニューロンは電気パルスで情報を伝達し、その伝達速度はニューロンとニューロンの結合部分である「シナプス」の結合強度によって変わります。この特徴をもとにモデル化されたニューラルネットワークでは、データを入力する「入力層」、データを出力する「出力層」、入力層から流れてくる重みづけを処理する「隠れ層」から構成されます。

「ディープラーニング」とは、このニューラルネットワークの隠れ層を複数にし、「特徴量」を自動的に抽出できるようにしたもののことです。

従来は人間がインプットする必要があった「特徴量」を、データさえ用意すればコンピュータが自動的に判断できるようになりました。その結果、従来の機械学習では難しかった人間の顔認識など、複雑な問題に対応が可能となったのです。

現代のAI(特化型AI)の得意・不得意について

現在、私たちが利用しているAIはディープラーニングを活用して実装されていますが、現在の特化型AIには得意・不得意が存在します。得意なものは、人間が正解・不正解を明確に判断できるような問題です。例えば、「ネコ」や「人間の顔」の識別といった画像認識は正解・不正解が明確で、実際、非常に高い精度で人間以上の成果を出すことに成功しています。逆に、日本語の文章の要約や大学入試問題を解くといった、ひと目で正解・不正解がわからない問題は、なかなか人間以上の成果を出すのが難しい状態でした。

しかし、こうした分野でも技術進歩は著しく、人間以上の成果を出すような新たなアルゴリズムが次々と登場しています。

AIとの向き合い方

ここまで現代を巡るAIについて、ざっと説明してきました。一通りのAIへの初歩的な知識を身につける立場だと、さらにはAIを作るとなれば、余計に難しい印象を持つでしょう。ですが、実用的なレベルで自分自身でAIを使って何かをやることは、案外手軽にできるようになっています。

ディープラーニングでは、主にプログラミング言語「Python(パイソン)」によるAIのモデル構築と、そのモデルに大量のデータを学習させる2つの過程が必要です。例えば、明確に人の顔の認識をしたい、動画の中の画像認識をしたいなど、用途がはっきりしている場合はGoogleが提供している学習済みAPI群を使うと、アプリケーションが手軽に開発可能です。

逆に、自らモデル構築も学習も行う場合、Googleが携わったTensorflow(テンソルフロー)、Facebookが開発に携わったPyTorch(パイトーチ)といった機械学習、ディープラーニングのためのソフトウェアライブラリを活用することになります。ライブラリなので、プログラムに組み込んで呼び出すと使用できます。

世界的なAIブームから、機械学習を利用できるプログラマやエンジニアが不足しています。このような構築や学習ができることは、実用面だけでなくキャリアパスとしても非常に大きな意味を持ってきます。

ライタープロフィール 野澤智朝

広告クリエイティブや技術、ガジェットなどを取り上げるメディア「ニテンイチリュウ」の運営者であり、現役マーケター。デジタルクリエイティブやデジタルマーケティングに関するメディアで連載を担当してきたほか、各種記事の寄稿が多数。

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