

第3世代Ryzen Threadripperがついに発売開始。Ryzen Threadripper 3970XとRyzen Threadripper 3960Xの2モデルとなり、最大で32コア/64スレッド搭載の超強力なCPU処理性能を必要とするHEDT(ハイエンドデスクトップ)向けのプロセッサーとなります。AMDの位置付けとしても”Serious Creator”向けとしており、少しでも高いパフォーマンスを必要としているユーザーに向けた製品に位置付けしています。第3世代Ryzen Threadripperがどれほどの性能を持つのかをさっそくベンチマークで見ていきます。
Ryzen Threadripper 3970X・3960X登場
第3世代Ryzen Threadripperの第1弾として、まず32コア/64スレッドのRyzen Threadripper 3970Xと24コア/48スレッドのRyzen Threadripper 3960Xの2モデルがリリースされました。そして、さらに上位となる64コア/128スレッドのRyzen Threadripper 3990Xも2020年の登場が予告されています。第3世代Ryzen Threadripperの特徴として、6月に発売された第3世代Ryzenプロセッサーと同じくZen2アーキテクチャーの採用でIPCが大きく強化され、PCI-Express 4.0に対応するなど最新のテクノロジーをサポートしています。
第3世代Ryzen Threadripperは7nmのCCD 4つを、12nmのI/Oダイにつなぐ形で1つの基盤上に配置されており、I/Oダイを介して各コア間やメモリ、PCI-Expressへとアクセスが可能になっています。従来のRyzen Threadripperでは各コアどうしで接続され、メモリやPCI-Expressへはそれぞれのコアを介する必要があったためレイテンシが大きくなる傾向にありました。これらの問題への解決としてサーバー向けのEPYCプロセッサーなどでとられている手法を流用することで改善しました。
NEW TOPOLOGY
従来のRyzen Threadripperと同様、メモリは4枚一組の4チャンネルに対応し最大8枚256GB(マザーボードによる)の搭載が可能です。
対応するチップセットは「TRX40」チップセットとなり「X399」チップセットの後継となります。ソケットは「sTRX4」へと変更され、第1世代や第2世代Ryzen Threadripperなどの従来のCPUと互換性はありません。大きな理由としてはやはりPCI-Express 4.0のサポートによるピン配置変更によるものとなるようです。
PCI-Express 4.0となったことで、CPUとチップセット間もPCI-Express 4.0で接続され、第2世代Ryzen ThreadripperとX399チップセットと比べて4倍の帯域となる133GB/sをサポートします。
AMD TRX40 PLATFORM
結果として、CPUに直接内蔵されるUSBやPCI-Expressに加えてTRX40チップセット側でも豊富なUSB端子やストレージへの接続が可能となっており、従来よりも高速なI/Oインターフェースや、グラフィックスカードなどの組み合わせの自由度が増した形になります。
なお、同時発売となっている16コア/32スレッドのRyzen 9 3950Xもありますが、こちらはメインストリーム向けの第3世代Ryzenであるため、ソケットや対応するチップセットが異なります。
Ryzen Threadripper 3970X |
Ryzen Threadripper 3960X |
Ryzen Threadripper 2990WX |
Ryzen Threadripper 2970WX |
Ryzen Threadripper 1950X |
Ryzen Threadripper 1920X |
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コアアーキテクチャー | Zen2 | Zen+ | Zen | ||||
製造プロセス | 7nm | 12nm | 14nm | ||||
コア/スレッド | 32/64/td> | 24/48 | 32/64 | 16/32 | 16/32 | 12/24 | |
動作クロック | 3.7GHz | 3.8GHz | 3.0GHz | 3.5GHz | 3.4GHz | 3.5GHz | |
Boostクロック | 4.5GHz | 4.5GHz | 4.2GHz | 4.4GHz | 4.0GHz | 4.0GHz | |
L2キャッシュ | 16MB | 12MB | 16MB | 12MB | 8MB | 6MB | |
L3キャッシュ | 128MB | 128MB | 64MB | 64MB | 32MB | 32MB | |
メモリ | 対応チャンネル | DDR4-3200 | DDR4-2933 | DDR4-2667 | |||
チャンネル数 | 4 | ||||||
PCI-Express | Gen | 4.0 | 3.0 | ||||
レーン数 | 72 | 64 | |||||
TDP | 280W | 250W | 180W | ||||
64bitコード | AMD64 | ||||||
対応ソケット | Socket sTRX4 | Socket TR4 | |||||
対応チップセット | AMD TRX40 | AMD X399 |
AMD Threadripperスペック比較一覧
第3世代Ryzen Threadripperの特徴まとめ
- ・7nm製造プロセスの「Zen2」アーキテクチャーを採用
- ・Zen世代から15%のIPC向上
- ・最大72レーンのPCI-Express Gen 4.0対応
- ・第2世代EPYCのチップレット設計を使用し、12nmI/Oダイを介してすべてのコアから4チャンネル
- ・DDR4およびPCI-Expressへのアクセスが可能
- ・新たにsTRX4ソケットと、TRX40チップセットへ対応
- ・チップセットとCPU間が従来の4倍の帯域(133GB/s)
- ・4チャンネルDDR4-3200メモリに対応、最大256GBに対応
- ・ECCメモリに対応(マザーボードによる)
- ・最大12系統のUSB 3.2 Gen2(USB 3.1)をサポート(マザーボードによる)
左:第3世代Ryzen Threadripper、右:第2世代 Ryzen ThreadripperのCPU表面。ヒートスプレッダーの形や切り欠き位置など、見た目の形状は変わっていません。
左:第3世代Ryzen Threadripper、右:第2世代 Ryzen ThreadripperのCPU裏面。中央部のキャパシタの配置に違いは有りますが、それ以外の違いは有りません。
第3世代Ryzen Threadripperと第2世代Ryzen Threadripperでは、CPUの形状に違いは有りませんでした。sTRX4とsTR4のソケット形状にも違いは有りませんので、外観的には同一と見て良さそうです。とはいえ、PCI-Express 4.0への対応やTRX40チップセットへの接続レーン数の増加などもありピンアサインは変更となっていると見た方が良いでしょう。誤って取り付けた場合、CPUの故障だけではなく最悪の場合発火する恐れもありますので、第3世代Ryzen Threadripperは必ずTRX40チップセットと組み合わせて使用してください。
第3世代Ryzen ThreadripperのTDPは従来よりもさらに上がって280Wとなっていますので、Ryzen Threadripper(sTRX4ソケット)に対応する専用のヘッドを持った水冷クーラーや大型の空冷クーラーを使用することをお勧めします。また、マザーボードもEPS8ピン×2が必要となっているため、変換ケーブルなどでは対応せずEPS8ピンを2本もつ、850Wなどの12V出力系統に余裕を持つ大容量の電源を使用することを強くお勧めします。
それでは、第3世代Ryzen Threadripper 3970XとRyzen Threadripper 3960X の実力を、ベンチマークを通して見て行きましょう。
ベンチマークテスト
PassMark PerformanceTest
まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassMarkの『CPU Benchmarks』を用いてCPUの演算性能を見てみましょう。
Ryzen Threadripperシリーズベンチマーク:PassMark PerformanceTest
第3世代Ryzen Threadripperは第2世代Threadripperのほぼ倍のスコアとなっています。Zen2アーキテクチャーの性能の高さに加えて、第2世代Threadripperで発生していたコアがすべて使い切れていない状況や、特定のテスト項目でのスコアダウンも解消されており、新しいパッケージング方法が功を奏している事が確認できます。
上記理由から第2世代と第3世代を単純比較とは言えませんが、ポン付けでベンチマークを走らせてもきちんとパフォーマンスが計測できるというのは大きなメリットといえるでしょう。
また、同じZen2アーキテクチャーのRyzen 9 3950Xと比べても40%近くスコアが増加しており、第3世代Ryzen Threadripperは第3世代Ryzenの上位に位置するCPUとして相応しい性能となっています。
3D Mark Time Spy
続いて、『3D Mark Time Spy』のCPU Scoreで、CPUの演算性能を見てみましょう。CPU Scoreは、CPUに物理演算をさせてその処理速度を数値化したもので、CGレンダリングや動画のエンコードと同じくCPUのコア・スレッド数の多さが有利に働きます。
Ryzen Threadripperシリーズベンチマーク:3D Mark/Time Spy Extreme
Ryzen Threadripper 3970XがRyzen 9 3950Xのぼぼ2倍のスコアをたたき出しています。Ryzen Threadripper 3960XもRyzen 9 3950Xの1.5倍のスコアとなっており、メニーコアプロセッサーの威力を如何なく発揮しています。
TMPGEnc Mastering Works 6
次いで、動画編集ソフトのTMPGEnc Mastering Works 6を用いて、QuickTimeファイル(3840x2160/2分50秒)をh.265に変換するのに要した時間を測定しました。グラフの短い方がより高速に処理を行っている事になります。(※単位は 秒 です。)
Ryzen Threadripperシリーズベンチマーク:TMPGEnc Mastering Works 6
他のベンチマークの結果同様、コアをしっかりと使い切っており、第3世代Ryzen Threadripperの性能が如何なく発揮され、さらにZen2アーキテクチャーの優秀さが見て取れます。Ryzen 9 3950Xがインテル製CPUにも勝る結果をたたき出していましたが、第3世代Ryzen Threadripperは更にエンコード時間が短縮され、Ryzen 9 3950Xよりもおおよそ1分、割合にして20%前後も早くなっています。AMDが「Serious Creator」向けと公表しているだけの事は有る、納得の結果となりました。
第3世代Ryzen Threadripperベンチマーク結果
第3世代Ryzen Threadripperは、同じZen2アーキテクチャーの第3世代Ryzen 譲りのハイパフォーマンスを如何なく発揮してくれました。CPUのパッケージデザインの改良によって、第2世代Ryzen Threadripperに見られたような全コアを生かすための工夫などを必要とせず、全般的にメニーコアの高いパフォーマンスを発揮する事が出来ています。
クリエイター向けでは有るものの、ゲームやディープラーニングなどの様々なCPUの高い演算パワーが必要となる用途には最適なCPUと言えそうです。コンシューマー市場でも入手可能なCPUとして、現時点で最上位クラスのずば抜けた性能を、第3世代Ryzen Threadripperで是非とも体験してください。
第3世代 Ryzen Threadripper |
第2世代 Ryzen Threadripper |
第3世代 Ryzen | ||||
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CPU | Ryzen Threadripper 3970X Ryzen Threadripper 3960X |
Ryzen Threadripper 2990WX Ryzen Threadripper 2970WX |
Ryzen 9 3950X | |||
マザーボード | ASUS TRX40-PRO | MSI X399 GAMING PRO CARBON AC | ASUS PRIME X570-PRO | |||
メインメモリ | DDR4-2666 32GB (8GB x4) | |||||
ビデオカード | GeForce GTX 1080 Founders Edition(ビデオメモリ 8GB) | |||||
ストレージ | Samusung 970 EVO 500GB NVMe M.2(MZ-V7E500B) | |||||
電源 | SEASONIC SSR-850PX(80PLUS Platinum 850W) | |||||
OS | Windows 10 Home 64bit (バージョン:1903) | |||||
ビデオドライバ | GeForce Game Ready Driver Ver441.08 |
Ryzen Threadripper検証環境
Ryzen Threadripper 搭載BTOパソコン 単品パーツ 販売中
Ryzen Threadripper 3970X・3960X搭載BTOパソコン、単品パーツの発売を開始いたしました。

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。