どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイター、アニメーション監督の白石慶子さんに直接聞いちゃいます。

クリエイター最終更新日: 20191226

アニメーション監督:デジタル×アナログのコラボレーションで心を動かすアニメーション表現を目指す

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストは、数々のアニメ作品のOP(オープニングアニメーション)やED(エンディングアニメーション)を制作している、アニメーション監督の白石慶子さん。その活動は監督業にとどまらず、美術館での展示やワークショップの開催など、新たな領域にも広がっています。

白石さんが携わったアニメーション作品

白石さんがOPやEDを手がけたアニメ作品は『ケンガンアシュラ』『あそびあそばせ』『ハクメイとミコチ』『月がきれい』『クズの本懐』『ダンガンロンパ3』『暗殺教室』『デジモンアドベンチャー tri.』『乱歩奇譚』『人類は衰退しました』など多数。また、NHK『みんなのうた』の放送曲『日々』のアニメーションや、被爆体験手記をアニメ化した『ホウセンカおじいちゃん』なども制作しています。

“ホウセンカおじいちゃん ~アニメーションで伝える『ヒバクシャからの手紙』”
https://www.youtube.com/watch?v=xM8ysSdi4O0

漫画制作は小学生の頃から!

子どもの頃に憧れていた職業はありますか?

小学生の頃、自分で描いた漫画を雑誌に投稿したり、友だちと同人誌を作ったりしていました。それを読んだ人たちが喜んでくれたり、感想を聞かせてくれたことがきっかけで、自分が作ったもので誰かを幸せにする仕事ができたらいいな、と思うようになりました。

そこからどんな道に進みましたか?

さまざまなものを作る学生時代を送りました。東京都立工芸高等学校ではグラフィックデザインを学び、多摩美術大学では映像を学び、東京藝術大学大学院ではアニメーションを学びました。特に絵画や文学や音楽が混ざる総合芸術が好きで、外の世界を映す実写から、心の中の記憶や想像を描くアニメーションを作るようになりました。子どもの頃に描いていた漫画と、学生時代に作っていた映画が、漫画映画(アニメーション)になったような感覚です!

大学院卒業後はどうされたんですか?

株式会社サンライズにCGデザイナーとして入社しました。そこで経験を積み、フリーランスのアニメーション監督を目指すようになりました。その理由は企画・コンテ・作画・編集など作品全体に携わりたかったからです。また、フリーランスだと色々なアニメーション会社とお仕事ができますし、講師としても働けます。そして、お仕事の幅を広げることでアニメーション業界の勤務時間や給料が変化して、企業側も作家側も特長を生かせるのではないかと考えて、自ら実験してみました。

素晴らしい試みですね! アニメーション監督として活躍するようになったきっかけを教えてください。

フリーランスのアニメーション監督になって、初めてのお仕事はテレビアニメのED制作でした。OPやEDは企画書から完パケまで自由に作らせていただくことが多く、一人で制作するケースもあります。本編とは違う手法で実験的なことができるので、学生時代に作ってきたインディペンデント・アニメーションと、仕事として作ってきた商業アニメーションの架け橋を目指しています。それが視聴者にとっても、クライアントにとっても、自分にとっても、できるだけ三方ハッピーになっていたらうれしいです。

ターニングポイントになった作品とは

白石さんのターニングポイントとなった作品を教えてください

被爆体験手記『ホウセンカおじいちゃん』をアニメ化するお仕事です。NHKの番組『ヒバクシャからの手紙』で放映されました。制作するにあたり、広島の被爆建造物や跡地を巡り、被爆者のご家族のお話を聞きました。広島平和記念資料館では、原爆投下直後のキノコ雲の写真が2枚しか残っていないことから、市民が描いた「原爆の絵」の意義深さを感じました。実写映像で記録できなかったことを絵やアニメーションで記憶に残せたら、という思いを作品に込めています。

『ホウセンカおじいちゃん』の制作から、何を得ることができましたか?

「原爆の絵」に描かれた人物は、肌色や赤色や黒色で塗られています。写真ではないので、事実と異なるかもしれません。しかし、被爆した本人にとってはそのイメージこそが「真実」なのだと思い、私もそのつもりで手描きアニメーションを制作しました。また、広島の砂を使用したサンドアニメーションも混ぜて、もしかしたら私が知らない時間や空間をこの砂は知っているかもしれない、という願いを込めました。私は原爆を体験していない世代ですが、当事者でなければ描けないのであれば、これから誰も描けなくなってしまうことに気がつきました。アニメーションを作ることで、子どもたちや次の世代に伝えていきたい、という思いを得ました。

クリエイティブ人生で、挫折を経験したことはありますか?

一番大きな出来事は、2011年の東日本大震災です。クリエイティブなことを20年以上続けてきましたが、震災直後に被災地を訪れたところ、クリエイティブよりも大事なことがあるのではないかと思い、初めてアニメーション制作を辞めようかと悩みました。それでも幼馴染の被災者をテーマにしたアニメーションを作り、震災1年後に上映したところ、それを見た人に「自分も被災地に行って何かを作りたくなった」と言ってもらえて、誰かの創作意欲の元になったことに意義を感じました。力を発揮するのに時間はかかるかもしれませんが、クリエイティブは無力ではないと信じています。

仕事でやりがいを感じる瞬間はどんなときですか?

大人はアニメーションを自分の人生と重ねて泣いたり、子どもは絵が動いた瞬間に手をたたいて興奮してくれたり、高齢者の方は忘れていたことを思い出したかのようにお話してくださったり、障害をお持ちの方は黙々と凄い集中力を発揮されたり、クリエイティブにはさまざまな力があると感じます。アニメーションは絵を動かし、話を動かしますが、そのことで誰かの心を動かして、人生を動かせたら、本望です!

仕事をするうえで、もっとも大切にしていることは何ですか?

よく「どのようにお仕事が来るのか」と聞かれるのですが、その答えは「人とのご縁」です! 例えば、初めて『人類は衰退しました』のEDを制作したときの監督さんから『暗殺教室』のED、プロデューサーさんから『デジモンアドベンチャー tri.』のED、脚本家さんから『乱歩奇譚』のOPとEDのお仕事をいただきました。まるで一つの作品から枝葉のように、ご縁が広がっていくイメージです。作っているものは映像ですが、作品を観てくれるのも、一緒に仕事をするのも人なので、作品制作も人間関係も大切にしたいと思っています。

デジタル×アナログでサプライズが起きる!?

作品を制作する際に使用しているツールやソフトを教えてください。

映像制作がしやすいようにカスタマイズした、Windowsのデスクトップパソコンを愛用しています。液晶タブレット(Wacom Cintiq)も使います。ソフトウェアは作画にAdobe PhotoshopやCLIP STUDIO PAINT、コマ撮りにDragonframe、コンポジットにAdobe After Effectsを使います。その他には、サンドアニメーションや8mmフィルムなど、パソコンを使わないで作ることもあります。

制作時のこだわりやテクニックを教えてください。

計画的なデジタルと、偶発的なアナログを併せて、作り手も初心に戻って楽しく、受け手も新鮮に楽しめることがポイントだと思っています。アニメーションをパソコンで作画する場合、すべてを意図通りに演出することができます。一方でコマ撮りする場合、例えばサンドアニメーションの砂の一粒一粒はコントロールできません。それらを合成することで、フィルム映像のような粒子感やゴミなどのハプニングとコラボレーションできて、転じてサプライズになる可能性を感じています。

白石さんにとって「パソコン」とはどんな存在ですか?

目的にたどり着くための手段だと思います。アニメーションを作りたいと思ったきっかけは、チャールズ&レイ・イームズの『Powers of Ten』という映像作品を観たことです。人体の映像から、宇宙のマクロな映像になり、素粒子のミクロな映像になる、実写からアニメーションへ移行してゆく作品で、まだCGがない時代に作られました。宇宙の星々と、体内の素粒子が似ていて、自分の中にも宇宙があることに感動して、パソコンという手段があってもなくても、目的のテーマを描けるようになりたいと思いました。そしてパソコンの中にも、0と1という宇宙があると思っています。想像すると無限の可能性にわくわくしませんか?

成功も失敗もクリエイティブのネタになる

白石さんにとって「クリエイティブ仕事道」とはなんですか?

私にとって「クリエイティブ」は仕事ではなく遊びで、もっとシンプルに言うと作ることは生きることですね。身の回りにある人工物も自然物もすべてクリエイティブで、消せるボールペンが温度変化で色を変えるのは、一夜にして色を変える紅葉を研究者が観たことがきっかけ、というエピソードが好きです。外の世界からインプットして、自分の中からアウトプットすることは、非日常ではなく日常的なことです。私も子どもの頃からモノ作りが好きで、大人になっても続けていたら仕事になっていました。クリエイターでいられるかどうかは、作ったものの良し悪しではなく、作り続けているかどうかにかかっているのではないでしょうか。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

講義した学生たちからよく「クリエイティブ業界に行きたいけど自信がない」「クリエイティブな学校に進学したいけどお金がない」といった相談を受けます。学校はお金を使って時間を得るところ、会社は時間を使ってお金を得るところ、人生はその繰り返しです。私自身、今もクリエイティブ業界で学んだり遊んだりすることが多く、決して裕福ではない家庭から社会人を経て学生になるなど、紆余曲折しているので安心してください! そして成功しても失敗しても、人生経験すべてが作品のネタになる(笑)。こんな幸せなことはないので、ぜひ皆さんと一緒にクリエイティブできるときを楽しみにしています!

白石さん、ありがとうございました!

クリエイティブは人生そのもの!

「失敗も含めて、人生はすべてクリエイティブのネタになる」と語る一方で、クリエイティブに対して実直に向き合っている白石さん。その思いは、作品の中にも息づいています。クリエイティブは生きること、と言い切る白石さんは、心の底から人生を楽しんでいるように見えます。また、その楽しみから再び新しいインスピレーションが生まれるのかもしれません。自分の現状を理由に諦めるのではなく、クリエイターとして作り続けましょう!

クリエイタープロフィール

白石慶子さん
アニメーション監督
1985年東京都生まれ。多摩美術大学 映像演劇学科卒業。東京藝術大学大学院 映像研究科 アニメーション専攻修了。株式会社サンライズ CGアニメータ勤務後、独立。
https://keikoshiraishi.com/

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ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG
[ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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