

DaVinchi Resolveによるカラーコレクション(カラーグレーディング)作業に最適なパソコンをモデル化するにあたり、PC Watchにてパソコン実験工房PC Watch出張所よりTV番組やCMの映像エディターとして活躍する小林 譲氏に監修頂き、”顧客を前にして編集する”という、ハードウェアのスピードとクリエイターのセンスの両方が重要視されるプロの現場でも通用するスペックを検証し、さらに実際に使用して頂く機会がありましたのでご紹介いたします。
パソコン実験工房PC Watch出張所より「DaVinci Resolve」に最適なPC
特定用途におけるコストパフォーマンスに優れたPCを、impress PC Watch編集部と専門家やライターの皆様とともに検証し、パソコン工房で製品化するコラボレーション企画として始まった「パソコン実験工房出張所」。
今回は、映像のカラーコレクション用途において、ハリウッドをはじめとする映画産業で事実上のスタンダードとして利用されている動画編集ソフト「DaVinci Resolve 15」で4K HDR映像を快適に編集できるマシンを探ることとなりました。
カラーコレクションソフトウェアとして知られる「DaVinci Resolve」
DaVinchi Resolveでできること
DaVinci Resolve(ダビンチ リゾルブ)とは、Blackmagic Design(ブラックマジックデザイン)社からリリースされている、ポストプロダクション・ソフトウェアです。Version 15以降では、カラーコレクション(カラーグレーディング)をはじめとし、動画編集、オーディオポストプロダクション、ビジュアルエフェクト機能が統合され、編集作業を通して行うことができるようになっており、複数のエディター、アシスタント、カラリスト、VFXアーティスト、サウンドデザイナーたちが、同じプロジェクトで同時に作業を行うことができ生産性向上が期待できるのが強みになっています。
無償で利用できる「DaVinci Resolve 15」と、さらにエフェクトやマルチユーザー・コラボレーション機能などすべての機能を使用できる有償の「DaVinci Resolve 15 Studio」があります。
DaVinci Resolve公式ページ
https://www.blackmagicdesign.com/jp/products/DaVinci Resolve/
カラーコレクションとカラーグレーディング
カラーコレクション(カラーグレーディング)とは、CMやPV(プロモーションビデオ)、映画などにおいて動画の「色を補正する」作業の事を指します。制作した動画全体の色のトーンを合わせたり、前後のカットの色味を合わせたりといった補正(コレクション)や、明るいところで撮影したシーンを暗くしてホラー映画のような演出に見せかける変更(グレーディング)など、作品全体の雰囲気を決める重要な役割を担っています。
DaVinci Resolveに必要なスペックを探る
ここで、DaVinci Resolveに必要なスペックを公式ページの情報から確認していきます。DaVinchi Resolve 15のマニュアルを確認してみました。
https://documents.blackmagicdesign.com/ConfigGuides/DaVinci Resolve15/20180407-79c607/DaVinci_Resolve_15_Configuration_Guide.pdf
記載内容をまとめると、スペックの必須条件として
・4コア以上の最新のCPU
・UI用のモニター
・アプリケーション用内蔵ストレージ
・素材データ用ストレージ
・キーボードとマウス
この他に必要なものとして下記のようなものが挙げられています。
・グレーディング用モニター
・外部ストレージ
・GPU(もしくは外部GPU)
・ペンタブレット
・IOポート拡張カード、HUB等
・IOカード(キャプチャーと再生)
・DaVinchi Resolve専用コントローラー
上記を踏まえた上で前編の記事にてお伺いした内容を参考に最適なマシン構成を考えてみました。
インタビューを行った前編記事はこちら
「DaVinci Resolve 15」で4K HDR映像を快適に編集するのに必要なのはCPUコア数? ビデオメモリ? (PCWatch)
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/pc_koubou/1142372.html
本体名 | SENSE∞ DaVinci Resolve編集デスクトップパソコンパソコン(仮) |
---|---|
OS | Windows 10 Home 64ビット |
CPU | AMD Ryzen Threadripper 2990WX |
メモリー | DDR4-2666 8GBx4 [クアッドチャンネル32GB] |
ストレージ | 480GB NVMe SSD [インテル Optane SSD 900p] |
チップセット | AMD X399チップセット |
グラフィックス | NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti 11 GB GDDR6 |
ケース | Coolermaster MasterCase 500 |
電源 | 700W ATX電源 80PLUS認証 |
DaVinchi Resolveでのカラーコレクションに最適なPC・事前検証スペック
お伺いした内容から、CPUには32コア64スレッドに対応しマルチコア性能に優れる「AMD Ryzen Threadripper 2990WX プロセッサー」を搭載し、4K処理だけでなく6Kや8Kの素材の取り扱いも視野に入れ選択しました。
グラフィックスカードは4K処理に必要とされるスペックとなるビデオメモリ11GB搭載する「GeForce RTX 2080 Ti」を1枚搭載しました。2枚以上の搭載も可能な仕様ですが、コストパフォーマンスも鑑み今回は1枚としています。
メモリはDaVinci Resolveが24GBまでしか使用しないことから、必要最低限の32GBを搭載しています。
ストレージには4K以上の素材データの読み込み性能だけでなく、低レイテンシーと高耐久性を重視し、インテルのOptane SSDを標準で搭載しました。
選定したマシンの事前検証
マシンのスペックが決まったところで、実際に期待した性能が発揮できるのか、事前検証を行ってみました。
検証ソース
素材となるデータとして「R3D」形式の「4K」「6K」「8K」の下記条件のサンプルデータを用意しました。
ソース | 解像度 | フレームレート | 時間 | 容量 |
---|---|---|---|---|
8Kソース | 8192 x 4320 | 24 fps | 22秒 | 3.9GB |
6Kソース | 6144×3077 | 23.98 fps | 11秒 | 2.6GB |
4Kソース | 4096×2304 | 29.97 fps | 18秒 | 0.7GB |
DaVinchi Resolveでのカラーコレクションに最適なPC・事前検証ソース一覧
データは外部ストレージなどは使用せず、すべて本体のOptane SSDに保存しました。
プロジェクト設定
DaVinci Resolveを起動し、プロジェクトの設定を下記に設定しました。
・マスター設定ータイムラインフォーマット
・タイムライン解像度 3840x2160Ultra HD
・他デフォルト
検証手順
①Davinci起動後、プロジェクト設定後、メディアの読み込み
(フレームレート確認が出るので変更ボタンを押してメディアのレートに合わせる)
②カラータブに変更
③通常再生でフレームレート確認
④パワーウィンドウ ○を4つ追加しカラーホイールを適当にセット 各ホイールをモーショントラッキング
(再生しフレームレート確認)
⑤④に加えOpen FX シャープ+ブラー(ティルトシフト)+レンズフレアを追加
(再生しフレームレート確認)
⑥④⑤に加え時間的ノイズ除去 フレーム数1 ブレンド6
(再生しフレームレート確認)
検証結果
ソース | 検証③ | 検証④ | 検証⑤ | 検証⑥ | 結果 |
---|---|---|---|---|---|
8K(24fps) | 21fps | 21fps | 21fps | 21fps | 若干のコマ落ちあり |
6K(23.98fps) | 20fps | 20fps | 20fps | 20fps | 若干のコマ落ちあり |
4K(29.97fps) | 29.97fps | 29.97fps | 29.97fps | 29.97fps | 問題なく 再生 |
DaVinchi Resolveでのカラーコレクションに最適なPC・事前検証結果一覧
リソースメーター
8Kソース
DaVinchi Resolveでのカラーコレクションに最適なPC・8Kソースで検証時のリソースメーターの表示
CPU使用率は高く、46%前後、GPUについても25%程度の負荷に加えて、4.4GBのビデオメモリ消費となっていました。
6Kソース
DaVinchi Resolveでのカラーコレクションに最適なPC・6Kソースで検証時のリソースメーターの表示
テストに用いたソースの圧縮率のせいかCPU使用率70%、GPUも28%程度の負荷と4GBのビデオメモリ消費となっていました。
4Kソース
DaVinchi Resolveでのカラーコレクションに最適なPC・4Kソースで検証時のリソースメーターの表示
CPU使用率は低く11%、GPU使用率も9%程度、ビデオメモリは3.8GBの消費となっていました。
事前検証結果からのまとめ
検証の結果からまず言えることは、6K以上のソースは急激に負荷がかかり、CPU使用率もGPU使用率も跳ね上がりました。これは、メディアの圧縮率やコーデックの影響も考えられますが、基本的には非常に負荷の高いソースとなるようです。
また、4Kの素材は、問題なく編集できることがわかりました。CPUコアも、4Kでは64コアを使い切っておりません。6K、8Kのソースでは、4Kソースに比べて多くのコアを使用するようになっていましたがそれでも64コア全てを使用しきっているわけではありませんでした。
課題点としてあげられることは、短いサンプル動画のため、ビデオメモリを使い切る状況が再現できませんでした。モーショントラッキングも行いましたが上記同様サンプル動画のためあまり動きがなく負荷になっていない可能性があります。
さらに負荷が高いと予想される、8K60pの素材の入手も難しく確認することができませんでした。
TV番組やCMの映像エディターとして活躍する小林 譲氏による検証へ
事前検証の結果から4Kソースは十分に編集可能な性能を持つことが分かりましたので、事前検証に使用した構成そのままを小林 譲氏に検証して頂く事にしました。
さらにパソコン工房のノートPCで最高スペックのGeForce GTX 1080を搭載するモデルも用意し、併せて検証して頂きました。
果たして、プロのワークフローにも耐えられるのか?期待が高まります。
本体名 | SENSE∞ DaVinci Resolve編集ノートパソコン(仮) |
---|---|
OS | Windows 10 Home 64ビット |
CPU | インテルCore i7-8700 |
メモリー | DDR4-2400 8GBx2 [デュアルチャンネル16GB] |
ストレージ | 500GB NVMe対応 M.2 SSD |
チップセット | インテル Z370 Express |
グラフィックス | NVIDIA GeForce GTX 1080 8GB GDDR5X |
WLAN | IEEE802.11 ac/a/b/g/n対応ワイヤレスLAN + Bluetooth 5.0 |
モニタ | 17.3型非光沢フルHDカラー液晶 |
DaVinchi Resolveでのカラーコレクションに最適なPC(ノート)・検証スペック
検証結果は以下、後編記事をご覧ください。
4K60p 12bit RAWの動画も編集可能な32コアのモンスターマシンが到着
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/pc_koubou/1158891.html
ここからはDaVinci Resolveでのカラーコレクション作業にあたり、検証結果を受けたまとめと、販売するモデルのスペック、そしてさらに追試としてBlackmagic Design様による検証内容を紹介していきます。
DaVinci Resolveでのカラーコレクション作業で必要なスペックポイント
小林 譲氏に行って頂いた検証結果とさらに行った追試によって、DaVinci Resolveでのカラーコレクション作業において押さえるべきスペックポイントが分かりました。
スペックポイント①:GPUはビデオメモリ容量が重要
DaVinci Resolveによるカラーコレクション作業では、NVIDIA CUDAや、Open CLを使用するため、グラフィックスカードが重要となります。エフェクト処理はもちろん、タイムライン表示、プレビュー表示、レンダリング処理などあらゆるシーンにグラフィックスカードのパフォーマンスが関わります。
また、扱う素材の解像度や圧縮率にもよりますが、ビデオメモリの容量も重要です。Open FXなどのエフェクト処理をかける際に多く消費されます。4K以上の素材を取り扱う場合、最低でも8GB以上のビデオメモリが必要とされ、11GBがおすすめとなります。
ビデオメモリとパフォーマンスを追求するならビデオメモリ24GB搭載のQuadro P6000以上、コストパフォーマンスも追求するならビデオメモリ11GB搭載のGeForce RTX 2080 Ti以上がおすすめとなります。ビデオメモリ24GB搭載のTITAN RTXも非常に有力な選択肢となりえます。
また、複数枚のグラフィックスカードもパフォーマンスの向上には効果的で、6Kや8Kなどの高い解像度の素材を編集しプレビュー表示する際などに効果があります。
※ただし、ビデオメモリはグラフィックスカード個別での使用となりビデオメモリ容量の増加を目的とした増設は効果が得られない点に注意が必要です。
スペックポイント②:CPUはコア数とPCI-Eレーン数が重要
12コア以上の「Intel Core X シリーズ」や、「AMD Ryzen Threadripper シリーズ」のHEDT向けCPUが最適となります。
4K、6K、8Kなどの高解像度の動画素材や、圧縮率の高い素材を扱う際にCPUの性能、特にマルチコア性能が有効になります。4Kでは12コア、6K以上8K60pの素材を扱う場合は16コア以上のCPUが必要となります。
また、複数枚のグラフィックスカードや、様々な映像機器とのデータを取り込みしたりプレビュー表示を行うためのIOカードの増設が必要になるため、PCI-Expressレーン数の多いHEDT向けCPUが最適です。
スペックポイント③:メモリは32GBあれば十分
カラーコレクション作業を含むDaVinci Resolveを使用するにあたって、メインメモリは32GBあれば十分です。理由としては、DaVinci Resolveは仕様上、メインメモリは最大で24GB(内、カラーコレクションでは12GB)までの使用までで制限されており、これ以上は消費されることはありません。
DaVinci Resolve以外のソフトウェアを同時に起動し、並行して作業を進めるなどの場合には必要に応じて増設するとより快適になります。
スペックポイント④:ストレージはNVMe SSDがおすすめ
最大で必要となる転送速度は、4K60pの動画素材1つでは約760MB/s、6K60pでは1666MB/s、8K60pでは2430MB/sもの速度が必要となります。※素材の内容、圧縮率やファイル形式により異なります。
これらの高解像度の映像素材を扱う場合、上記の速度を出せるM.2 NVMeや、PCI-Expressで接続されるSSDの使用が最適です。
プロの現場で要求される高速性や耐久性を重視し、データの読み書きが高速かつ高耐久なIntel Optane SSDをメインドライブとして搭載しました。
大容量化が進む作業用のファイルを一時保管する場合にも480GB以上のSSDの搭載がおすすめです。
参考として、必要なデータ転送速度のおおよその計算方法は下記になります。
実際は、動画のコーデック形式や映像自体の色味など様々な条件により容量が変化するため、おおよその計算となります。
①無圧縮データの転送レート(MB/s)
(pixel width×pixel height×framerate×12)÷8÷1024÷1024
②圧縮率を加味する
①の計算結果÷圧縮率
小林 譲氏の検証結果を受けて発売するモデルを決定
小林 譲氏による検証の結果としては、「AMD Ryzen Threadripper 2990WX」のもつ32コア64スレッドを使い切ることは難しそうであるという結論になりました。さらなる追試を行ったところ、4K編集を行う上では、「AMD Ryzen Threadripper 2920X」の12コア24スレッドでも十分に性能を発揮することが分かりました。
そこで、実際に発売するモデルには、検証に使用した構成からスペックを落とすことでより安価に4K編集を行うことができるモデルを追加することにしました。
グラフィックスカードには、「TITAN RTX」をオプション選択に追加し、よりパフォーマンスを追求することができるようにしました。「AMD Ryzen Threadripper 2990WX」のコア数と、「TITAN RTX」との相乗効果的で高いパフォーマンスが期待できます。
また、ノートモデルにつきましては、検証を行った「GeForce GTX 1080搭載ノートPC」が販売終了となりましたので、後継の「GeForce RTX 2080搭載ノートPC」にモデルチェンジとなりました。
NO.1 | NO.2 | NO.3 | |
---|---|---|---|
モデル名 | SENSE-RM39-LCRT2W-XYI [DaVinci Resolve] |
SENSE-RM39-LCRT29-XYX [DaVinci Resolve] |
SENSE-17FG102-i7-VORX [DaVinci Resolve] |
OS | Windows 10 Home 64ビット | ||
CPU | AMD Ryzen Threadripper 2990WX | AMD Ryzen Threadripper 2920X | インテルCore i7-8700 |
メモリ | DDR4-2666 8GBx4 [クアッドチャンネル32GB] |
DDR4-2666 8GBx4 [クアッドチャンネル32GB] |
DDR4-2400 8GBx2 [デュアルチャンネル16GB] |
ストレージ | 480GB NVMe SSD [インテル Optane SSD 900p] |
500GB NVMe対応 M.2 SSD | 500GB NVMe対応 M.2 SSD |
チップセット | AMD X399 | AMD X399 | インテル Z370 Express |
グラフィックス | NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti 11GB GDDR6 | NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti 11GB GDDR6 | NVIDIA GeForce RTX 2080 8GB GDDR6 |
筐体 | ミドルタワーATXケース CoolerMaster MasterCase MC500 |
17.3型非光沢フルHDカラー液晶搭載 |
DaVinchi Resolveでのカラーコレクションに最適なPC・製品化スペック
Blackmagic Design社による検証
今回の検証で「AMD Ryzen Threadripper 2990WX」の32コアを使用しきることができなかったという点についてBlackmagic Design社でも検証を行って頂きました。(※検証にはDaVinci Resolve 15を使用)
AMD Ryzen Threadripper 2990WX搭載デスクトップモデル(NO.1)
Blackmagic Design社コメント:通常の使用範囲において、フォーマット・コーデックレベルでは一つ下の「AMD Ryzen Threadripper 2920X」を搭載するモデルと同等なものの、コア数の増加によりエフェクト処理には非常に効果がありましたので、エフェクトを多用される方向きになると思います。
AMD Ryzen Threadripper 2920X搭載デスクトップモデル(NO.2)
Blackmagic Design社コメント:4K素材の編集およびグレーディングであれば快適に実施できる製品となり、また、本格的な4K編集を始める一歩としておすすめのモデル。
次の表は、デスクトップモデルNO.1、NO.2でコマ落ちなく基本的なカラーグレーディングが行えたフォーマットおよびコーデック一覧です。
Codec | 解像度/フレームレート | 結果 |
---|---|---|
H.264 | 3840 x2160 60fps | 〇 |
ProRes 422 HQ | 3840 x2160 60fps | 〇 |
RAW: BlackmagicRAW | 4608 x2592 60fps | 〇 |
RAW: CinemaDNG | 3840 x2160 60fps | 〇 |
RAW: CinemaDNG | 4608 x2592 60fps | 〇 |
AMD Ryzen Threadripper 搭載デスクトップモデル(NO.1、NO.2)での検証結果
見えてきたデスクトップモデルの改善ポイント
前編においてヒアリングした結果では、32コア64スレッドであれば8K編集にも対応できる可能性が示唆されておりましたが、「AMD Ryzen Threadripper 2990WX」ではコア数は満たしているものの、Blackmagic Design社の検証においても残念ながら8Kではパフォーマンス不足との結果となりました。
これは、Ryzen Threadripperの仕様として、コア毎の性能や、各CPUコアに対するメモリアクセスの方法や帯域の不足、特殊なコアの構成など複合的な要因ではないかと推測されますが、確証は得られておりません。
Intel Dual Xeon構成で同じ32コアにした場合8K編集は問題がなかったとの事ですので、今後またXeonを搭載するモデルの追加も検討したいと思います。
そしてAMD Ryzen Threadripperを搭載するPCでは、外部ストレージの接続方法で「Thunderbolt 3ポート」が使えるものが少ないという課題もあります。とはいえ、「USB3.1 Gen2ポート」を搭載しており、こちらでも十分な速度を稼ぐことができますので、クリティカルな問題にはならないでしょう。
外部ストレージとして必要な要件としては、「シーケンシャルで1000MB/s以上、容量10TB以上」が目安となり、数字上ではThunderbolt 3でも、USB3.1Gen2でもクリアできる速度になります。この要件を十分に満たすと思われる方法としては、10GのLANと、10Gに対応するNASを使用することで高速かつ大容量のストレージを確保する事ですが、
今回の検証ではここまで行うことができませんでした。検証後、オプションとして追加を検討したいと思います。
では引き続き、ノートモデルの結果も見ていきます。
GeForce GTX 1080搭載ノートモデル(販売終了)
Blackmagic Design社コメント:一部のコーデックのRAWを除く4K素材の編集およびグレーディングであれば快適に実施できる製品となり、一眼カメラ等の動画で4Kを始められる方にはおすすめできるマシンです。
ノートブックタイプですので、どこでも快適に編集できる強みもあると思います。検証結果では、一部のRAWの取扱は難しいものの、H.264であれば4K60pを十分に扱うとこができています。
GeForce RTX 2080搭載ノートモデル(NO.3)
Blackmagic Design社コメント:通常の使用の範囲において、GeForce GTX 1080搭載ノートモデルとほぼ同じ結果となりました。CPUをCore i9-9900Kとすることで性能が高くなり、複数のエフェクトを掛けた場合のレートの安定性やエンコード速度は上がっており、後継機としてふさわしい結果となっております。
次の表は、GTX 1080搭載ノートモデル、GTX 2080 搭載ノートモデル(NO.3)でコマ落ちなく基本的なカラーグレーディングが行えたフォーマットおよびコーデック一覧です。
Codec | 解像度/フレームレート | 結果 |
---|---|---|
H.264 | 3840 x2160 60fps | 〇 |
ProRes 422 HQ | 3840 x2160 60fps | 〇 |
RAW: BlackmagicRAW | 4608 x2592 60fps | 〇 |
RAW: CinemaDNG | 3840 x2160 30fps | 〇 |
RAW: CinemaDNG | 4608 x2592 30fps | 〇 |
RAW: CinemaDNG | 3840 x2160 60fps | ×(コマ落ちあり) |
RAW: CinemaDNG | 4608 x2592 60fps | ×(コマ落ちあり) |
GTX 1080搭載ノートモデル、GTX 2080 搭載ノートモデル(NO.3)での検証結果
奥が深いDaVinchi Resolveに最適なPCまとめ
ここまで検証を通して「DaVinci Resolve」を使ったカラーコレクションに最適なPCの製品化までをたどってきましたが、いかがでしたでしょうか。最後にここまでで分かったポイントと、これからの展開についてお話します。
必要スペックは使用する動画のコーデックの特性次第
DaVinci Resolveのソフトウェアの特性以前に、使用する動画のコーデックの種類により、CPUのコア数を生かせる数や、GPUを生かせるかといったところが変化しているようです。
ということは、いくらDaVinci Resolveが最新ハードウェアを即座にサポートしようとも、結局のところコーデックがどうかによってハードウェアを生かし切れるかが変わってくるようなのでハイスペックにすればするほど快適かと言われるとそうでもないようです。
今回の検証でいえば、急遽追加した「AMD Ryzen Threadripper 2920X搭載モデル(NO.2)」が最もコストとパフォーマンスのバランスが良く4K編集を快適にこなすうえ、小林 譲氏のようなプロの現場にも耐えうるほどの性能を持ちます。
CPUとGPUの性能のバランスが重要
CPUとGPUの性能のバランスが重要で、どちらか一方だけを強化することは互いに足を引っ張りあい、効果的ではないということです。「AMD Ryzen Threadripper 2990WX」での検証中に、実は「GeForce RTX 2080 Ti」が先に性能の頭打ちとなっており、
結果的にCPUの足を引っ張って性能を出しきれていなかったというパターンもありました。ただ闇雲にCPUのコア数を増やすことや、GPUを最上位グレードにすることよりも、今どちらが処理の頭打ちになっているのかを確認しながらグレードアップを図っていくということが大事なようです。
多機能でワンランク上の動画を目指せるDaVinci Resolve
今回は、DaVinci Resolveでのカラーコレクションにのみ絞った検証となっており、統合された動画編集機能や、Fusion機能についてはまた別のスペックポイントがありそうです。最もハードウェアへの負荷が高いのはカラーコレクション作業のようですが、Fusionでは、メモリをかなり消費するとも聞いており、まだまだ一筋縄ではいかないようです。
今後また動画編集等に絞った内容で検証を進め、製品展開も検証に合わせて横に広げていければと思います。
何よりもこれだけの作業をすることができるのに、機能は制限されるもののフリーで使用できるという点はかなりのアドバンテージになるのではないのでしょうか?
単にYoutubeへアップロードするにしても、DaVinci Resolve一本で動画の編集をしたうえで、カラーコレクション作業も行って見栄えもよくすることができるわけです。
こんな優秀なソフトウェアを使わない手はないですよね?

パソコン工房のヘビーゲーマー&ハイパーマルチクリエイター。ゲームを遊ぶだけでなくゲーム作りの趣味も高じてゲーム&クリエイティブ関連のことは大体それなりOK。