Webアナリストの小川卓さんが、GA4の基本的な指標「滞在時間」と「コンバージョン」について解説します(GA4連載第11回)。

ITトレンド最終更新日: 20230201

小川卓さんのGA4(Google Analytics 4)連載 第11回 基本的な指標「滞在時間」「コンバージョン」を理解する

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国内Webアナリストの第一人者である小川卓さんが執筆する、Google Analytics 4(以下GA4)連載の第11回。今回は、GA4になることで以前のGA(以下旧GA)と定義が異なり、かつ基本的な指標である「滞在時間」と「コンバージョン」について解説します。

※Google アナリティクスは随時、機能追加やレポート画面のレイアウト変更などが行われます。本内容は2023年1月末時点に基づきます。

「滞在時間」の定義が違う?

GA4では、今までのGAと同じ用語名でも、その意味が変わった用語が多数存在します。今回は「滞在時間」と「コンバージョン」について説明します。違いを理解しておくことで、2つのツール(GA4と旧GA)で数値がズレる理由もわかりますし、他の人にも説明しやすくなるでしょう。

先に「滞在時間」についてです。滞在時間という言葉から、みなさんは「Webサイトに訪れ、そのWebサイトを見ていた時間」といったことが頭に浮かばないでしょうか? 実際はどうなのかを見ていきます。

旧GAの「滞在時間」の意味

まず旧GAでは、主に2つの箇所で滞在時間を計測しています。1つが「平均セッション時間」。これは、Webサイトに訪問してから離脱するまでの時間を見ています(以下は旧GAの画面です)。

もう1つが「平均ページ滞在時間」です。こちらは、ページごとの平均滞在時間が確認できます(以下も旧GAの画面です)。

これらの時間が、旧GAでどう計算されていたのかを確認します。考え方は「今のページと次のページを開いた時間の引き算」で計算されていました。

例)

ページ 開いた時間
ページA 10:00
ページB 10:03
ページC 10:08

上の表の動きがあったとします。

この時、
ページAの滞在時間 10:03-10:00=3分
ページBの滞在時間 10:08-10:03=5分
となります。

最後に開いたページCの時間は「次のページの開いた時間」がわからないのでカウントされません。ですので、このセッションの平均滞在時間は3分+5分=8分という形になります。

つまり、ページCを最後に何分開いていたかわからないので、旧GAではその部分を無視していたことになります。

GA4で「滞在時間」がどう変わったのか?

それではGA4だと、どのように計測されるように変わったのでしょうか? 説明のために、先ほど説明で用いたWebサイトの同一期間で、同じデータを確認してみます。

旧GAでは「平均セッション時間」が3分2秒でしたが、GA4では同じ意味となる「セッションあたりの平均エンゲージメント時間」が1分15秒に減っています。

次に、GA4でページごとの滞在時間を見てみましょう。

上の赤で囲ったページの平均エンゲージメント時間について、旧GAの結果と比べてみます。以下が比較した表です。

旧GA GA4
/ 1:27 0:32
/query-writing/ 5:41 2:13
/measure-flow/ 0:29 0:18

この表を見てもわかる通り、GA4が旧GAより滞在時間が短く出ています。

GA4と旧GAでは「滞在時間」の考え方が違う

GA4と旧GAで「滞在時間」に違いが出るのは、2つの仕様変更が要因です。1つは、直帰した時の滞在時間の考え方です。

旧GAの計測方式では、Webサイトに流入して1ページしか見ずに離脱した場合、滞在時間がわかりません。次ページの時間との差分が計算できないためです。この時に旧GAでは、データの取り扱いを0秒としてカウントするのではなく、無視するという処理を行っています。

つまり、旧GAで取得できているページ滞在時間は「直帰した閲覧を除いた滞在時間」であり、平均セッション時間も「直帰していない訪問の滞在時間」です。そのため、数値が高く出る傾向があります。

GA4では直帰した場合も、ブラウザのタブを閉じた時間などを取得して滞在時間の計算に利用しています。旧GAと違って、ページを開いて5秒で閉じてしまった人なども計算対象です。直帰する訪問の多くは、滞在時間が短い可能性が高いため、数値が押し下げられています。

GA4と旧GAでは計測の仕様が違う

もう1つは、GA4ではページを開いている時間しか滞在時間を計測しないという仕様です。旧GAでは、次ページを開いた時間からの引き算で計算していますが、GA4では画面が前面に表示されている時のみ滞在時間を計測しています。

例えば、以下の画像をご覧ください。Webブラウザ上にタブが2つ並んでいます。

現状は右タブを開いているので、左タブのページは画面に表示されていません。GA4では、タブが選択されていない間の時間は滞在時間としてカウントされません。こうした背景から、ページやセッションの滞在時間が旧GAよりもGA4では短く計測されます。

つまり、仕様が明確に違うためGA4と旧GAで滞在時間の比較をしても、意味をなしません。筆者の見解では、GA4の計測方式がより実態を表していると感じています。

旧GAの「コンバージョン」の扱い方

ここからは「コンバージョン」についてです。

旧GAでもGA4でも、特定のページ(例:会員登録完了、カートページ閲覧、資料ダウンロード完了)を閲覧した際に、それらをWebサイトのコンバージョンとして登録することで、集客やページがどのように成果に貢献しているかを数えられます。

このコンバージョンのカウント方法に関しても、旧GAとGA4では仕様が変わりました。まずは旧GAから見ていきましょう。Webサイトを訪れたあるユーザーが、以下のような遷移をしたとしましょう。ここでは「入力フォーム閲覧」と「入力フォーム完了」をそれぞれコンバージョンとして設定した、とします。

トップページ→サービス概要→入力フォーム⇒サービス詳細→入力フォーム⇒入力確認→入力完了

この時、旧GAではコンバージョン数を以下のようにカウントします。

入力フォーム:1回
入力フォーム完了:1回

旧GAでは、1回の訪問で複数の同一コンバージョンを閲覧しても最大1回までしかカウントしません。このような仕様になっていた背景としては、旧GAではコンバージョン率を「コンバージョン数÷セッション数」と計算していたからです。

この計算式だと、もし1回の訪問で複数回コンバージョンをカウントしてしまうと、100%を超えてしまう可能性があります。今回のケースで言えば、入力フォームの閲覧回数でカウントすると2÷1=200%となってしまいます。

これでは数値として意味をなさないため、旧GAの仕様になったのでしょう。しかし、GA4では仕様が変わりました。

GA4でどう「コンバージョン」の定義が変わったか?

GA4では、単純に表示回数をコンバージョンの数としてカウントするようになりました。先ほどの例で言えば、コンバージョン回数は以下になります。

入力フォーム:2回
入力フォーム完了:1回

そのため、設定しているコンバージョンによっては、(回数については)旧GAよりGA4の方が大きく出ることがあります。

では、コンバージョン率はどうなるのでしょうか?

GA4では、2種類のコンバージョン率の出し方があります。1つが「セッションのコンバージョン率」、もう1つが「ユーザー コンバージョン率」です。

それぞれの意味は以下のとおりです。

セッションのコンバージョン率 = コンバージョンが発生したセッション数 ÷ セッション数
ユーザー コンバージョン率 = コンバージョンが発生したユーザー数 ÷ ユーザー数

上記の計算方式へと変わったことで、単純な表示回数をすべてカウントしても100%を超えることを防いでいます。つまり、コンバージョン数のカウントはページビューと同じようにカウントしますが、コンバージョン率の計算には表示回数を使っていない、ということですね。

GA4のデータを旧GAと比較した時、コンバージョン数やコンバージョン率に差が出るのは、このようにそれぞれの定義の違いがあるからです。なお、連載第10回で取り上げた指標「ユーザー」と「セッション」の定義も変わっているので、それらもコンバージョン率のズレの要因になります。ぜひ理解を深めながら、GA4を活用していきましょう。

“小川卓さんのGA4連載 第10回 基本的な指標「ユーザー」「セッション」を理解する | パソコン工房 NEXMAG”.パソコン工房 NEXMAG.2022.
https://www.pc-koubou.jp/magazine/74008

第12回の予告

次回(第12回)は、第10回と第11回で見てきたような定義の違いによって、旧GAとGA4で実際にどれくらい各指標の数値がズレるのか? 他の指標や項目にも着目しながら、数値のズレに対してどう考えればいいのかを紹介していきます。お楽しみに!

ライタープロフィール 小川卓

Webアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパンなどで勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてWeb解析の啓発・浸透に従事。株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。

https://www.takuogawa.com/

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