970 EVO が入手できたので、早速使ってみました。 3次元構造のNANDフラッシュメモリを先駆けて開発してきたSAMSUNGが今年発表した、970 EVOは、同社の960 EVOの後継にあたります。 970 EVOは、M.2接続のSSDであり、SATA接続SSDと比べ、省スペースかつ、より高速で省電力な点が上げられ、 長時間の稼働が想定されるゲームやクリエイティブな作業に最適なストレージです。 最近ではNVMe対応 M.2 SSDをシステムドライブとして利用される方も増え、3次元構造のNANDフラッシュメモリの大容量化により、データドライブとして利用されるケースも見られるようになってきています。 では、そのあたりのことも踏まえ、970 EVOのレビューを行っていきます。
970 EVO で採用の SAMSUNG 3次元構造 NAND『V-NAND』とは
『V-NAND』とは、従来、プレーナ(平面)型に蓄積されていたメモリのセルを「チャネルホール」と呼ばれる柱にドーナツ形に積み重ねていくことで大容量化と安定性を実現した3次元NANDです。2013年に第1世代の24層V-NANDが量産され、2014年9月に第2世代の32層V-NANDがリリースされました。
今回ご紹介する第3世代V-NANDでは、従来モデルの倍の64層V-NANDとなり、アクセス性能、耐久性がより向上されています。
970 EVO のアクセス性能と耐久性
970 EVOは、NVMe対応のM.2接続SSDで、放熱性の高いニッケルコーティングされた5コアの「Phoenixコントローラ」を採用し、64層 3D NAND「V-NAND」に加え、NANDフラッシュメモリの一部をSLCキャッシュとして利用するIntelligent TurboWrite機能を搭載。NVMe SSD特有の読み込み性能の速さに加え、書き込み性能の速さと耐久性にも優れた高速ストレージです。
基盤正面、ラベルの下には「Phoenixコントローラ」と64層の3D NAND「V-NAND」が搭載されています
基盤裏面には銅箔を積層したラベルが貼られており、放熱性が図られています。
970 EVOのスペックを従来モデルと比較
今回、970 EVOとの比較対象として従来モデルの960 EVO(同容量)に加え、970 EVOの1TBモデルも用意しました。
同容量の従来モデルと容量の異なる970 EVOのスペック比較は以下となります。
製品名 | 970 EVO | 960 EVO | ||
---|---|---|---|---|
型番 | MZ-V7E1T0BW | MZ-V7E500B/IT | MZ-V6E500B/IT | |
容量 | 1TB | 500GB | ||
インターフェース | PCIe Gen 3.0 x4, NVMe 1.3 | PCIe Gen 3.0 x4, NVMe 1.2 | ||
フォームファクタ | M.2 (Type 2280) | |||
外形寸法 (L×W×H) | 80.15×22.15×2.38(mm) | |||
搭載デバイス | NANDフラッシュ | Samsung V-NAND 3bit MLC | ||
コントローラ | Samsung Phoenix コントローラ | Samsung Polaris コントローラ | ||
キャッシュメモリ | 1GB LPDDR4 | 512MB LPDDR4 | 512MB LPDDR3 | |
シーケンシャル | 読み出し | 3,400MB/s | 3,200MB/s | |
書き込み | 2,500MB/s | 2,300MB/s | 1,800MB/s | |
4KBランダム(QD1) | 読み出し | 15,000 IOPS | 14,000 IOPS | |
書き込み | 50,000 IOPS | |||
4KBランダム(QD32) | 読み出し | 500,000 IOPS | 370,000 IOPS | 330,000 IOPS |
書き込み | 450,000 IOPS | 330,000 IOPS | ||
TBW | 600TB | 300TB | 200TB | |
メーカー保証 | 5年 | 3年 |
従来モデルと比べ、最新のコントローラ、キャッシュメモリを搭載し、スペック表からも970 EVOの性能の高さが伺えます。
製品寿命を指すとも言われる「TBW(総書き込み容量)」も従来モデルと比べ500GBモデルでは100TB分増え、耐久性が1.5倍も向上されています。
970 EVOの性能を検証
それでは実際に970 EVOの性能を確認するため、960 EVO ( 500GB )、970 EVO ( 500GB )、970 EVO ( 1TB )で検証をおこないました。
検証環境は以下となります。
OS | Windows 10 Home 64bit |
---|---|
CPU | Core i9-7960X |
メモリ | DDR4-2666 32GB (8GB×4) |
チップセット | X299チップセット |
ストレージ | 480GB SSD (OS起動用) |
グラフィックス | GeForce GTX 1060 6GB |
電源 | 850W 80PLUS GOLD |
今回検証するSSDは、セカンドドライブとして接続し、速度の測定を行いました。
アクセス性能を比較
各モデルの速度を確認するためCrystalDiskMarkを使用しました。
960 EVO (500GB)
970 EVO (500GB)
970 EVO (1TB)
CrystalDiskMarkの計測結果から、従来モデルよりも970 EVOのほうが全体的なスペックの向上が見られました。
970 EVOに採用された「Phoenixコントローラ」は、64層V-NANDに合わせた最適化が施されており、アクセス速度が向上しています。
加えて、Intelligent TurboWrite機能により、書き込み速度が飛躍的に向上しています。
また、970 EVOの1TBモデルはランダムアクセス性能も高く、1秒当たりに処理できるI/Oアクセスの数(読み書きできる回数)「IOPS」の速さを比較したデータでも970 EVOの1TBモデルが圧倒的な結果を見せています。
970 EVOの1TBモデルは、500GBモデルと比べて44%もIOPSの速度差がありました。
動画エンコード時間の比較
「TMPGEnc Video Mastering Works 6」を使用して、H.264形式の2160p / 60fpsの4K動画(10分34秒)をH.265形式にエンコードした際の時間を計測しました。
カット編集やトランジション、エフェクト効果など加えず、そのままの状態でH.265にエンコードした結果となりますが、まったく同じ設定でも出力時間に差が現れました。
書き出されたデータサイズは同じものの、970 EVOの1TBモデルが1番速く、少しでもエンコードの時間を短縮したい場合は、970 EVOでも特に容量の大きい1TBを選択するとよい結果が出そうです。
ベンチマークソフトによるローディングタイム比較
次に、ゲームにおいての優位性を検証するため、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」を使用してローディングタイムを計測しました。
従来モデルと比べ、わずか1秒の差ながら970 EVOが早い結果となりました。
ハイクオリティなゲームタイトルなど、近年のオンラインゲームでは1タイトルに60GB程(追加コンテンツなどを除く)の容量を必要とするため、大容量のストレージが重宝するなか、上記のローディングタイムの計測結果からも970 EVOの1TBモデルがもっとも速い結果となりました。
この1秒が長時間のプレイともなると何十秒、何分と差に現れることから、ゲームの練習量に影響し、プレイヤーの腕前にも繋がっていくのではないでしょうか。
総合的な評価で比較
最後に「PCMark 8」のストレージテストで計測してみました。このテストでは、ゲームやOfficeソフト、クリエイティブ系のソフトにおけるデータの読み書きにかかる時間と速度を測定し「実際の体感」に最も近い数値となります。
従来モデルでは帯域幅が469.60MB/sと、500MB/sを切る結果となりましたが、970 EVOでは500GBモデルが545.19MB/s、1TBモデルでは565.77MB/sという結果となり、同じ500GBモデルでも16%の差が生じました。
Officeソフトやクリエイティブ系のソフトはもちろん、ゲームにおいても970 EVOはその性能を遺憾なく発揮してくれるストレージであることがわかりました。
970 EVOを搭載することでPCの体感パフォーマンスが飛躍的に向上!
以上の結果から、970 EVOでは性能がしっかりと向上しており、960 EVOをすでに持っているという人でも、買替えることでパフォーマンスの向上を得ることができます。
970 EVOのアクセス性能の高さからゲーム用途ではゲームデータのローディングタイムを短くし、効率よくプレイに集中できることに加え、トータルプレイ時間の短縮がはかれます。クリエイティブな用途ではコンテンツの高速な読み込みに加え、容量の大きいコンテンツの書き出しがスムーズにおこなえ、作業がはかどります。
また、耐久性が向上したことにより、システムストレージとしてはもちろん、クリエイティブ作業においてのデータ保管ドライブとしても長期的に安心してお使いいただけます。
360度どこからみても凡人、職人番号ラッキー7!職人7号です。主に写真撮影、動画編集を担当。パソコン工房ECサイトのBTOPCや自作パーツ等ひろく手掛ける。店舗部門出身。