どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアニメーション作家としてNHK『みんなのうた』の映像制作や、アーティストのMVも制作をおこなっている上甲トモヨシさんです。実は小学生の頃はスポーツ選手を目指していたんだとか!なぜ、スポーツ少年がアニメーション作家になったのでしょうか?

クリエイター最終更新日: 20220401

アニメーション作家:「視野を広く持ち、知識を深めて表現に責任を持つ」

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どうしたら憧れのクリエイターになれるのか? その秘密を現役で活躍するクリエイターに直接聞いちゃう『クリエイター仕事道』。今回のゲストはアニメーション作家の上甲トモヨシさんです。アニメーション作家としてNHK『みんなのうた』の映像制作や、アーティストのMVも制作をおこなっている上甲さん。実は小学生の頃はスポーツ選手を目指していたんだとか!なぜ、スポーツ少年がアニメーション作家になったのでしょうか?

上甲さんが携わった作品

2008年製作のオリジナル作品『BUILDINGS』。高層ビルが低い建物を高圧しますが……。この作品で第2回こどもアニメーションフェスティバル/学生部門 『優秀賞』など、数々の賞を受賞しました。

『Lizard Planet』(2009)は、「我々は宇宙に暮らす星という命の上で生きている」ということを伝えるために制作された作品。国内外の賞を受賞しています。

授業で見た映像でアニメーションに開眼

上甲さんが子供の頃憧れていた仕事はなんですか?

漫画家と体操選手です。小さい頃から漫画を描くことが好きでした。また小学校高学年の時に見たオリンピックの体操競技に強く憧れ、スポーツの道も考えていました。その頃は漫画を描きながら体操教室に通い、体を動かすことの喜びを感じていました。

体操競技から次第に陸上競技をするようになり、中学と高校時代は棒高跳びをやっていました。体操や棒高跳びに夢中になった理由のひとつに、人間の“動き”の美しさにあります。この動きの美しさと絵を描くことが重なり、「動きを描く」=アニメーションを作る、ということに結びつきました。

棒高跳びの経験が、アニメーションに繋がるんですね!そこからどんな学校に進学したのですか?

漫画家を目指す為に上京する事と絵を描ける大学に進学をする事を前提として探し、東京工芸大学を候補にしました。

ちょうどその時に芸術学部アニメーション学科が新設され、1期生を募集していたこともあり、興味が湧いて進学をしました。当時、日本の大学では初のアニメーション学科として注目されました。

東京工芸大学在学中はどんな学生でしたか?

大学に入学してすぐは理想と違うと感じ、不真面目な時期を過ごしてしまっていました。漫画を描きたい、だけど学科にもなじめず、次第に他学科や軽いアウトドアサークルの仲間と遊ぶようになり、漫画も描かなくなって落ち込む時期もありました。しかしある時に授業でカナダのアニメーション作家、ライアン・ラーキンの『Walking』という作品を見て衝撃を受けました。アニメーション表現としてとても感動的で、アニメーションに対して持っていた偏見に気づき、慌てたのを覚えています。

芸術的な表現、気持ちの良い動き、音とのシンクロなど、とにかく自分が求めていたものがそこに詰まっていると感じました。それまでの時間を後悔し、その時間を取り戻したいという気持ちもありましたが、とにかく自分に合ったアニメーションという表現に夢中になっていきました。

そこから具体的にアニメーション作家を目指すようになるんですね。

大学3年の時に当時学科の教授を務めていた古川タク先生のゼミに入った事が今の仕事に繋がっています。憧れのタク先生やゼミの仲間たちとアニメーションの楽しさを学びました。この時に「アニメーション作家」という道があることを知りました。

アニメーション作家として仕事をするようになったきっかけはありますか?

大学・大学院の在学中に制作した作品『雲の人 雨の人』や『Lizard Planet』が様々なコンペや上映会で賞をいただき、大きく広がりました。作品を見て下さった映像制作会社の方などから声をかけていただき、仕事に繋がっていきました。

見てくれた人の反応が一番うれしい

上甲さんの代表作を教えてください

個人作品としては『雲の人 雨の人』(2007年)、『BUILDINGS』(2008年)、『Lizard Planet』(2009)です。デコボーカルになってからの作品では、androp『RainMan』MV(2020年)やNHKみんなのうた『ぐーぐーちょきちょき』(2021年)などです。

上甲さんにとってターニングポイントとなった作品を教えてください

ターニングポイントはいくつもあります。

2010年に制作したNHK Eテレ『シャキーン!』の歌アニメーション『この空』は、パートナーである一のせ皓コと共同制作をした作品です。この作品は、今の活動の形であるユニット『デコボーカル』になる直前に制作をしました。それより前から一緒に作品を作ることはありましたが、デコボーカルのカラーの形作りとなったと感じています。

その仕事から、どんなことを学べましたか?

デコボーカルとして制作スタイルが作られ、ユニットとしての活動が始まりました。それからはクリエイティブの幅が広がり、二人だからこそ出来る様々なことにチャレンジをする機会が増えました。

ユニットになることで可能性が広がったんですね。一方で、忘れられない失敗はありますか?

一番忘れられないのは締め切りに間に合わせることが出来ず、作品がお蔵入りになってしまったことです。当時、第一子が生後半年で、育児と仕事のスタイルが確立されておらず余裕もありませんでした。クライアントの皆様に応援してもらったにも関わらず間に合わせる事が出来ず、大変申し訳ない事をしてしまいました。この失敗は作品の制作手順や環境による効率化などを見直していくきっかけになりました。

失敗がきっかけで、ご自身の仕事スタイルを確立することができたんですね。上甲さんが仕事で、一番気持ちが高まる瞬間はどんな時ですか?

作品が完成した瞬間です。それまでの様々なプロセスを経て完成した作品を見た時はとても感動し、安堵もします。僕にとって安心は心を動かす土台になる大事な感情のひとつだからです。そしてその作品がメディアを通じて公開された時、見ていただいた方からの反響に作り手としての喜びを感じます。本当に嬉しい経験です!

上甲さんが仕事で大切にしている事、意識している事を教えてください。

子供から大人まで、安心して見られること。そして誰かが傷付く事を少なくする為、表現に意識的になることです。

CPUを意識して、バックアップも定期的に

現在、どんなPCや周辺機器を愛用していますか?

Intel(R) Core(TM) i7-8700 CPU @ 3.20GHz 3.20 GHz

メモリ:32.0 GB (w4u2400cm-8g)

ストレージ:SSD 525G/ハードディスク8T・4T

モニター:DELL・UP2516D 25インチ

ペンタブレット:Cintiq 13HD

PCや周辺機器を選ぶ際の基準を教えてください。

作業処理の速度が上がることを意識しています。

今の環境が旧式になってきたので最新はわかりませんが、CPU はIntel Core i7以上のものを意識して選ぶようにしていました。今なら今の選び方もあると思いますが、バックアップは大事なので常に意識しています。ストレージも複数持ち、容量も大きい方が良いと思います。それでもトラブルは必ずありますが……。

上甲さんならではの裏技などはありますか?

裏技ではないですが、とても頼りにしているエンジニアさんがいます。パソコン周辺の作業環境は10年以上前からすべて頼っていて、組み立てやメンテナンスをしてもらっています。作業だけに集中することが出来ることが本当に有難い存在です。

自分自身の能力を信じ、努力を重ねる

上甲さんにとって“クリエイター仕事道”とはなんですか?

自分に出来る能力を理解し伸ばしていくことだと思います。

無理をして出来ないことを考えるよりも出来ることに目を向け、興味があればチャレンジをして経験を積もうと動き出す事が、成長の糧になると思います。すると自分に合う道が見え、歩んで行けると感じています。

クリエイターを目指す若者たちにメッセージをお願いします!

若い世代の皆さんは既にツールや技術を身に付け、SNSを活用しています。我々の時代の環境とは違うので僕のアドバイスは役に立たないと思いますが、共通して言えるのは「表現に責任をしっかり持つこと」です。

誰が見て何を感じるかは自由ですが、悪意や間違った知識は危険です。視野を広く持ち、知識を深めて表現に責任を持つこと。これは常に意識していくべきことだと考えています。

上甲さん、ありがとうございました!

好きなことに没頭することが将来に繋がる

スポーツ少年だった上甲さんは、人間だからこその動きの美しさに魅了されアニメーションの道に進みます。アニメーション作家として活躍する今、幅広い世代が安心して見られる作品作りを心がけ、見てくれる方はもちろん、仕事の相手からの信頼を得ています。自己満足の表現ではなく、相手を思いやる作品作りの大切さを学びました。

クリエイタープロフィール

上甲トモヨシさん
アニメーション作家・ディレクター
“アニメーション”という表現の多様性に魅了され活動。「やさしさ」「ぬくもり」を軸に想像力を豊かにする作品を描いています。様々なキャラクターをかわいく描くことを好みます。好きなものは宇宙と生命。
地域での「コミュニティ」も大事にし、ワークショップにも注力。アニメーションを通じて子供から大人まで楽しんでいただきたいと考え、ワークショップなども積極的に開催しています。代表作「雲の人 雨の人」「BUILDINGS」「Lizard Planet」は、世界各国で上映され受賞も多数。

ライタープロフィール パソコン工房NEXMAG [ネクスマグ] 編集部

パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。

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