文化庁による、新型コロナウイルスの影響により活動自粛を余儀なくされている文化芸術関係者への助成金制度「文化芸術活動の継続支援事業」について、追加募集を行うという告知がありました。本記事では、前回の募集要項を基に、次回募集開始時にスムーズな申請ができるように、対象や申請方法について解説していきます。

ソリューション最終更新日: 20201120

文化芸術関係者向け:文化芸術活動の継続支援事業について

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「文化芸術活動の継続支援事業」とは文化庁による助成金制度で、「新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、活動自粛を余儀なくされている文化芸術関係の個人または団体において、活動の再開に向けた準備を進めるにあたり、直面する課題を克服するために必要な経費を支援し、文化芸術の振興を図る」というものです。

本事業は2020年11月25日(水)10:00 ~ 12月11日(金)17:00の日程で、第4次募集が行われることが発表されました。ここでは、募集開始時にスムーズな申請が行えるように、対象者や対象となる経費の内容や、申請時に必要な情報についてご紹介していきます。
なお、本記事は「募集案内Ⅰ(初回申請者用)」に基づいて11月16日に作成しており、今後条件などが変更される可能性がございます。最新の情報につきましては必ず公式サイトをご確認ください。

“文化芸術活動の継続支援事業(2020年11月16日に確認)”.文化庁. https://www.bunka.go.jp/shinsei_boshu/kobo/20200706.html

“文化芸術活動の継続支援事業(2020年11月16日に確認)”.独立行政法人日本芸術文化振興会. https://keizokushien.ntj.jac.go.jp/

“募集案内I(初回申請者用)”. 独立行政法人日本芸術文化振興会. https://keizokushien.ntj.jac.go.jp/dl/newapplicant.pdf

「文化芸術活動の継続支援事業」の概要

「文化芸術活動の継続支援事業」とは、国内で活動する文化芸術関係者が、活動の再開・継続に向けた取り組みに要する費用を補助するというものです。
さらに、業種ごとの「新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」に基づいた感染拡大防止の取り組みを行う場合は、別途費用も補助されます。

パソコンや周辺機器も補助の対象

補助の対象となる経費

補助対象となる経費は、事業を遂行するための「活動費」です。
その内訳は、①賃金、②諸謝金、③旅費、④借損料、⑤消耗品費、⑥会議費、⑦通信運搬費、⑧雑役務費となります。
各内訳の詳細は以下の通りです。

① 賃金
事業遂行に必要な業務・事務を補助するために、補助事業期間中に雇用した者の人件費(社会保険料を含む)。申請者自身への支払いは対象外です。
・トライアル公演にあたり、ソーシャルディスタンスに配慮した座席への案内係員として雇用した会場アルバイト
・公演再開に向けて、企画・日程調整や広報などの準備のために雇用したスタッフの賃金
・文化芸術団体が、関係団体向けの新型コロナウイルス感染症対応相談窓口の開設のために、雇用したスタッフの賃金

② 諸謝金
事業の遂行に必要な指導・助言を受けるために依頼した専門家等に謝礼として支払われる経費
・稽古に招聘した指導者、ボイストレーナーやジムトレーナー等への謝金
・団体運営の改善(法人格の取得、テレワークの導入等)に関する専門家への相談料
・会議への出席謝金
・広報誌に掲載する原稿の執筆謝金
・公演当日の運営補助スタッフへの謝金
・従業員指導等のための専門家への謝金

③ 旅費
補助事業の遂行に必要な移動・宿泊にかかわる経費
・稽古場や会場までの往復の交通費として、公共交通機関を使用した最も効率的かつ経済的な経路による交通費実費
・エコノミー料金の航空費
・宿泊することが必要な場合(前泊しないと事業に間に合わない、用務後帰宅することが困難な場合の後泊等)。又は、合宿研修等を行う場合であって、合宿の内容上、帰宅することが合理的でない場合

④ 借損料
事業遂行に直接必要な機器・設備等のリース・レンタル料として支払われる経費や、トライアル公演の開催や自らの練習のための施設利用料
・技芸の研鑽に必要な自主稽古を行うために借り上げる会場費
・無観客等による実演を配信する際に必要な機材のリース費用
・演奏技術向上のため、試しに使用する楽器等のリース費用
・トライアル公演等の開催に必要となる機器、機材、設備のリース・レンタル料
・消毒設備(除菌剤の噴射装置、オゾン発生装置、紫外線照射器)のリース・レンタル料

⑤ 消耗品費(物品一点あたり税込10万円未満)
事業を遂行する上で必要不可欠な物品の購入費
・舞台美術制作や美術作品制作に係る衣装代及び材料代(稽古着、トゥ・シューズ等)
・研修やワークショップ等で使用する資料に係る経費
・PR動画等の製作、配信のために必要なパソコン及びパソコン周辺機器
・楽器、楽譜の購入代
・楽器の修繕代、弦等の消耗品代
・トライアル公演に向けた準備代(化粧品購入等)
・事務用品(鉛筆、消しゴム、付箋等)
・催事保険、マスク、消毒液、アルコール液、等
・消毒設備(除菌剤の噴射装置、オゾン発生装置、紫外線照射器)の購入)
・ゴーグル、フェイスシールド、ヘアネットの購入
・手袋、ゴミ袋、石鹸、洗浄剤、漂白剤の購入
・アクリル板透明ビニールシート、防護スクリーン、フロアマーカーの購入
・トイレ用ペーパータオル、使い捨てアメニティ用品の購入
・非接触型検温器、サーモカメラ、キーレスシステム、インターホン、コイントレー等の購入
※消耗品費は一点あたり10万円未満(税込)です。パソコン及び周辺機器の場合、パソコン、周辺機器、編集ソフトなどの合計金額が10万円(税込)を超えた時は、申請時に価格の内訳を求められることがあり、組み合わせなどの理由により申請が認められない場合がありますことを予めご了承ください。
また、10万円(税込)を超えるパソコン等を購入し、そのうち10万円(税込)を申請するという手法は対象外となりますのでご注意ください。
例:合計で10万円を超える買い物をした場合 ※価格はすべて税込となります
パソコン:90,000円、プリンター:10,000円、タブレット:30,000円  申請可能
パソコン:110,000円、プリンター:10,000円、タブレット:20,000円  パソコン価格が税込み10万円を超えるため対象外

⑥ 会議費
補助事業で開催する会議の場で提供する飲料で、 1時間以上の会議(オンライン会議含む)での飲料代として、1人1回150円(税込165円)を上限とします。
⑦ 通信運搬費
補助事業実施に必要な電子機器、機材・機械等の運搬のために 支払われる発送費又は運搬費
・次公演等に向けた広報資料(パンフレット、チケット等)の送付
・事業のPRを目的として作成した報告書や展覧会等の図録の配布
・稽古場等までの楽器輸送等

⑧ 雑役務費
事業遂行に必要な、専門的な知識、技能等に基づく業務その他の業務を第三者が行う(外注する)ために支払われる経費
・トライアル公演の開催に伴う出演料等
・動画配信サイトの制作費
・パンフレット、図録、チケット等制作費
・作品撮影・編集費
・公演前後の会場内除菌作業、PCR検査等の新型コロナウイルス感染症関係検査費用、その他事業を行うにあたり第三者と締結した請負契約若しくは委託契約(印刷製本、舞台装置等の運搬等を外注する場合)への支払い等
・アクリル板・透明ビニールシート・防護スクリーン・フロアマーカーの施工
・トライアル公演に向けた準備代(洗濯代、整髪代)
・消毒作業・清掃作業の外注
・研修会参加費
・クリーニングの外注
・「技能研修と向上」「文化芸術の振興」等を目的とした芸術家、スタッフ等の活動継続を支援する事業等を行う文化芸術団体の会費
・共同申請の窓口団体に対する書類の作成・送付・手続きに係る費用(事務手数料)

※ 交付決定(申請)された公演等が中止となった場合の委託販売等に伴う手数料は、精算時に対象経費として計上できます。
※公演のトライアル等は観客を入れて行う場合も計上可とします。
※作業や運搬などの外注費は見積りをとり、用途にあった適正な仕様かつ妥当な価格を積算してください。なお、見積書等の提出を求めることがあります。

補助金の額(補助率)

(1)補助金の基本的な計算式は、取組内容と事業者に応じて、上記「活動費」の2/3(条件次第で3/4)が支給されます。上限金額は以下の通りです。

【活動継続・技能向上等支援A-①】標準的な取組を行う個人事業者向け: 上限20万円
標準的な取組とは、プロの実演家・技術スタッフ等を対象に練習のための稽古場を確保したり、技能向上のための研修資料等の購入、調査・制作準備等を行うことです。

【活動継続・技能向上等支援A-②】より積極的な取組を行う個人事業者向け: 上限100万円
より積極的な取組とは、標準的な取組に加え、感染症対策を踏まえた新たな練習方法の確立、動画収録・配信による活動の発信、会計処理に関する講習の参加等、発展的な取組を行った場合となります。
A-①とA-②の重複申請はできません。

【活動継続・技能向上等支援B】小規模団体向け: 上限100万円
新型コロナウイルス感染症に対応した新たな公演・制作の企画等(動画等による公演等の収録・配信、広報コンテンツの作成、感染症防止に対応した集団練習を実施する小規模団体向けです。
※小規模団体の定義は、常時使用する従業員数がおおむね20人以下の団体です。労働時間や賃金体系が特殊な雇用契約を結んでいる専門スタッフ等、役員(従業員との兼務役員は可)、申請時点で育児休業中・介護休業中・傷病休業中又は休職中の社員、パートタイム労働者は対象外となります。

【共同申請】小規模団体・個人事業者向け: 上限1,500万円(10者の場合)
※【活動継続・技能向上等支援A】との重複申請が一回に限り可能です。
(ただし、1者当たりの上限はAと共同申請を合わせて150万円まで)
【活動継続・技能向上等支援B】との重複申請は不可です。

(2)このほか、「業種ごとの新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインに即した取組」を実施した場合、補助金が追加されます。金額は定額です。 【活動継続・技能向上等支援A-①】標準的な取組を行う事業者向け: 10万円
【活動継続・技能向上等支援A-②】より積極的な取組を行う個人事業者向け: 50万円
【活動継続・技能向上等支援B】小規模団体向け: 50万円
小規模団体・個人事業者向け: 連携事業者数x50万円(最大500万円)

支援事業の対象者

「文化芸術活動の継続支援事業」の対象となる者は、直近3年間(2017年度以降)において、2回以上の文化芸術活動を行った団体(フリーランスを含む個人事業者も対象)となります。

補助の対象となる条件

補助の条件ですが、対象者が下記①~③の状況にある、文化芸術活動に携わっていることが必要です。

➀ 不特定多数に公開することによってチケット収入等をあげることを前提としたものであって
② 新型コロナウイルス感染症によるイベント等の自粛によって大きな影響を受けるとともに、
③ 今後の再開にあたって複数の者の参加が必要であったり、稽古が必要などの理由など何らかの事情がありすみやかな再開が困難であったり、新型コロナウイルス感染拡大予防のために従来と同様の収入が確保できない可能性があるなどの事情がある活動。
※放送やインターネットのみで公開する取組みだけに携わっている方は対象外です。

補助対象となる分野ですが、文化庁は以下の分野を想定しています。

音楽、演劇、舞踊、映画・アニメーション
コンピュータその他の電子機器等を利用した芸術
伝統芸能(雅楽、能楽、文楽、歌舞伎、組踊、その他)
大衆芸能(講談、落語、浪曲、漫談、漫才、歌唱、その他)

想定範囲外の下記分野においても、個展の展開や対局の公開で収入を得るなど、上記の条件①~③を満たす場合は対象となります。
※補助の対象条件①~③を満たすことを証明する資料の提出が必要です。

美術、写真、茶道・華道、書道
国民娯楽(囲碁・将棋・その他)

補助の対象となる取組み

補助の対象となる取組みは以下の通りです。この取組みの実施により、補助される金額に影響することがあります。

(1):以下①~③のいずれかの取組(複数可)
① 国内外の観客、参加者等の回復・開拓
・過去の公演の動画配信
・活動実績をまとめた冊子の作成、配布
・CMやPR動画等の制作、配信
・公演、展示のチラシの作成、配布
・展示のギャラリートークや講演会の開催
・美術家の制作活動を紹介するウェブサイトの制作、更新
・制作した作品をまとめた図録の作成、配布 等

② 活動の継続・再開のための公演・制作方法等の検討・準備・実施
・技芸の研鑽のための自主稽古
・技能向上を目的としたリサーチ
・技能向上に関係する資格取得
・活動再開のトライアル公演
・動画配信サイト等を通じた無観客等公演 ※
・インターネットを活用した技芸の研鑽のための共同稽古 ※
・会員向け相談窓口の設置、HPの開設等 ※
・美術関係者向けワークショップの開催 等

③ 雇用契約の明文化等の経営・ガバナンスの近代化
・雇用契約案の作成、電子化 ※
・会計処理に関する講習会の参加
・会計システムの近代化 ※
・行政手続き等に係る書類作成のノウハウ習得 等
※の様なICT(情報通信技術)活用の取組に補助対象となる経費の1/6以上を使用した場合は、補助率を2/3から3/4に引き上げます。

(2):(1)の取組と併せて行う、業種ごとの新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインに即した取組
・感染症対応のための研修会
・新型コロナウイルス感染拡大予防対策の新たな座席配置に応じた作品、演出
・公演実施に係るマニュアルの作成
・感染症対応のトライアル公演
・消毒その他感染症対策のための取組 等

先ほど紹介した補助金額と補助率ですが、事業者の種類と上記の(1)①~③と(2)の取組をまとめると、以下のようになりますのでご参考ください。

取組内容 補助率 活動継続・
技能向上等支援A-①
活動継続・
技能向上等支援A-②
活動継続・
技能向上等支援B
共同申請
(1):
① 国内外の観客、参加者等の回復・開拓
② 活動の継続・再開のための公演・制作方法等の検討・準備・実施
③ 雇用契約の明文化等の経営・ガバナンスの近代化
2/3
※一部取組をICT(情報通信技術)で行うために、経費の1/6以上を使用した場合は3/4
20万円 100万円 100万円 連携事業者数 x 100万円
(最大1,000万円)
(2):
業種ごとの新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインに即した取組
定額 10万円 50万円 50万円 連携事業者数 x 50万円
(最大500万円)
補助上限額 (1)+(2)
で20万円
150万円 150万円 連携事業者数 x 150万円
(最大1,500万円)

事業者別取組内容と補助金額一覧

※第4次募集のファイル「募集案内Ⅰ(初回申請者用)」では、取組(2)が(1)に組み込まれて表記されていない部分(8ページ)や、上記表組と同様に(1)(2)を別途表記している部分(13ページ)がありますが、いずれも金額は同じですのでご注意ください。

申請方法について

従来は申請システムによる受付

第1次~第3次の応募受付及びその後の手続きは、補助金申請システムによる電子申請により行われました。次回も同じシステムで行われる可能性が高いため、予め方法を知っておくと便利です。(申請ページは11/16現在未実装ですが、入力例や必要書類は知ることができます)
文化芸術活動の継続支援事業HPからは、各分野における【活動継続・技能向上等支援A-①】の入力例がダウンロード可能ですので、確認しておくとよいでしょう。

“入力事項記入イメージ”.独立行政法人日本芸術文化振興会.
https://keizokushien.ntj.jac.go.jp/example/

第1次~3次募集に申請済みの方について

第3次募集までに申請を行い交付済み・申請中の方でも、申請金額が140万円以下の場合、2020年11月1日以降の事業分で10万円まで追加申請が可能です。
詳細は独立行政法人日本芸術文化振興会よりpdfファイルをダウンロードしてご確認をお願いいたします。

“募集案内Ⅱ(既申請者用)”. 独立行政法人日本芸術文化振興会.
https://keizokushien.ntj.jac.go.jp/dl/applicants.pdf

主な必要書類について

申請時には、本人確認など各種書類が必要になります。
通常は事業の収入証明書なども必要ですが、文化庁が統括団体として承認している「事前確認認定団体」より確認番号を受けていれば、種類を減らすことができます。
この書類については、【活動継続・技能向上等支援A-①】【活動継続・技能向上等支援A-②】【活動継続・技能向上等支援B】【共同申請】ごとに確認番号「有」「無」の違いがあるなど事項が非常に多いため、以下のファイルをダウンロードしてご確認ください。

“事前確認認定団体一覧”. 文化庁.
https://www.bunka.go.jp/shinsei_boshu/kobo/pdf/20200707_01.pdf

“募集案内I(初回申請者用:19ページより)”. 独立行政法人日本芸術文化振興会.
https://keizokushien.ntj.jac.go.jp/dl/newapplicant.pdf

留意事項

1. 最新情報は必ず文化庁HPで確認
本記事は2020/11/16に作成しています。今後も情報が更新される可能性がありますので、最新の情報につきましては必ず文化庁のサイトをご確認ください。

“文化芸術活動の継続支援事業”.文化庁.
https://www.bunka.go.jp/shinsei_boshu/kobo/20200706.html

2.補助対象とならない事例に注意
本記事では応募に必要な情報として、対象となる取組みや事業者について紹介いたしましたが、募集要項では経費として認められない事例や、認められる経費(諸謝金や交通費など)の指定額が決められています。
募集案内には補助対象や対象外の事例、経費の指定額が記載されていますので、必ず事前に目を通しておきましょう。

“募集案内I(初回申請者用)”. 独立行政法人日本芸術文化振興会.
https://keizokushien.ntj.jac.go.jp/dl/newapplicant.pdf

文化の担い手として今できる事に取り組む

ここでは「文化芸術活動の継続支援事業」についてご紹介いたしました。
最近は、無観客公演をネット配信するといった取組みを実際に行っている方々の話題を目にすることが増えています。
皆さんもこの制度をぜひ活用してみてください。

ライタープロフィール 職人13号

テクニカルライターから巡り巡ってパソコン工房にやってきました。「読みやすさ」をモットーに、文書作成やチェックを中心に担当していきます。趣味はレトロゲームの攻略動画投稿などです。

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