皆様、こんにちは。職人7号です。 昨年は、AMDのRyzenを皮切りに、インテルのCore Xシリーズ、AMD の Ryzen Threadripper、インテルの第8世代Coreプロセッサーなどの新たなCPUが続々と発売されました。従来のプロセッサーコア数から一気に多コア化が進み、メインストリームでも6コアや8コアを手に入れることが可能となり、4コア以上のCPUがこれからの主流と言っても過言ではないと思います。 今回は、IntelとAMDの『HEDT』と呼ばれるハイエンドデスクトップ向けのCPU「Core Xシリーズ」と「Ryzen Threadripper」の3D CGレンダリング性能と動画エンコード速度のベンチマークで、CPUのコア数の多さがどれほど影響するのか、両社のハイエンドCPUの比較検証を行ってみました。
スペック比較表
用意したCPUは、インテル Core X シリーズ・プロセッサー・ファミリーからCore i9-7980XE / Core i9-7960X / Core i9-7900X / Core i7-7820X / Core i7-7800X、AMDからRyzen Threadripper 1950X / Ryzen Threadripper 1920Xです。それぞれのCPUのスペック表は下記のとおりです。
インテル® Core™ X シリーズ・プロセッサー・ファミリー | AMD Ryzen™ Threadripper™プロセッサー | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
インテル® Core™ i9-7980XE Extreme Edition Processor | インテル® Core™ i9-7960X X-series Processor | インテル® Core™ i9-7900X X シリーズ・プロセッサー | インテル® Core™ i7-7820X X シリーズ・プロセッサー | インテル® Core™ i7-7800X X シリーズ・プロセッサー | AMD Ryzen™ Threadripper™ 1950Xプロセッサー | AMD Ryzen™ Threadripper™ 1920Xプロセッサー | |
コア / スレッド数 | 18/36 | 16/32 | 10/20 | 8/16 | 6/12 | 16/32 | 12/24 |
動作クロック | 2.6GHz | 2.8GHz | 3.3GHz | 3.6GHz | 3.5GHz | 3.4GHz | 3.5GHz |
ブーストクロック | 4.2GHz | 4.2GHz | 4.3GHz | 4.3GHz | 4.0GHz | 4.0GHz | |
キャッシュ | 24.75MB | 22MB | 13.75MB | 11MB | 8.25MB | 32MB | |
TDP | 165W | 140W | 180W | ||||
メモリチャンネル数 | 4 | ||||||
メモリ対応 | DDR4-2666 | DDR4-2400 | DDR4-2666 | ||||
PCI Express レーンの最大数 | 44 | 28 | 64 |
使用モデル
今回の検証では、上記CPUに対応した2台のベースパソコンを用意しました。CPUは、ベースパソコン上で交換しながらベンチマークを実行します。なお、手配の都合上、ビデオカードなど、多少カスタマイズされている部分もありますがご容赦ください。
CPU | Core i7-7800X プロセッサー (3.70-4.70GHz/6コア/12スレッド/12MBキャッシュ/TDP95W) |
---|---|
マザーボード | インテルX299 Express チップセット搭載マザーボード |
メモリ | DDR4-2400 4GB×4枚 |
ストレージ | 240GB Serial-ATA SSD + 1TB Serial-ATA HDD |
光学ドライブ | 24倍速DVDスーパーマルチドライブ |
グラフィックカード | GeForce GTX 1080 (標準構成の GTX 1050 からカスタマイズ) |
電源ユニット | 850W 80PLUS GOLD ATX電源 (標準構成の 700W からカスタマイズ) |
CPU | Ryzen Threadripper 1920X |
---|---|
マザーボード | AMD X399 チップセット搭載マザーボード |
メモリ | DDR4-2400 4GB×4枚 |
ストレージ | 240GB Serial-ATA SSD + 1TB Serial-ATA HDD |
光学ドライブ | 24倍速DVDスーパーマルチドライブ |
グラフィックカード | GeForce GTX 1080 (標準構成の GTX 1060 からカスタマイズ) |
電源ユニット | 850W 80PLUS GOLD ATX電源 |
ハイエンドデスクトップ向けCPUの気になる性能をベンチマークソフトで比較
3D Mark Fire Strike 「Physics Socre」 ベンチマーク結果
それではベンチマークを開始します。
まずは、いつもの通りベンチマークソフトの3D Markで比較をしてみます。
本来はグラフィックカードの性能を測定する3D MarkでもCPU演算処理性能を測定する項目があり、結果は「Physics Socre」として表示されます。それではCore XとRyzen Threadripperの結果を見ていきましょう。
コア数順にスコアが順当に並ぶのかと思いきや、インテル最上位CPUのCore i9-7980XEが1つ下のCore i9-7960Xにおよばないスコアとなっていました。
これはスペック上記載されておりませんが、すべてのコアが同時にブーストされる際の最大動作クロックがCore i9-7960XのほうがCore i9-7980XEよりも高いことが原因ではないかと予想されます。
このベンチマークでは、インテルの方が高いスコアを示しており、12コアのRyzen Threadripper 1920Xに対して10コアのCore i9-7900Xのほうがスコアは高い結果となりました。
これは最適化の度合いや、コアあたりの処理性能(IPC)の差によるものと考えられますが、販売価格帯で言えばRyzen Threadripper 1950XとCore i9-7900Xはほぼ同じになり、Ryzen Threadripper 1950Xの方がスコアは良いことから、コストパフォーマンスはRyzen Threadripperに分があります。
次は、3D CGレンダリングで検証してみます。
「KeyShot」による3D CGレンダリング テスト結果
CG MOVIE GARAGEのZbrushモデルなどでもピックアップしました3D CGレンダリングソフトの一つである「KeyShot」を使用してレンダリング処理性能を比較してみました。テスト方法は標準で付属するデモファイルより「CAMERA Benchmark」を起動してレンダリング開始から1分後のFPS値を測定しました。
コア数に応じた結果となりました。
インテル Core i9-7980XE、Core i9-7960Xに次いでAMD Ryzen Threadripper 1950X、Ryzen Threadripper 1920Xが順に好成績をみせました。
続けて、動画エンコードではどうなのか、Adobe Premiere Pro CCを使って検証してみます。
「Adobe Premiere Pro CC」によるソフトウェアエンコード テスト結果
エンコード速度を計る為、解像度は4K(3840×2160)、60fpsの10分31秒あるH.264のmp4形式の動画を、フルHD(1920×1080)に変更し、60fpsのH.264 mp4形式で出力させたときの時間をストップウォッチで計測してみました。
時間の計測範囲は「出力ボタンを押してから」「デスクトップ画面上にファイルが作られるまで」としました。目測での時間計測となりますので、1秒程度の誤差はご容赦ください。
なお、実用的にはグラフィックカードのCUDAを有効にするのが高速なため定石でもありますが、今回は純粋にCPU性能を見る実験となりますので、あえてCUDAは無効にして実験を進めてみました。
横軸は時間を表しており、棒グラフの短いほうが優秀な結果になります。
この実験では、コアの数がもっとも多いCore i9-7980XEが“9分41秒”の結果で一番速くエンコード処理を終えました。
次点のCore i9-7960Xは“10分07秒”とCore i9-7980XEに26秒の差が付きました。この実験でも、コア数に対して順当に処理時間が短くなることが分かりました。Ryzen Threadripper は、1950Xで同じコア数のCore i9-7960Xの後塵を拝する結果ですが、同じ価格帯のCore i9-7900Xに対しては優位性があることも分かりました。
なお、CUDAを有効にした場合はどうなるのか?という事にも興味がありましたので計測してみました。
すると、18コア/36スレッドのCore i9-7980XEと16コア/32スレッドのCore i9-7960Xで、性能がほぼ変わらない結果となりました。また、CUDAとの相性もあるのか10コア/20スレッドのCore i9-7900Xが16コア/32スレッドのRyzen Threadripper 1950Xの結果を上回りました。今回はCPU性能の検証ではありますが、使用する環境によっては、結果が大きく変わるということも分かりました。
参考検証:Adobe Premire Proのエンコード処理の噂の真偽を確かめる
Adobe Premire Proでは、すべてのコアを使い切れていないという噂もあったので、真偽を確かめるべくエンコード処理中のタスクマネージャーも見てみました。
結論として、いずれの場合においても、すべてのコアを使用しきっていました。ただ、CUDAエンコード処理時においては、CPUの使用率が低減している状況が確認できました。グラフィックカードにGeForce GTX 1060を使用したのですが、グラフィックカードの性能がボトルネックになった可能性もあります。また、メモリ消費量も、CUDA使用時の方が高い状況が見られました。
まとめ
コア数が最も多いCore i9-7980XEが圧倒的なパフォーマンスを発揮するのかと思いきや、扱うソフトウェアによって最多コアを搭載したCPUであっても決して1番の結果が出るわけではないという状況が出てきました。今回テストしたソフトウェア以外でも、同様の状況になっているのかは今回の実験のみでは分かりませんが、今後のソフトウェア側のアップデートに期待しつつ、継続してテストしていきたいと思います。
その一方で、Core i9-7960Xが比較的優秀なパフォーマンスを発揮しており、現状においては価格を度外視する場合、コア数や動作クロックのバランスに優れたハイエンドデスクトップ向けCPUとして最も有力な選択肢のひとつとなるでしょう。
Ryzen Threadripper 1950X、1920Xも、Core i9上位陣に負けず劣らずの優秀な結果を残しており、特筆すべきは10万円台のCPUとしては圧倒的なコストパフォーマンスを示している点です。今回の結果ではレンダリング処理で特にその傾向が強く、レンダリング処理を多くこなす3D CGクリエイターにとってはインテルよりも有力な選択肢となると思います。
主に動画編集を担当することになった。パソコン工房ECサイトのBTOPCや自作パーツ等ひろく手掛ける。店舗部門出身。