次世代高速ネットワーク。10GBASE-Tの基礎知識。いよいよ普及が本格化してきた次世代高速ネットワークである10GBASE-Tについて従来の規格との比較を交えながら説明させて頂きます。

次世代高速ネットワーク。10GBASE-Tの基礎知識。
次世代高速ネットワーク。10GBASE-Tの基礎知識。
ITトレンド最終更新日: 20190827

10GBASE-Tの基礎知識

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データ通信に広く普及しているLAN(Local Area Network)において、現在主流になっている規格の1000BASE-T(1GbE)の10倍の速度を持つ新しい規格が10GBASE-T(10GbE)です。

10GbEには様々な規格が存在していました。光ファイバーケーブルを用いたデータセンターや大規模な企業ネットワーク等の業務用途での利用が主だったため、導入に必要なコストは非常に高価でしたが、従来のLANケーブルと同じRJ45端子に対応した本命とも言える規格である10GBASE-Tの登場により各社から個人でも導入しやすい価格帯の製品が発売されるようになり今後の普及が見込まれています。

2019年8月22日更新
10GBASE-T対応のスイッチングハブについて
10GBASE-T対応のNASについて
追記を行いました。

10GBASE-Tの基礎知識

10GBASE-Tの読み方

10GBASE-Tの読み方ですが、「テンジーベースティー」「テンギガベースティー」「ジュウギガベースティー」と言う風に呼ぶことが多いです。ちなみにですが1000BASE-T(センベースティー)の10倍なので「マンベースティー」でいいのではないかと言いたいところですがこれはまったく定着しておりません。

10GBASE-Tの通信速度について。LAN規格別比較

一般的にデータ通信の速度に関してはbit(ビット)、ハードディスクなどデータ容量に関してはByte(バイト)が表記に用いられます。それぞれb(ビット)、B(バイト)と小文字と大文字で区別されるのが一般的です。

8bit = 1Byteとなりますので、1bit = 0.125Byteとなります。

データを送受信する量、(帯域幅)はbpsという単位で表記されます。bit per second の略で毎秒あたり、という意味になります。この数字が大きいほど、1秒当たりのやりとり出来る情報量が多いということになります

  10GBASE-T(10GbE) 1000BASE-T(1GbE) 10/100BASE-T
帯域幅 10Gbps 1GBps 100Mbps
転送速度 1.25GB/S 125MB/S 12.5MB/S

LAN規格別比較

帯域幅を表す単位についてもう少し説明させて頂きますと、

1Kbps = 1,000bps(1 Kilo bps=1bps×1000)
1Mbps = 1,000,000bps (1 Mega bps=1Kbps×1000)
1Gbps = 1,000,000,000bps (1 Giga bps=1Mbps×1000)

10GBASE-Tの場合は1Gbpsの10倍になりますので
10Gbps = 10,000,000,000bps (10Gbps=1Gbps×10)となります。
各規格の転送速度(MB/s)を比較図です。

各規格の転送速度(MB/s)を比較図です。※値は規格上の理論値となります。実際は使用環境の影響によって変動します。

あくまで規格上の理論値となりますが、ざっくりと例を挙げると10GB(10GB=10,000MB)のファイルの転送にかかる時間は10GBASE-T では 8秒、1000BASE-Tでは80秒、10/100BASE-Tでは800秒と大きな差になります。

10GBASE-T 導入のメリット

インターネット接続に関しては一般的な光回線の場合、1Gbpsになります。このため「スイッチングハブ機能内蔵のブロードバンドルーターを用いて複数台のパソコンでインターネット接続とLAN内通信を行う」といった環境では回線速度自体がボトルネックになるため、インターネット環境を快適にしたいという理由では10GBASE-Tを導入するメリットはほぼ見出せませんでした。しかし、最近では10Gbpsの高速通信に対応した新たなサービスの提供が各地で始まっており、状況が変わってきています。
「パソコン同士」あるいは「パソコンとNASやファイルサーバー間」のデータ転送については対応機器を準備することで10Gbpsが大きく効果を発揮します。最近ではパソコンや周辺機器の高性能化に伴い、4K動画編集や3DCG作業、高解像度のデジタルカメラ画像の加工など様々なハイエンドコンテンツ作成において扱うデータ容量はどんどん大きくなっています。NASやファイルサーバーとの大容量データのやり取りにおいて10GBASE-T環境は転送時間を短縮させることにより作業効率を大きくアップさせることが可能です。

※NASについては過去の記事もご覧ください。
NASの基礎知識
https://www.pc-koubou.jp/magazine/12866

10GBASE-T導入に必要な物

10GBASE-T環境構築に必要な物は、
・10GBASE-T対応のLANカード(クライアント側とサーバー側両方に必要です。)
・CAT6A以上のLANケーブル(Cat7推奨です。) 

これらは最低限必要です。複数台のパソコンをつなぐ場合は10GBASE-T対応のスイッチングハブが必要になります。NASを使用する場合はこちらも10GBASE-T対応のものが必要になります。

CPUやメモリなどは現行品のパソコンであれば十分に対応可能です。後述しますがHDDやSSD等のストレージ関連は高速な物を用意するとより効果を実感しやすくなります。

OSに関してはWindows7以降であれば特に問題はありません。(クライアント側とサーバー側の対応状況にもよりますが、Windows10 Enterpriseや今後リリース予定のWindows10 Pro for workstation にはよりパフォーマンスを向上させる機能が含まれています。)

10GBASE-T対応LANカードについて

前述の通り10GBASE-Tの帯域幅は10Gbpsとなります。10GBASE-T対応LANカードを増設する場合、必然的にその帯域幅に対応したPCI-Express(PCI-E)スロットがマザーボード側に必要になります。
PCI-Expressは世代別(Gen)に帯域幅が異なります。1レーンあたりの各世代別の帯域幅は下表の通りです。

  PCI-E Gen3 PCI-E Gen2 PCI-E Gen1
帯域幅 8GT/S 5GT/S 2.5GT/S
速度 8Gbps 4Gbps 2Gbps

1レーンあたりの各世代別の帯域幅

10GBASE-Tを生かすためにはPCI-E Gen3の場合は2レーン、PCI-E Gen2の場合は3レーン以上が必要になります。10GBASE-T対応のLANカードはPCI-Express Gen2 ×4を採用しているものが主流になっています。

10GBASE-T LANカード Intel X550-T110GBASE-T LANカード Intel X550-T1

一般的なマザーボードに搭載されているPCI-Expressのスロット形状は×1、×4、×8、×16の組合せになります。ただし、スロット形状がPCI-Express ×16でも×8で動作、あるいはスロット形状がPCI-Express×4でも×1で動作したりとマザーボードごとにPCI-Expressのスロットは仕様が異なりますので、10GBASE-T対応LANカード導入の際はお使いのパソコンの仕様を事前に確認しておく必要があります。

PCI-Express スロット 比較PCI-Express スロット 比較

PCI-Expressスロットは「×16スロットに×4のカードを挿す」というように、より大きな数字のスロットに対して数字の小さなカードを挿入した場合でも問題なく動作します。
Intel製CPU向けチップセットの現行世代であるZ390やX299、同じくAMD製CPU向けのX570やX399といったチップセットを搭載したマザーボードであれば超高速なNVMe SSDを取り付け可能であったりと拡張性十分です。ワークステーションやハイエンドゲーマー向けのマザーボードには10GBASE-Tが標準搭載されている商品も存在します。

10GBASE-T対応のLANケーブルについて

10GBASE-Tを利用する場合はCAT6AかCAT7のケーブルが必要になります。LANケーブルはCAT(カテゴリー)の数字が大きい順に上位規格となり、伝送帯域(データをやり取りできる量)が増え高性能なものになります。

  CAT7 CAT6A CAT6 CAT5e CAT5
帯域幅 10Gbps 10Gbps 1Gbps 1Gbps 100Mbps
伝送帯域 600MHz 500MHz 250MHz 100MHz 100MHz
最大ケーブル長 100m 100m 100m 100m 100m

規格別に対応するLANケーブルの一覧表

規格別に対応するLANケーブルの一覧の断面図規格別に対応するLANケーブル一覧の断面図

LANケーブルは2本の銅線をより合わせたものを1対としそれを4対使用します。CAT7の場合、1組ずつが個別にシールド加工され、それを4対1組でさらにシールド加工することでノイズ対策が規格化されています。その分CAT6aのケーブルに比べると高価にはなりますが、より安定した通信を行いたい場合はこちらを選ぶことをお勧めします。
LANケーブルには下位互換性があるので上位規格のものを最初に導入し、回線環境を後から整えることも可能ですがCAT7のLANケーブルはシールド加工されている分、通常のLANケーブルよりも太くて硬くなっているため狭い場所での敷設や配線が入り組んだ状態での張り替えには注意が必要です。
あとから10GBASE-T導入に対応できるように新しく有線LAN環境を構築する場合は最低限CAT6a以上のケーブルの使用がオススメです。

10GBASE-T対応のスイッチングハブについて

10Gbpsのインターネット接続サービスを利用する際は回線事業者からレンタルされるONU(光回線終端装置)とルーターが必要になります。現状では、ルーターの10G対応のポートは1ポートになるため10GBASE-Tで接続できる機器は1台までとなり、複数の機器を接続する場合は10GBASE-T対応のスイッチングハブが必要になります。
10GBASE-Tに対応したスイッチングハブは高価なものが多く、業務用以外での導入は難しい状況でしたがLANカード同様に従来と比べて安価な製品が発売されるようになりました。

10GBASE-T対応のスイッチングハブ QNAP QSW-804-4C10GBASE-T対応のスイッチングハブ QNAP QSW-804-4C

10GBASE-T対応のLANカードやスイッチングハブにはNBASE-T(マルチギガビット・イーサネット)に対応した製品もあります。10GBASE-Tと同様の仕組みを用いつつ、転送クロックを抑える事で1Gbpsと10Gbpsの間となる2.5Gbps、5Gbpsの転送に対応します。2.5Gbpsと5Gbpsの場合、CAT5eのLANケーブルを流用できるため、LANケーブルをすぐに交換することが難しい環境などでも転送速度の向上が見込めます。あとから10GBASE-T環境を導入する場合を見据えてこうした製品を選んでおくと後々のアップグレードにも対応できるため安心です。

10GBASE-T対応のNASについて

複数のパソコン間でデータを共有する手段の一つとしてNAS(Network Attached Storage)があります。従来はファイルの保存場所としての用途が主でしたが、最近ではファイルの保存以外にもメディアストリーミングサーバーや各種クラウドサービスとの連携など便利な機能がたくさん搭載した商品が登場し個人でも導入例が増えています。
1000BASE-TまでのNASの場合、転送速度は理論値の最大でも125MB/sとなります。10GBASE-T対応のNASであれば転送速度は1.25GB/sとなり、4K、8K動画や高解像度のRAWデータなど大容量データを扱うクリエイター用途において、データのやり取りが高速になり作業時間の短縮に繋がります。

また、1000BASE-T対応のNASは転送速度がローカルストレージに比べ遅いため、NASはあくまでファイルの最終的な保存場所として使用し、ファイルに手を加えたい場合はローカル環境にダウンロードしてから作業を行うというのが従来の使用方法でした。10GBASE-T対応のNASの転送速度は理論値の上ではローカルストレージと遜色のない速度となりNAS上のファイルを直接編集するといった使い方も可能となります。10GBASE-T 対応NASの利用はファイルの高速なやり取り、ファイル集中管理いったメリットをもたらしてくれます。

NASにはあらかじめ10GBASE-Tに対応しているタイプとPCI-Expressスロットを持ち10GBASE-TのLANカードを増設可能なタイプが存在します。NASの導入をお考えでしたら将来性を考え10GBASE-T対応の製品を検討されてみてはいかがでしょうか。

拡張用にPCI-Expressスロットを搭載している QNAP TS-251B拡張用にPCI-Expressスロットを搭載している QNAP TS-251B

高速なストレージでボトルネックをなくす

10GBASE-Tの転送速度を生かすためにはパソコン、NASに搭載するストレージもそれに見合った高速なものを用意する必要があります。
下記はストレージ用のバス規格の転送速度の比較です。

ストレージ用のバス規格転送速度比較ストレージ用のバス規格転送速度比較

あくまで規格上の理論値になりますがS-ATA3.0でも10GBASE-Tの帯域には足りていない事が分ります。
この場合、せっかく10GBASE-Tを導入してもデータの読み出しがボトルネックになってしまいますのでSSD以上のストレージを搭載することが望ましいです。HDDに比べ容量単価が高価だったSSDですが以前に比べ1GBあたりの単価が安価になってきています。2TB以上といった大容量のストレージのコストパフォーマンスにおいては依然としてHDDに軍配があがりますので、高速なファイルやりとりにはSSD、データの保存場所にはHDDというように用途に応じてストレージ選択するのもポイントです。

※RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)についてはこちらの記事もご参照ください。
RAIDの基礎知識
https://www.pc-koubou.jp/magazine/11623

安価に、より身近になる10GBASE-T

ここまで、10GBASE-Tについて簡単ではありますがまとめさせて頂きました。大容量データを扱うクリエイターの方や、複数台のクライアントPCが接続するオフィスなどでは特に大きな効果を実感できると思います。
必要な機器も安価になり種類も増えてきている事から導入のハードルは下がってきています。弊社ではBTOパソコンに10GBASE-T対応LANカードをオプション選択可能なモデルもご用意しております。周辺機器に関してもラインナップの拡充を随時行って参りますので10GABSE-T導入に関して是非ともご検討頂けたらと思います。

ライタープロフィール 職人8号

長年に渡る店舗スタッフ、店頭サポート、BTOパソコン組立、PCリサイクル業務等の様々な現場経験を経てECサイトに配属されたオールドルーキー。趣味はプロレス。

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