

パソコンを使っていて最も避けたいことのひとつに「データの消失」があります。完全にデータの消失の可能性をゼロにすることは難しいですが、データが消えてしまった時にバックアップデータがあれば、保存をしていた時のデータを元に復旧することが可能になります。今回は外付けストレージやNAS、クラウドストレージなど、様々なデータバックアップの方法と保管時のポイントについてご紹介します。
なぜデータバックアップが必要か?
パソコンのデータは、落下による破損や浸水などの物理的な要因や、謝ってデータを削除したり、別のデータを上書きしてしまうなどの人為的な要因により、消失してしまう可能性があります。
自分で撮影した写真のデータや書き溜めていた日記、メモなど、大切なプライベートなデータはかけがえのないもの。機材やソフトウェアは壊れたり失くしたりしても、代替品を購入するなどすれば、復旧が望めますが、データは完全に消えてしまっても、代わりを探すことはできません。また、業務で作成していたデータが消えてしまうようなことがあれば、取引上の信用にも関わります。どんなデータも消失は絶対に避けたいところです。
そこで、データが完全に消えてしまうことを防ぐ方法の一つが「データバックアップ」です。データバックアップとはデータを複製して保存しておくことで、複製したデータをパソコンなら外付けハードディスクなど別の場所に保存しておくことで、使用している機器にトラブルが発生して、機器内のデータに影響が出た場合でも、あらかじめ保存しておいたデータによって元の状態(もしくは元の状態に近い状態)に戻すことができます。
データバックアップに求められる要件
しかし、一言で「データバックアップ」と言っても、様々な方法があります。
ここからは、どんな媒体を使い、何のデータをどのようにデータバックアップをすればいいかを見ていきましょう。
「何を」データバックアップするか
保存したデータとして、まず挙げられるのは、「自分が作ったデータ」です。インストールしているソフトウェアなど、外部から入手したデータは、再び入手するのが困難なものを除き、失っても再度入手できる可能性がありますが、自分で作成した書類や撮影した写真のデータは、消失してしまうと復旧することが非常に困難になります。
また、現在使っているOSやアプリケーションなど、「パソコン等の端末全体のデータ」もバックアップ対象範囲として考えられるものの1つです。使用していた様々なソフトウェアを一からインストールし直すのは大変ですし、できたとしても、自分の使用環境に合わせて設定していたOSやアプリケーションの設定も元に戻ってしまいます。OSやアプリケーションなどを含めた端末全体のデータを、丸ごとデータバックアップしておけば、中身が完全に初期化されてしまったり、機器自体が破損してしまうなど、仮にパソコンなどが起動できないほどのトラブルに見舞われた際にも、バックアップをしていたデータを元にして、作業環境を復旧がしやすくなります。
どの範囲までのデータについてバックアップを行うかは、後述するどのようなバックアップ機器を用いるか、またデータバックアップ方法を使用するかによりますが、現在WindowsやMacの標準機能として搭載されているバックアップ機能は、システム全体のバックアップまで行うことが可能です。随時、自動でバックアップを取ってくれるように設定できる方法も用意されていますので、活用してみるのも1つの方法です。
「どのように」データバックアップするか
もう1つ、データバックアップする際に考えておきたいのは、「データをどのように保管するか」、という点です。
手元のデータが消えてしまうという状況を想定すると、やはりデータが入っている機器とは別の場所にバックアップデータを保管したいところです。
パソコンの場合、データは内蔵しているハードディスクやSSDなどの機器に、保管されていると思います。同じ機器内でデータをバックアップしておいても、ハードディスク自体が動かなくなってしまった場合などには、元のデータもバックアップしたデータも取り出すことが難しくなってしまいます。
データバックアップは、例えば外付けハードディスクなど、物理的に分離可能な機器に保管しておくと、自分の使用している端末でのデータ復旧はもちろん、万が一、自分の端末が使用できない状態になった場合でも、別の端末にバックアップデータを読み込んで復旧することも可能です。
バックアップデータを保存する機器、メディアについて
バックアップデータの保管先として、使用している端末と切り離せる機器を用いることが望ましいと説明しましたが、具体的にはどのような機器を使用すればいいのでしょうか。データバックアップ用には様々な機器がありますが、保存したいデータの容量や、保存後の利用方法などによって、使いやすい機器を選定したいところです。
ここではデータバックアップ時に用いられることが多い機器やメディアについて、それぞれの特徴をまとめてみました。
ハードディスク(HDD)
ハードティスクは、金属でできた円盤(ディスク)に、磁気でデータを記録していく機器です。
大容量のデータを格納することができ、容量あたりの単価も安いため、パソコンやサーバーマシンに内蔵される記憶装置として広く用いられ、バックアップデータの保管先としても多く用いられています。
最近では、USBなどの外部接続端子ではなく、ネットワーク接続型の機器(NAS=Network-Attached Storage)も登場。複数台からのデータバックアップにも用いられるようになってきています。
ただし、ハードディスクは内部で機械部品が動いてデータを読み書きするため、衝撃や振動に弱い面もあります。頻繁に持ち運ぶような使い方は、避けるのがおすすめです。
ハードディスクの内部図(合成写真)。金属ディスク上のデータを磁気ヘッダで読み書きする
ソリッドステートドライブ(SSD)
半導体メモリなどの電子部品の中にデータを記憶する機器です。ハードディスクに比べると、容量あたりの単価は高めですが、ハードディスクのように機械部品がないため、衝撃に強く持ち運びができる点と、データの読み書きなど動作が高速である点から、手軽なバックアップデータの保存先として、ノートパソコンを中心に様々な機器に用いられるようになっています。
データの読み書きが早いSSD(CGイメージ)
DVD/ブルーレイディスク(光学ディスク)
円盤状になった樹脂製の記録層に、レーザー光でデータを記録するメディアです。音楽や映画など、エンターテイメントソフトの記録メディアとして、よく用いられています。容量あたりの単価が非常に安いため、パソコンのバックアップデータ保管先としても、用いられる場合があります。
持ち運びもしやすく、扱いやすいメディアですが、他の機器に比べてデータの書き込みに時間がかかるという面もあります。最近は、ディスクを読み込むドライブを搭載しないパソコンも増えており、利用される場面は減っている傾向にあります。
手軽で扱いやすい光学ディスク。写真のような対応ドライブで読み込む
USBメモリ
手軽なデータ保管先として、使用されることの多いUSBメモリ。最近は、容量の大きなものが出ており、バックアップデータの保管先や、Windowsパソコンのデータバックアップ時に使用する回復ドライブ作成の際にも多く用いられます。
小型で扱いやすい一方で紛失や静電気などによる破損なども起きやすいため、データバックアップ保存先として用いる場合には、普段よりも慎重に取り扱うことをおすすめします。
手軽な保存先として用いられているUSBメモリ(画像はイメージです)
SDメモリーカード/microSDカード
パソコンはもちろん、デジタルカメラなどにも用いられている半導体を用いた記憶機器で、特にmicroSDカードはスマートフォンやタブレットの記憶機器としても使われています。
USBメモリ同様に小型で扱いやすいですが、SDメモリーカードやmicroSDカードは特に薄くて小さいので、保管の際には静電気や水分などに触れるのを防いだり、紛失しないよう、取り扱いには一層注意が必要です。
デジタルカメラやスマートフォンなどでも用いられるSD/microSDカード
クラウドストレージ
ここまでご紹介してきた機器やメディアは、データバックアップ後に手元で保管しておくものになりますが、最近データバックアップの保管先として、新たに用いられ始めているのが「クラウドストレージ」です。「クラウドストレージ」はネットワーク上にデータを保管するため、機器やメディアがなくても、データにアクセスできるのが大きな特徴です。
「OneDrive」、「Dropbox」、「Googleドライブ」など様々なサービスが各社から提供されていますが、料金や使用できる容量などは様々。よく使用するデータや、複数人で共有したいデータの保管先には、有効です。
一方、データの読み書き速度はネットワーク速度に大きく依存します。ネットワークに接続できない場合などには、データが取得できなくなってしまうため、注意が必要です。
様々なサービスが提供されているクラウドストレージ(イメージ図)
データバックアップを行う際のポイント
差分データだけをバックアップする
データをバックアップする保管先の特性にもよりますが、データバックアップを行う際は、データ容量に応じて相応の時間がかかります。そのため、WindowsやMacなどOS標準のデータバックアップ用ツールはもちろん、多くのデータバックアップ方法で「差分バックアップ」という方法が用いられています。
これは、まず最初に全体のバックアップデータを保存し、その後は最初に保存データから変更や追加があったデータだけを保存していく方法です。この方法を使えば、2回目以降は初回よりも少ない時間でデータを保存することができ、データバックアップツールの仕様によっては、それぞれ保存した時点のデータを取り出すことも可能です。
機器を使用しない時間帯を活用する
たとえ「差分バックアップ」を用いたとしても、データバックアップを実施する間隔が空けば、2回目以降でもバックアップに時間がかかることがあります。それを防ぐために、機器を使用しない夜間の時間帯にデータバックアップのスケジュール設定を行うなど、普段の使用に影響がないように工夫しましょう。
Windows 10でのデータバックアップ例
Windows 10では「Windowsの設定」>「更新とセキュリティ」>「バックアップ」からデータバックアップを行います。
あらかじめデータバックアップ用の機器の接続やメディアの挿入を行っておきます。
「スタート」メニュー内「Windowsの設定」>「更新とセキュリティ」>「バックアップ」をクリック
下図画面で「ドライブの追加」をクリックし、接続/挿入したバックアップ先の機器/メディアを選択します。
「ドライブの追加」をクリックしてデータバックアップ先を選択「その他のオプション(上図青枠)」でデータバックアップ間隔などを設定
ファイルのデータバックアップ間隔やバックアップを保持する期間などを設定する場合は「その他のオプション(上図青枠)」をクリックすると表示される画面で設定します。
なお、下図の「バックアップを保持」オプションで「領域が足りなくなるまで」を選択すると、データバックアップ先のディスク領域が不足した場合、自動的に古いファイルを削除しながらバックアップを行います。
「領域が足りなくなるまで」を選択すると、古いファイルを削除しながらデータバックアップを行う
バックアップしたファイルはバックアップ先の「File History」というフォルダの中にあり、目的のファイルを探してコピーすることで復元ができるほか、「コントロールパネル」の「ファイル履歴」から復元をすることも可能です。
コントロールパネルから復元を行うには、「コントロールパネル」の「ファイル履歴」画面左側にある「個人用ファイルの復元(下図赤枠)」をクリックします。
「コントロールパネル」>「システムとセキュリティ」>「ファイル履歴」で「個人用ファイルの復元」を選択
次の画面でデータバックアップした日時を切り替えながら復元したいフォルダやファイルを選択後、画面下部中央の丸いグリーンのボタン(下図赤枠)をクリックすると、復元が始まります。
データバックアップ日時を切り替えて復元したいフォルダやファイルを選択後、ボタンを押す
定期的にデータバックアップしておくことが大切
普段なかなか意識して行えないデータバックアップですが、PCの故障やデータの消失は、前触れなく突然やってきます。面倒だからと先延ばしにしたり、忘れてしまうことがないように、定期的にデータをバックアップしておくことが大切です。
「やっておけばよかった…」と後悔することがないように、自分に合った方法で無理なくバックアップを取って、不測の事態にも慌てず対処できるように備えておきたいですね。
パソコン工房で取り扱っている様々な種類のデータバックアップに便利なおすすめの機器・メディアをご紹介します。バックアップのデータ容量や前述したメリット、デメリットを確認した上で、ぜひご自分に合った機器・メディアをお選びください。
[ネクスマグ] 編集部
パソコンでできるこんなことやあんなこと、便利な使い方など、様々なパソコン活用方法が「わかる!」「みつかる!」記事を書いています。