先月末にRyzen Threadripper 2970WX・2920X が発売され、12nmプロセス・ノードを基盤とした「Zen+」アーキテクチャーを搭載する第2世代Ryzen Threadripperシリーズが全て揃いましたので、 2970WX・2920X を中心にスペックと性能を比較していきます。
第2世代Ryzen Threadripper 2970WX・2920X の特徴
第2世代Ryzen Threadripper では、型番の末尾に「WX」が付くクリエイター向けと、「X」が付くゲーミング向けの2種類に区分されるようになりました。
2970WX の特徴は、マルチスレッド性能に優れ、高負荷な処理を必要とするクリエイティブな作業に向いています。
2920X の特徴は、動作クロックの高さを活かしてゲームのプレイと同時エンコーディングが可能で、ゲームのストリーミング配信などに向いています。
第2世代 Ryzen Threadripper スペック比較一覧表
第2世代Ryzen Threadripper 2970WX・2920X のスペックを以前に発売された 2990WX と 2950X に加え、前世代の 1950X と 1920X で比較してみました。
Ryzen Treadripper | |||||||
2990WX | 2970WX | 2950X | 2920X | 1950X | 1920X | ||
製造プロセス | 12nm | 14nm | |||||
コア/スレッド | 32/64 | 24/48 | 16/32 | 12/24 | 16/32 | 12/24 | |
動作クロック | 3.0GHz | 3.0GHz | 3.5GHz | 3.5GHz | 3.4GHz | 3.5GHz | |
Boostクロック | 4.2GHz | 4.2GHz | 4.4GHz | 4.3GHz | 4.0GHz | 4.0GHz | |
L2キャッシュ | 16MB | 12MB | 8MB | 6MB | 8MB | 6MB | |
L3キャッシュ | 64MB | 64MB | 32MB | 32MB | 32MB | 32MB | |
メモリ | 対応メモリ | DDR4-2933 | DDR4-2667 | ||||
チャネル数 | 4 | ||||||
TDP | 250W | 180W | |||||
64bitコード | AMD64 | ||||||
対応ソケット | Socket TR4 | ||||||
対応チップセット | AMD X399 |
2970WX は、上位モデルの 2990WX と比較として、コア / スレッド数、2次キャッシュ容量の違いが見られますが、動作クロック、Boostクロックに関しては違いが見られません。
2920X は、前世代の 1920X と比較して、Boostクロックが向上し、対応メモリもDDR4-2933に対応したことから、より高いパフォーマンスが得られると思います。
それでは、実際にベンチマークを通して 2970WX・2920X の実力を見ていきます。
第2世代Ryzen Threadripper 2970WX・2920X ベンチマークテスト
2970WX・2920X の性能を測るため、各ベンチマークソフトを用いてRyzen Threadripperシリーズと比較します。
Passmark における 2970WX・2920X の性能
まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassmarkの『CPU Benchmarks』を用いてCPUの演算性能を見てみます。
全体的な性能で比較した場合、 2920X はコア / スレッド数が同じ、前世代の 1920X と比べて5%性能が向上しています。この差は上記のスペックシートでもわかるように「Boostクロック」が「0.3GHz」向上している結果から得られた差だとおもわれます。
かたや 2970WX は上位モデルの 2990WX と比べて3%ほど性能差があり、コア / スレッド数の差が反映したものとなっています。しかし、第2世代Ryzen Threadripperシリーズ同士で比較してみると、下位モデルの 2950X よりも14%も性能の差が離れた結果となりました。以前のNEXMAG記事でもとりあげました「2990WX のベンチマーク結果」と同様にCPU Benchmarksにおける各テスト結果を分析しました。
パソコン工房NEXMAG「Threadripper 2990WX速攻ベンチマーク」は こちらから
Passmarkにおける 2970WX・2920X の各テスト結果
上記の各結果から、総合スコアでは 2950X に後れを取った 2970WX ですが、整数演算、浮遊小数点演算、SSE演算、圧縮、暗号化、ソートに関して高いスコアが確認できました。この様に、クリエイター向けモデルである 2990WX・2970WX では、得意・不得意な処理がはっきりと現れています。
かたやゲーミング向けの 2950X・2920X は素数演算、物理演算、シングルスロットのスコアが高いなど、クリエイター向けモデルとの棲み分けがはっきりした結果とっています。
3DMark(FireStrike、TimeSpy)における 2970WX・2920X の性能
上記の結果を基に 2920X のゲーミング性能も比較してみたいとおもいます。以下は3DMarkのFireStrikeと、TimeSpyでCPUの演算性能の比較をします。
第2世代Threadripper 2920X は、第1世代Threadripper 1920X と比べて5%程度スコアアップしており、Passmarkと同じ傾向が確認できました。かたやクリエイター向けの 2990WX・2970WX は、第1世代の 1920X にも届かない結果となっており、ゲーミング用途にはあまり向いていない事が分ります。
PCMark10における 2970WX・2920X の性能
続いて、PCの総合力をみるPCMark10で 2970WX・2920X の性能を見てみます。
2920X は 1920X を上回っていますが、その差は1%とわずかな物となりました。CPUだけの性能差では5%ほどの差が有りますが、PC全体となると差が縮まってしまうようです。
かたや 2970WX は 2990WX を10%ほど上回るという逆転現象が起こっています。3DMarkのFireStrikeでも見られた現象ですが、コア数/スレッド数が減少した事で、かえって得意・不得意の差を緩和しているのかも知れません。
TMPGEncにおける 2970WX・2920X の性能
最後に動画編集ソフトのTMPGEnc Mastering Works 6を用いて、QuickTimeファイル(3840x2160/2分50秒)をh.265に変換するのに要した時間(単位:秒)を測定しました。グラフの短い方がより高速に処理を行っている事になります。
2920X は 1920X を上回っていますが、その差はPassmarkや3DMarkよりも小さくなっています。
かたや 2970WX は 2950X には及ばないものの 2920X を上回る健闘を見せてくれました。TMPGEnc Mastering Works 6 のエンコード処理においては、得意・不得意の枠を超えてマルチスレッド性能が活きてくるのかも知れません。
第2世代Ryzen Threadripper 2970WX・2920X まとめ
2920X は 1920X から順当に性能アップしている事が分りました。現在の価格では8万円程度となっており、コストパフォーマンスという点で 2950X を上回っています。Ryzen7 2700Xを超えるコア数のCPUとしては、コストパフォーマンスの良い選択肢になりそうです。
かたや 2970WX は、 2990WX の得意分野では引き離されるかと思えば、 2990WX の不得意分野では上回るなど、やや捉えどころのないCPUにも見えます。しかしながら 2990WX ほど角が立っていないとも言え、コンシューマー用途にも対応できるメニーコアCPUとしては「有り」だと思います!
360度どこからみても凡人、職人番号ラッキー7!職人7号です。主に写真撮影、動画編集を担当。パソコン工房ECサイトのBTOPCや自作パーツ等ひろく手掛ける。店舗部門出身。