ChatGPT(チャットジーピーティー)をはじめとする生成AIについて、ノンプログラマー協会代表理事・高橋宣成さんが語ります。

ITトレンド最終更新日: 20230703

ChatGPTとは? 生成AIが話題になる背景や使い方を解説

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2023年に入り、デジタルトレンドを席巻するトピックの1つが、アメリカ・OpenAI社が開発する生成AI「ChatGPT(チャットジーピーティー)」です。ここでは、広くパソコン利用者を意識した、ChatGPTなどの生成AIについて解説します。
今回、デジタルトピックに精通する立場の1人として、一般社団法人ノンプログラマー協会の代表理事を務める高橋宣成さんに話をうかがいました。

ChatGPTなどの生成AIについてインタビュー

最初に今回お話しいただく、ノンプログラマー協会・代表理事、高橋宣成さんのプロフィールを紹介します。

<プロフィール>
高橋 宣成(タカハシ ノリアキ)さん

一般社団法人ノンプログラマー協会・代表理事
コミュニティ「ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会」主宰
株式会社プランノーツ・代表取締役

近著に『デジタルリスキリング入門――時代を超えて学び続けるための戦略と実践』(技術評論社)など、著作多数。NEXMAGには、以下のコンテンツにも出演しています。

“ノンプログラマー協会代表理事 高橋宣成さんに聞く、非エンジニアのためのプログラミング入門 | パソコン工房 NEXMAG”.パソコン工房 NEXMAG.2022.
https://www.pc-koubou.jp/magazine/61157

ChatGPTとは? 生成AIとは?

最初に、「ChatGPT(Chat Generative Pre-trained Transformer)とは何か?」について教えてください。

高橋:ChatGPTとは、文章を生成するAIサービスの1つです。ユーザーが自然言語でAIに指示をすると、その内容を受けてAIが文章を作ってくれるサービスになります。

ChatGPTを指して生成AIと呼ばれています。ChatGPT以外には、どのような生成AIがあるのでしょうか。

高橋:文章生成系で挙げると、他にはGoogleが力を入れている「Google Bard(グーグル・バード)」や、Microsoftが提供している「Bing AI(ビング・エーアイ)」もあります。Bing AIの場合、言語モデルにはChatGPT の有料版と同じ「GPT-4」が使われています。

ただ生成AIの実際は、画像をはじめ、映像や音楽などさまざまなコンテンツを生成するAIモデルもあります。参考までに、文章の次に使用機会が出てきそうな画像生成で言うと、「Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)」や「Midjourney(ミッドジャーニー)」と呼ばれているサービスが有名です。

なぜChatGPTが流行っているのか?

ChatGPTは、2023年以降、一気に耳にする機会が増えた印象を持ちます。なぜ流行り出したのでしょうか?

高橋:一般層には伝わっていないところで、生成AIの開発が続けられていた背景があります。2020年には、ChatGPTのベースにあたる「GPT-3」が公開。AIなど特定分野への関心層には、以前から大きな注目を集めていた分野です。

2022年11月になると、「GPT-3.5」という言語モデルを搭載したChatGPTの無料版が公開されて、一般層を巻き込んで爆発的に拡がっていきました。GPT-3.5は、2021年9月までのデータを用いたモデルで、5兆語と言われるデータを学習しています。

また、一般的にも慣れ親しんだチャット系のインターフェイスで、任意の言葉を打ち込むと人間の会話のように返答しれくれます。無料で、かつ誰でも迷わず使えることが、ここまでの普及の要因でしょう。

無料版はChatGPTのWebサイト(https://openai.com/blog/chatgpt)で、新たなアカウントを登録するか、GoogleもしくはMicrosoftかAppleのアカウントで登録を行えば、即座に使えます。試したことがない人は、ぜひ試してほしいです。

ChatGPTの適切な活用方法とは?

もう少し具体的にうかがいます。例えば、何か調べごとで使うのが、思い浮かべやすい利用方法の1つですが、実際はどう使うといいでしょうか?

高橋:入力欄にワードを入力するインターフェイスですので、ついGoogleで検索するような使い方を想定する人が多そうですが、それだけにとどまらない使い方ができます。例えば、ChatGPTを「タスクを依頼する」感覚で活用すると、広がりのある使い方ができると思います。

高橋さんには、「ChatGPTに依頼するタスク例」という表を用意していただきました。表の右端にある「プロンプト(例)」とは、ChatGPTが応答を生成するための文章(例)のことです。

高橋:上から順に、補足説明していきます。

1の「たたき台づくり」は、あるテーマに対する文章の書き出し方をChatGPTに聞く使い方です。書き始めは気が重かったりしますが、その解消策になります。身近なところだとメールや、カスタマーサポートなどの返答案のたたき台にも使えそうです。

こうした使い方は、最近かなり増えた印象を持っています。EC担当者なら商品紹介文、広報担当者ならプレスリリース、マーケティング担当者ならSNSなどの告知系などで、試してみるといいでしょう。

応答内容をそのまま使わず、たたき台として「参考にする」意識が大切です。

高橋:はい、書き始めるまでの重い腰を上げやすくする「たたき台」として、ですね。

2の「アイデア出し」は、企画を立てる立場の人たちが、任意の記事のタイトル案や、イベント内の企画アイデアを募ることができます。世の中のさまざまな情報を集めて出してくるので、特に複数案を集めるには強力なツールです。

3の「壁打ち」は、例えば、あまり経験したことがない大きめのプロジェクトを前に、どう進めていけばいいかをChatGPTに相談するような使い方です。手順を教えてくれたり、不安点や疑問点に対する応答の内容を参考にしたりするといいでしょう。

どうしても1人で考えなければいけない場合や、1人のまま悶々として頭打ちの状況には、特に心強いです。

高橋: 1人で対処せざるをえない状況の時に、ChatGPTならいつでも相談できます。活用によって、自分1人では出てこない気づきがパッと出てくる可能性があります。

4の「テイストの変更」や5の「要約・詳細説明」は、書き上げたテキストはあるものの、推敲を重ねながら最終状態へと仕上げる過程で使える方法です。硬めの文章を書きがちな人が、文体にやわらかさを出すために使ったり、要約だけでなく、文章を膨らませるのにも使ったりできます。

6の「翻訳」も、まさしくたたき台を作ってくれるだけで、大きな助けになりますよね。

高橋:しかも7の「プログラミング」についてコーディングの場面では、いまや、かなり使っている人たちがいる印象です。任意のコーディングを生成するだけでなくて、「現状のコーディングが動かない理由を教えてください」と尋ねてデバッグ(誤りを見つけ、不具合を解消する)に活かしたり、「この部分を教えてください」といった、わからない箇所の解説を求めたりすることもできます。

メリットとデメリットについて

さまざまなタスクを受けてもらえる点では、多くのユーザーが活用のメリットを感じやすいです。

高橋:ChatGPTはじめ生成AIは、いつも隣にいてくれる優秀なアシスタント、と言ってもいいかもしれません。人間相手では、好き勝手には頼れません。また、場面によっては相手に負担を強いる、好ましくない相談やお願い事も出てきます。その点、生成AIが相手だと気兼ねなくお願いできます(笑)。

一方で、生成AIのデメリットはいかがでしょうか? 例えば、自分の頭で考えなくなる、という懸念はよく言われています。

高橋:デメリットは、一見すると真っ当な返答であっても、よく読むと実は違っていることがあり、自分の期待とは違う内容も出てくることです。応答内容については、人間側がその都度、適切に判断する必要があります。

例えば、大学のレポートやビジネス上の報告書などに、応答内容をコピー&ペーストで提出するような状況は考えられますが、そのまま使えるほど甘くない現実もあります。そもそも、どういう内容をどのような目的で質問するか、というユーザーのリテラシーが重要です。

使う側は、常に自らを律しながら、質問内容から応答内容まで、使いこなすためのスキルや訓練、土台となる知識や判断力を要します。生成AIを適切に使いこなすためには、むしろ専門的な知識、スキルが必要です。

制約を加えて、応答内容を整理する

長短所あるにせよ、多くのユーザーが最新技術に触れる機会として活かしてほしいです。

高橋:試した結果が思わしくない場合、そこで終わらず、ぜひ「制約」を加えながら続けてください。つまり、条件要素を加え、もっと的を絞った質問文を投げかけ直して、求めたい返答の方向性へと整えていくのです。もし最初がイマイチだった場合でも、徐々に期待に近い内容へと変わるはずです。

「なんだ、ダメだな」とすぐに諦めず、少しずつ条件を加えて質問を重ねていくと、そこから学習してくれるわけですね。

高橋:はい。生成AIの現在(2023年6月末時点)はChatGPTが中心ですが、例えば、GoogleやMicrosoftの各種サービスにも、今後生成AIを搭載した上で公開されていく動きが出てきます。その他、任意のアプリ内の機能に生成AIを搭載するといった動きは、ますます加速するでしょう。働く現場しかり、日々の暮らしの中にもどんどん入り込んでくるので、上手な付き合い方をしてほしいです。

生成AIを踏まえたこれからの未来、という視点ではどういったことが言えるでしょうか?

高橋:これまでのデジタル体験、インターネット上のWeb体験が大きく変わると見ています。例えば、生成AIの出現でユーザー個々にアプローチしやすくなると、任意のWeb広告を見て、そこで知った製品ページのWebサイトに移って該当の製品を購入する、といった従来の動線や一連の体験の構造が変わったり、なくなったりするかもしれません。

私たちが漠然と感じる以上に、劇的な変化が出てくる可能性があるだけに、このタイミングをきっかけに、情報感度を高くしておくといいでしょう。

パソコンとChatGPT

最後に、NEXMAGらしい質問で終えたいと思います。パソコン利用、パソコン購入という観点からも、ぜひ一言いただきたいです。

高橋:文章系生成AIの場合、扱いのメインがテキストですから、パソコン側に大きな負荷を伴うわけではありません。あまりスペックを気にせず、現状の環境で気軽に試してほしいです。もちろん、画像や映像の生成AIの中には、ローカルマシン側に負荷が伴うサービスもなくはないので、使いたいサービスによっては必要なスペックを確認してください。

※ ChatGPTの利用に限らず、「パソコン=日常的な自分のパートナー」という観点で考えるなら、前回のインタビュー時の話が参考になります。

参考:「プログラミング学習者が事前に備えておきたいパソコンや周辺環境」より
“ノンプログラマー協会代表理事 高橋宣成さんに聞く、非エンジニアのためのプログラミング入門 | パソコン工房 NEXMAG”.パソコン工房 NEXMAG.2022.
https://www.pc-koubou.jp/magazine/61157#section06

このたびはありがとうございます!

ライタープロフィール 遠藤義浩

フリーランスの編集者/ライター。雑誌『Web Designing』(マイナビ出版)の常駐編集者などを経て、主にデジタルクリエイティブやデジタルマーケティング分野の媒体の編集/執筆、オウンドメディアの企画/コンテンツ制作などに携わる。

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