様々なクリエイターが独自な発想でiiyama SENSE∞のサウンドロゴをディレクションする過程を取材すると共に、
クリエイターの個々の魅力やパーソナルについて追究することで、将来クリエイターを目指すユーザーの「輪」を広げていく『The Circle』。
前回の記事では朝倉さんが映像クリエイターになるまでのお話から、こだわりの趣味の話、心が折れた経験のことまで話していただきました。
今回はさらに掘り下げ、年収からフリーランスになるための初期費用などなど、これまであまり話していなかった赤裸々トーク満載です。
そして、最後には今回の企画のために作っていただいたiiyama SENSE∞サウンドロゴを公開。
制作工程からこだわりのポイント、実際の作成にかかった作業時間まで聞いちゃいます。
悩まないから仕事が早い!
朝倉さんのCGはプロダクト(製品や商品)系が多いですが、他のCGクリエイターとは違う特徴ってありますか?
あるのかな…あんまり自覚がないんですよね。だけど、お客さん(クライアント)や友人からは「朝倉さんの作るCGは朝倉さんっぽいよ」って言われます(笑)
自覚はないんですけど、例えばモデリングであったり、質感を作るところであったり、ライティングやアニメーションとか、ちょっとずつ僕の癖みたいなのがあるんでしょうね。
ただ、自信があることといえば、作業は凄く早いと思います。作業している時は悩まないようにしているんです。
過去の経験からなんですけど、悩んだら悩んだ分だけ良くなくなると思っていて。逆に良くするために時間をかける事はやるんですよ。
これをこうすれば良くなるといったブラッシュアップに時間をかけたいんで、悩むことに時間を使いたくないんですよね。
「ここはどうしようかな」とか「これはあんまり良くないよな」って悩むのを避けるためにも、まず一旦作っちゃうんです。
それがクライアントからOKが出たらそれでいいじゃないですか。その後は更にブラッシュアップしていけばより良くなるから、とにかく最初に悩まないというのを決めていて。
「朝倉さんお仕事早いですよね」と言ってもらえるから、仕事として信頼を得やすいというのがあって、だから他の人と比べて作業自体は早い方だと思います。
気持ちとPCがあればCGクリエイター!
CG制作を始めてみたい方へ、CGクリエイターに欠かせない知識や努力ポイントみたいなものがあったら教えてください
今の子ってどうしてるんですかね?(笑)
僕自身がCGクリエイター王道路線(エンタメ系)じゃない人間なので、すごいざっくり言えば、やりたいと思ったその日から貴方はCGクリエイターだって言えちゃうんですけど(笑)今ってCGソフトのBlenderとか、いい機能、すごい性能のものが手に入るし、安くはないけどパソコン本体も昔みたいに何百万円って、とんでもなく高いものはではないですし、市販で売られてるパソコンからでも始められますからね。
例えばゲーミングPCとかでも始められるわけじゃないですか、なので興味があったらまず触ってみて欲しいなというのが大前提ですかね。
触ってみてからがスタートだと思うんです。それこそ今だったらUnreal Engineとかで、ゲームも一人で作れちゃう時代なので、やってみて足りない知識を補っていく形で進めてみるのがいいと思います。
僕の場合、CG学校の講師の経験もあるので、学生さんには「CGを作っているからってCGのことばかり勉強しない方がいいよ」って伝えてたんです。
例えば、CGを作るうえで木材の知識が欲しいと思っている人に、木材の写真を見てるだけじゃなくて、木材屋さんとかホームセンターに行けば本物の木が売ってるから、実際に木を買って触ってみてって。
これCGクリエイターあるあるなんですけど、例えば「スマートフォンのモデリングの仕方」みたいなチュートリアルの動画を多くの人がYouTubeで見ちゃうんですよ。
「君、今手にしてるのスマートフォンだよね?それを見てモデリングしてみなさいよ」って(笑)
結局、動画で見た知識しかないから「立体物のバランスが取れないです」って相談に来る生徒さんが多かったですね。
CGとか映像ソフトを始めたばかりの人は、なんとかパソコンの中で知識を完結しようとしがちなんですよ。
YouTubeでチュートリアルを探そうとか、上手い人の講演の動画を見ようとか、それも大事なんですけど。もっと手前のところで、現実世界にあるものはちゃんと見た方が正確な情報を得られますからね。
なので、これもCGを作る人の落とし穴なんですけど、スケールの感覚とか概念がないとCGの世界では物理的にあり得ない物が作れちゃうから、あえて存在しないような物を狙って作っているならいいんだけど、実際に存在する物をCGで制作しようとして憶測で物を作っていると、どこかで必ず破綻してしまうんですよね。
そういうリアルスケールのこととか、実際はどうなっているのかとか、もっと言うと僕みたいにプロダクト系をやるのであれば、工業製品などをCGで作る時には、その製品がどういう工程で作られているかというところまでを知った方が作りやすいです。
例えばSENSE∞のミドルタワーケースのサイドパネルなんかも、この黒い色というのは粉体塗装といって、家具とかに使われる錆止めの塗装だったりするので、独特なざらざらとした質感であるとか、そういった知識がないとただの黒の塗装としか思わないじゃないですか。なので粉体塗装というのはどういうものかということを知っていることでCG制作の時に、よりリアルに追い込めることができますよね。
僕は人間より物が好きなんですよ(笑)
CGクリエイターとして、物に対する興味があるかないかによって、クオリティも変わってくるかとおもいますが、朝倉さんはそのこだわりが強いですね。
そうですね。物に対するこだわりはありますね。
ちょっと不思議な質感のものがあると「何で出来てるんだろう」と触ってみたりします(笑)
もともと昔から物に対する好奇心はあって、これを言うとちょっと変わり者っぽく聞こえるかもしれないですけど、僕は人間より物が好きなんですよ(笑)
だから子供のころの話ですけど、みんなで何かして遊ぶとかも好きでしたけど、河原とかで石とか拾うのが好きで。だから今でも宝石とか好きで、石も種類によって様々な鉱物として分けられるじゃないですか、そこでその物に対する深さが変わってくるわけですよね。
この手の仕事をしていると、同じシルバーの金属でも鉄なのか、アルミなのか、チタンなのか、どういう処理をされた金属なのかとか。
鉄の場合は、削り出しなのか、叩いて伸ばしたのかとか、知識としてよく分かっていると、この金属だったらこの加工はしないよねというところまでスケール感が出てくるので、CGをやればCG以外の知識が必要になってきますね。
ただ僕は、それに対する物理的な計算式とか数学は弱いので出来ないんですけど、こういう特性があるよといったところまでを知っていればいいので、そこまで分かっていればCGに落とし込めるので、それを意識して本を読んだり、調べたりしますね。
スマホで写真を撮りまくれ!
色々な物に興味を持って調べる、触るということがCGクリエイターにとって必要であることは理解したんですが、もう少し手軽なところからCGクリエイターを目指すうえでやっておいた方がいい事はありますか?
スマホで写真を撮りまくるのがいいと思いますね。
何か気になったものがあれば、ちょっとこだわって撮ってみるとか、撮った写真の中から「そういえば、あの時撮った、あれ作ってみたいな」ということがあるかもしれないですからね。CGクリエイターやアーティストになるための入り口(スマホ)は、ほぼ皆さん持っていると思います。
スマホで撮影しているうちに興味が出て、自分の中で見たことない世界を作りたいとか制作意欲も湧くだろうし、アングルの考え方ってスマホを傾ければ簡単に作れちゃうし、なんなら防水の機種とか沢山あるから、今でも僕はお風呂に水張って、スマホを水の中に入れて水面の反射角を確認したりしますよ(笑)
CGクリエイターの収入
ここからは、ちょっと下世話ですが、収入やお金の話を聞きたいんですけど…
全然いいですよ!(笑)僕NG基本的にないんで(笑)
ちなみにフリーになって8年目、最初に貰ったギャラはいくらでしたか?
会社辞めてから最初の案件で言うと 110万円ですね。最初からいきなり結構大きな案件が来ちゃって(笑)
フリーランスは儲かる?
会社員の時よりもフリーになってからのほうが収入は増えたんですね。
増えました!
ただ、フリーになって最初に苦労したのが、パソコンやソフト等の機材を揃えないといけなかったので、初期費用がかかりましたね。
でも幸いなことに1年目から大きな案件をいただいたので、生活の質を落とさずに生きてこれたのは幸せだったかな。
初期費用はどれくらいかかりましたか?
元々ガジェット類が好きだったこともあって、ある程度の機材は揃っていたんですけど、自宅にあるパソコンでCGを作るにはスペック的に厳しかったんですよ。
その頃、会社を辞める前に、ユニットコムとCGWORLDとうちの3社でパソコンのレビュー案件があって、その時にiiyamaのパソコン使ってみて、いいじゃんって思って自分でも購入したんです。
それが 30万円くらいのパソコンで、そのほかにモニターも買って、実家では仕事しづらかったのでワンルームのマンションも仕事部屋として借りて、作業するための机も買って、インターネット回線引いて、ルーターも買って、でもそれもプロ用とかじゃなく一般家庭用なので、仕事場の契約費込みでも 100万円いかなかったと思います。
フリーで仕事を始めた頃は本当にすごい狭い部屋で、それも秘密基地みたいで楽しかったですけどね。ワンルームに机とパソコンだけがある部屋を作ったんです。
今は自宅兼、仕事場になってますよね。
ここに住んで仕事も両方するようになったので、作業空間として生活感がで過ぎるとやる気が出なくなっちゃうし、かっこつけて「俺はクリエイターだ感」を出すというのを意識して、自分のモチベーションを上げるために仕事以外の余計なものは置かないようにしました(笑)生活面でみれば便利グッズとかいっぱいあるのが楽なんでしょうけど、仕事するとなるとやっぱり自分の感覚とか感性みたいなところがそっちに持っていかれてしまうとまずいので、なるべく「クリエイターがいる空間」で仕事をしているみたいな、自己暗示をかけた感じで整えました。
CGクリエイターとして仕事場(住環境)にもこだわっているようですが、朝倉さんご自身は「CGクリエイターはこうであれ」のような発信もされてますか?
これは僕がちょっとこじらせているところでもあるんですけど、インスタグラムとか、Xとか、Threadsとかで、めちゃくちゃ「俺たちクリエイターだけど」みたいな人たちがクリエイティブな会話をするじゃないですか。あれを心からダサいと思っていて(笑)
クリエイターの本分って何だろうと思ったときに、皆さんそうだと思うんですけど、クリエイターってやっぱり作ったものが全てだと思うんですよ。
その作ったものを見てもらって、良いか悪いかを判断してもらう仕事なので、わざわざ「俺たちクリエイターは」みたいなことを語るのが本当にダサいなと(笑)
このようなインタビューなどでは語ってもいいと思うんですけど、聞かれてもないのに語らなくていいでしょとは思いますね。
クリエイターという肩書きもなんとなく、ふわっとした格好良さってあるじゃないですか。それに憧れる人もいると思うんですけど。
それがダサいなって思うので、あまり自分から「クリエイターたるものは」と言わないようにしています。
ただ、自分の中には確固たるクリエイターとしてはこうしておこうといったものはありますけど、それも人それぞれだと思いますし、それを押し付けてもしょうがないというのはあります。
クリエイターに憧れる人のなかには収入面も気にされる方も多いかと思いますが、今まで受けた案件のなかで最高金額でどれぐらいですか?
多分皆さんが想像されているよりも低くて270万円ですね。
ギャラ最高額は270万円
270万円というと、どれぐらいのボリュームですか?
映像と静止画を制作するプロダクト系の案件で、映像を多言語対応の差分込みで 5本と、そのプロダクトの印刷用の静止画で 5色 3パターンの全15枚を製作して、全部込みの合算ですね。
CGクリエイターは儲かる仕事ではないんですか?
例えば映画などの案件は別だと思うんですけど、巨大資本なら儲かりますよね(笑)
映像やCGの仕事にもいろんな種類があるので、やはり大きな会社からの発注であればそれなりの予算がありますけど、そうじゃない中小企業の場合は予算も限られているので、苦労も多いし、時間もかかるしみたいな(苦笑)
ベンツの新車1台分!!!
フリーになられて8年、コロナ禍など色々とあったかと思いますが、収入が一番多かった時の最高年収はいくらですか?
僕の場合、年収はフリーランスを始めた年からほとんど変わってなくて。
コロナ禍の時もありがたいことにお仕事を頂けて、売上自体もそんなに変わらなかったんですよ。
CGクリエイター業は疫病にも強いんですね(笑)
プロダクト系は安定して案件を頂けていたので本当に年収は横ばいでした。
年収を例えるとメルセデス・ベンツのセダンの新車が買えるぐらいですかね。
夢はB’zのミュージックビデオ!
非常に分かりやすいですね(笑)さて、そろそろ終わりに近付いてきましたが、朝倉さんには何か大きな目標、夢はありますか?
それがあまり無いんですよ(笑)
例えば売上を伸ばしたいとか、そういう漠然とした小さな目標は細々あるんですけど、大きな目標というのは無くて。
夢ということであれば、これは本当に馬鹿みたいな話かもしれませんけどB’zに関わりたいですね!(笑)
ミュージックビデオとかの仕事がきたら、もう人生がゴールになるんじゃないかな。
万が一本当に仕事が来ちゃったとして、納品するじゃないですか、多分しばらく他の仕事できないと思うんですよ(笑)
「俺、人生でやりたいことの一番やっちゃったな」って(笑)
自分自身がこれから年収何億円のとんでもないクリエイターになるぞみたいなのは無くて、自分が好きなものにいっぱい関わって行きたいなという目標、夢はありますね。
最後にCGクリエイターを目指す方へ何かいいアドバイスというか、背中を押す言葉などあったら。
本当にやれば楽しい仕事だと思いますし、SNSとかを見てると当時の往年の有名クリエイターとか実力者たちが、カンカンガクガク偉そうなこと言ってるけど、そんなに気にしなくていいから、やるだけやってみましょうという感じではありますけど(笑)
でも、無責任かもしれないけど難しいことは何もないというか、やりたいと思ったものをやっていれば仕事になる。といった業界ではあるので、とにかくやりたいと思ったことをやってみてほしい。CGもそうだし、映像でもそうだし、なんならちょっと全体のことなんですが、何でもいいんですよ。本当にやりたいことなんていうのは…
やりたいことをずっとやれば必ず何かになるというのは自分の人生で分かったことでもあるので…
とにかくやってみて欲しいなと思います!
Made by Asakura.サウンドロゴ制作の裏側
The Circleでは、クリエイターに独自の発想でiiyama SENSE∞のサウンドロゴをディレクションしてもらいます。
朝倉さんの作るSENSE∞のサウンドロゴはどのようなものに仕上がったのでしょうか。
完成したサウンドロゴとともに、作業時間、こだわりのポイントなど制作の裏側もお伺いしました。
Next CREATOR
今回は映像クリエイター朝倉 涼さんに今のお仕事を目指すきっかけから、現在の収入、CGクリエイターに必要なことまで本当にたくさんのことを教えていただきました。
『The Circle』ではクリエイターに次のクリエイターを紹介していただきます。
次回もクリエイターが独自の発想でiiyama SENSE∞のサウンドロゴをディレクションする過程を取材しながら、自身の魅力やパーソナルについても追究していきます。
次のクリエイターは・・・
絶賛徹底取材中!近日公開!
取材・構成/佐藤徹也(SO創)
サウンドクリエイター/入江誠志郎(SO創)
360度どこからみても凡人、職人番号ラッキー7!職人7号です。主に写真撮影、動画編集を担当。パソコン工房ECサイトのBTOPCや自作パーツ等ひろく手掛ける。店舗部門出身。