様々なクリエイターが独自な発想でiiyama SENSE∞のサウンドロゴをディレクションする過程を取材すると共に、
クリエイターの個々の魅力やパーソナルについて追究することで、将来クリエイターを目指すユーザーの「輪」を広げていく『The Circle』。
2024年8月某日@朝倉宅兼仕事場
有名CGクリエイターの朝倉 涼さんからクリエイターになったきっかけから作品へのこだわり、過去の黒歴史(?)から現在の収入、これからクリエイターを目指す人へ、今やるべき事から成功のヒントまで…
根掘り葉掘り聞いちゃいました!今回は連載2回の1回目です。
朝倉さんの携わった作品
Google Pixel:ひらける大画面篇
【MERRELL 2023 Vibram Arctic Grip 凍結路に勝つなら、テクノロジーで選べ 篇】
【MV】FINAL FANTASY Series 35th Anniversary Orchestral Compilation Vinyl
花澤香菜「Moonlight Magic」Music Video
説明が難しい職業
朝倉さんの肩書は何になるんでしょうか?
対外的には【CGクリエイター】ですとか、【デジタルアーティスト】とか、色々な呼称で呼ばれるんですけれども、基本的には【映像クリエイター】としていることが多いです。
他人にはどのように説明されるんですか?
いつも悩むんですけど…やはり【映像クリエイター】というだけでは凄くふんわりとしちゃうので、かといって【CGクリエイター】というとゲームとか映画とかのイメージが強いから伝わりづらいので「CGがメインの映像クリエイター」と説明して、自作のCMや広告のイメージを相手と共有しながらお茶を濁すことが多いと思います(笑)
言語での説明が難しい職業なんですね
そうなんですよね。
説明しても「あ~ぁ…」みたいな反応で、伝わっているのか伝わっていないのか分からないことが多いですね。
実際に作った映像を見てもらえれば
そうですね。
それが一番分かりやすいですし、見れば「これは朝倉の作品だったんだ」とか…日頃から皆さんに馴染みのあるCMや広告を作っているので。
ファイナルファンタジーVIIとの出逢い
映像クリエイターになろうと思ったきっかけは。
中学 2年生の頃にプレイステーションが出た世代で、当時 ファイナルファンタジーVIIとかやっていて、こういうものを作る仕事をしたいなというのが最初のきっかけですね。
そこから当時 パソコンオタクだったので、家にあったパソコンをいじるようになったみたいな。
とにかくパソコンがあるだけで満足で。当時のパソコンって今のパソコンと起動画面が違って、DOSのコマンドがバーッと流れるじゃないですか、そういったのも何かSFっぽくて楽しかったですね。
インターネットもそれほど普及してなかったので、パソコン雑誌付録のCD-ROMから体験版をインストールしたりして、そんなことばかりしてました。
友達と遊ぶより、一人パソコンで遊ぶほうが楽しかった?
友達がいなかったわけじゃないんですけど、親にも言われるんですよね。不思議な子だったと(笑)
僕は一人っ子で、両親が共働きだったこともあって、一人遊びが得意だったんですよ。ゲームも皆でやるものよりは、一人のめり込めるゲームが好きでしたから、パソコンなんかは、まさにいいオモチャで、ずっとやっていましたね。
真面目に今の職業を志したのは大学の就活の頃で、課題とかでCGを作っていたので、結果これを仕事にしようと決めた感じです。
大学では何を専攻されたの?
多摩美術大学の情報デザイン学科(現・メディア芸術学科)に通っていました。
どんな学科かと言うと、分かりやすく言えば色々な機材とか先端のものを使って何か表現をしましょうみたいな。それぐらいのルールしかなくて、あとは写真を撮ろうが、映像を作ろうが、絵を描こうが、何しても良かったんです。だから僕はずっとCGを作って、そして今でも…といった感じです。
留年、バイト…挫折からの「ゆず」
大学卒業後は、すぐ映像クリエイターに?
これが紆余曲折あったといいますか、大学を留年しちゃって 5年生になったんですけど、その当時CGを作るのがめちゃくちゃ上手い先輩がいて、その人には絶対勝てないみたいな…今その人は写真家になられていて。
その先輩が就活の時から「CGクリエイターにはならなくていいや」と言っていて、「こんなにできる人がCGで就職しないの?嘘でしょ?!」って、結構心折れたんですよ(笑)
だからネガティブというか、就職に対して「なんでもいいや」みたいな感じで、ちょっとやけにはなっていましたね。
大学入ってから、ずっとゲームセンターでバイトしていたんですよ。店長から「就職先決まってないならウチにすれば?」とか言われてて(笑)決まらなければそっちもあったかなと。
ただ親にも申し訳ないし、やっぱりどこかで「美術大学まで出てゲームセンターか…」という気持ちもあったんですよね。だから適当な映像会社とかデザインの会社にバイトから入ればいいかと思っていた時に、手が足りていないプロダクションがいくつかあって、そっちのバイトもしてたんですよ。
そのうちの 1社がミュージシャンの「ゆず」のホームページを作るといって、ゆずの二人が使っているギターのCGが欲しいといった依頼があって、それを作ったんですけど、それを評価して頂いて、何となくな会話の中で「僕、就職先決まってないんですよ」と言ったら、「じゃあうち来る?」って話になって、WEBのデザイン会社なんですけど、それが最初の就職でプロとして仕事するきっかけになりました。
だから僕は決してエリートコースを歩んで来たわけではないんですよ(笑)
差し支えなければ、その凄い先輩がどなたか教えて頂けますか?
津島 岳央さん(https://www.ntticc.or.jp/ja/archive/participants/tsushima-takahiro/)という方なんですけど、今でも正直、あの先輩を超えられたかと言われたら超えられてないと思うんですよ。
当時のCGWORLDの雑誌見ても、あの先輩の作品より上手い人はいなくて、そのぐらい凄い人だったんですよ。
自分らしいCGを発見
津島さんの作品がそれぐらい凄くて、心も折れたのに朝倉さんがCG制作をやり続けるという、自分を支えているものは何かあったりするんですか?
僕は主にプロダクト系のCGを制作していて、先程お話したギターのCGもそうなんですけど。元々、物体や物質をCGでリアルに制作するのが好きだったんですね。
それが得意ということもあって、仕事をもらえているということは、こうしたCG制作の世界で通用するんだということが分かって、それでちょっと自信をつけたというか。
津島先輩のような作家性の強いアーティストにはなれないけど、僕のCGが何かしらのビジネスになってクライアントに認めてもらえるものだっていうところまでは、仕事のクオリティを持ってこれたので。
それであれば仕事にできると感じて、今後も色々なことを取り入れながらやっていこうと決めたのがその頃ですかね。
津島先輩以外に影響を受けた人や作品ってありますか?
好きな映画監督とか、アーティストやミュージシャンとか、作家、漫画家とかいるんですけど、広く色んなところからちょっとずつ影響受けているんだと思うんですけど、具体的に「この人」というのはいないと思いますね。
どちらかというとゲームとか、そういうふんわりした感じのものの影響が大きいんじゃないかなと思います。特に若い頃という意味では影響を受けた人というのは出てこないですね。なので、「僕はこの人みたいになりたい」とかなかったですね。
チャンイーモウ監督とB’z
ちなみに好きな映画監督はどなたですか?
張芸謀(チャンイーモウ) 監督がすごい好きで、その方の「HERO」という映画で衝撃を受けまして。僕の場合、割と派手で分かりやすいのが好きなんですね。
最近でも「ミッション:インポッシブル」とか「007」とか、「RRR」なんて大好きなんですけど、「HERO」は映像もすごく美しいし、画としてもすごい綺麗だし、ハリウッドとかにはない、アジア人特有の何か静けさみたいなものとの対比がすごい上手いなと思って。
「あぁ、俺こういうの好きなんだな」って思って、そこから張芸謀 監督が好きになりましたね。
音楽(アーティスト)では好きな方いますか?
音楽はずっとロックが好きですね。
日本人だとB’zが好きで、B’zのギタリストの松本さんが影響受けたというエディ・ヴァン・ヘイレンだとか、そこから昔のロックおじさんたちが好きなガンズ・アンド・ローゼズとか好きで、それこそヘビーメタルもそうだし、ラウドロックとかもそうだし、いわゆるロックが基本すごい好きです!
ギターも自分で弾きますし、ここ数年は作曲もちょっと頑張ってます。ギターは高校の頃に軽音楽部に入っていて、そこからずっとやってるんです。
お部屋に沢山ギターがありますが、こだわりなどはありますか?
音なんですよね。弾き心地とかギターのこだわりは細々とあるんですけど。
これ、なかなかギターやってる人にしか伝わらないかもしれないですけど、明るい抜ける音が好きなんですよ。(部屋にあるものは)そういうギターばっかりですね。
見た目より音を重視されるんですね。
この青いギターは別のギターと2本で比較して、「やっぱり見た目より、音が良いほうが飽きないよな」と思って選びましたね。
音楽がCG作りと通ずるところってありますか?
ありますね。さっき見た目の話をしましたけど、CG作りも見た目が僕の好みであればあるほど仕事も楽しさを増すんですけど、やっぱりクライアントの意向や希望が最優先なので、クライアントが良しとするものを一番に出すぞっていう気持ちで取り組んでいるので、僕のこだわりに合わせなくていいかなとか、それでお客さん(クライアント)が喜んでくれて「バッチリですよ」と褒めてくれたら嬉しいし、そこから次の仕事に繋がったらやっぱり嬉しいので。
何かそこの考え方というかギターでもCGでも何でもそうなんですけど、その意味でこだわりがなくなったわけじゃないけど、必要に応じた制作をすることがプロ(仕事)なので、そういった意味では頑固さはなくなりましたね(笑)
頑固なんですか?
若い頃はわりと頑固でしたね(笑)
会社に入ったばかりの頃とか上司に対して「俺は絶対こうしたらいいと思います!」とか、「なんでこんなダサい方にするんですか?」とか…生意気でしたね(笑)
だから、似たようなことを声高にSNSとかで言ってる若い子を目にすると、この子も10年後には落ち着いてくるんだろうなと思います(笑)
若い頃はそういった口論が起きるのもあってしかるべきだと思うし、なあなあにしたいわけじゃないですけど、今はバランスを取りに行くということが辛くなくなりましたね。
若い時は生意気でいい!頑固でいい!
『The Circle』で取り上げる、その他の企画
今回はここまでとなります。次回の#2では朝倉さんの年収から、フリーのCGクリエイターになるための初期投資費用からガジェット情報など更に突っ込んだインタビュー内容になってます。
また、この『The Circle』で取り上げる企画としてインタビューの他、iiyama SENSE∞を使用してサウンドロゴをディレクションするまでの工程についても触れていきますので、次回もお楽しみに!
取材・構成/佐藤徹也(SO創)
360度どこからみても凡人、職人番号ラッキー7!職人7号です。主に写真撮影、動画編集を担当。パソコン工房ECサイトのBTOPCや自作パーツ等ひろく手掛ける。店舗部門出身。