メインストリーム向けCPUのコア数増加競争が激化する中、2018年10月8日にインテルより第9世代インテルCoreシリーズ・プロセッサーがリリースされました。第9世代インテルCoreプロセッサーは基本的には第8世代インテルCoreプロセッサーからのリフレッシュという事で、CPU自体の機能的な変化はあまり有りません。しかし、性能面で見ると最上位のCore i9-9900Kが8コア/16スレッドになるなど、大きな進化が期待されます。今回は、第9世代インテルCoreシリーズ・プロセッサーについて、ベンチマークを試してみました。
第9世代インテルCoreプロセッサー Core i9-9900K
第9世代インテルCoreシリーズ・プロセッサーは、第8世代のモデルナンバーと比べて、CPUのコア/スレッド数が変わっています。Core i5-9600Kは第8世代と同じく6コア/6スレッドですが、Core i7-9700Kは8コア/8スレッドと第8世代の6コア/12スレッドと異なっています。また、最上位モデルCore i9-9900Kでは、Core iシリーズとしては初の「Core i9」ブランドを冠したCPUで、仕様面でも8コア/16スレッドとCore Xシリーズにも引けを取らない内容となっています。 主な特徴としては、
・メインストリーム向けとして初の8コアプロセッサー
・モデルナンバーとしてハイエンドモデルの「Core i9」が追加された
・最大5.0GHzの高クロック動作を実現
・チップセットはインテル 300 シリーズ のまま(※ただしBIOSの対応が必要)
などが挙げられます。
TDPは最大で95Wのため、CPUクーラーはCore i7-8700Kなどで使用していたものを流用する事が可能です。対応するチップセットもインテル 300 シリーズとなっており、導入面でのしきいは低くなっています。CPUだけを交換してパワーアップ、という事も比較的容易に行えそうです。 ただし、第9世代に対応したBIOSでないと起動しませんので、事前のBIOS更新はお忘れなく行ってください。試しに手持ちのASUS PRIME Z370-Aで試したところ、旧BIOSと第9世代Coreの組み合わせでは起動しませんでした。
CPU | Core i9- 9900K |
Core i7- 9700K |
Core i5- 9600K |
Core i7- 8700K |
Core i5- 8600K |
Core i9- 7900X |
Core i7- 7820X |
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コードネーム | Coffee Lake Refresh | CoffeeLake | Skylake-X (Basin Falls) | ||||||
製造プロセス | 14nm | ||||||||
コア/スレッド | 8/16 | 8/8 | 6/6 | 6/12 | 6/6 | 10/20 | 8/16 | ||
動作クロック | 3.6GHz | 3.6GHz | 3.7GHz | 3.7GHz | 3.6GHz | 3.3GHz | 3.6GHz | ||
TurboBoost | 5.0GHz | 4.9GHz | 4.6GHz | 4.7GHz | 4.3GHz | 4.3GHz | 4.3GHz | ||
キャッシュ | 16MB | 12MB | 9MB | 12MB | 9MB | 13.75MB | 11MB | ||
PCI-Express | Gen | 3.0 | |||||||
レーン数 | 16 | 40 | 28 | ||||||
メモリ | 対応メモリ | DDR4-2666 | |||||||
最大容量 | 64GB | 128GB | |||||||
TDP | 95W | 140W | |||||||
GPU | Intel UHD Graphics630 | × | |||||||
64bitコード | intel64 | ||||||||
SIMD命令 | SSE | SSE4.1/4.2 | |||||||
AVX | AVX2.0 | AVX-512/AVX2.0 | |||||||
仮想化 | VT-x | 〇 | |||||||
VT-d | 〇 | ||||||||
セキュリティ機能 | XD ビット | 〇 | |||||||
TXT | 〇 | × | |||||||
AES | 〇 | ||||||||
vPRO | 〇 | × | |||||||
対応ソケット | LGA1151 | LGA2066 | |||||||
対応チップセット | Intel 300 Series | X299 |
Core i5-9600Kは純粋にCore i5-8600Kの後継モデルと言えます。コア数が増えた代わりにスレッド数が減るという、仕様面で大きく変わったCore i7-9700KがCore i7-8700Kの後継に相応しいのかどうか、また最上位のCore i9-9900Kは「Core i9」のブランド名に相応しいのか、この辺はベンチマークテストを通じて見て行くとしましょう。
それでは、第9世代インテルCoreシリーズ・プロセッサーの実力を見て行きましょう。
ベンチマークテスト(Core i9-9900K Core i7-9700K Core i5-9600K)
Passmark PerformanceTest
まずはCPUの全体的な性能を数値化するPassmarkの『CPU Benchmarks』を用いて、CPUの総合的な演算性能を見てみましょう。
全体的に第9世代Coreシリーズの性能向上が確認できます。Core i9-9900Kはクロックの高さも相まって同じ8コア/16スレッドのCore i7-7820Xを5%強上回るなど、「Core i9」のブランドに恥じない性能を示しています。Core i7同士の比較では、Core i7-9700KがCore i7-8700Kを10%以上上回っており、スレッド数の減少をコア数の増加で見事に穴埋めしています。Core i5-9600KもCore i5-8600Kから8%強増加しており、動作クロック以上の差を示しています。
3D Mark
続いて、3D Mark のTime Spyを用いて、CPUの演算性能(CPU Score)を見て行きます。CPU Scoreは、CPUに物理演算をさせてその処理速度を数値化したもので、CGレンダリングや動画のエンコードと同じくCPUのコア・スレッド数の多さが有利に働くテストです。
Core i9-9900Kは共にCore i7-7820Xを抑えてトップとなり、安定した速さを見せてくれました。一方、Core i7-9700Kは標準解像度(2560x1440)のTime SpyではCore i7-8700Kに僅かに後れを取りますが、4K解像度(3840x2160)のTime Spy Extremeでは僅かに上回るなど、解像度によって異なる結果となりましたが、全体としてはほぼ互角と言えそうです。Ryzenシリーズと比較すると、第2世代RyzenはTime Spyに強く、CoreシリーズはTime Spy Extremeに強い、という違いが表れています。高負荷時においてはCPUコアそのものだけでなく、メモリへのアクセス速度やPCI-Expressへのアクセス速度など、プラットホームを含めた総合的な性能差が影響しているのかもしれません。
PC Mark 10
次に、PCのパフォーマンスを総合的に判断できるPC Mark 10を見ていきましょう。
PC Mark 10の結果では、少々面白い事が起こりました。一般的なビジネスユースやデジタルコンテンツの操作など、日常的なPC作業の性能を表した「PC Mark 10」で、Core i7-9700KがCore i9-9900Kを抑えてトップに立っています。スレッド数の多いCore i9-9900Kよりもスレッド数の少ないCore i7-9700Kの方がTurboBoostが効きやすく、結果としてCore i7-9700KがCore i9-9900Kを逆転したのかも知れません。一方で、今までCore i9-9900Kの後ろに着いていたCore i7-7820Xが大きく沈んでします。Core i7-7820Xはチップセットも含めた環境の違いが影響した物と思われます。
TMPGEnc Mastering Works 6
動画編集ソフトのTMPGEnc Mastering Works 6を用いて、QuickTimeファイル(3840x2160/2分50秒)をh.265に変換するのに要した時間(単位:秒)を測定しました。グラフの短い方がより高速に処理を行っている事になります。
Core i9-9900Kがトップ、2番手にCore i7-7820Xと、順当にコア数/スレッド数の多い順に並んでいると言えそうです。Core i7 同士では、スレッド数の多いCore i7-8700KがCore i7-9700Kを僅差ながらも上回っていますが、1%程度の差しかなくほぼ互角と言えるでしょう。Core i5同士では、Core i5-9600KがCore i5-8600Kを3%ほど上回っており、動作クロック通りの結果となっています。
最上位モデルのCore i9-9900Kがお奨め
最上位モデルのCore i9-9900Kは文句なしのお奨めです。全てのベンチマークで同じコア/スレッド数のCore i7-7820Xを上回っており、Core Xシリーズに匹敵するCPUパワーがミドルレンジの価格帯で入手可能になった事は素直に歓迎したいと思います。第9世代インテルCoreシリーズ・プロセッサーのパワーを満喫したいのであれば、Core i9-9900K の一択で良いでしょう。 コア数が増えた代わりにスレッド数が減少したCore i7-9700Kについては、スレッド数が減少した事によるペナルティはあまり無く、基本的にCore i7-8700Kと同等と見て良さそうです。PC Mark 10 のようにバチッとはまった時は上位のCore i9-9900Kに並ぶようなスコアを出すなど、底力は十分に有りそうです。 Core i5-9600KもCore i5-8600Kから動作クロック通りに向上しており、順当にパワーアップしています。 個人的には、他に代わる物が無いCore i9-9900Kに最も魅力を感じる結果となりました。
Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。