昨今、オンライン会議システムを用いたコミュニケーションの機会が増えています。テレワークが主で、対面業務が限られるほど、各プロジェクトに適応しやすい進め方が採用できると、生産性向上や業務の効率化につながります。今回は、代表的なプロジェクト体制のあり方(「ウォーターフォール開発」「アジャイル開発」「ハイブリッド開発」)について解説。各タイプの肝を理解し、みなさんの身近なところから最適な手法を活用できるようにしましょう。

ITトレンド最終更新日: 20210519

プロジェクト体制とは? タイプを知ってテレワーク作業を効率化

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昨今、オンライン会議システムを用いたコミュニケーションの機会が増えています。テレワークが主で、対面業務が限られるほど、各プロジェクトに適応しやすい進め方が採用できると、生産性向上や業務の効率化につながります。今回は、代表的なプロジェクト体制のあり方(「ウォーターフォール開発」「アジャイル開発」「ハイブリッド開発」)について解説。各タイプの肝を理解し、みなさんの身近なところから最適な手法を活用できるようにしましょう。

代表的な3つのプロジェクトタイプ

日本では、都市部に人口が集中していることもあり、出社しての対面コミュニケーションが主流で、長らく根づいてきた背景があります。しかし、新型コロナウイルスの流行によって、一気に導入する企業が増えたテレワークについて、チーム・プロジェクト単位での適応の有無が、ビジネスの成長において重要なキーです。

プロジェクト体制にはさまざまなタイプが存在しますが、ここでは代表的なタイプを3つ挙げます。

ウォーターフォール開発
アジャイル開発
ハイブリッド開発

代表的なこれら3タイプの特徴や違いを理解して、プロジェクトの性質によって使い分けながら、各体制に基づきプロジェクトを進めるのがおすすめです。ここから、3タイプについてそれぞれ説明します。

ウォーターフォール開発とは?

ウォーターフォールは、開発だけでなく、旅行や文化祭などのスケジュールが明確に決まっていることに対して、期日を決めて、期日までに何を完了させるかをベースに綿密な計画を立てて実行することを指します。

つまり、1つの工程が完了してから次の工程に移り、前の工程には戻らないタイプです。水が上から下へと流れるようにプロジェクトが進んでいくため、「ウォーターフォール」と呼ばれています。

これは、多くの人が何かを計画して実行する際に、古くから取られている開発・プロジェクト進行体制です。みなさんがもっとも思い描きやすい手順かもしれません。綿密な計画がウォーターフォール開発の肝で、細かな仕様を明確に決めて、それに沿って1つひとつの工程をきちんと完了させながら進めて、リリースは原則プロジェクト完遂時に1度で行います。例えば、明確で強固な計画が建てられた長期のプロジェクト(造船や建築、さらにはロケット開発など)に適用されやすいタイプです。

アジャイル開発とは?

アジャイル(agile)を日本語訳すると、「頭の回転が速い」「機敏な」といった意味です。ウォーターフォール開発に比べて、プロジェクト期間が短縮されることからアジャイルと名づけられています。

アジャイル開発では、小さな単位で「計画」「設計」「実装」「テスト」「リリース」の一連の流れを繰り返していきます。この流れを「イテレーション」と呼び、イテレーションを繰り返すことでプロジェクトを徐々に完遂に近づけます。イテレーションの期間は、1週間から1カ月ほどの短期間で行うのが通常で、1つのイテレーションが終了するときには必ず何かのリリースを行います。

例えば、AIなど最先端の技術を使って開発する場合、プロジェクトの途中で仕様や実装が変更になることが多々あります。アジャイルマニフェスト(=アジャイルソフトウェア開発宣言、2001年に17名のソフトウェア開発者によってまとめられたもの)に宣言されているように、変更には柔軟に対応し、チームでのコミュニケーションも重要視し、短期間でテストを繰り返して迅速に開発するタイプです。

ハイブリッド開発とは?

ハイブリッド(hybrid)とは、混成物という意味です。ここでは、ウォーターフォール型の「計画的にプロジェクトを進める」点と、アジャイル型の「変更に柔軟である」点を組み合わせたタイプを指します。

ハイブリッド開発には、いくつかのパターンがあります。例えば、要求定義フェーズではウォーターフォール開発の1つひとつの工程を完了させながら進むという特徴を使って要求を確定し、しっかりドキュメントを作ります。開発フェーズに入ると、アジャイル開発を適用し、変更を柔軟に対応しながら開発するといったパターンです。

逆に、要求定義フェーズで仕様が明確に決まらないケースには、変更に強く小回りがきくアジャイル開発を利用し、小さく始める方法で要求を確定させます。開発フェーズに入ると、ウォーターフォール型で計画に従って開発する、といったパターンもあります。

下は一例で、要件定義とシステムテスト(全体テスト)、リリースはウォーターフォールで行い、開発はアジャイルで行う形です。

ハイブリッド開発にはさまざまなパターンがあり、どの工程にどの開発体制を用いるかが重要になってきます。こうしたハイブリッド開発は、従来のウォーターフォール開発からアジャイル開発への全面的な移行が難しい場合などに適用されるケースが多いです。

それぞれのプロジェクトタイプのメリット

ウォーターフォール、アジャイル、ハイブリッドについて、工程別の特徴をまとめた表をご覧ください。

ウォーターフォール開発のメリットとデメリット

メリットは、期間や工数が明確であるため、計画や予算、リソース配分の見積もりが非常に容易な点です。また、伝統的な手法であるため、簡潔でわかりやすく、プロジェクトの人員も自分の担当する工程以外の知識は必要としないため、人材の育成や採用がやりやすいことがあります。

デメリットは、1つの工程を完了したら次の工程に進み、前の工程には戻らない特徴を持つため、柔軟性に欠ける点。工程完了後の仕様変更や問題が発生した場合、それに対応するには非常に多くの時間とコストが必要です。

アジャイル開発のメリットとデメリット

メリットは、イテレーション(「計画」→「設計」→「実装」→「テスト」→「リリース」)ごとに計画・開発・リリースを行うため、迅速にユーザーにプロダクトや新機能を提供できることです。また、プロジェクトを小さく区切ってイテレーションを行うため、ユーザーの声を反映するための仕様変更や問題対応には、非常に柔軟に対応できます。

デメリットは、ユーザーの声を取り入れやすい反面、その分のコミュニケーションの負荷が開発側・ユーザー側に大きくのしかかる可能性があることです。また、小さくプロジェクトを区切ってリリースを繰り返す弊害として、本来予定していたものから最終的には大幅にずれてしまうことがありえますし、全体を通じてのスケジュールや進捗管理も難しくします。当初とのズレの防止には、定期的な方向性のチェックが必須です。

ハイブリッド開発のメリットとデメリット

プロジェクトのメンバーがウォーターフォール開発での経験が長かったり、経験が浅いメンバーが多い場合、簡単で理解しやすいウォーターフォール開発をベースにしながら、部分的にアジャイル開発を行うのがハイブリッド開発の一例です。これなら、リスクを最小化しながら、アジャイル開発にも適応、移行していけるのがメリットです。また、ウォーターフォールとアジャイルをプロジェクトのどのフェーズで取り入れるかを柔軟に決められるため、それぞれの長所を活かした進行が可能です。

デメリットは、どのフェーズにウォーターフォールかアジャイルを適用するかについて、全体の進行管理を意識しながらプロジェクトを統括する必要があり、その負荷が非常に高くなる点です。プロジェクト自体の成否は、プロジェクトマネージャーの腕に大きく左右されます。

プロジェクトごとに適したスタイルを見つけよう

以上、3つのプロジェクト体制(「ウォーターフォール開発」「アジャイル開発」「ハイブリッド開発」)には、それぞれメリットやデメリットがあります。必ずしも、ウォーターフォールだと古臭い、アジャイルは先進的で柔軟、ハイブリッドはオールマイティ、といった色づけができるわけではないのです。

重要なのは、プロジェクトに対してそれぞれの開発体制のメリットとデメリットを十分に理解すること。プロジェクトメンバーはもちろんですが、ユーザーとのコミュニケーションの機会も図りながら、プロジェクトに最適な体制を組むことです。

ライタープロフィール 野澤智朝

広告クリエイティブや技術、ガジェットなどを取り上げるメディア「ニテンイチリュウ」の運営者であり、現役マーケター。デジタルクリエイティブやデジタルマーケティングに関するメディアで連載を担当してきたほか、各種記事の寄稿が多数。

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