AMD Radeon RX 6000 シリーズ・グラフィックス・カード は、AMD RDNA 2アーキテクチャーを搭載するAMD社の最新グラフィックスカードです。命令パイプラインの改良や動作クロックの向上、そして新たなキャッシュメモリ「AMD Infinity Cache」の搭載により、RDNAアーキテクチャーの製品と比較して最大50%に迫る大幅なパフォーマンス向上を実現しています。今回はRadeon RX 6000シリーズの最上位モデルとなるRadeon RX 6900 XTについて、ベンチマークテストを通してその性能を確認していきます。

気になる製品最終更新日: 20201211

Radeon RX 6900 XT 発売情報・ベンチマークレビュー

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【12/23更新】Radeon RX 6900 XTのベンチマーク記事を追加いたしました。

Radeon RX 6900 XTは、Radeon RX 6000 シリーズの最上位モデルとして2020年12月11日より販売が開始されたウルトラハイエンドモデルです。
最新のAMD RDNA 2アーキテクチャーを搭載、製造プロセスはRX 5000シリーズと同じ7nmですが、命令パイプラインの改良や動作クロックの向上、「AMD Infinity Cache」の搭載により、RDNA製品と比較して最大50%と大幅にパフォーマンスが向上しています。また、リアルな映像表現が可能なレイトレーシングにも対応しています。
今回はこのRadeon RX 6900 XTについて各種ベンチマークを行い、実力を検証していきます。

Radeon RX 6000シリーズについて

レイトレーシングに対応したRDNA2アーキテクチャーを採用

Radeon RX 6000シリーズは、日本時間2020年10月29日にAMDより発表された、デスクトップ用グラフィックスカード最新製品です。先に発売済みのRadeon RX 6800 XT、Radeon RX 6800に加えて、今回発売された最上位モデルとなるRadeon RX 6900 XTの3モデルが発表されていました。
Radeon RX 6000シリーズは、第2世代のRDNAアーキテクチャーである「RDNA 2」を採用し、DirectX 12 UltimateでサポートされたDirectX Raytracing (DXR)、可変レート・シェーディング (VRS)、に対応しました。また、コンピュートユニットの構造を見直し、電力効率が30%改善しています。さらに「AMD Infinity Cache」と呼ばれるキャッシュを搭載し、メモリバス幅が256bitでありながら384bitのGDDR6より最大2.17倍の帯域を実現。実際のバス幅は256bitのためメモリコントローラーの消費電力も抑える結果となっており、コンピュートユニットの分と含め、RDNAから最大54%のワットパフォーマンス向上を実現しています。

Radeon RX 6000シリーズの主な特徴は以下の通りです。
・RDNA 2 アーキテクチャー採用、レイトレーシングに対応したことで、よりリアルな光源処理が可能になり、臨場感あふれるゲーム映像を楽しめるようになりました
・Radeon RX 6900 XTでも16GBのビデオメモリを搭載しています
・ビデオメモリ帯域幅はRadeon RX 5700シリーズと同じ256bitですが、Infinity Cacheにより、384bitのGDDR6と比較して2.17倍の実行帯域幅を実現しています
・コンピュートユニットの改善と動作クロック向上により、FP32の演算能力(FLOPS)はRadeon RX 5700シリーズの2倍以上となりました
・Ryzen 5000シリーズ・プロセッサーとAMD 500 シリーズチップセットの組み合わせで有効になるAMD Smart Access Memory機能により、さらなる性能向上が可能です
・H.265を上回る圧縮効率を誇るAV1(AOMedia Video 1)コーデックに対応し、8K映像のデコード処理が可能になりました
・ディスプレイ出力&Power Deliveryをサポートした、USB Type-Cコネクタを搭載しています ※

※メーカー独自デザインの製品には搭載されない場合があります。

Radeon RX 6900 XTベンチマーク情報

Radeon RX 6900 XTはコンピュートユニットの改善により、FP32 FLOPS(単精度FLOPS)がRadeon RX 5700シリーズの倍以上となっています。一方で、メモリ帯域幅はバス幅が同じ256bitためメモリバス帯域幅はメモリクロック分だけの増加に留まっています。

  Radeon RX
6900 XT
Radeon RX
6800 XT
Radeon RX
6800
Radeon RX
5700 XT
Radeon RX
5700
Radeon VII
アーキ
テクチャ
RDNA 2 RDNA GCN 1.4
GPUコア Navi 21 Navi 10 Vega 20
製造プロセス 7nm
Stream Processor 5120基 4608基 3840基 2560基 2304基 3840基
Ray Accelerators 80基 72基 60基
定格クロック 1605MHz 1465MHz 1400MHz
ゲーム
クロック
2015MHz 2015MHz 1815MHz 1755MHz 1625MHz
ブースト
クロック
2250MHz 2250MHz 2105MHz 1905MHz 1725MHz 1800MHz
FLOPS(FP32) 23.04TFLOPS 20.74TFLOPS 16.17TFLOPS 9.75TFLOPS 7.95TFLOPS 13.82TFLOPS
メモリタイプ GDDR6 HBM2
メモリ容量 16GB 8GB 16GB
メモリ
クロック
16Gbps 14Gbps 2Gbps
メモリバス幅 256bit 4096bit
メモリ
バス帯域幅
512GB/s 448GB/s 1024GB/s
Infinity Cache 128MB
TBP 300W 250W 225W 180W 300W
補助電源 8Pin×2 8Pin + 6Pin 8Pin×2

Radeon RX 6000シリーズ、Radeon RX 5700シリーズ、Radeon Ⅶ スペック比較一覧

※Balance設定時の動作クロックとなります

それでは、Radeon RX 6900 XTのベンチマークテストを実行していきましょう。
比較対象は、Radeon RX 6000 シリーズよりRadeon RX 6800 XTとRadeon RX 6800 を、GeForce RTX 30 シリーズからはGeForce RTX 3090とGeForce RTX 3080、GeForce RTX 3070を用意いたしました。テスト解像度はWQHD(2560 x 1440)、4K(3840 x 2160) の解像度にて行っています。また、3D Markでは、CPU性能の依存度が少ないGraphics Scoreでの比較となります。
なお、GeForce RTX 30シリーズの3モデルはブーストクロックが標準よりも30MHzほどクロックアップされたOCモデルを使用していますので、標準クロック動作のモデルよりもベンチマークスコアは高くなっている可能性が有ります。
※ベンチマークテストで用いた構成は末尾に記載しています

3D Mark 「Fire Strike」

まずは、DirectX 11 の代表的ベンチマークとして、3D Mark 「Fire Strike」 のGraphics Score を見てみましょう。テスト解像度は、WQHD のFire Strike Extremeと4KのFire Strike Ultraとなります。

3D Mark Fire Strike3D Mark Fire Strike

Radeon RX 6900 XTがGeForce RTX 3090に対して10%以上もスコアが向上しています。下位モデルとなるRadeon RX 6800 XTにおいてもGeForce RTX 3090を上回る性能を示しており、RDNA 2アーキテクチャーの優秀さが表れています。

3D Mark 「Time Spy」

次に、DirectX 12の代表的ベンチマークとして、3D Mark 「Time Spy」 のGraphics Scoreを見てみましょう。テスト解像度は、WQHDのTime Spyと4KのTime Spy Extremeとなります。

3D Mark Time Spy3D Mark Time Spy

Time SpyではFire Strikeとは異なり、Radeon RX 6900 XTがGeForce RTX 3090にやや後塵を拝す結果となりました。Radeon RX 6800 XTに対しては7%程度のスコア向上が見られ、コンピュートユニット数の差通りの結果が表れていると言えそうです。

3D Mark 「Port Royal」

続いて、リアルタイムレイトレーシング性能を計測する3D Mark「Port Royal」にて、レイトレーシング性能を見ていきましょう。Port Royalでは、いくつかあるレイトレーシングアルゴリズムのうち、レイトレーシングリフレクションを使用したものとなります。
ベンチマークスコアであるGraphics Scoreと一緒にフレームレートも計測することが出来ます。なお、解像度は標準設定のWQHDとなります。また、DLSSについては無効となっており、RTコアの性能の比較として見ていきます。

3D Mark Port Royal3D Mark Port Royal

3D Mark Port Royal fps3D Mark Port Royal fps

3D Mark Port Royalによるレイトレーシング性能に関しては、GeForce RTX 30シリーズが底力を発揮しました。GeForce RTX 30シリーズが第2世代のRTコアを搭載していることもあり、レイトレーシング性能においてはGeForce RTX 30シリーズが先行していると言えそうです。とはいえ、Radeon RX 6900 XTのフレームレートは45fpsを超えるパフォーマンスを見せており、レイトレーシングを使用したゲームは遊べるレベルにあるとみてよいでしょう。

3D Mark 「DirectX Raytracing feature test」

3DMarkを用いたベンチマークの最後に、「DirectX Raytracing feature test」を見てみましょう。本テストはすべての画面をレイトレーシングでレンダリングすることで、より負荷の高いグラフィックスカードのレイトレーシング性能を計測できます。本記事では標準設定のSample count 数である12でテストを行いました。

3D Mark DirectX Raytracing feature test3D Mark DirectX Raytracing feature test

画面内の影や反射のみレイトレーシング処理を行っている「Port Royal」よりも負荷が高いテストということで、よりGeForce RTX 30シリーズの強さが際立ちました。ドライバによる最適化の差という可能性もありますが、現時点においてはレイトレーシング性能ではGeForce RTX 30シリーズに軍配が上がると言えそうです。

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク

続いて、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークです。テスト環境設定は高品質・フルスクリーンで、テスト解像度WQHDと4Kになります。なお過去のデータと比較のため、SDR・DLSSは無効としています。

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークスコアFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークスコア

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークはNVIDIA GAMEWORKS対応のためGeForceシリーズに有利なベンチマークではありますが、Radeon RX 6900 XTはWQHD解像度でGeForce RTX 3090を上回って見せました。WQHD解像度で「非常に快適」な指標となる12000を唯一上回り、4Kにおいてもライバルと同じ「快適」な指標(6000~8999)となっており、ほぼ同等の感覚でプレイできると言えそうです。

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク

最後に、ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークです。テスト環境設定は最高品質・DirectX 11・フルスクリーンとなります。ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズについては、ベンチマークテストの詳細で平均fps(フレームレート)も確認できるので、合わせて掲示します。

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク スコアファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク スコア

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク フレームレートファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク フレームレート

全てのグラフィックスカードが、4K解像度において「非常に快適」な動作の指標となる7000以上のスコアとなりました。Radeon RX 6900 XTは4Kでも90fpsを上回るフレームレートとなっており、4Kでのプレイにおいて十二分な性能を示しています。

ウルトラハイエンドに相応しい性能を示したRadeon RX 6900 XT

Radeon RX 6900 XTは、Radeonシリーズから久々に登場したウルトラハイエンドモデルに相応しい性能を示してくれました。WQHD解像度は言うに及ばず、4K解像度でも快適なプレイが可能であることを示しています。ライバルと比肩できる程の性能をようやくRadeonも得ることができ、こと4Kゲーミングという視点でも選択肢が増えたのは1ユーザーとしても歓迎すべき製品となりました。
しかし一方で、レイトレーシング性能ではGeForce RTX 30シリーズに分があり、また、DLSSという強力なAI機能という差もあるものの、対応タイトルという縛りは依然としてあるため、Radeon RX 6900 XTは十分に4Kゲーミングの頼もしいパートナーになってくれることでしょう。
ベンチマークの数値では測り切れない機能として、Radeonもドライバソフトウェアの充実化を図っており、GeForceと比較しても配信機能や、自動最適化機能、オーバークロック機能等、十分に「使える」レベルにあるといっても良いでしょう。AAA級タイトルのゼロデイドライバーのリリースにも力を入れており以前のような問題点はほぼ解消されつつあります。
なにより、ハイエンドゲーミング環境をRadeonシリーズで構築したいと望むファンにとっては、Radeon RX 6900 XTは間違いなくお勧めできるグラフィックスカードと言えるでしょう。あとは各AIBのオリジナルファン仕様が登場し入手性の改善が期待されるばかりとなります。

CPU Core i9-10900K (3.7-5.3GHz/10コア・20スレッド/キャッシュ20MB/TDP125W)
マザーボード ASUS Prime Z490-A (Z490チップセット)
メインメモリ DDR4-3200 16GB (8GB x2)
ビデオカード Radeon RX 6900 XT AMDリファレンスカード (16GB GDDR6)
Radeon RX 6800 XT AMDリファレンスカード (16GB GDDR6)
Radeon RX 6800 AMDリファレンスカード (16GB GDDR6)
MSI製 GeForce RTX 3090 (24GB GDDR6X) ※OCモデル(ブースト:1725MHz)
MSI製 GeForce RTX 3080 (10GB GDDR6X) ※OCモデル(ブースト:1740MHz)
MSI製 GeForce RTX 3070 (8GB GDDR6) ※OCモデル(ブースト:1755MHz)
ストレージ WDS250G2X0C (WD Black NVMe 250GB)
電源 Seasonic SSR-1000PD (80PLUS Platinum、1000W)
OS Windows 10 Home 64bit (バージョン:2004)
ビデオドライバ Radeon RX 6000 シリーズ: Radeon Software Adrenalin 2020 Edition 20.12.1
GeForce RTX 30 シリーズ: GeForce Game Ready Driver 457.09

検証に使用した構成

Radeon RX 6900 XT BTOパソコン&単品パーツ 発売開始

Radeon RX 6900 XT 搭載BTOパソコンや単品パーツの発売を開始いたしました。

パソコン工房で Radeon RX 6900 XT を見る

※ベンチマークの値はお使いのハードウェア、ソフトウェアの環境により変動し、同様の構成下でも当ページ掲載の数値と大きく異なる場合があります。予めご了承ください。

ライタープロフィール 職人5号

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。

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