社内での評価/検討結果や取引先からの要望など伝える「フィードバック」。テレワークやWeb会議など人と人とが直接対面しない場面が増える中で「次」への行動につながるフィードバックについて考えてみましょう。

クリエイター最終更新日: 20200617

Web会議対策に!テレワーク時代のフィードバック術

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社内での評価/検討結果を顧客に伝えたり、取引先からの要望を社内に伝えたりすることを「フィードバック」といいますが、テレワークやWeb会議など、ビジネスシーンからクリエイティブ業務まで、人と人とが直接対面しない場面が増える中で「フィードバック」のあり方が問われています。どうすればフィードバックが「次」への行動につながるコミュニケーションとなるかを、それぞれの立場から考えてみましょう。

いいフィードバックとは?

ビジネスでもクリエイティブでも、組織やチームで複数の人たちと連携しながら進める中で求められることの1つが、次につながる建設的な取り組み方です。特にテレワークやWeb会議で物事を進める機会が増えた昨今、直接的な対面の有無を問わず求められる能力です。

ここでは、600株式会社でUXデザイナー、サービスデザイナーとして活動するかたわら、フリーランスのUXデザイナーとしてもさまざまな事業に携わる金子剛さんに話をうかがいながら、適切なフィードバックのあり方について考えます。

フィードバックについて話をうかがった金子剛さんフィードバックについて話をうかがった金子剛さん

最初に金子さんは、「フィード“バック”ではなくフィード“フォワード”への意識」を強調します。

「相手にフィードバックを行う場合、もっとも避けたいのは相手へのダメ出しです。ダメ出しではなく、いかに相手が次の行動へと結びつけられるか、を大切にしましょう。ビジネスシーンでもクリエイティブの場面でも、昨今はPDCAをはじめとするサイクルで物事を進める考え方が定着していますが、サイクルを止めないためには、“次”につながる行動を相手に提案できるか、です。これができてこそ、チームであればチーム全員のメンバーがサイクルに入って行動できるようになると思います」

ここから先も、説明上の言葉はフィードバックを使いますが、「フィードバック」=「次」への行動につながる行為、として読み替えながら内容を追ってください。

立場が上の相手には「知らない前提」を持つこと

具体的に立場別で考えてみましょう。

最初に考えるのは、ビジネスシーンで同じ部署内の立場の上の人とやりとりをする場合や、クリエイターが同じチームのリーダーや自分より立場が上の人に向けてフィードバックを行う場合です。金子さんは「無意識の期待値を外すこと」を勧めます。

「“上の立場にいる人だから、きっと現場の細かな部分もわかってくれている”みたいな期待を持ってしまうと、“なぜわかってくれない”となりがちです。現場のことがまだまだ伝わっていないことを前提に、丁寧に伝えることを意識しましょう」

相手とのすれ違いの防止は、相手が「現場、現状を知らない」という前提で伝えることです相手とのすれ違いの防止は、相手が「現場、現状を知らない」という前提で伝えることです

例えば、短時間でできる作業だと思っている相手に、実は労力がかかる時間を要する作業について、お互いの考えや思いのズレを解消しないままフィードバックをしてもうまくいきません。相手が、自分の置かれた状況を自分の思っている通りに把握しているとは限らないからです。同じ会社、同じチームの相手であるからこそ「知っているはずだ」と思わないことです。

その前提を踏まえておかないと、互いに相手の不満や悪意の増幅へとつながりかねません。相手が事情を知らないこと、という前提を踏まえましょう。省略しない説明を心がければ、相手との考え方のズレがかなり生じづらくなり、次につながる実り多きフィードバックとなります。

クライアントや社外の相手にはアウトプットを示そう

行き違いやズレは、同じ社内やチーム内だと顕在化しづらいのに対して、もっとわかりやすく顕著に出てくるズレはクライアントや社外の相手に対してでしょう。社外となると、あらかじめ伝え方には配慮するものですが、果たして効果的に配慮できているでしょうか。金子さんは2点の注意点を挙げます。1点目が、アウトプットの重要性です。ここでいうアウトプットとは、綺麗な成果物といった意味ではありません。言葉だけの手がかりで、想像や思い込みから誤解や行き違いを防ぐために、素早く「見える化」して伝えることを意味します。

アウトプットを提示しないと、お互いの認識がズレる可能性がありますアウトプットを提示しないと、お互いの認識がズレる可能性があります

「特にクリエイターがクライアントや社外の相手にする場合、ちょっとしたアプトプットがとても有効です。例えば、先進的、モダンなど聞き心地はいいけれど、抽象的で伝える側の核心がつかみづらい言葉で説明しても、その先行きは伝えられた側の解釈やリテラシーに依存することとなります。完成形でなくていいので、ちょっとしたサンプルやモックアップなど、言葉だけでは誤解しかねない説明には必ず何かしらの具体を提示しましょう。フィードバック用にいくらかは新たな手数が生じるかもしれませんが、うまく伝わらずに解釈のズレが広がったままだと、後々取り返しがつかなくなります」

アウトプットを提示できると、お互いの認識のズレを最小限にしやすいでしょうアウトプットを提示できると、お互いの認識のズレを最小限にしやすいでしょう

2点目が、1点目にも通じることですが言葉の使い方です。同じ言葉でも、立場が違うと意味が変わるので、なるべくズレが生じないような言葉を選び、話をすることが必要です。

「例えば、何気なく使ってしまうような“なるべく早く”という言葉にも言えることです。求める“早さ”は発話者と受け止める側で違います。話す方ははっきりと期限を明示すべきですし、聞いた方も曖昧に流さずに聞き返す習慣をつけたいです。

他にも例を挙げましょう。“メディアの質を上げる”とフィードバックされたとして、制作者だとWebサイトのデザインやコンテンツの中身を思い浮かべるでしょうし、経営層や運営側だとメディアへの流入数やコンバージョン率などを思い浮かべることが多いのではないでしょうか。フィードバックする側、される側で、パッと思い浮かべがちな意味は変わるので、フィードバックする側は誤解が生じない言葉の使い方をするべきです。フィードバックされる側であれば、漠然と聞かずに言葉の意味を探り、少しでも受け取り方が2通り、3通りと出てきそうなら聞き直すようにして、ズレが生まれないようにしましょう」

パートナーやメンバーには「聞き上手」であれ

リーダーなどチームをまとめる立場からチームメンバーやパートナーにフィードバックする際は、「アクティブリスニング」を金子さんは勧めます。つまり、自分が相手に言葉を投げかけていく(その延長にダメ出しが待っている)よりも、積極的に相手の言葉を聞くことに重きを置くことを心がけたい、とします。

「いかに相手から信頼されるか、だと思っています。そもそも相手の信頼がないと、自分の言葉は相手には届きません。逆に、信頼のある人からの言葉に、相手は心から耳を傾け、指摘に耳を傾け行動に移す気持ちが芽生えます。10あるうちの10すべて話すようなことはせず、10のうちの9は相手の言葉を聞いて、1だけを話すようにします。むしろ相手から9を引き出すために、相手に寄り添い、補助線となる質問を投げかけることが大事です」

フィードバックされる側は聞き上手でもあるべきですフィードバックされる側は聞き上手でもあるべきです

的を外したフィードバックほど、生産性がなく、余計に相手の信頼を失う行為です。信頼を築きながら、次へとつながるサイクルを生み出すためには、相手を知るための聞き役になることが一つの方法です。

「聞くことで、相手の現状(何をどう見据えてどのように動いているのか、どこで何に詰まっているか)が見えやすくなります。“実は目的を共有できていなかった”“伝えていたつもりの見据えるべきターゲットがズレていた”など、相手の状況がだんだんとよくわかってくるからです。“以前の自分の伝え方が悪かった”“改めて目的の共有をしよう”など、自分自身の行動を反省する根拠も見つかり、結果としてお互いが次につながる行動が見えてきやすく、サイクルが途切れずに進んでいくのです」

Web会議では「主語をはっきりと明確に」話す!

こうしたそれぞれの立場でのフィードバックを、昨今は対面でなくWeb会議で行うケースがこれから増えてきそうです。Web会議は、画面越しに間違ったことを言えない緊張感があったりします。また、レジュメなどの共有事項が多い場合、共有されたレジュメに聞き手が目を奪われ、発話者の様子を逐一確認しているとは限りません。

「たとえ相手が画面を見ていなかったとしても、相手に伝わるリアクションを常に心がけましょう。ちょっとした動きや顔の表情では相手に伝わりませんので、なるべくオーバーアクションを意識して、例えば同意や賛成を示すなら大きく頷く、といった伝わる所作も必要です」

最後に、Web会議を意識した場合のフィードバックの肝を聞きました。「思っている以上に、話した内容が相手には伝わっていない意識」を持つことだと言います。

Web会議でのフィードバックでは、明確に話しながら、伝えるための材料を用意しましょうWeb会議でのフィードバックでは、明確に話しながら、伝えるための材料を用意しましょう

「Web会議だと、伝える側は想定している50%くらいしか伝わらない覚悟を持ったほうがいいと思っています。その上でできる限り、相手の立場を尊重しながら丁寧に伝えることです。画面越しだと、身ぶり手ぶりや間合いなど、情報を補完する非言語の要素が伝わりづらいです。対面なら補完できていた非言語要素を、ドキュメントやイメージなどできちんと形にして提示すべきでしょう」

用意すべきものは用意しながら、話す際の心がけの第一歩が「主語と述語の関係を明確にすること」ことです。

「話し言葉で特に省きがちな主語を、話す際に意識的に入れてください。突き詰めればWeb会議に限らず、誤解のないやり取りに欠かせませんが、Web会議では真意の伝わりづらさを意識して、丁寧で面倒がらないやり取りができると、相手にも意図が伝わりやすくなるでしょう」

意識を持つことで、フィードバックの質が大きく変わり、高まります。テレワークが広がり、対面の機会が限られる状況をハンディとしないためにも、フィードバックの質を高めながら相手と一緒に、次、その次へと続くサイクルを生み出せるように心がけていきましょう。

ライタープロフィール 遠藤義浩

フリーランスの編集者/ライター。雑誌『Web Designing』(マイナビ出版)の常駐編集者などを経て、主にデジタルクリエイティブやデジタルマーケティング分野の媒体の編集/執筆、オウンドメディアの企画/コンテンツ制作などに携わる。

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