Adobe After Effects CC(以下After Effects)に搭載される「3Dカメラトラッカー」機能について解説します。ハリウッド映画、テレビCMでも使われる「モーショントラッキング」と呼ばれる技術を使って、豊かで迫力のある映像を作り出しましょう。上空からの映像で、砂浜に突如巨大な文字が出現する場面を作ってみます。

クリエイター最終更新日: 20210428

Adobe After Effectsの「3Dカメラトラッカー」機能で文字がそびえ立つ映像作り

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Adobe After Effects CC(以下After Effects)に搭載される「3Dカメラトラッカー」機能について解説します。ハリウッド映画、テレビCMでも使われる「モーショントラッキング」と呼ばれる技術を使って、豊かで迫力のある映像を作り出しましょう。上空からの映像で、砂浜に突如巨大な文字が出現する場面を作ってみます。

Adobe After Effectsで文字がそびえ立つ映像を作る

動きを分析するモーショントラッキングの中の「3Dカメラトラッカー」機能

映像内の物の動きにシンクロして、配置したテキストや画像・映像を動かす機能が、After Effectsにはいくつも搭載されています。これは、動きを分析して記録する「モーショントラッキング」と呼ばれる技術です。

中でも今回は、カメラの動きと3Dシーンデータを抽出できる「3Dカメラトラッカー」という機能を使ってみます。これは映像に任意のポイントを自動的に配置して、前後のフレームを分析し、その動きを元に撮影したカメラの動きを3Dシーンに再現する機能です。

言葉での説明だけでは想像しづらいので、先に3Dカメラトラッカーを適用した今回の作例をご覧ください。

砂浜を飛行するドローン映像です。再生が進むと、あらかじめ存在していたかのようにテキストの文字列(「Dive in NEXMAG」)がそびえ立っています。これらの演出をAfter Effectsを使って実現しましょう。

任意の映像に「3Dカメラトラッカー」を加える

After Effectsを起動して、新規プロジェクトを作成します。メニューバーより「ファイル」→「新規」→「新規プロジェクト」をクリックします。

「コンポジション」パネルに「新規コンポジション」ボタンと「新規コンポジション フッテージから」ボタンが表示されるので、「新規コンポジション フッテージから」ボタンをクリック。読み込みダイアログから、プロジェクトに任意の映像を読み込みます。読み込む映像に合わせてコンポジションが作成されるので、便利です。

映像のレイヤーを選択して、メニューバーより「エフェクト」→「遠近」→「3Dカメラトラッカー」を選択すると処理が始まります。

「3Dカメラトラッカー」には、他にも方法があります。メニューバーより「アニメーション」→「3Dカメラトラック」からも可能です。

レイヤー上での右クリック(コンテキストメニュー)経由で、「トラックとスタビライズ」→
カメラをトラック」を選択でもOKです。

さらに、「トラッカー」パネルの「3Dカメラ」ボタンからも処理を開始できます。

以上、それぞれの方法のいずれかで、「エフェクトコントロール」パネルに「3Dカメラトラッカー」がエフェクトとして追加されます。

分析中は画面に青い帯で「バックグラウンドで分析中」と表示されます。

「エフェクトコントロール」パネルでは、処理中のフレーム数、残り時間が交互に表示されます。

ちなみに、「分析」には時間がかかります。分析は、いわゆるバックグラウンドプロセスですので、他の作業を行いながらでも可能ですが、やりながらより何もせず待機の方が早いです。今回だと、10秒の映像の分析に対して、約5分かかりました。(※)

※著者の検証環境:ノートPC(モバイルワークステーション)を使用。
スペック内容は以下の通りです。

CPU Intel Xeon E3-1505M 2.8Ghz
メモリ 32GB
ストレージ NVMe SSD
グラフィックボード NVIDIA Quadro M1000M

分析が終了すると、オレンジの帯で「カメラ解決中」と表示されます。

少し時間をおいて完了となります。映像時間が長い、非常に動きが激しい、またはトラッキング対象がぼけている、モーションブラー(残像が残るような効果)が付いている、などの場合は、分析が失敗になりがちですので、注意しましょう。

分析後の進め方

完了後、映像の上にカラフルな「×」マーク(トラックポイント)が表示されます。

表示されない場合は、「エフェクトコントロール」パネルの項目「3Dカメラトラッカー」を選択するか、メニューバーより「ビュー」→ 「レイヤーコントロールの表示」を選択します。

ここでは、「エフェクトコントロール」パネルの「トラックポイントのサイズ」を調整して、トラックポイントを「200」パーセントで表示しています。遠景も含めて、非常に多くのポイントが抽出されていることがわかります。

「エフェクトコントロール」パネルの項目「詳細」にある「平均エラー」は、今回「0.64 pixel」となっていますが、値が1.5pixel以下であれば良好な分析結果と考えて大丈夫でしょう。

「コンポジション」ウィンドウ内でカーソルを動かすと、トラックポイントがハイライトされ、ハイライトされた3点のポイントの間を中心にして、赤いターゲットが表示されます。クリックすると、ポイントが黄色になり選択されます。複数選択も可能です。赤いターゲットは分析された面の方向を表しています。

映像にそびえ立つ文字列を設定する

希望するターゲットが表示された地点でポイントを選択し、右クリックすると「テキストとカメラを作成」「平面とカメラを作成」「ヌルとカメラを作成」などが設定できるコンテキストメニューが表示されます。

今回はテキストを表示したいので、「テキストとカメラを作成」をクリックします。すると、「コンポジション」ウィンドウに「テキスト」が表示され、レイヤーに「3Dカメラトラッカー」も追加されます。

「3Dトラッカーカメラ」レイヤーのキーフレームを確認します。1フレームずつ位置と方向のXYZ値が記録されています。

さらに、「コンポジション」ウィンドウ下部のコントロールで「ビューのレイアウトを選択」プルダウンから「4画面」を選択します。

「コンポジション」ウィンドウが4分割され、カメラに対して上、正面、右、そしてカメラからのビューが表示されます。ピンクの帯状に見えるものが、カメラのキーフレームです。細かいため、帯状になっています。先ほどの「分析」によって、カメラの移動がうまく抽出されていることがわかります。

赤い四角で表示されている箇所が、テキストの3Dレイヤーです。カメラとの位置関係が理解できます。

ここまでのレイヤーを確認すると、「テキスト」レイヤーが3Dレイヤーになっています。After Effectsでは、レイヤーパネルの立方体のアイコンをアクティブにするだけで、レイヤーが3Dになって、三次元方向に編集できるようになります。

文字全体の移動は、選択ツールで行えます。カメラから見た3D空間のテキストの位置は、選択したトラックポイントと紐づいているので、自由に動かすことができます。テキストは、通常通りに編集できるので、レイヤー自体の位置、角度調整とともに行送り、フォントサイズ、トラッキングなど設定してください。

文字列の影を設定して完成へ

「テキスト」レイヤーを選択すると、緑のY軸矢印と赤のX軸矢印に加えて、青のZ軸矢印が表示されます。3Dソフトウェアでは、これら3軸コントローラーを「ギズモ」などと呼んでいます。移動ツールで各軸(X、Y、Z)上をドラッグすると、その軸方向を固定しながら動かすことができます。回転ツールも同様です。

ここではテキストレイヤーの向きを変更したいので、各軸で回転ツールを使って回転させます。メニューバーの下にあるツールバーから「回転ツール」を選びます。

それぞれの軸の上でドラッグすると、その軸を中心に回転します。映像を再生しながら向きを調整しましょう。

ここで少しリアル感を出すために、簡単な方法でテキストに影を追加してみます。まず、テキストのレイヤーを複製します。テキストレイヤーを選択して、メニューバーより「編集」→「複製」を選びます。

複製されたレイヤーを選択すると、3軸のギズモ(コントローラー)がテキストの中心に表示されます。影にするためレイヤーを回転させるので、ギズモの中心であるアンカーポイントだけを移動しましょう。ツールバーから「アンカーポイントツール」を選択します。

ギズモの中心をドラッグして、テキストの一番下に移動します。

続いて、「回転ツール」を選択して、赤のX軸上をドラッグ。テキストが後ろに倒れるように回転させます。テキストの色を黒にしておきましょう。

影のテキストにぼかすエフェクトをかけます。メニューバーより「エフェクト」→「ブラー&シャープ」→「ブラー(ガウス)」を選びます。

「エフェクトコントロール」パネルをご覧ください。「ブラー」の値は「30」に設定してみました。今回は固定値ですが、映像の最初と最後で値を変化させるといいでしょう。

厳密には、地形の通りに変形しなければなりませんが、簡易的に作成した影でもそれなりの効果があります。平面上に置かれたテキストなどであれば、基本的には違和感なく見られるでしょう。これで一通りの作業は終わり、完成です。

3Dトラッキング編集は、ドローンの映像に使うと効果的です。例えば、メインストリート上でドローンを飛ばして、左右の建物や店舗の名前を表示しながら街を紹介する映像などが作れます。

理想は、撮影の段階から3Dトラッキングを使う前提で進めること。事前に、配置場所と配置対象(テキスト、画像、映像など)を決めておけると、リアルでありつつ効果的な映像を生み出せるでしょう。

ライタープロフィール 相子達也

某Webデザイン誌、某Mac誌でのライターを経て映像制作を中心に各種デザイン、3D設計などで活動中。楽しみはゲームとドローン写真からの3次元点群データ作成。

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