会社員やフリーランス、テレワーク(遠隔勤務)など、立場的にも物理的にも働き方の幅が広がっていますが、うまく「やる気」を引き出して業務効率をアップさせるヒントを求めて、メンタルトレーニング研究の第一人者、高妻容一教授に話をうかがいました。

ITトレンド最終更新日: 20200421

メンタルトレーニングと目標シートで「やる気」を引き出して業務効率アップ!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

会社員やフリーランス、テレワーク(遠隔勤務)など、立場的にも物理的にも働き方の幅が広がっていますが、どんな人にもたまには「今日はどうもやる気が出ない……」といった経験があるはずです。 うまく「やる気」を引き出して業務効率をアップさせるヒントを求めて、メンタルトレーニング研究の第一人者、高妻容一教授に話をうかがいました。

いつでも前向きに!そのためにやるべきことは?

スポーツメンタルトレーニングを取り入れてみる

集中できない、やる気が出ない……そんな時に無理をしてやる仕事より、進んで前向きに取り組んだ仕事の方が、時間もかからずクオリティもいいはず。

できるだけ前向きな気持ちで仕事に取り組めたら……。そのヒントが、スポーツの世界で活用されている「スポーツメンタルトレーニング」にあります。一流選手ほど、毎日の厳しい練習に前向きに取り組み、成果を出しています。同じ人間です、やる気が出ない日があってもおかしくありません。一流選手のような、折れない心の作り方を学んでみましょう。

やる気を出す方法とは?

スポーツの経験がある方は、監督やコーチから「やる気を出せ」と怒鳴られたことがあるかもしれません。しかし、それでやる気の出る選手はいるでしょうか? 怒られるのが嫌で練習を始めたとしても、「なぜ今その練習が必要なのか」を理解せず、思考停止のまま取り組んでいても、苦しいだけで身につくものは少ないでしょう。

例えば、高校のサッカー部員を想定してみましょう。全国高校サッカー選手権大会の地区予選を1カ月後に控え、チームの状況が「パスの連携はできてきたものの、走り負けることが多い選手たち」という状況だった場合です。

具体的な目標があれば、いかがでしょうか?

ダッシュを強化して中盤の攻守切り替えを底上げする、持久力をつけて最後の数分でもプレーを崩さないなど、選手自身が自主的に走り、しかもどんな練習をすれば課題を克服できるか、自分で考えて工夫しやすくなります。

つまり、これが(ここでは、具体的な目標の提示)、本当の意味でのやる気を出す“方法”なのです。

「やる気」は自分の中にある

いかに意識的にやる気を持続できるか

意識的にやる気を持ち続けるために、スポーツメンタルトレーニングでは「目標設定」というステップが用意されています。自分がどうなりたいか、そのために何が必要か、将来像を思い描くことで、それを実現する手段を自分で見出していくのです。

スポーツ以外にも、ビジネス、アートパフォーマンス、傷病者の治療・リハビリといった分野でも効果が認められ、近年応用が進んでいます。ぜひ自分の仕事(ビジネスシーン、クリエイティブ作業など)に置き換えて考えてみてください。

「結果目標」を設定する

ここからは実際にやってみましょう。

最初に人生の目標を上から順番に書いてください。途中から、もしくは下から書かないようにして、必ず上から順番に書きましょう。次に、自分の人生の目標を見ながら、仕事の目標を上から順番に書いてください。制限時間は10分で進めましょう。

高妻教授への取材および高妻教授の著作に基づき、筆者がビジネスなどの通常業務にも対応した内容に編集、作成したシートのサンプルです(以下に出てくるシートも同様です)高妻教授への取材および高妻教授の著作に基づき、筆者がビジネスなどの通常業務にも対応した内容に編集、作成したシートのサンプルです(以下に出てくるシートも同様です)

目標シートは下記にも用意しています。適宜ダウンロードして活用してください。
“結果目標用紙PDF ダウンロードURL”
http://stylograph.com/mental-tr/01_goal_sheet.pdf
※筆者の都合等によりデータは削除される場合があります

そこまで具体的に将来を考えたことがない、という方も多いでしょう。しかし、仕事を引退する時期やその後の生き方を具体的に考えてみると、「今のままではいけない」と気づくポイントが出てくるはずです。改めて、人生における仕事のあり方とその行く末を考えてみてください。「今日」から「夢の実現」まで、つながった目標が書けたらOKです。

プロセス目標を設定する

次に、その目標を具体的にどのように実現していくのか? そのプラン(=プロセス目標)を設定します。例えば、海外移住を目標にするなら、その資金はいつまでにいくら必要で、それをどう貯めるか、語学はいつまでにどう学ぶか、居住に必要な資格取得は……など、具体的な行動プランを決めていきます。

プロセス目標シートは下記からダウンロードできます。
“プロセス目標シートPDF ダウンロードURL”
http://stylograph.com/mental-tr/02_process_sheet.pdf
※筆者の都合等によりデータは削除される場合があります

当然、働き方についてもそれに合わせたプランが必要になります。ここまでやると、かなり現実的な視点で将来を見据え、自分自身と向き合うことができるでしょう。

年間・月間・週間のプランへと分解していく

最終的には、より細かく具体化していきましょう。今後1年間で実現すべきことは何でしょうか? そのために、今月は何に取り組めば良いでしょうか。

年間/月間スケジュールシートをダウンロードしたい場合は下記からダウンロードしてください。
“年間/月間スケジュールシートURL ダウンロードURL”
http://stylograph.com/mental-tr/03_yearly_monthly_schedule.pdf
※筆者の都合等によりデータは削除される場合があります

さらに1週間単位にすると、今の自分が1日をうまく使えているかどうか、が見えてきます。誰にでも1日24時間が平等に与えられています。1日の使い方を見直せば、目標のためにやるべきことが見つかるでしょう。

週間スケジュールシートは下記からダウンロード可能です。
“週間スケジュールシートURL ダウンロードURL”
http://stylograph.com/mental-tr/04_weekly_schedule.pdf
※筆者の都合等によりデータは削除される場合があります

「面倒くさい」「しんどい」と思ったことが、将来の目標のためにクリアすべき課題だと気づいたなら、それを行動につなげることができるでしょう。これが自分自身の中にある「やる気」なのです。

ここまできたら、あとは取り組むだけ。しかし、しっかり成果に結びつけるには、もう1つ必要なステップがあります。

ルーティンを身につけて自分をコントロールする

1日メモのススメ

作ったプランに取り組んでみて、実際にそこからどんな成果が得られたでしょうか。成果が出なかったとしたら、次に何を改善すればいいでしょうか。スポーツメンタルトレーニングでは毎日の「練習日誌」をつけることで、過去を振り返り、考える習慣を身につけていきます。

さらに、1日をどんなふうに過ごしたか、睡眠時間や食事の内容なども振り返り、溜めたデータから、何をすれば「コンディションの良い状態」を作れるのかを見つけていきます。それをルーティンとして身につけることで、意識的に「コンディションの良い状態」を自分でコントロールすることが可能になるのです。

日常的な行為をデータベース化しておこう

ビジネスパーソンなら業務日誌をつけたり、システム手帳を活用するといいでしょう。クリエイターなら進捗状況やその時々の心境を1日ごとに短く、負担に感じない程度にメモに残す形でも構いません。残しておくと、それが貴重な「データベース」になるのです(残しておかないと、人は忘れてしまい、振り返りづらくなります)。

つまり、後から自分にとってパフォーマンスの上がる時間帯や、集中できる環境・条件などを振り返ることができるので(=スポーツ選手にとっての練習日誌)、自分にとってベストな状態を作るためのルーティンを(根拠を持って)見つけていけることができるわけです。

ひとりの時間もポジティブにしよう

気持ちのコントロールができるかどうか

スポーツメンタルトレーニングで、目標の設定と同時に重要視されているのが、ポジティブな姿勢を作ることです。せっかく立てた目標に対して「無理だな……」と思ってしまえば、本来可能なことまで不可能になってしまいます。

フリーランスや在宅勤務の方は、長時間一人で仕事をするため周囲の人空の影響を(良くも悪くも)受けない環境にいるわけですが、それだけに自分自身で気持ちをコントロールするスキルが重要だと言えます。それを身につけるためにメンタルトレーニングで活用されるテクニックをご紹介しましょう。

あいさつ、人を褒めるなどのコミュニケーション
大きな声であいさつをすることは、気持ちのスイッチを入れる一番の基本テクニックです。また、相手の良い点を見つけてポジティブな言葉をかけることは、ものの見方・考え方をポジティブにします。

家族でも、ペットでもいいですし、一人暮らしであれば写真に向かってでもOKです。ポジティブなコミュニケーションを毎日のトレーニングとして意識的に行いましょう。

緊張・リラックス・軽い運動を取り入れる
PCに向かいっぱなしの状態に疲れたら、以前にも紹介したことがある「フォーカルポイント」や「プログレッシブリラクセーションテクニック」(漸進的筋弛緩法)などの方法で集中力をリセットしましょう。

フォーカルポイントとは、いつも見えている視界の中で、ある1点を見つめた時に「集中力が高まる」「集中力が回復する」「気持ちを切り替える」と意識することを決めておく方法のこと

プログレッシブリラクセーションテクニック(漸進的筋弛緩法)とは、身体の部位を順番にリラックスさせていくことで、意識を身体に向け、集中力を高めていく方法のこと

プログレッシブリラクセーションテクニックについては下記の記事も参考にしてください。
“メンタルトレーニングでパソコン作業を効率化したい!”
https://www.pc-koubou.jp/magazine/34158

また、その後に階段を昇降したり、音楽に合わせて体を動かすなど、軽く心拍数を上げながら楽しい要素で心もウォーミングアップすると効果的です。

例えば、フリーランスや在宅勤務の方は、振り返ると何となく、ダラダラと自分をデスクに縛りつけていませんか? 簡単に体を動かす時間をうまく設けられると、集中力が高まり、業務効率の改善にもつながるでしょう。デスクワーク中心という通勤する立場の人なら、毎日の行き帰りも意識的に体を動かす時間帯へと変えることが可能です。

意識を新たにしながら、目標を持って仕事や生活と向き合うことで、自分自身の働き方改革にトライしてみてはいかがでしょうか。

監修

高妻 容一氏
東海大学体育学部競技スポーツ学科教授
日本メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会 代表
“東海大学メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会”.Facebookページ.
https://www.facebook.com/311651952179748/

ライタープロフィール 笠井美史乃

Webサイトや雑誌で記事の執筆・編集をしています。主な分野は、スマートデバイス、Webマーケティング、企業取材など。緩めのアニメオタクで毎期4〜5本完走しています。生きがいはパフェ。

記事を
シェア