動画編集の際に大切な要素の1つが「音」。動きにピッタリ合った音楽をつけると、ワンランク上の動画に仕上げることができます。今回はCubase Elements 10.5を使った動画内楽曲のアレンジ方法を解説します。

クリエイター最終更新日: 20200720

Cubase Elements 動画に合った楽曲編集

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動画編集の際に大切な要素の1つが「音」。動きにピッタリ合った音楽をつけると、ワンランク上の動画に仕上げることができます。
DAW(Digital Audio Workstation)の「Cubase Elements」を使うと、動画の動きに合わせた楽曲の調整が簡単にできます。
今回はCubase Elements 10.5を使った動画内楽曲のアレンジ方法を解説します。

ワンランク上の楽曲制作、楽曲調整に挑む

動画編集ツールよりもDAWだと音を作り込める

動画に音を入れたいとき、動画編集ソフトウェアで完結せずにDAWを使うメリットは、DAWには音に特化したエフェクトや音源が豊富に搭載され、細かな波形編集が可能なことです。Cubase Elementsには、ビデオ読み込み/書き出し機能が搭載されているので、廉価版ながら豊富な音色やエフェクト、編集機能を利用できます。

最初に今回の解説用の動画をご覧ください。風景を軸にした撮影動画で、フリー音源の動画をベースに各所で調整を加え、動画内には適宜テロップが入っています。

ただし、Cubase Elementsでは動画内の音楽を編集できますが、動画自体を編集する機能は搭載されていないので注意してください。

読み込み可能形式など環境を整理、確認する

Cubase Elementsに動画を読み込む前に、読み込み可能形式を確認します。対応コンテナ(ファイルの種類)は、MOV/AVI/MP4です。コーデックはDV/DVCPro/MJPEG/PhotoJPEG/H263/H264などです。みなさんの環境で手元の動画が再生できるかを確かめてください。

フレームレートは、24fps/25fps/29.97fps/29.97dfps(ドロップフレームとノンドロップフレーム対応)/30fps/30dfpsに対応し、VFR(Variable Frame Rate 可変フレームレート)には未対応です。オーディオのコーデックはPCM、AACに対応しています。

Cubase Elementsの開発元であるドイツ・Steinberg(スタインバーグ)社の推奨フォーマットはApple ProResとH264で、他フォーマットからの推奨変換ツールとしてVLC PlayerやXMedia Recodeなどが挙げられています。

※ 詳細はドイツ・Steinberg社のHelpCenterで確認できます

“Video support in Nuendo, Cubase, WaveLab and Dorico – Steinberg Support”.Steinberg Media Technologies GmbH.2019.Video support in Nuendo, Cubase, WaveLab and Dorico – Steinberg Support”.Steinberg Media Technologies GmbH.2019.
https://helpcenter.steinberg.de/hc/en-us/articles/115000808250-Video-support-in-Nuendo-Cubase-WaveLab-and-Dorico

Cubase Elementsに映像を読み込み、作業開始

では動画をCubase Elementsに読み込んでみましょう。

メニューバーより「ファイル」→ 「読み込み」→ 「ビデオファイル…」を選択します。「ビデオの読み込み」ダイアログで、読み込むビデオファイルを選択します。

プルダウンメニューには、「すべてのファイル」の中にスタインバーグ社のアナウンスにない「.mpg」や「.wmv」も表示されています。実際に試すと読み込むことは可能でした。ただし、編集や書き出し時に不具合が発生する可能性があるので、推奨フォーマットで作業しましょう。

左下には動画のプロパティが表示されています。その下にある「ビデオからオーディオを抽出」のチェックボックスをオンにしておくと、動画のオーディオが新たなトラックとして読み込まれます。

こうしておくと、他のオーディオと同じように扱えます。すぐに編集作業に入れるのでオンにしておきましょう。

「開く」をクリックして読み込むと、以下のUIに遷移します。Cubase Elementsのトラックのフレームレートと動画のフレームレートに違いがあると、トラックに赤文字で「プロジェクトとビデオのフレームレートが一致しません〜」と表示されます。

この場合、メニューバーより「プロジェクト」→「プロジェクト設定」から「プロジェクト設定」ダイアログを開き「フレームレート」の項目(左側の上から2番目)で「ビデオからフレームレートを取得」をクリックします。

動画ファイルが読み込まれると、動画のサムネイルがトラックに表示されてその下に抽出されたオーディオのトラックが配置されます。

動画を読み込む際、ファイルをプロジェクトパネルにドラッグ&ドロップすることでも読み込めます。自動的にオーディオを抽出するようにするには、「環境設定」ダイアログの「ビデオ」項目で「ビデオファイル読み込み時にオーディオを抽出」をオンにしておきましょう。

Cubase Elementsでは、別ウィンドウで「ビデオプレーヤー」を表示できます。メニューバーより「スタジオ」→「ビデオプレーヤー」を選びます。サイズは任意に変更でき、サブディスプレイがあればそちらに表示して作業が可能です。

ビデオプレーヤーウィンドウ上のコンテキスト(右クリック)メニューでは、「フルスクリーンモード、1/4サイズ、1/2サイズ、等倍、2倍」のサイズ選択ができ、アスペクト比も指定できます。スタインバーグ社によると、ウィンドウを大きくするほどCPUの負荷が高まるので注意が必要、とのことです。

さらにウィンドウ上でマウスをドラッグすると、進んだり戻したり、のジョグシャトル再生が可能です。

音を編集する

音の編集では、動画編集段階で何かしら挿入してある楽曲に対して、まずは全体にエフェクトをかけて、音の奥行き感が出るようにしてみます。

オーディオ波形のトラックを選択して「Inspector」タブの「Inserts」から、ここでは「Reverb」→「RoomWorks SE」を選び、立ち上がった「RoomWorks SE」ダイアログに対して「Bright Plate Reverb」で残響を薄くかけてみます。「Reverb」とは、残響を出すエフェクターのことです。かける前と比べるとわかりますが、元の音に広がりと奥行きが出てきました。

あらかじめ入れているサンプル動画内の音楽がギターサウンドメインの曲ですので、インストゥルメントトラックを追加して、ここではHALion Sonic SEのストリングスを弾いて加えてみます。

動画のラストで現れるテキストのタイミングに合わせて効果音、ここではHALion Sonic SEのベルサウンドを弾いてみました。効果音の音声ファイルから、尺に合う音源を探して配置するのは手間がかかりますが、Cubase Elementsだと、画面に合わせて弾くだけです。

こういう作業はなかなか楽しいので、音を足したりエフェクトに凝ったりと、際限なく作業してしまいます。やり過ぎには注意しましょう。

長さが修正できるタイムストレッチ機能

動画編集の修正依頼でよくあるのが、シーンや全体の長さの調整です。例えば音楽の小節数に合わせてシーンの長さが作られている場合、動画の長さを変更する作業は大変ですが、「最後の何秒かをカットしてほしい」という要望に、Cubase Elementsだと「タイムストレッチ」で簡単に対応できます。

ツールバーの選択ツールを長押しすると、「タイムストレッチしてサイズ変更」というツールが選べます。

動画の音声データで波形表示の最後の部分にある、右下の小さな四角にポインタを合わせてドラッグしてください。ポインタに小節数などが表示されます。また、波形の右上角に波形のアイコンが表示されて、タイムストレッチを行ったことがひと目でわかるようになっています。特に波形データが多い場合、効率的で便利な機能です。

この処理だけで、音程が変わらず全体時間が短くできます。ただし大きな変化だと、音がかなり劣化してしまうので確認しながら調整しましょう。

タイムストレッチのアルゴリズムは、音声のタイプによっていくつか用意されています。環境設定の「編集操作」→「Audio」パネルで「既定のワープアルゴリズム」のプルダウンメニューから選べて「Drums」や「Vocals」などタイプ別に用意されています。今回は曲自体に設定したのでデフォルトの「Mix」で行いました。

効果音を追加する

次に、「サンプラートラック」を利用して効果音を追加しましょう。例えば、連続で音を出したい場面がある動画やタイミングの重要なコメディタッチの動画などには、映像を観つつ鍵盤を弾きながら入力できるため、効率的です。しかも入力した音には音階がつくので、さまざまなバリエーションが試しやすいでしょう。

動画を読み込んだ後、「プロジェクト」→「トラックを追加」→「サンプラー」へと遷移しサンプラートラックを追加したら、下部のパネルが「サンプラーコントロール」になり、中央に「Drop Audio Sample or MIDI Part Here !」と表示されます。

ここに任意のオーディオファイルをドラッグ&ドロップします。

「サンプラーコントロール」に波形が表示されました。この状態で、接続しているMIDIキーボードがあるなら、キーボードを弾くと爆発音に音階が付いて鳴らせます。MIDIキーボードがなければ、下部の鍵盤の「C3」をクリックしても鳴ります。

あとは動画を見ながら、タイミングを合わせて鍵盤を叩くだけです。サンプル音を弾いて録音した後、エディターでの微調整も可能なので、ドンドン弾いてみましょう。他にも電子ドラムなどをMIDI接続で音が出せるので、手元にある慣れた機器で入力するといいでしょう。

ちなみに、何かしらの音声が挿入済みの動画を念頭に置いて説明していますが、音声なしの動画に直接音楽を追加していく音作りも可能ですし、さらに自由度が上がります。シーンの長さに合わせるアレンジも可能です。Cubase Elementsの音源を鳴らしてもいいですし、雰囲気に合わせてトラックに自前でギターを録音する、などもよさそうです。

「MixConsole」で各パーツの音量などを調整したら、メニューバーより「ファイル」→「書き出し」→「ビデオ…」を選択します。

調整した動画を書き出す

「ビデオを書き出し」ダイアログでファイル名、書き出し場所などを指定します。エンコード形式やビデオサイズは選択できません。書き出される形式は、MP4/H.264コーデック、48kHz/16-bit AACオーディオで、ファイルへのタイムコード追加が可能です。

書き出しの際の動画サイズはFullHD固定なので、元動画がDVDサイズの解像度だとアップコンバートされてしまいます。そうなると、元画像よりも画質が悪く見えてしまうので、素材はできるだけFullHDで用意しましょう。Cubase Elementsで4K動画の音声編集となると、少し手間がかかりますがFullHDにダウンコンバートして編集を行い、その音声のみを書き出して4K動画に組み込む方法が現実的です。

このようにCubase Elementsの場合、書き出し形式やサイズの指定には制限が出てきます。とはいえ、音楽に力を入れた映像作りには膨大な音源やエフェクトを使えます。元音源の録音の品質を上げることは難しくても、他の楽器やコーラスなどを加えて、音を通じての動画全体の世界観をグレードアップさせるのに利便性が高く、使うメリットが大きいツールです。

ライタープロフィール 相子達也

某Webデザイン誌、某Mac誌でのライターを経て映像制作を中心に各種デザイン、3D設計などで活動中。楽しみはゲームとドローン写真からの3次元点群データ作成。

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