最新版のOffice 2019に含まれるExcel 2019を使うにあたって最適なスペックはどの程度なのか、独自のベンチマークを作成して試してみました。

ITトレンド最終更新日: 20190206

Excel 2019 おすすめスペックをレビュー

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最新版のOffice 2019に含まれるWord、Excel、PowerPointを使うにあたって最適なスペックはどの程度なのか、独自のベンチマークを作成して試してみました。

Excel 2019の動作テスト

主にOfficeで使われるWord 2019、PowerPoint 2019、Excel 2019を使い、実際にOffice 2019の動作テストを行ってみたいと思います。Office 2019のスペック要件は低いですが、Word、Excel、PowerPointそれぞれで実際に必要なスペック環境はどれほどなのかを試してみました。

過去のテスト結果から、大きなデータを扱うとCPUの性能に依存してパフォーマンスに差が出ることが分かっているExcelでは、Core i7-8700KやRyzen 7 2700Xなどのハイエンドモデルから、Pentium G5400やRyzen 3 2200Gという低価格モデルまでを用いて、独自に作成したベンチマークデータで性能を検証していきます。メモリは DDR4-2400 4GB x2 で統一しています。また、グラフィックスは基本的にCPU内蔵となりますが、GPU非搭載のRyzen 7 2700Xと Ryzen 5 2600についてはGeForce GT 1030を搭載しています。

テスト内容

Excel 2019でのテスト内容は以下の通りとなります。独自に作成したベンチマークを実行し、処理にかかった時間を記録しました。

■124154行を参照元124154行でVLOOKUP関数を挿入
■sumifs100万行→150行 コピー&ペースト
■Pivotテーブル100万行
■割算60万行、sumifs100万行→150行、VBAマクロ実行

Excel 2019を試す

それでは早速、Excel 2019の性能を見ていきたいと思います。独自に作成したベンチマークファイルを使って、まずは、Excel 2019とExcel 2016の比較検証を行っていきます。

Excel 2019では「VLOOKUP」「HLOOKUP」「MATCH」関数が高速化

Excelの業務において様々な関数計算を行いますが、特に「VLOOKUP」「HLOOKUP」「MATCH」はよく使う関数ではないでしょうか。これらの式が大量に挿入された状態のファイルを開くときや、編集後に再計算が行われるときに参照するデータやシート数が多いと時間がかかり、非常にストレスがたまります。これがどの位改善しているのかを確認する為に郵便番号データを使って試してみました。

テスト内容
「全国の郵便番号124154行分」に対して、その「郵便番号に紐づく名前」をVLOOKUPで参照するファイルを作成してそのファイルを起動して開ききるまでの時間を計測します。このテストではストップウォッチで手動計測となり、計測は各5回行い、最大値と最小値を排除した中央の3回の値の平均を計測結果としています。

例として、参照先の一行目の式「VLOOKUP($A1,Sheet1!$C$1:$I$124154,2,FALSE)」を記入しました。

結果は以下の通りとなりました。

VLOOKUPのテスト結果VLOOKUPのテスト結果

結果は一目瞭然、Excel 2016と比較して圧倒的に早くなりました。また、Excel 2016では「CPUコア数」に比例して高速になっていたのですが、Excel 2019の場合、今回のテスト内容ではCPUによる差が埋まってほぼ均一の結果になっているのも興味深いです。ローパワーなモバイルPCでも暫く固まってファイルが動かないという事がかなり解消されると思います。

他の重い式でも速度が向上しているのか?と思いきや、測ってみるとExcel 2016とExcel 2019での差が少ない為、ここからは2016との比較は割愛し、Excel 2019の結果のみを見ていきます。

「SUMIFS」関数ではマルチコアCPUが有効

複数の条件を指定して数値を合計する「SUMIFS」関数は、過去の検証結果からマルチコアで差が出る処理になりますが、Excel 2019ではどうなのでしょうか。

テスト内容
「100万件のデータ」を「SUMIFSで参照して集計する式を150件分コピー&ペースト」し、その結果が出るまでの時間を計測しました。

例として、参照先の一行目の式(表題を除く)
「SUMIFS($C$2:$C$1000001,$A$2:$A$1000001,$G2,$B$2:$B$1000001,$H2)」 を記入しました。

結果は以下の通りとなりました。

sumifsのテスト結果sumifsのテスト結果

Intel CPUでは、スレッド数が同じでクロック数の近い「Core i3-8100(4C/4T,3.6GHz)」と「Pentium G5400(2C/4T,3.7GHz)」で倍の時間差となっています。逆にクロック数には差が有ってもコア数が同じ「Core i7-8700K(6C/12T,3.7GHz)」と「Core i5-8400(6C/6T,2.8GHz)」での差は僅少となりました。

AMD Ryzenにおいても、「Ryzen 7 2700X(8C/16T,3.7GHz)」「Ryzen 5 2600(6C/12T,3.4GHz)」「Ryzen 5 2400G(4C/8T,3.6GHz)」「Ryzen 3 2200G(4C/4T,3.5GHz)」とコア数の多い上位モデルから順に階段状に並びました。これらの結果から、「SUMIFS」関数では「物理コア数」の差の影響が大きい事がうかがえます。

ピボットテーブルはクロック数に比例

データを比較検証するのに便利なピボットテーブルではどうでしょうか。

テスト内容
カテゴリ25品、担当者5人の売上データ100万件を用意して列をカテゴリ、行を担当者として金額を集計するピボットテーブルを作成して完成までの時間を計測しました。

結果は以下の通りとなりました。

ピボットテーブルのテスト結果ピボットテーブルのテスト結果

スレッド数が同じで動作クロックの近い「Core i3-8100(4C/4T,3.6GHz)」と「Pentium G5400(2C/4T,3.7GHz)」であまり変わりなく、コア数が同じで動作クロックが異なる「Core i7-8700K(6C/12T,3.7GHz)」と「Core i5-8400(6C/6T,2.8GHz)」で差が生じました。AMD Ryzenについては、上位モデルから順々に並んでいますが、GPUコア無しの「Ryzen 7 2700X(8C/16T,3.7GHz)」「Ryzen 5 2600(6C/12T,3.4GHz)」と、GPU内蔵の「Ryzen 5 2400G(4C/8T,3.6GHz)」「Ryzen 3 2200G(4C/4T,3.5GHz)」との間に一段の差が生じています。処理の時間が短い上に、Ryzen 7 2700XとRyzen 5 2600は画面出力用にGeForce GT 1030を搭載しており、CPUの熱量に余裕がある分、クロックが上がり易いための差であると考えられます。

これらの結果から、ピボットテーブルはターボブースト含めてのCPUの「クロック数」が作用しているのが読み取れます。

VBAでの返し処理はクロック数比例

VBAを使った処理での時間を計測していきます。

テスト内容
簡単に「20万行分のデータ」を「移動しながら割り算する」処理を行ってみました。

結果は以下の通りとなりました。

VBA割り算テスト結果VBA割り算テスト結果

動作クロックの近い「Core i3-8100(4C/4T,3.6GHz)」と「Pentium G5400(2C/4T,3.7GHz)」ではあまり変わりなく、一方で、「Core i7-8700K(6C/12T,3.7GHz)」と「Core i5-8400(6C/6T,2.8GHz)」で差が生じました。AMDにおいても動作クロックの近い「Ryzen 7 2700X(8C/16T,3.7GHz)」と「Ryzen 5 2400G(4C/8T,3.6GHz)」ではあまり変わらず、「Ryzen 7 2700X(8C/16T,3.7GHz)」と「Ryzen 5 2600(6C/12T,3.4GHz)」では差が生じました。

これらの結果から、VBAによる割り算処理はCPUの「クロック数」が作用しているのが読み取れます。

テスト内容
先ほど行った「100万件のデータ」を「SUMIFSで参照して集計する式を150件分のコピー&ペースト」をVBAを利用して「1行ずつ貼り付ける」処理で行ってみました。

結果は以下の通りとなりました。

VBA sumifsテスト結果VBA sumifsテスト結果

先に行っていたSUMIFSのテストの「一括のコピー&ペースト」ではCPUのコア数により大きな差が出ていましたが、1行ずつ行った場合CPUの「クロック数」に相関する結果となりました。

Excel 2019におすすめのPC

これらの結果から、Excel 2019で大量のデータ分析をするなら、コストパフォーマンスを重視すると、Core i5やRyzen 5を搭載したミドルクラスのパソコンがおすすめです。少しでも早く快適にとなると、ターボブーストも考慮してコア数とクロックの両方が高いCore i7が最適な選択肢となるでしょう。

VBAでマクロを組んでの処理が多いなら、動作クロックが高くコストパフォーマンスに優れるCore i3やRyzen 5 2400Gを搭載したパソコンがおすすめです。上記のように何十万件ものデータの分析はしないということであれば、Pentium G5400やRyzen 3 2200Gもよい選択肢となるでしょう。

そして最後に、画面1枚に収まるくらいの表計算なら、Celeronなどの低スペックなCPUを搭載したパソコンでも十分に快適に使うことができます。

また、余談ですが、メモリの搭載枚数を変更してテストも行ったのですが、シングルチャンネル、デュアルチャンネルでのパフォーマンス差は見られませんでした。Excelを使うにあたっては、メモリについてはあまりこだわらずにCPUを選択するとよいとおもいます。容量については、取り扱うデータの量に合わせて適切増減させて行くとよいでしょう。使い方に合わせた最適なPC選びの参考になれば幸いです。

ライタープロフィール 職人5号

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。

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