AMD Ryzen™ プロセッサーとは | パソコン実験工房資料室
Ryzen とは
「Ryzen」とは、AMDより2017年3月に発売された、第1世代「Zen」マイクロアーキテクチャをはじめて採用するAMDの新たなCPUシリーズ「AMD Ryzenプロセッサー」です。
前世代である「Excavator」マイクロアーキテクチャに比べ、「Zen」マイクロアーキテクチャでは、CPUの動作クロックあたりの処理能力(IPC)が最大52%もの向上を果たしインテルCore iシリーズに匹敵する程の強力な処理能力を持ちます。
「Ryzen 7」「Ryzen 5」「Ryzen 3」がそれぞれ「Core i7」「Core i5」「Core i3」の対抗製品としてリリースされました。
また、HEDT(ハイエンドデスクトップ)向けとして「Ryzen Threadripper」がリリースされ、「Core X(Core i9)」シリーズの対抗製品となり、上位グレードから下位グレードまで揃う形となりました。
「Ryzen」の読み方
「ライゼン」と読みます。CPUのシリーズ名として「Ryzen Threadripper」は「ライゼン スレッドリッパー」、「Ryzen 7」は「ライゼン セブン」と一般的には読まれています。また、関連するワードとしてマイクロアーキテクチャ名である「Zen」は「ゼン」、「Excavator」は「エクスカベイター」と読みます。
メーカー名である「AMD」はそのまま「エーエムディー」と読まれています。
Ryzenの主な特徴
CPU
- 「Ryzen」に採用される「Zen」マイクロアーキテクチャは、以前の「Excavator」マイクロアーキテクチャに比べ、クロックあたりの処理性能(IPC)が52%向上しました。
- 「Ryzen Threadripper」は最大16コア32スレッド、「Ryzen 7」は8コア16スレッド、「Ryzen 5」は最大6コア12スレッド、「Ryzen 3」は4コア4スレッドとなりました。
- 「Ryzen Threadripper」「Ryzen 7」「Ryzen 5」において「Simultaneous Multi Threading」(SMT)技術をサポートし理論スレッド処理が可能になりました。これはインテルでいうインテル ハイパースレッディング テクノロジーと同様の技術となります。
- すべてのモデルで倍率ロックフリーとなり、X399、X370、B350のマザーボードと組み合わせることでオーバークロックに対応します。
- 「Zen」マイクロアーキテクチャではAMD SenseMI(センスエムアイ)テクノロジーを採用し、5つの代表的な機能「Pure Power」「Precision Boost」「Extended Frequency Range」「Neural Net Prediction」「Smart Prefetch」をもちます。
- 「Pure Power」や「Precision Boost」により25MHz単位で細かく動作クロックを制御し、処理効率と電力効率のバランスをとります。
- 「Extended Frequency Range(XFR)」により自動的に冷却状態(空冷、液冷、極冷)を感知し動的に電圧やクロックを変化させます。余裕がある場合通常よりも動作クロックを伸ばします。
- 「Neural Net Prediction」や「Smart Prefetch」により予測精度を向上させ、先読込機能を強化しました。学習機能も向上し、キャッシュのヒット率を向上させました。
- AMD Ryzen Master Utilityをサポートし、オーバークロックや電圧などの制御がOS上から可能です。
- DDR4メモリを標準でサポートし、「Ryzen Threadripper」では最大8本/128GBまで、「Ryzen 7」「Ryzen 5」「Ryzen 3」では最大4本/64GBまで搭載することができます。
- CPU側に内蔵するPCI-Express Gen3は、「Ryzen Threadripper」では64レーン、「Ryzen 7」「Ryzen 5」「Ryzen 3」では24レーンとなりました。(チップセットおよびM.2との接続分を含む)
GPU
- Ryzenはグラフィック機能は内蔵しないCPUとなり、別途、グラフィックカードが必要になります。
- GeForce GTXやRadeonのグラフィックカードをサポート、SLIやCrossFireXを組むこともできます。
※GPUを統合する第7世代APU Aシリーズ 「Bristol Ridge」と共通のSocket AM4採用マザーボードとなるため、グラフィック出力端子が付くマザーボードもありますが、「Ryzen」搭載時は映像出力はされませんのでご注意ください。
チップセット・その他
- 「Ryzen Threadripper」ではSocket TR4を新たに採用し、X399チップセットが対応しています。
- 「Ryzen 7」「Ryzen 5」「Ryzen 3」ではSocket AM4を新たに採用し、すでに発売されている第7世代APU Aシリーズと共通のソケットとなります。
- 「Ryzen 7」「Ryzen 5」「Ryzen 3」に対応したチップセットとして、AMD X370、B350、A320チップセットがあります。この他、ITX向け専用チップセットがあります。
- 「Ryzen 7」「Ryzen 5」「Ryzen 3」および「第7世代APU Aシリーズ」は共通のチップセット、マザーボードを使用することができます。※マザーボードの仕様によります。
AMD Ryzenのセグメント
AMD Ryzenプロセッサーは、第7世代APU Aシリーズに対しハイエンド~メインストリーム向けのセグメントとなり、強力なCPU処理を必要とするクリエイターやゲーム向けのCPUとなります。
セグメント | プロセッサ | コア/スレッド | キャッシュ | PCIe | NVMe | DDR4 | USB | Socket |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ハイエンド | Ryzen Threadripper |
最大16コア 32スレッド |
最大40MB | x64 Gen3 | x4 NVMe | 4ch 最大2667 |
USB3.1 Gen1 x8 |
TR4 |
ハイエンド メインストリーム |
Ryzen 7,5,3 | 最大8コア 16スレッド |
最大4+16MB | x24 Gen3 | x4 NVMe | 2ch 最大2667 |
USB3.1 Gen1 x4 |
AM4 |
メインストリーム | 第7世代APU Bristol Ridge |
4コア APU | 2MB | x12 Gen3 | x2 NVMe | |||
4コア CPU | 2MB | |||||||
エントリー | ||||||||
2コア APU | 1MB |
Ryzenのモデルナンバーについて
Ryzenの製品型番(モデルナンバー)は次のようなルールで命名されています。
Ryzenについて
Ryzen Threadripperについて
「Ryzen Threadripper」はインテル「Core X(Core i9)」と同等の位置づけとなる、HEDT(ハイエンドデスクトップ)向けのシリーズです。高いマルチコアパフォーマンスを必要とする各種デジタルコンテンツクリエイションに最適なシリーズです。
Ryzen Threadripper 1950X | Ryzen Threadripper 1920X | ||
---|---|---|---|
コードネーム | Summit Ridge | ||
製造プロセス | 14nm | ||
コア/スレッド | 16/32 | 12/24 | |
動作クロック | 3.4GHz | 3.5GHz | |
Precision Boost | 4.0GHz | 4.0GHz | |
XFR | 〇 | ||
キャッシュ(L3) | 40MB | ||
PCI-Express | Gen | 3.0 | |
レーン数 | 64 | ||
メモリ | 対応メモリ | DDR4-2667 / 2400 / 2133 | |
チャンネル数 | 4ch | ||
最大容量 | 128GB | ||
TDP | 180W | ||
GPU | 搭載なし | ||
64bitコード | AMD 64 | ||
SIMD命令 | SSE | SSE4.1/4.2 | |
AVX | AVX | ||
仮想化 | AMD-V | ○ | |
セキュリティ機能 | NX ビット | ○ | |
AES | ○ | ||
対応ソケット | TR4 | ||
対応チップセット | AMD X399 |
Ryzen 7について
「Ryzen 7」はインテル「Core i7」と同等の位置づけとなり、高いパフォーマンスをもちます。すべてのCPUでオーバークロックに対応し、CPUの動作クロックや電圧、メモリ動作クロックを自由に変更することができます。
Ryzen 7 1800X | Ryzen 7 1700X | Ryzen 7 1700 | ||
---|---|---|---|---|
コードネーム | Summit Ridge | |||
製造プロセス | 14nm | |||
コア/スレッド | 8/16 | 8/16 | 8/16 | |
動作クロック | 3.8GHz | 3.4GHz | 3.0GHz | |
Precision Boost | 4.0GHz | 3.8GHz | 3.7GHz | |
XFR | 〇 (XFR幅2倍) |
〇 | ||
キャッシュ(L3) | 16MB | 16MB | 16MB | |
PCI-Express | Gen | 3.0 | ||
レーン数 | 24 | |||
メモリ | 対応メモリ | DDR4-2667 / 2400 / 2133 | ||
チャンネル数 | 2ch | |||
最大容量 | 64GB | |||
TDP | 95W | 65W | ||
GPU | 搭載なし | |||
64bitコード | AMD 64 | |||
SIMD命令 | SSE | SSE4.1/4.2 | ||
AVX | AVX | |||
仮想化 | AMD-V | ○ | ||
セキュリティ機能 | NX ビット | ○ | ||
AES | ○ | |||
対応ソケット | AM4 | |||
対応チップセット | AMD X370/B350/B320 |
Ryzen 5について
「Ryzen 5」はインテル「Core i5」と同等の位置づけとなり、最も高いコストパフォーマンスを発揮します。すべてのCPUでオーバークロックに対応し、CPUの動作クロックや電圧、メモリ動作クロックを自由に変更することができます。
Ryzen 5 1600X | Ryzen 5 1600 | Ryzen 5 1500X | Ryzen 5 1400 | ||
---|---|---|---|---|---|
コードネーム | Summit Ridge | ||||
製造プロセス | 14nm | ||||
コア/スレッド | 6/12 | 6/12 | 4/8 | 4/8 | |
動作クロック | 3.6GHz | 3.2GHz | 3.5GHz | 3.2GHz | |
Precision Boost | 4.0GHz | 3.6GHz | 3.7GHz | 3.4GHz | |
XFR | 〇 | ||||
キャッシュ(L3) | 16MB | 8MB | |||
PCI-Express | Gen | 3.0 | |||
レーン数 | 24 | ||||
メモリ | 対応メモリ | DDR4-2667 / 2400 / 2133 | |||
チャンネル数 | 2ch | ||||
最大容量 | 64GB | ||||
TDP | 95W | 65W | |||
GPU | 搭載なし | ||||
64bitコード | AMD 64 | ||||
SIMD命令 | SSE | SSE4.1/4.2 | |||
AVX | AVX | ||||
仮想化 | AMD-V | ○ | |||
セキュリティ機能 | NX ビット | ○ | |||
AES | ○ | ||||
対応ソケット | AM4 | ||||
対応チップセット | AMD X370/B350/B320 |
Ryzen 3について
「Ryzen 3」はインテル「Core i3」と同等の位置づけとなり、エントリー向けグレードとしても高いパフォーマンスを発揮します。他のグレードと比べSMTが無くなりますが、物理4コアによる処理性能の高さはそのままに、すべてのCPUでオーバークロックに対応し、CPUの動作クロックや電圧、メモリ動作クロックを自由に変更することができます。
Ryzen 3 1300X | Ryzen 3 1200 | ||
---|---|---|---|
コードネーム | Summit Ridge | ||
製造プロセス | 14nm | ||
コア/スレッド | 4/4 | 4/4 | |
動作クロック | 3.5GHz | 3.1GHz | |
Precision Boost | 3.7GHz | 3.4GHz | |
XFR | 〇 | ||
キャッシュ(L3) | 8MB | ||
PCI-Express | Gen | 3.0 | |
レーン数 | 24 | ||
メモリ | 対応メモリ | DDR4-2667 / 2400 / 2133 | |
チャンネル数 | 2ch | ||
最大容量 | 64GB | ||
TDP | 65W | ||
GPU | 搭載なし | ||
64bitコード | AMD 64 | ||
SIMD命令 | SSE | SSE4.1/4.2 | |
AVX | AVX | ||
仮想化 | AMD-V | ○ | |
セキュリティ機能 | NX ビット | ○ | |
AES | ○ | ||
対応ソケット | AM4 | ||
対応チップセット | AMD X370/B350/B320 |
Ryzen対応チップセットについて
「Socket TR4」対応チップセットは「Ryzen Threadripper」専用のソケットおよびチップセットとなります。
「Socket AM4」対応チップセットでは「Ryzen 7」「Ryzen 5」「Ryzen 3」だけでなく第7世代APU「Bristol Ridge」A-9000シリーズもサポートする共通のチップセットとなります。
※対応するCPU/APUはマザーボードの仕様によります。
チップセット | AMD 300 シリーズ チップセット | |||
---|---|---|---|---|
X399 | X370 | B350 | A320 | |
ソケット | TR4 | AM4 | ||
対応CPU | Ryzen Threadripper | AMD Ryzen7,5,3 / 第7世代APU Aシリーズ | ||
PCI Express レーンの最大数 |
8 | 6 | 4 | |
PCI-Express | 2.0 | |||
USB3.1ポートの最大数 | 2 | 2 | 2 | 1 |
USB3.0ポートの最大数 | 5 | 6 | 2 | 2 |
USB2.0の最大数 | 6 | 6 | 6 | 6 |
SATA Express ポートの最大数 |
2 | 2 | 2 | |
SATA 6.0 Gb/s ポートの最大数 |
8 | 4 | 2 | 2 |
RAID構成 | 0/1/10 | |||
CFX/SLI対応 | ○ | × | ||
オーバークロック対応 | ○ | × |