Polaris第1弾「Radeon RX 480」を試してみた

Polaris第1弾「Radeon RX 480」を試してみた

2016-6-29

こんにちは、職人5号です。今回はAMDが満を持して投入してきた期待の新星Polarisコアを搭載した第1弾モデルであるRadeon RX 480 が手元に届きましたので、早速ベンチマークテストを試してみました。

Radeon RX 480 は製品発表時に8GBモデルが249ドル、4GBモデルが199ドルという価格で発表され、Radeon RX 480のもつ性能に対して低価格であるため、そのコストパフォーマンスの高さに注目が集まっています。 Fijiコアを採用したRadeon R9 Furyシリーズは、そのまま上位のハイエンドモデルとして継続されるため、Radeon R9 300シリーズを置き換える存在となります。 なお、外部出力端子はHDMI(x1)とDisplayPort(x3)のみとなっているため、DVIやD-Subしか対応していないモニタでは別途変換コネクタなどが必要となりますので、ご注意ください。

Radeon RX 480イメージ1Radeon RX 480イメージ2

Radeon RX 480 の主な特徴

Radeon RX 480の最大の特徴は、何と言っても「199ドル~」という価格、コストパフォーマンスの高さである事は疑いようが有りません。その他の特徴としては、
・製造プロセスが14nmとなり、前世代のRadeon R9 300シリーズ(28nm)から比べて微細化しました。
・製造プロセスの微細化により、動作クロックの向上だけでなく電力効率も向上しました。
・グラフィックメモリは従来と同じ「GDDR5」ですが、8Gbpsと高速化されました。
・高いフレームレートが必要なVRやゲーム、DirectX12に対し最適化されました。

Radeon RX 480 スペック比較一覧

Radeon
RX 480
Radeon R9
Nano
Radeon R9
390X
GeForce GTX
980
GeForce GTX
970
コードネーム Ellesmere
(Polaris10)
Fiji
(Fiji)
Grenada XT
(Granada)
GM204
(Maxwell)
GM204
(Maxwell)
製造プロセス 14nm 28nm
DirectX世代 12
ストリーミング
プロセッサ数
2304基 4096基 2816基 2048基 1664基
定格クロック 未公開 未公開 未公開 1126MHz 1050MHz
ブーストクロック 1266MHz 1000MHz 1050MHz 1216MHz 1178MHz
単精度浮動小数点演算 5.8TFLOPS 8.2TFLOPS 5.9TFLOPS 5TFLOPS 3.9TFLOPS
メモリタイプ GDDR5 HBM1 GDDR5
メモリバス帯域幅 256GB/s 512GB/s 384GB/s 224GB/s 224GB/s
メモリバス幅 256bit 4096bit 512bit 256bit 256bit
メモリ転送レート 8Gbps 1Gbps 6Gbps 7Gbps 7Gbps
メモリ容量 4/8GB 4GB 8GB 4GB 4GB
接続インターフェース PCI-Express 3.0 x16
TDP 150W 175W 275W 165W 145W
補助電源 6pin 8pin 8pin + 6pin 6pin x2 6pin x2

Radeon RX 480は、前世代のハイエンドRadeon R9 390Xと比べると、演算性能はほぼ同等でありながら、TDPはおよそ半分となっており、Polarisコアの電力効率の高さが覗われます。補助電源コネクタも6Pinコネクタ1個のみとなっており、Radeon R7 370やGeForce GTX 950などミドルレンジクラスのビデオカードからの置き換えも容易に行えそうです。

それでは、お待ちかねのベンチマーク比較と行きましょう。

ベンチマークテストでの比較

発売日当日より販売となる、Radeon RX 480搭載ゲーミングパソコンLEVEL∞ G-Classを用いてベンチマーク比較を行いました。比較対象として直接の置き換えモデルであるRadeon R9 300シリーズの最上位モデルであるRadeon R9 390Xとその上位モデルであるRadeon R9 Nano、および GeForce GTX 980・970 と比較して行きます。

テスト環境はフルHD以上の解像度、ちょうど3DMark Fire Strikeの標準設定であるフルHD(1920x1080)、Fire Strike Extremeの2560x1440、Fire Strike Ultraの4K(3840x2160)の3つの解像度にて行いました。
※測定環境、測定条件は記事の最後に記述していますのでご参照ください

① 3D Mark 「Fire Strike」テスト Graphics Score



Radeon RX 480は、対抗とされているGeForce GTX 970をどの解像度でも上回る一方、GeForce GTX 980や、Radeon R9 390Xには一歩届かないという結果となりました。ただ、高解像度、高負荷環境になるほど、R9 390Xのスコアが落ち込むのに対し、RX 480のスコアが迫っているところから、メモリ周りやアーキテクチャの改善が効いているということがわかります。

② ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク キャラクター編



ファイナルファンタジーXIVは、NVIDIAのグラフィックカードに最適化されているゲームとなるため、3D Markとは打って変わり、ファイナルファンタジーXIVのベンチマークでは、Radeonが不利な結果となりました。

ベンチマークの結果、Radeon RX 480はRadeon R9 390Xには一歩及ばず、単に性能比較という観点からは、完全にRadeon R9 300シリーズを置き換えられる事は無いようです。とは言え、Radeon RX 480はRadeon R9 390Xの半分程度のTDPで有りながら、Radeon R9 390Xに迫る性能を示しており、電力効率の高さは間違いなさそうです。

消費電力を確認

次いでRadeon RX 480の消費電力を見てみます。
今回は上記ベンチマークテストの4K解像度における実行時のシステム全体の消費電力の最大値を記録しています。


Radeon RX 480が最も低い電力消費値となっています。消費電力の少なさでも高い評価を得ているPascalコアを搭載したGeForce GTX 1080やGeForce GTX 1070で以前に測定した消費電力よりも低い数値となっており、Radeon RX 480が優れた省電力性能を持っている事が確認されました。
(※参考 GeForce GTX1080 3DMark:263W / FF14:266W 、GeForce GTX 1070 3DMark:233W / FF14:245W)

次に、アイドル時のシステム消費電力を比較してみます。


アイドル時でも Radeon RX 480はRadeon R9 390Xなどより1段低い消費電力となっています。14nmプロセスを採用したRadeon RX 480の優れた省電力性能が確認されました。

ワットパフォーマンスを確認

ベンチマークテストのスコアを消費電力で割り、1W当たりのスコアを算出し、ワットパフォーマンスを比べてみます。


ワットパフォーマンスという観点からは、Radeon RX 480はRadeon R9 390X に圧勝し、GeForce GTX 970 をも上回っています。正直なところ、Radeon RX 480のワットパフォーマンスよりも、むしろRadeon R9 Nanoの優秀さに改めて気付かされた、という方が強く印象づけられました。

Radeon RX 480でCrossFireを試してみた

最後にRadeon RX 480の発表会での「Radeon RX 480 のCrossFire は GeForce GTX 1080よりも速い」という発表が本当かどうか、LEVEL∞のテストモデルを用いてRadeon RX 480 のCrossFireを試してみました。比較対象はもちろん、GeForce GTX 1080 および GeForce GTX 1070 です。

① 3D Mark 「Fire Strike」テスト


発表通り、Radeon RX 480 のCrossFire が GeForce GTX 1080 を上回りました。CrossFireによるスコアの上昇率も全解像度で90%を超えており、CrossFireによる効果が如何なく発揮されていると言えます。

② ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク キャラクター編


残念ながらテストで使用したドライバでは ファイナルファンタジーⅩⅣのCrossFire動作には対応できていなかったようで、むしろ足枷になってしまっています。以前にRadeon R9 Fury X でテストを行った際にはCrossFire動作できており、ここはドライバの対応を待ちたいと思います。

まとめ

ベンチマークの結果、Radeon RX 480はライバルであるGeForce GTX 970相当以上の性能を発揮し、フルHDクラスでの快適なゲーミングを手頃な価格で実現する、という目的に適したグラフィックスカードではないでしょうか。
さらに、今回はベンチマークを行うことができませんでしたが、今話題のOculusやHTC ViveなどのVR HMD対応コンテンツを快適にプレイするための最低ラインをクリアするGeForce GTX 970以上のパフォーマンスをRadeon RX 480は発揮しております。こうしたVR対応ゲームに備えて今回のRadeon RX 480を選択肢のひとつとして加えることができるでしょう。

Radeon RX 480の最大の魅力は何といっても、コストパフォーマンスの高さであると言えます。
Radeon RX 480を2枚、Crossfire構成で搭載することでGeForce GTX 1080をしっかりとパフォーマンスで上回り、しかも価格面ではRadeon RX 480の方が有利となっています。
これなら2枚まとめて購入してもよいのでは?と職人たちの間でも話題となっていました。
#余談ですが、消費電力は流石に単体のGeForce GTX 1080の方が低かった点も記しておきます。(Radeon RX 480 CrossFire時:391W / GeForce GTX 1080単体時:273W)

最後に、Radeon RX480はコイル鳴きも皆無で、動作音はとても静かであった事を付け加えておきたいと思います。


執筆:パソコン工房 職人5号

表2.テスト環境  LEVEL ∞G LEVEL ∞G シリーズ Lev-G017-i7-RX 480(仮)

CPU Core i7-6700K (4.0-4.2GHz/4コア・8スレッド/キャッシュ8MB/TDP91W)
マザーボード ASUS Z170-A (Z170チップセット / BIOS :1702 )
メインメモリ DDR4-2133 16GB (8GB x2)
ビデオカード Radeon RX 480 リファレンスカード(ビデオメモリ 8GB)
Radeon R9 Nano リファレンスカード(ビデオメモリ 4GB)
Radeon R9 390X リファレンスカード(ビデオメモリ 4GB)
GeForce GTX 980 リファレンスカード(ビデオメモリ 4GB)
GeForce GTX 970 リファレンスカード(ビデオメモリ 4GB)
ストレージ Toshiba THNSNJ128GCSU (128GB SATA3)
電源 Seasonic SS-1000XP(80PLUS Platinum、1000W)
OS Windows 10 Home 64bit
ビデオドライバ Radeon RX 480 : Radeon Software Crimson Edition 16.6.2 Hotfix
Radeon R9 シリーズ : Radeon Software Crimson Edition 16.3.2
GeForce GTX シリーズ : GeForce Game Ready Driver Ver368.39