NVIDIA Pascal編。パソコン技術資料室では NVIDIA Pascalアーキテクチャを採用したGeForce 10シリーズのグラフィックカード「GeForce GTX 1080」を詳しく解説いたします。

技術解説資料最終更新日: 20160530

GeForce GTX 1080 | NVIDIA Pascal とは

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NVIDIAより2016年5月に発表された、最新のNVIDIA Pascalアーキテクチャを採用したGeForce 10シリーズのグラフィックカード「GeForce GTX 1080」について詳しく解説していきます。

GeForce GTX 1080 | NVIDIA Pascal とは

「GeForce GTX 1080」とは、NVIDIAより2016年5月に発表された、最新のNVIDIA Pascalアーキテクチャを採用したGeForce GTX 10シリーズのグラフィックカードです。
Pascal(パスカル)はMaxwell(マクスウェル)やKepler(ケプラー)などと同様、NVIDIAの開発コードネームおよびアーキテクチャの名称です。
DirectX 12への最適化をはじめとし、大幅な性能向上、VRへの対応などから、Windows 10と組み合わせることで最大パフォーマンスを発揮できるグラフィックカードです。

GeForce GTX 1080 (Pascal)の主な特徴

■製造プロセスが16nmとなり、前世代のGeForce GTX 980(28nm)から比べて微細化しました。
■GPCあたりのSMの数が増加し、全体としてCUDAコアの数が増加し、性能が向上しました。
■製造プロセスの微細化により、動作クロックが大きく上昇し性能が向上するだけでなく、電力効率も向上しました。
■グラフィックメモリに「GDDR5X」をサポートし、10Gbpsの転送速度を実現しました。
■高いフレームレートが必要なVRや、高解像度の4K、5Kなどのゲーム、DirectX12に対し最適化されました。
■CUDAの実行効率が改良され、PhysXを使用したゲームのパフォーマンスが向上しました。

モデルナンバーについて

Pascalの製品型番(モデルナンバー)は次のようなルールで命名されています。

画像名Pascal モデルナンバー命名ルール

詳細スペックについて

GeForce GTX 1080
GPUコア(コードネーム) GP104(Pascal)
製造プロセス 16nm 3D FinFET
Direct X 世代 12
ストリーミングプロセッサ数 2,560基
定格クロック 1,607MHz
ブーストクロック 1,733MHz
メモリタイプ GDDR5X
メモリバス帯域幅 320GB/s
メモリバス幅 256bit
メモリ転送レート 10Gbps
メモリ容量 8GB
接続インターフェイス PCI Express 3.0×16
SLI Dual-Link SLI対応
G-SYNC
TDP 180W
補助電源コネクタ 8pin
推奨電源容量 500W

Pascalの詳細スペック一覧

GeForce GTX 1080のここがスゴい!まとめ

GeForce GTX 1080 (Pascal)の主なアーキテクチャの特徴まとめ

■Pascalアーキテクチャでは、製造プロセスルールが微細化し、「16nm」となりました。
■Pascalアーキテクチャでは、GPCあたりのSM数が1基増え、結果としてGPCあたりのCUDAコア数が128増加しました。
■PolymorphEngineが4.0となり、SMP(Simultaneous Mutli-Projection)の機能が新たに追加されました。
■CUDAと3D描画タスクを効率的に実行できるようになり、ゲームなどにおいてはPhysXを使用したシーンなどでパフォーマンスが向上しました。

GeForce GTX 1080 (Pascal)の主なパワーアップのポイントまとめ

■動作クロックが大幅に向上し、GeForce GTX 1080では最大ブーストクロックが1.733GHzとなりました。
■GPU Boostが3.0となり、どの電圧帯であっても、常にコアの持つ最大パフォーマンスを発揮できるようになりました。
■電力の消費効率が向上し、ワットパフォーマンスが向上しました。60fpsにそろえた場合などにおいてGeForce GTX 1080ではGeForce GTX 980より消費電力を低く抑えることができます。
■GeForce GTX 1080 Founders Editionにおいては、使用するパーツの小型化や基盤設計の見直しにより静音性が高まり、消費電力が抑えられました。

GeForce GTX 1080 (Pascal)の主なグラフィックメモリ関連の改善まとめ

■メモリコントローラーの改善と基板回路の改善によりGDDR5Xに対応し、最大10Gbpsの転送速度を実現しました。
■テクスチャの圧縮効率を向上し、より有効にビデオメモリやメモリ帯域を活用できるようになりました。

GeForce GTX 1080 (Pascal)のその他の主な機能まとめ

■新たにHB SLI Bridgeを使用し、GeForce GTX 980に比べで2倍の帯域幅を持つDual-Link SLIに対応しました。
■2Way-SLIまでの制限となり、3Way-SLIや4Way-SLIを使用するためにはNVIDIAより発行される解除キーが必要になります。
■Fast-SYNC機能が追加されました。
■自由なスクリーンショットを撮影できる「ANSEL」に対応しました。
■反射音も演算する「VRWorks AUDIO」に対応し、よりVR HMDなどでコンテンツを再生する場合、よりリアルな音響を楽しむことができます。

GeForce GTX 1080 (Pascal)ではGeForce GTX TITAN Xと比較し2倍のVRパフォーマンス3倍の電力効率

上記のような機能強化により、驚異的なパフォーマンスの向上を実現しました。

GeForce GTX 1080 (Pascal)パフォーマンスGeForce GTX 1080 (Pascal)パフォーマンス

SMP(Simultaneous Multi-Projection)とは

SMP(Simultaneous Multi-Projection)による性能向上の恩恵SMP(Simultaneous Multi-Projection)による性能向上の恩恵

SMP(Simultaneous Multi-Projection)【同時マルチプロジェクション】とは、「プログラマブルラスタイザ」の機能の一部で、同時に複数の視点からのマッピングが可能となる機能です。
GeForce GTX 1080ではPolymorph EngineにSMPが追加され、バージョンがPolymorph Engine 4.0となりました。

VR HMDの映像など、複数の視点を描画する場合、従来では片目ずつ合計2回のレンダリング処理を実行する必要がありました。
しかし、SMPの実装により、これが同時に処理され1回で済むようになり、パフォーマンスが理論上2倍に向上することになります。
Pascal世代のSMPでは、最大16視点(画面)までの同時処理が可能となり、これはVR HMDだけでなく、3画面や6画面などのマルチモニタ環境においてもSMPによる性能向上の恩恵を受けることができるようになります。

CUDA処理の効率化

GeForce GTX 1080では、CUDAの処理と、グラフィックの処理をピクセルレベルで処理を切り替えることができるようになりました。
従来では、命令単位での処理となっていたため、処理が終わるまで他の処理を実行することができませんでした。

さらに、コマンド処理が早く完了し、余ったリソースに対し処理を割り当てることができるようになり、より効率的にCUDAの実行を行うことができるようになりました。

ゲームなどにおいては、流体物や爆発した破片処理などのPhysXの処理とグラフィック処理を効率的に実行することができるようになったため、パフォーマンスが向上しました。

ゲームのスクリーンショットの革命「ANSEL」

革新的なキャプチャ方法「ANSEL」革新的なキャプチャ方法「ANSEL」

ゲーム内のシーンをキャプチャし、アートのように見せる「In-Game Photography」が世界的に流行を見せる中、NVIDIAより、革新的なキャプチャ方法が提案されました。

「ANSEL」は、ゲーム内で自由にキャプチャすることができ、ゲームをポーズしたまま輝度や色合いの調整や、昼夜の変更、超高解像度のキャプチャ、VR HMD向けの360°キャプチャなどを行うことができるようになります。

この機能は、GeForce GTX 600シリーズ以降で提供される予定ですが、今回発売のGeForce GTX 1080が「ANSEL」を使うために最も適したグラフィックカードになるでしょう。

反射音のシミュレーション「VRWORKS AUDIO」

VRWORKS AUDIOVRWORKS AUDIO

VR HMDを使用したコンテンツには映像のリアルさに加えて、「リアルな音響」が欠かせません。VRWORKS AUDIOは、オーディオの反射音を計算し、本当に聞こえてくるような音を再現します。この機能はNVIDIAの提供するツール「VRWORKS」の機能の一つとして組込まれます。

NVIDIA Pascal よくある質問と答え(FAQ)

Q1.Windows 10以外でも使えるの?

A1.
Windows 10の他、Windows 8.1・8・7用のドライバが提供されます。その他、Linux や FreeBSDx86 のサポートが予定されています。

Q2.補助電源コネクターは?

A2.
GeForce GTX1080・1070共に8Pinコネクタが一つとなります。6Pin用の電源ケーブルでは動作致しませんので、ご使用の環境によっては電源ユニットの交換が必要になる可能性があります。

※NVIDIAリファレンスデザインに基づく場合。オリジナルクーラーモデルやOCモデルの場合、必要な補助電源コネクタが変わる場合が有ります

Q3.3-Way SLI や 4-Way SLI を構築する事は出来るの?

A3.
NVIDIA社より『エンスージアストキー』を取得する必要が有りますが、従来の3-Way/4-Way用SLIブリッジコネクタを使用して、3-Way/4-Way SLI を構築する事は可能です。

Q4.AMDのRadeonから乗り換える事は出来る?

A4.
Radeonシリーズから乗り換える事は出来ます。なお、Radeonカードを取り外す前に、Radeon用ドライバーや関連プログラムをアンインストールして下さい。

Q5.Windows 10なのにインストールに失敗する!ドライバが当たらない!

A5.
GeForce GTX 1080は、Windows 10 TH2アップデート以降の対応となりますので、OSのインストーラーを最新のものにしてお試しください。
Windows 10最新インストーラーイメージのダウンロードはこちら。
https://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows10

ライタープロフィール 職人5号

Windows2000登場前からほぼ一貫してPC製造部門に従事。PC組立はもちろん、OSイメージの作成や製造時のトラブルシュートを行う。 その経験を生かしてOSの基本情報や資料室を担当する事が多い。

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